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34、アナベルのお見舞い
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次に目を覚ました時、イリスの目は天井を映していた。
(ここは……)
「ああ、イリス! 目を覚ましたのね!」
目に涙を浮かべた母がイリスの顔を覗き込む。……母の泣いている顔など初めて見たかもしれない。
「お母さま。わたし……」
「イリス。まだ寝ていなさい」
起き上がろうとするイリスを止めたのは父であるシェファール侯爵だった。
「劇場で倒れてしまって、医者も呼んで色々確かめたそうだが、特に問題はないようだったからラファエル君が連れて帰ってきてくれたんだ。アナベル嬢も一緒に。覚えているかい?」
「ええ。コルディエ公爵夫人と会って……」
けれど倒れた後の記憶はなかった。
「言い争う姿に驚いてしまったようだね。ラファエル君が説明してくれたよ」
ラファエルの名前にイリスはもう一度起き上がった。
「お父さま。わたし、ラファエルやアナベルさんにとても迷惑をかけてしまったわ」
いくら公爵夫人が怖かったからといって気絶してしまうなんて……イリスは自分の弱さに泣きそうになった。
「大丈夫だよ、イリス。二人とも心配はしていたが、迷惑だなんて思っている様子は少しもなかった。むしろこんなことになってしまって申し訳ないと何度も謝ってくれたんだからね」
「そんな! わたしが勝手に倒れただけなのに!」
「ああ、わかっているとも。だから次に会った時に、助けてくれたお礼をたくさん言ってあげなさい」
いいかい? と優しい口調で言われ、イリスは何度も頷いた。侯爵は微笑むとイリスの名前を呼んだ。
「倒れたことを気に病む必要はない。今回のことは全くの不慮の事故だ」
「……でも、わたし自分が情けないわ」
「それを言うなら、コルディエ公爵夫人の方がよっぽど情けないだろう。彼女はイリスより大人で、爵位だってずっと上だ。それなのに貴族としてあるまじき醜態を晒した。王太子殿下の友人を疑い、自分の姪にも喚き散らしたそうだからね。おまえがその場で気を失ってしまうのも無理はない」
「そう、かしら……」
そうだとも、と侯爵は深く頷いた。
「我々は貴族だ。どんな理由があれ、己の怒りや苛立ちを他人に晒してはいけない。傷つけるなど、もってのほかだ」
父の言葉にイリスは俯いた。厳しく、難しい言葉だと思った。
「とにかく今はゆっくり休みなさい。身体は大丈夫でも、心はまだ落ち着いていないようだからね」
さぁ、と侯爵はもう一度イリスを寝かせると、そばで何も言えず涙を浮かべている妻へと声をかけた。
「ほら、マリエット。もう泣かないで」
侯爵に肩を抱かれ、母は部屋を出て行った。途中イリスを振り返って見つめる目はイリス自身よりも傷つき、弱っているようだった。
(お母さま……)
一日ぐっすり眠れば、イリスの体調はもうすっかり良くなった。もともと気絶しただけだから当然なのだが、両親は心配して部屋で大人しくしているよう言いつけた。使用人たちも気を遣い、イリスをまるで重病者であるかのようにベッドに横たわらせ、世話を焼いてくる。
イリスは大げさだと思いつつ、両親の気持ちもよくわかったので、逆らわず大人しく本を読んだりして過ごした。そしてその数日後。
「お嬢様。お客様がお見えでございます」
訪れたのはアナベルであった。彼女は見舞いの品だけ渡して帰ろうとしたそうだが、侯爵の勧めにより部屋へと案内された。
「具合はどう?」
「ええ、もうすっかり。どこも悪くないのに大人しくしているよう言われて……少し困っているの」
「それくらい心配しているんでしょ」
用意された椅子に座り、アナベルは真面目な顔をして言った。
「あなた、見かけ通り……いえ、見かけ以上に繊細ですもの。ご両親が心配なさるのも無理ないわ」
