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13、恐怖と気怠い身体*
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その後イレーネは仕事に戻ったはいいものの、自分でも思った以上にショックを受けていたのか、どこかぼんやりとしてしまい、いつもはしないミスを繰り返して、終わった時にはぐったりと疲れ果ててしまった。
もう今日は部屋へ帰って早く休もう。そう思っていたのに……
「イレーネ」
こういう日に限ってディートハルトに呼びとめられてしまった。人気のない廊下。目の前から真っ直ぐと向かってくる彼の姿にイレーネは思わず後退ってしまった。
ディートハルトがその態度に一瞬怪訝そうな表情をするも、手首を掴み、距離を詰める。腰を少し屈め、仕事はもう終わったか尋ねられる。イレーネはこくりと頷いた。
「あの、でも……」
間近で紫の瞳に射貫かれ、イレーネは口を噤んだ。それを了承とみなしたのか、ディートハルトがイレーネの腰に手を回した。こっちだ、というように誰もいない部屋へ入り、鍵をかけた。
逃げることは、できなかった。
「――ふ、うっ、」
壁に手をつかせ、一通りの愛撫を済ませると、ディートハルトはイレーネの中に自身のものを挿入してきた。だが中はまだ十分に濡れておらず、擦れて痛かった。彼もそれに気づいたのか、そのままの状態で、指を伸ばして膣の周辺を触れてくる。
花びらや蕾を撫でて、そっと摘ままれることを繰り返されると、ようやく中から蜜がとろとろと出始めた。それでも念には念を入れておこうと思ったのか、ディートハルトは指で陰核を刺激して、一度イレーネの気をやろうとした。
しかしこれが今日の彼女には辛かった。いきたくない、という気持ちが強く快感への道を拒絶していた。
「ディートハルトさま、もう、きてください」
だから振り返って、そう頼んだ。早く彼に出してほしかった。そうすれば満足して、帰ってくれる。
思えば自分からねだるように催促したのは初めてで、そのせいかディートハルトは少し戸惑った顔をした。だが望み通り、ゆっくりと剛直を奥まで飲み込ませてきた。慣れている感覚が、やけに熱く、窮屈に感じる。
「うっ、あ、」
動かれると、息が止まりそうになる。身体が強張る。
――嫌だ。怖い。
「今日は、きついな」
ぎくりとする。
「あの、わたしは大丈夫ですから……」
このまま構わず続けてくれと言っても、ディートハルトは従わなかった。一度自身のものを引き抜いてしまうと、イレーネの手を引き、長椅子に座ると、その膝の上に彼女を乗せた。
戸惑っていると、おくれ毛を耳にかけられ、頬や目元に啄むような口づけを落とされる。ちゅっ、ちゅっ、という音が何だか無性に恥ずかしく、目を伏せようかとも思ったが、そうすると昼間無理矢理連れて行こうとした王太子の姿や、数日前の騎士の姿が思い出され、ディートハルトの目を見続けた。
彼はそんなイレーネに気づいているのか、じっと同じように目を合わせてくる。互いに視線を絡ませたまま、ディートハルトはイレーネの胸を揉んできた。
お仕着せのドレスが彼の掌によって皺を作り、柔らかな膨らみがぐにゃりと歪む。釦を三番目から外され、手が差し込まれる。触れた掌は冷たく、肌が粟立つ。だが揉まれているうちに温かくなっていき、親指で尖りをきゅっと押しつぶされると、切ない息が口から漏れた。
イレーネはその間も、じっとディートハルトから目を逸らさなかった。今まで何より怖くてたまらなかった瞳が、王太子や騎士たちの気持ち悪さを払いのけてくれる唯一の救いに思えた。彼の方が、ずっとひどいことをしているというのに……。
「下も、触っていいか?」
一瞬迷ったものの、こくりと頷く。
慣れた手つきでスカートの下から、大きな掌が太股を撫で、秘所へとたどり着く。同じ手順で、けれど今度は問題なく快感を与えられ、イレーネはディートハルトの目を見つめながら達した。
「ぁ、……はぁ、はぁ、ん……」
ディートハルトは小刻みに震えながら息を吐き出すイレーネの尻を上げさせ、お預けを食らっていた陰茎を今度こそ挿入していく。
