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13、母の考え
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数日経っても、イリスはふわふわした心地のまま、舞踏会の日のことをふとした拍子に思い出しては頬を緩ませていた。
(まるで夢のようだった……)
ラファエルが迎えに来てくれて、イヤリングをプレゼントしてくれて、一緒に踊ってくれて……
(帰りの馬車でも……)
『イリス。おまえが好きだ』
「~~~~っ」
ラファエルの恋い焦がれるような、真剣な表情を思い出し、イリスは嬉しくて、恥ずかしくて、でもやっぱり嬉しくて、悶絶した。寝台の上でうつ伏せになって、手足をばたばた動かし、枕にやり場のない思いをぶつける。
(あの時のラファエル。すごく素敵だったなぁ……)
まるで修道院で流行った恋愛小説の王子様みたいに。いや、王子以上の格好よさがラファエルにはあった。
(ラファエル……)
彼のことを想うと、甘く胸が締め付けられる。きっとこれを人は恋と呼ぶのだろうと、イリスはえへへ……とだらしない表情でまた幸せな記憶に思いを馳せる。
「……お嬢様。そろそろ身支度の方を」
いつから見ていたのか、メイドが気まずそうに声をかけてくる。イリスは飛び上がらんばかりに驚き、顔から火が出るほど恥ずかしく思うのだった。
それから数日経ったある日。
「イリス。あなた宛てに王宮から手紙が届いているわよ」
「王宮から?」
そうよ、と母のマリエットが興奮を抑えきれない様子でイリスに手紙を渡してくる。一体何だろうかと封を切って読んでみると、なんとベルティーユからの茶会の誘いであった。
(お友達を紹介したいとおっしゃってはくれたけれど……)
まさか本当に誘われるとは思ってもおらず、イリスは驚いてしまう。
「お母さま。わたし、王女殿下からお茶会に誘われてしまったわ」
「まぁ、ベルティーユ様から?」
本当? と言われたので、イリスは招待状を母に見せてあげた。彼女はそれを確かに己の目で見ると、娘の顔をまじまじと見つめてくる。
「あなた、いつ王女殿下とお知り合いになったの?」
「舞踏会の時、少しだけお話させてもらったの。ラファエルの紹介で」
サミュエルにも会ったと告げると、マリエットはますます驚き、やがて満面の笑みを浮かべてイリスの名前を呼んだ。
「それはとても名誉なことだわ。うんとお洒落して出かけて行きなさい」
「でもお母さま……わたし、上手く話せるか自信があまりないの」
ベルティーユもサミュエルも悪い人ではない。根は優しい人なのだと思う。けれどやはり一人では心細く、不安の方が勝ってしまう。この場にはラファエルがおらず、何かあった時には一人で対処しなければならないのだ。
(あのベルティーユ様相手に、上手くやれるかしら……)
「欠席、したらだめかしら……」
ぽつりと漏らした言葉に、母はとんでもないというように声を上げた。
「まぁ、何言っているの、イリス。こんな絶好の機会、絶対に逃しちゃだめよ!」
「絶好の機会って……」
いいこと、というようにマリエットはイリスの両肩に手を置いて言い聞かせる。
「もしかしたら王太子殿下に気に入られて、結婚を申し込まれるかもしれないのよ?」
「王太子殿下に?」
「そうよ。サミュエル殿下は妹のベルティーユ様をとても可愛がっていらっしゃるの。だからあなたが彼女と仲良くなれば、兄であるサミュエル殿下ともお近づきになれるということよ」
いくら何でもそんな簡単な話ではないだろう。夢見がちな母にイリスは軽く呆れてしまう。
(それに殿下はラファエルの仕える主だわ)
イリスとくっつくということは、臣下の恋人を奪うということだ。恋愛小説では胸がときめく展開であったが、現実で実際に起こったら、権力を笠に着た最低な振る舞いでしかない。イリスはそんなの絶対に嫌だ。
「前にも言いましたけれど、わたしはラファエルと結婚します」
「あら。でも王子様相手なら、ラファエルだって諦めるしかないわ」