「でも、あんなことになってしまって……アナベルさんたちにも迷惑をおかけしてごめんなさい」
「別に謝ることではないわよ」
「……お見舞いまで来てくれてありがとう。嬉しいわ」
「別に。きちんと休んでいるか、確かめに来ただけよ」
ふん、とそっぽを向いて肩にかかった髪を後ろへと払うアナベルにイリスは微笑んだ。
「だいたい謝るべきはコルディエ公爵夫人でしょう? あんな公の場で騒ぎを起こして……いい年して恥ずかしくないのかしら」
「夫人はあの後、どうなったの」
「貴女が倒れた後、当然人が集まってきてね。自分のせいになるんじゃないかって、逃げるように取り巻きの夫人たちと帰って行かれたわ」
信じられないわよね、とアナベルは軽蔑したように言った。
「コリンヌ嬢は大丈夫かしら……」
叔母である夫人に問い詰められていて、彼女は真っ青になっていた。イリスと同じか、それ以上に怖い思いをしたはずだ。
「本人は貴女のことを気にかけて残りたかったみたいだけど、夫人に引きずられるようにして帰って行ったわ。あの感じだと、帰る途中も色々言われてそうね」
「そんな……」
イリスは心配だと顔を曇らせた。
「お父様に聞いた話だけど、夫人は姪のコリンヌ嬢を王太子殿下の妃にしようと画策しているみたいなの」
「そうなの? でもあの子、ずいぶんと幼く見えたわ」
「ええ。十二歳ですって」
「まぁ……」
まだ子どもとも言っていい年齢にイリスはますますコリンヌが可哀想に思えた。
『わたしはそんなもの、望んでおりません』
コリンヌの言葉が本当なら、夫人は無理矢理姪を嫁がせようとしているわけだ。
「そこまでして殿下の妃にさせたいのかしら……」
「噂じゃ、夫人が王太子殿下への想いをコリンヌ嬢で果たそうとしているって話よ」
「ええ?」
どういうことだと目を瞬くイリスに、アナベルは声を潜めて教えてくれた。
「コルディエ公爵夫人はサミュエル殿下のことを慕っているけれど、もう結婚しているから愛人にはなれても妃にはなれないでしょ? 年も離れているし、すでに公爵の妻でもある夫人のプライド的にも、そんな地位は許せない。だから代わりに同じ血筋のコリンヌ嬢が殿下と結婚してくれれば、自分の想いも叶ったように思うわけ」
「そういう、ものなのかしら……」
イリスにはよくわからなかった。コリンヌがサミュエルと一緒になれたとしても、それは結局夫人本人ではないから意味がないのではないか。
「素性のわからない女よりは自分がよく知っている……劣っている女の方がマシってことなんじゃないかしら」
「そんなのコリンヌ嬢に対して失礼だわ」
「ええ。全くだわ。失礼な女性よ」
その通りだとアナベルは深く頷いた。
「あの方はわたくしの身分の低さを嘲笑なさったけれど、わたくしからすればあの方の振る舞いこそ人として恥ずかしいと思うわ」
「……わたしも酷いと思うわ。アナベルさんのご両親のこともあんなふうにおっしゃって」
イリスがそう言えば、アナベルは「あら」というように目を丸くした。
「イリスさんがそんなことをおっしゃるなんて」
「だって、アナベルさんのご両親は互いに深く愛し合っているのでしょう? お二人の事情も知らず決めつけた物言いをなさるなんてよくないわ」
怒った口調でイリスが文句を言えば、なぜかアナベルはクスリと笑う。
「アナベルさん?」
「いいえ、ごめんなさい。あの時倒れた貴女と今の貴女が本当に同じ人物なのかと思って」
「うっ……だって本当に怖かったんですもの」
でも今こうして冷静に振り返ってみると、コルディエ公爵夫人に対する腹立たしさが湧き上がってくる。
(ラファエルやアナベルさんにも手を上げようとしたこと、絶対に許せないわ……)
「そういえば貴女の婚約者様もお見舞いに来ているの?」
アナベルの質問にイリスは顔を上げる。
「いいえ。ラファエルは来ていないの」