ずぶずぶと自分の中に飲み込まれていく肉杭に、イレーネは尻をぴくぴく震わせ、逃れるように腰を上げた。しかしディートハルトの掌がぐっと尻肉を掴んで落とし込んでいくので、代わりに猫のようなか細い声をあげた。
「ぁっ、あ、んっ、ん……ふぅ、あ、あっ……」
全部咥えることができても、どくどくと彼のものは脈打って、生き物のようにイレーネの蜜壁を突いてくる。くすぐったく、自然とまた腰を浮かせてしまう。でもそうすると媚肉が擦られ、蜜で滑って、言葉にできない快感に襲われる。
つい力が抜けて、腰を落としてしまった。すると半分まで見えていた男根がまたずっぽりと飲み込まれていき、先ほどよりもぬかるんだ蜜洞に包まれて、より硬く、熱を持っていく。蜜壁がまた擦られて……
「うっ、あっ、あぅ、んっ、ぁ、はぁっ、」
いつしかイレーネは自分から腰を持ち上げて、快感を得ようとしていた。自分の意思じゃないと思いながら、身体は紛れもなくディートハルトの熱くて硬いものを貪っている。
ぱちゅんぱちゅんと水音を響かせ、口から知らない女のような媚びた喘ぎ声を出しながら、イレーネの手はディートハルトの肩に置かれ、目は相変わらず彼の瞳を見ていた。
彼もは、は、と浅い息を吐きながらイレーネの動きをじっと見ていた。怖いくらいに整った顔と、冷たい瞳はまるで淫乱だと嘲笑っているようで、イレーネの目から涙が零れた。でも、逸らすこともできず、彼女はそのまま腰を淫らに振り続ける。
「あんっ、んぅ、んっ」
いきたい。もうやめたい。早くいきたい。こんなことしたくない。早くちょうだい。もうやめて。
「あっ、んっ、ディート、ハルトさまっ……あぁんっ」
ズンと勢いよく下から突き上げられ、彼女はぎゅっと彼のものを締めつけた。ディートハルトは呻き声を上げ、イレーネの中をかき混ぜるように身体を揺さぶり、前後に動かした。
自分にはできない、目も眩むほどの快感を容赦なく与えられ、イレーネはただ喘ぎ続けた。もう理性はない。ただ目の前に差し出された欲にむしゃぶりつき、雌の本能に従う姿に成り果てていた。
「あっ、あぁっ……もう、んっ、だめ……いく、いっちゃう……」
「はぁ、まだだ、まだ……いくな、我慢するんだっ……」
ディートハルトの呼吸も、いつしか乱れていた。イレーネはもうだめだと、涙で濡れた瞳でディートハルトの目を見つめる。彼はだめだ、と繰り返す。イレーネは主人の命令に従おうとするも、ずぶりずぶりと抜き差しされる刺激にどうにかなりそうだった。
「おねがい、はぁっ、ディートハルトさまっ、ぁんっ、もうっ、いきたいっ、」
「あと少し、はぁ、……そうだ、もっと締めつけて、うっ、」
どくんと彼のものが一際大きく脈打ち、弾けた。イレーネは許しを得て、大きく身体を震わせた。びくびく痙攣する彼女の身体を、ディートハルトが強い力で抱きしめる。彼女はしがみつくように彼の首に腕を回した。
(ぁ、あぁ……あつい、ディートハルトさまの……)
熱い飛沫が注がれていく。解放された心地よさと疲労が波のように押し寄せ、ぐったりとディートハルトに体を預けていた。彼もまた背もたれに背中を寄りかからせ、イレーネの肩に顔を埋め、大きく息を吸って吐いた。
「……何か、あったのか」
いつもよりも、回復するのに時間がかかった。身体もひどく怠かった。動かないイレーネにしびれを切らしたのか、ディートハルトはそんなことを口にした。背中に掌が添えられている。いつもは熱いのに、今はなぜかひんやりと感じる。
「少し、疲れてしまって……ごめんなさい。今、どきます」
「いや、別に、」
その後の言葉を聞く前に、立ち上がったイレーネはふらりと身体を傾かせた。
幸いディートハルトが受け止めてくれたが、彼女は謝ってお礼を述べる気力もなかった。ぞくぞくした寒気に襲われ、頭が痛くて、眠くてたまらなかった。
ディートハルトはイレーネの額に手を当てた。冷たくて、心地よい。彼はイレーネの乱れた格好を手早く直すと、抱き上げて彼女の部屋まで連れていった。途中何人かの人間とすれ違ったが、彼女はそれどころではなく、ディートハルトも当然のように無視した。
部屋の寝台に身体を寝かされ、耳元ですまなかったと謝られた。そのまま出て行こうとする彼の手を掴み、振り向かせた。声が聴こえなかったのか、再度顔を寄せられる。