「そんなことしないわ!」
ついムキになって言い返すと、怒らないでと母は揶揄う口調で宥めた。イリスをいつまでたっても子どものように扱う母の態度にますます腹が立ってしまう。
「ねぇ、お母さま。どうしてそんなにラファエル以外の男性を勧めてくるの? わたしと彼はもう婚約しているんでしょう? それなのにわたしが他の男性と一緒になろうとしているなんて、そんなのおかしいわ」
ラファエルからすれば、酷い裏切り行為だ。イリスだって逆のことをされたらとても悲しいし、許せない。たとえそれが彼の意思ではなく、両親の差し金だったとしても。
「説明して、お母さま」
イリスは正面から母にぶつかった。何か事情があるのなら、隠さないで伝えて欲しい。
どこまでも真剣な気持ちで訴えかけたのだが、マリエットの態度はやはりどこか軽々しく、子猫を相手にするようなものであった。
「イリス。たしかにあなたとラファエルは婚約しているわ。幼い頃、ラファエルのお父様であるデュラン伯爵と、あなたのお父様の間で、歳が近いから、一応婚約を交わしておくという内容でね」
「一応?」
では正式には結んでないのかとイリスが問えば、マリエットはそれもちょっと違うと答えた。
「あなたたちが婚約者同士であることは間違いないわ。書類にもきちんと残されているから。でもそれは別に破棄しても構わないの」
「わからないわ、お母さま」
「効力は弱いってこと。それほど真剣に捉える必要はないのよ、イリス。だってまだ幼い頃に結んだ約束なんですもの」
「でも! わたしとラファエルはずっと本気だったわ!」
「あなたたちはまだ小さな子どもだった。大きくなればそれぞれ自我を持って、趣味趣向だって変わる。好きな人だって、当然変わる可能性がある。私たち大人はそう考えているのよ」
でも、とイリスは必死で反論する。
「もうわたしたちは子どもじゃないでしょう? ラファエルだって騎士になって、わたしだって社交界デビューしたわ。もう大人の仲間でしょう?」
「ふふ。私たちからすれば、あなたはまだまだ危なっかしい娘のままよ?」
「揶揄うのはやめて。お母さまがそんなふうに言ったって、わたしもラファエルも、簡単に諦めきれる想いじゃないの」
あの時からずっと、イリスはラファエルが好きだ。
けれど母は全てまやかしだというように薄く微笑むだけだ。
「イリス。あなたの気持ちもわかるわ。ラファエルはすてきな人よね。ずっと好きだった相手だもの。結ばれたいって思うのは当然よね。でもね、結婚してしまったらもう二度と後戻りはできないのよ。もう一度よく考えみて欲しいの。苦労するのも、後悔するのも、あなたの人生にすべて跳ね返ってくるんですからね」
後悔なんてしない。
イリスはそう答えようとしたけれど、母の口調がその時だけやけに真剣だったので、何も言えず黙り込んでしまう。
「デュラン伯爵も最初からそのつもりでこのお話を受けてくれたの。もともと向こうは我が家より一段劣る家柄ですもの。たとえあなたが別の殿方と結ばれようと、何も文句は言わないはずよ」
「……けれど、信頼は裏切るのではなくて?」
「そうね。でも可愛い一人娘の幸せのためだもの。向こうだって子どもがいる身。伯爵だって息子のラファエルには幸せになって欲しいと思っているはず。それが親だもの。だから最後には理解してくれるはずよ」
イリス、とマリエットが俯く娘の顔を上げさせ、優しい口調で語りかけてくる。
「選べる自由が我が家にはあるの。だからあなたには後悔のないよう、一番幸せな道を選んで欲しいの」
いつもは少女のような可憐なマリエットが初めて母親らしい表情でそう言ったので、イリスはそれ以上強く言い返すことができなかった。
母の言葉は幸せに浸っていたイリスをあっという間に現実へと引き戻した。
(結婚するって決まっていても、実際にどうこうする話っていうのはまだ決まっていないのよね……)
とりあえず社交界が終わってから、とイリスは漠然と思っていたが、両親の思惑では社交界でラファエル以外の男性と出会わせるつもりだったのかもしれない。
