わたしを捨てたはずの婚約者様からは逃げられない。

りつ

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8、昂り*

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「イレーネ」

 青年と別れた後、もう一度イレーネの名を呼ぶ人がいた。今度はあの騎士ではなかった。

「ディートハルト様」

 グリゼルダへの挨拶も済ませ、もう部屋へ戻ろうとしていたイレーネは嫌な予感がした。彼の纏う空気がなんとなくいつもと違っており、自分を見る目が妙にぎらついていたからだ。

「もう、終わりか?」
「……はい」

 とっさに違うと答えればよかっただろうか。だがもう遅く、ディートハルトに手を引かれて、誰もいない小部屋に連れ込まれた。そうして噛みつくように口づけされる。

「んっ、ふぅ、」

 普段は滅多にされないだけにイレーネは戸惑う。だがそんなこと構わず、ディートハルトは好き勝手に咥内を暴れ回り、空いた手でイレーネの身体を撫でまわした。いつもより強引な愛撫の仕方にイレーネは怖くなり、腰が引けてしまう。そんな彼女を追いつめるようにディートハルトはぐいぐいと下半身を押し当ててくる。

 いつの間にか端まで追いつめられて、壁に背中が当たる。唇を執拗に吸われ、息が苦しくなったイレーネは僅かな隙を狙って顔を横に逸らした。

「ひっ、」

 すると白い首筋が代わりに差し出され、ディートハルトが顔を埋める。荒い息が肌にかかり、舌先で舐められ、歯が当たり、イレーネはぞくりとした。胸元を押し戻そうとしても、手首を掴まれ、壁に磔にされ、空いた手でスカートを捲し立てられ、掌全体で太股を大胆に撫でられる。

「はぁ、まって……」

 イレーネの制止を無視して彼の手は股上を縫っていないドロワースを難なく潜り抜け、柔らかな茂みをかきわけて花びらの奥へ指をすべらせた。くちゅ、と中は濡れていた。そのままかき混ぜるように指を動かしていく。

 蜜襞を擦り、陰核の裏側を引っ掻くように指を折り曲げられ、イレーネの口から嬌声が漏れた。水音はさらに大きくなり、その音に煽られるようにディートハルトはイレーネの胸を強く揉みしだき、彼女の首筋に何度も掠れた、浅い息を吐き出す。

「あっ、んっ、んっ、ふう、ん……ぁ、もう、いくっ……!」

 彼の指をきつく咥えるのがわかった。イレーネが達しても、ディートハルトは攻めるのをやめず、中への刺激を続けたので、彼女は彼の肩にしがみつき、尻や腰を激しくくねらせた。

「はぁ、はぁ……ぁ、あんっ」

 目を閉じて喘いでいた彼女は、熱い塊をぐぷりと捩じ込まれ、ぱっと目を見開いた。そして間近で見るディートハルトの目に息を呑む。情欲に滾った彼の瞳は獣のように獰猛で、イレーネを食い殺すかのように見えたから。

「っ……」

 恐怖と相まって、まだ半分も入っていない彼のものを拒むように強く締めつけた。眉根を寄せ、悩ましげに耐えるディートハルトは壮絶な色気を纏っており、毒に当てられたかのようにイレーネは混乱に陥る。だがしょせん彼女は彼からすれば簡単に仕留められる獲物でしかない。

「うぅっ、」

 無理矢理こじ開けるようにグッと剛直を押し込んでくる。ぶちゅりと柔らかな実を押しつぶしたような音がして、粘膜が熱い昂りで容赦なく擦られる。泉のように奥から愛液があふれ、硬い肉棒に絡みつく。

(あっ、だめ……はいって、くる……)

 最奥へ突き進む彼を歓迎するように誘い、離したくないというように収縮を繰り返す。ぐちゅっ、ぶちゅっ、と肉がぶつかって弾け、あふれた蜜が太股を伝い落ちていく。

「あ、あぁ、んっ、んっ、いやぁっ」
「はぁっ、あぁ、いい、すごく、いいぞっ……」

 ディートハルトはがつがつと奥を穿ち、降りてきた子宮の入り口を吸いつくように突いてくる。疼痛に似た快感がイレーネをよりいっそう狂わせ、理性すら彼に奪われる。獲物は捕らえられて蹂躙され、ただ憐れみを請うような声で喘ぎ続ける。

「ふっ、う、あっ、あっ、んむぅ」

 唇を塞がれ、滅茶苦茶に咥内を貪られ、息が苦しくなっても、涎が口の端から零れ落ちても、どうすることもできない。

「だすぞっ、」

 ディートハルトの声に、溺れかけたイレーネの意識が浮上する。いや、無意識であろうと、彼の声に従わなければならなかった。よりいっそう激しく肉棒を出し入れされ、息の根を止めようとしてくる。追い詰められていく。あと少し、もう少しで、もう――

「あぁっ――――」

 繋がった二人は一緒に大きく身体を震わせた。中が熱くなり、大きくなって弾けた彼のものを媚肉がうねるように締めつけ、一滴残らず白濁を搾り取ろうとしている。

 あまりにも強く咥えるので、ディートハルトは呻き声をあげ、イレーネの中から自身を引き抜くことができない。奥へ吸われ続ける動きに逆らえず、腰を動かし、揺さぶってくる。イレーネもびくびくと身体を痙攣させながら、恥骨を男の方へと押し当てていた。

 自分の意思とは裏腹に、まだ彼のものが欲しいと催促するように。

 その願いを叶えるように、ディートハルトはさらにイレーネの腰を掴み、抽挿を始めた。

「あ、もう、だめっ……」

 緩く首を振って嫌だと伝えても、彼はふっと笑うだけだった。なぜならイレーネの腰はいやらしくくねって、ディートハルトのものをきつく咥えたままだから。萎えた陰茎を硬くさせようと、蜜襞が包んで扱いているから。

「いやらしいな、きみは」

 その言葉に深く傷つくも、ディートハルトの声が優しく、熱を持っていたから、彼女の身体は期待に応えるように反応した。彼はぐっと眉根を寄せ、イレーネの腕を引っ張ったかと思うと、赤ん坊を抱っこするように抱き上げた。

「やっ、」

 身体が浮き、不安定な体勢に彼女は思わずディートハルトの腰に脚を絡ませてしがみつく。彼はしっかり掴まっているよう告げると、イレーネの尻肉を掴み、繋がった状態のまま、大きく揺らし始めた。

「あっ、やぁっ、これ、んふぅっ、こわいっ……!」

 物のように激しく揺さぶられ、イレーネの蜜壺がディートハルトの肉棒を擦っている。ばつばつと肌と肌がぶつかって、愛液と彼が出した白濁が混ざり合ってぐちゅぐちゅとよりいっそう淫乱な音を奏でている。

「んっ、んぅ、あっ、あぁっ、あああん」
「はぁっ、いいぞ、もっと、しめつけろっ……」

 イレーネはディートハルトの命じるまま、締めつけ、彼を射精へと導いた。それでも繋がりは解けず、イレーネは気を失うまで地獄のような快楽を与えられ続けたのだった。

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