「うそ。あの方が?」
アナベルは信じられないと目を大きく見開いた。
「どんなに忙しそうでも絶対毎日寄りそうなのに……」
「ええ。毎日寄ってくれるわ」
ただイリスに会うことは禁じられていた。
(ここは……)
「ああ、イリス! 目を覚ましたのね!」
目に涙を浮かべた母がイリスの顔を覗き込む。……母の泣いている顔など初めて見たかもしれない。
「お母さま。わたし……」
「イリス。まだ寝ていなさい」
起き上がろうとするイリスを止めたのは父であるシェファール侯爵だった。
「劇場で倒れてしまって、医者も呼んで色々確かめたそうだが、特に問題はないようだったからラファエル君が連れて帰ってきてくれたんだ。アナベル嬢も一緒に。覚えているかい?」
「ええ。コルディエ公爵夫人と会って……」
けれど倒れた後の記憶はなかった。
「言い争う姿に驚いてしまったようだね。ラファエル君が説明してくれたよ」
ラファエルの名前にイリスはもう一度起き上がった。
「お父さま。わたし、ラファエルやアナベルさんにとても迷惑をかけてしまったわ」
いくら公爵夫人が怖かったからといって気絶してしまうなんて……イリスは自分の弱さに泣きそうになった。
「大丈夫だよ、イリス。二人とも心配はしていたが、迷惑だなんて思っている様子は少しもなかった。むしろこんなことになってしまって申し訳ないと何度も謝ってくれたんだからね」
「そんな! わたしが勝手に倒れただけなのに!」
「ああ、わかっているとも。だから次に会った時に、助けてくれたお礼をたくさん言ってあげなさい」
いいかい? と優しい口調で言われ、イリスは何度も頷いた。侯爵は微笑むとイリスの名前を呼んだ。
「倒れたことを気に病む必要はない。今回のことは全くの不慮の事故だ」
「……でも、わたし自分が情けないわ」
「それを言うなら、コルディエ公爵夫人の方がよっぽど情けないだろう。彼女はイリスより大人で、爵位だってずっと上だ。それなのに貴族としてあるまじき醜態を晒した。王太子殿下の友人を疑い、自分の姪にも喚き散らしたそうだからね。おまえがその場で気を失ってしまうのも無理はない」
「そう、かしら……」
そうだとも、と侯爵は深く頷いた。
「我々は貴族だ。どんな理由があれ、己の怒りや苛立ちを他人に晒してはいけない。傷つけるなど、もってのほかだ」
父の言葉にイリスは俯いた。厳しく、難しい言葉だと思った。
「とにかく今はゆっくり休みなさい。身体は大丈夫でも、心はまだ落ち着いていないようだからね」
さぁ、と侯爵はもう一度イリスを寝かせると、そばで何も言えず涙を浮かべている妻へと声をかけた。
「ほら、マリエット。もう泣かないで」
侯爵に肩を抱かれ、母は部屋を出て行った。途中イリスを振り返って見つめる目はイリス自身よりも傷つき、弱っているようだった。
(お母さま……)
一日ぐっすり眠れば、イリスの体調はもうすっかり良くなった。もともと気絶しただけだから当然なのだが、両親は心配して部屋で大人しくしているよう言いつけた。使用人たちも気を遣い、イリスをまるで重病者であるかのようにベッドに横たわらせ、世話を焼いてくる。
イリスは大げさだと思いつつ、両親の気持ちもよくわかったので、逆らわず大人しく本を読んだりして過ごした。そしてその数日後。
「お嬢様。お客様がお見えでございます」
訪れたのはアナベルであった。彼女は見舞いの品だけ渡して帰ろうとしたそうだが、侯爵の勧めにより部屋へと案内された。
「具合はどう?」
「ええ、もうすっかり。どこも悪くないのに大人しくしているよう言われて……少し困っているの」
「それくらい心配しているんでしょ」
用意された椅子に座り、アナベルは真面目な顔をして言った。
「あなた、見かけ通り……いえ、見かけ以上に繊細ですもの。ご両親が心配なさるのも無理ないわ」
「でも、あんなことになってしまって……アナベルさんたちにも迷惑をおかけしてごめんなさい」