今度は確かに聴こえ、ディートハルトはポケットから小瓶を取り出し、一錠指で摘まむと、イレーネの口に含ませた。こくりと飲み込んだことで、ようやく安堵して、今度こそ彼女は目を閉じて意識を手放したのだった。
もう今日は部屋へ帰って早く休もう。そう思っていたのに……
「イレーネ」
こういう日に限ってディートハルトに呼びとめられてしまった。人気のない廊下。目の前から真っ直ぐと向かってくる彼の姿にイレーネは思わず後退ってしまった。
ディートハルトがその態度に一瞬怪訝そうな表情をするも、手首を掴み、距離を詰める。腰を少し屈め、仕事はもう終わったか尋ねられる。イレーネはこくりと頷いた。
「あの、でも……」
間近で紫の瞳に射貫かれ、イレーネは口を噤んだ。それを了承とみなしたのか、ディートハルトがイレーネの腰に手を回した。こっちだ、というように誰もいない部屋へ入り、鍵をかけた。
逃げることは、できなかった。
「――ふ、うっ、」
壁に手をつかせ、一通りの愛撫を済ませると、ディートハルトはイレーネの中に自身のものを挿入してきた。だが中はまだ十分に濡れておらず、擦れて痛かった。彼もそれに気づいたのか、そのままの状態で、指を伸ばして膣の周辺を触れてくる。
花びらや蕾を撫でて、そっと摘ままれることを繰り返されると、ようやく中から蜜がとろとろと出始めた。それでも念には念を入れておこうと思ったのか、ディートハルトは指で陰核を刺激して、一度イレーネの気をやろうとした。
しかしこれが今日の彼女には辛かった。いきたくない、という気持ちが強く快感への道を拒絶していた。
「ディートハルトさま、もう、きてください」
だから振り返って、そう頼んだ。早く彼に出してほしかった。そうすれば満足して、帰ってくれる。
思えば自分からねだるように催促したのは初めてで、そのせいかディートハルトは少し戸惑った顔をした。だが望み通り、ゆっくりと剛直を奥まで飲み込ませてきた。慣れている感覚が、やけに熱く、窮屈に感じる。
「うっ、あ、」
動かれると、息が止まりそうになる。身体が強張る。
――嫌だ。怖い。
「今日は、きついな」
ぎくりとする。
「あの、わたしは大丈夫ですから……」
このまま構わず続けてくれと言っても、ディートハルトは従わなかった。一度自身のものを引き抜いてしまうと、イレーネの手を引き、長椅子に座ると、その膝の上に彼女を乗せた。
戸惑っていると、おくれ毛を耳にかけられ、頬や目元に啄むような口づけを落とされる。ちゅっ、ちゅっ、という音が何だか無性に恥ずかしく、目を伏せようかとも思ったが、そうすると昼間無理矢理連れて行こうとした王太子の姿や、数日前の騎士の姿が思い出され、ディートハルトの目を見続けた。
彼はそんなイレーネに気づいているのか、じっと同じように目を合わせてくる。互いに視線を絡ませたまま、ディートハルトはイレーネの胸を揉んできた。
お仕着せのドレスが彼の掌によって皺を作り、柔らかな膨らみがぐにゃりと歪む。釦を三番目から外され、手が差し込まれる。触れた掌は冷たく、肌が粟立つ。だが揉まれているうちに温かくなっていき、親指で尖りをきゅっと押しつぶされると、切ない息が口から漏れた。
イレーネはその間も、じっとディートハルトから目を逸らさなかった。今まで何より怖くてたまらなかった瞳が、王太子や騎士たちの気持ち悪さを払いのけてくれる唯一の救いに思えた。彼の方が、ずっとひどいことをしているというのに……。
「下も、触っていいか?」
一瞬迷ったものの、こくりと頷く。
慣れた手つきでスカートの下から、大きな掌が太股を撫で、秘所へとたどり着く。同じ手順で、けれど今度は問題なく快感を与えられ、イレーネはディートハルトの目を見つめながら達した。
「ぁ、……はぁ、はぁ、ん……」
ディートハルトは小刻みに震えながら息を吐き出すイレーネの尻を上げさせ、お預けを食らっていた陰茎を今度こそ挿入していく。
ずぶずぶと自分の中に飲み込まれていく肉杭に、イレーネは尻をぴくぴく震わせ、逃れるように腰を上げた。しかしディートハルトの掌がぐっと尻肉を掴んで落とし込んでいくので、代わりに猫のようなか細い声をあげた。
「ぁっ、あ、んっ、ん……ふぅ、あ、あっ……」