「別に謝ることではないわよ」
「……お見舞いまで来てくれてありがとう。嬉しいわ」
「別に。きちんと休んでいるか、確かめに来ただけよ」
ふん、とそっぽを向いて肩にかかった髪を後ろへと払うアナベルにイリスは微笑んだ。
「だいたい謝るべきはコルディエ公爵夫人でしょう? あんな公の場で騒ぎを起こして……いい年して恥ずかしくないのかしら」
「夫人はあの後、どうなったの」
「貴女が倒れた後、当然人が集まってきてね。自分のせいになるんじゃないかって、逃げるように取り巻きの夫人たちと帰って行かれたわ」
信じられないわよね、とアナベルは軽蔑したように言った。
「コリンヌ嬢は大丈夫かしら……」
叔母である夫人に問い詰められていて、彼女は真っ青になっていた。イリスと同じか、それ以上に怖い思いをしたはずだ。
「本人は貴女のことを気にかけて残りたかったみたいだけど、夫人に引きずられるようにして帰って行ったわ。あの感じだと、帰る途中も色々言われてそうね」
「そんな……」
イリスは心配だと顔を曇らせた。
「お父様に聞いた話だけど、夫人は姪のコリンヌ嬢を王太子殿下の妃にしようと画策しているみたいなの」
「そうなの? でもあの子、ずいぶんと幼く見えたわ」
「ええ。十二歳ですって」
「まぁ……」
まだ子どもとも言っていい年齢にイリスはますますコリンヌが可哀想に思えた。
『わたしはそんなもの、望んでおりません』
コリンヌの言葉が本当なら、夫人は無理矢理姪を嫁がせようとしているわけだ。
「そこまでして殿下の妃にさせたいのかしら……」
「噂じゃ、夫人が王太子殿下への想いをコリンヌ嬢で果たそうとしているって話よ」
「ええ?」
どういうことだと目を瞬くイリスに、アナベルは声を潜めて教えてくれた。
「コルディエ公爵夫人はサミュエル殿下のことを慕っているけれど、もう結婚しているから愛人にはなれても妃にはなれないでしょ? 年も離れているし、すでに公爵の妻でもある夫人のプライド的にも、そんな地位は許せない。だから代わりに同じ血筋のコリンヌ嬢が殿下と結婚してくれれば、自分の想いも叶ったように思うわけ」
「そういう、ものなのかしら……」
イリスにはよくわからなかった。コリンヌがサミュエルと一緒になれたとしても、それは結局夫人本人ではないから意味がないのではないか。
「素性のわからない女よりは自分がよく知っている……劣っている女の方がマシってことなんじゃないかしら」
「そんなのコリンヌ嬢に対して失礼だわ」
「ええ。全くだわ。失礼な女性よ」
その通りだとアナベルは深く頷いた。
「あの方はわたくしの身分の低さを嘲笑なさったけれど、わたくしからすればあの方の振る舞いこそ人として恥ずかしいと思うわ」
「……わたしも酷いと思うわ。アナベルさんのご両親のこともあんなふうにおっしゃって」
イリスがそう言えば、アナベルは「あら」というように目を丸くした。
「イリスさんがそんなことをおっしゃるなんて」
「だって、アナベルさんのご両親は互いに深く愛し合っているのでしょう? お二人の事情も知らず決めつけた物言いをなさるなんてよくないわ」
怒った口調でイリスが文句を言えば、なぜかアナベルはクスリと笑う。
「アナベルさん?」
「いいえ、ごめんなさい。あの時倒れた貴女と今の貴女が本当に同じ人物なのかと思って」
「うっ……だって本当に怖かったんですもの」
でも今こうして冷静に振り返ってみると、コルディエ公爵夫人に対する腹立たしさが湧き上がってくる。
(ラファエルやアナベルさんにも手を上げようとしたこと、絶対に許せないわ……)
「そういえば貴女の婚約者様もお見舞いに来ているの?」
アナベルの質問にイリスは顔を上げる。
「いいえ。ラファエルは来ていないの」
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