全部咥えることができても、どくどくと彼のものは脈打って、生き物のようにイレーネの蜜壁を突いてくる。くすぐったく、自然とまた腰を浮かせてしまう。でもそうすると媚肉が擦られ、蜜で滑って、言葉にできない快感に襲われる。
つい力が抜けて、腰を落としてしまった。すると半分まで見えていた男根がまたずっぽりと飲み込まれていき、先ほどよりもぬかるんだ蜜洞に包まれて、より硬く、熱を持っていく。蜜壁がまた擦られて……
「うっ、あっ、あぅ、んっ、ぁ、はぁっ、」
いつしかイレーネは自分から腰を持ち上げて、快感を得ようとしていた。自分の意思じゃないと思いながら、身体は紛れもなくディートハルトの熱くて硬いものを貪っている。
ぱちゅんぱちゅんと水音を響かせ、口から知らない女のような媚びた喘ぎ声を出しながら、イレーネの手はディートハルトの肩に置かれ、目は相変わらず彼の瞳を見ていた。
彼もは、は、と浅い息を吐きながらイレーネの動きをじっと見ていた。怖いくらいに整った顔と、冷たい瞳はまるで淫乱だと嘲笑っているようで、イレーネの目から涙が零れた。でも、逸らすこともできず、彼女はそのまま腰を淫らに振り続ける。
「あんっ、んぅ、んっ」
いきたい。もうやめたい。早くいきたい。こんなことしたくない。早くちょうだい。もうやめて。
「あっ、んっ、ディート、ハルトさまっ……あぁんっ」
ズンと勢いよく下から突き上げられ、彼女はぎゅっと彼のものを締めつけた。ディートハルトは呻き声を上げ、イレーネの中をかき混ぜるように身体を揺さぶり、前後に動かした。
自分にはできない、目も眩むほどの快感を容赦なく与えられ、イレーネはただ喘ぎ続けた。もう理性はない。ただ目の前に差し出された欲にむしゃぶりつき、雌の本能に従う姿に成り果てていた。
「あっ、あぁっ……もう、んっ、だめ……いく、いっちゃう……」
「はぁ、まだだ、まだ……いくな、我慢するんだっ……」
ディートハルトの呼吸も、いつしか乱れていた。イレーネはもうだめだと、涙で濡れた瞳でディートハルトの目を見つめる。彼はだめだ、と繰り返す。イレーネは主人の命令に従おうとするも、ずぶりずぶりと抜き差しされる刺激にどうにかなりそうだった。
「おねがい、はぁっ、ディートハルトさまっ、ぁんっ、もうっ、いきたいっ、」
「あと少し、はぁ、……そうだ、もっと締めつけて、うっ、」
どくんと彼のものが一際大きく脈打ち、弾けた。イレーネは許しを得て、大きく身体を震わせた。びくびく痙攣する彼女の身体を、ディートハルトが強い力で抱きしめる。彼女はしがみつくように彼の首に腕を回した。
(ぁ、あぁ……あつい、ディートハルトさまの……)
熱い飛沫が注がれていく。解放された心地よさと疲労が波のように押し寄せ、ぐったりとディートハルトに体を預けていた。彼もまた背もたれに背中を寄りかからせ、イレーネの肩に顔を埋め、大きく息を吸って吐いた。
「……何か、あったのか」
いつもよりも、回復するのに時間がかかった。身体もひどく怠かった。動かないイレーネにしびれを切らしたのか、ディートハルトはそんなことを口にした。背中に掌が添えられている。いつもは熱いのに、今はなぜかひんやりと感じる。
「少し、疲れてしまって……ごめんなさい。今、どきます」
「いや、別に、」
その後の言葉を聞く前に、立ち上がったイレーネはふらりと身体を傾かせた。
幸いディートハルトが受け止めてくれたが、彼女は謝ってお礼を述べる気力もなかった。ぞくぞくした寒気に襲われ、頭が痛くて、眠くてたまらなかった。
ディートハルトはイレーネの額に手を当てた。冷たくて、心地よい。彼はイレーネの乱れた格好を手早く直すと、抱き上げて彼女の部屋まで連れていった。途中何人かの人間とすれ違ったが、彼女はそれどころではなく、ディートハルトも当然のように無視した。
部屋の寝台に身体を寝かされ、耳元ですまなかったと謝られた。そのまま出て行こうとする彼の手を掴み、振り向かせた。声が聴こえなかったのか、再度顔を寄せられる。
今度は確かに聴こえ、ディートハルトはポケットから小瓶を取り出し、一錠指で摘まむと、イレーネの口に含ませた。こくりと飲み込んだことで、ようやく安堵して、今度こそ彼女は目を閉じて意識を手放したのだった。
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