(だからって王太子殿下とどうこうなることを期待するなんて……)
いくら何でもあり得ないとイリスは思った。
(お茶会、どうしても行かないといけないかしら……)
体調不良を理由に欠席しようか。しかし嘘をつくのは良心が咎める。ベルティーユもせっかく誘ってくれたのに断るなんて……そもそも断ることなど許されるのだろうか。
(やっぱり、参加するしかないよね……)
はぁ、とため息をつく。結婚したら今よりずっと人との付き合いは増えるだろう。これくらいで根を上げていたらとてもやっていける気がしない。そうはわかっていても、やはり気が重いのは重い。
(どうしよう……あら、)
もう一度手紙を読み直していると、イリスはあることに気づき、じっくりとその箇所を眺めた。
(そうだわ。一人がだめならせめて……)
イリスは執事を呼び、調べて欲しい人がいると頼んだ。
(まるで夢のようだった……)
ラファエルが迎えに来てくれて、イヤリングをプレゼントしてくれて、一緒に踊ってくれて……
(帰りの馬車でも……)
『イリス。おまえが好きだ』
「~~~~っ」
ラファエルの恋い焦がれるような、真剣な表情を思い出し、イリスは嬉しくて、恥ずかしくて、でもやっぱり嬉しくて、悶絶した。寝台の上でうつ伏せになって、手足をばたばた動かし、枕にやり場のない思いをぶつける。
(あの時のラファエル。すごく素敵だったなぁ……)
まるで修道院で流行った恋愛小説の王子様みたいに。いや、王子以上の格好よさがラファエルにはあった。
(ラファエル……)
彼のことを想うと、甘く胸が締め付けられる。きっとこれを人は恋と呼ぶのだろうと、イリスはえへへ……とだらしない表情でまた幸せな記憶に思いを馳せる。
「……お嬢様。そろそろ身支度の方を」
いつから見ていたのか、メイドが気まずそうに声をかけてくる。イリスは飛び上がらんばかりに驚き、顔から火が出るほど恥ずかしく思うのだった。
それから数日経ったある日。
「イリス。あなた宛てに王宮から手紙が届いているわよ」
「王宮から?」
そうよ、と母のマリエットが興奮を抑えきれない様子でイリスに手紙を渡してくる。一体何だろうかと封を切って読んでみると、なんとベルティーユからの茶会の誘いであった。
(お友達を紹介したいとおっしゃってはくれたけれど……)
まさか本当に誘われるとは思ってもおらず、イリスは驚いてしまう。
「お母さま。わたし、王女殿下からお茶会に誘われてしまったわ」
「まぁ、ベルティーユ様から?」
本当? と言われたので、イリスは招待状を母に見せてあげた。彼女はそれを確かに己の目で見ると、娘の顔をまじまじと見つめてくる。
「あなた、いつ王女殿下とお知り合いになったの?」
「舞踏会の時、少しだけお話させてもらったの。ラファエルの紹介で」
サミュエルにも会ったと告げると、マリエットはますます驚き、やがて満面の笑みを浮かべてイリスの名前を呼んだ。
「それはとても名誉なことだわ。うんとお洒落して出かけて行きなさい」
「でもお母さま……わたし、上手く話せるか自信があまりないの」
ベルティーユもサミュエルも悪い人ではない。根は優しい人なのだと思う。けれどやはり一人では心細く、不安の方が勝ってしまう。この場にはラファエルがおらず、何かあった時には一人で対処しなければならないのだ。
(あのベルティーユ様相手に、上手くやれるかしら……)
「欠席、したらだめかしら……」
ぽつりと漏らした言葉に、母はとんでもないというように声を上げた。
「まぁ、何言っているの、イリス。こんな絶好の機会、絶対に逃しちゃだめよ!」
「絶好の機会って……」
いいこと、というようにマリエットはイリスの両肩に手を置いて言い聞かせる。
「もしかしたら王太子殿下に気に入られて、結婚を申し込まれるかもしれないのよ?」
「王太子殿下に?」
「そうよ。サミュエル殿下は妹のベルティーユ様をとても可愛がっていらっしゃるの。だからあなたが彼女と仲良くなれば、兄であるサミュエル殿下ともお近づきになれるということよ」
いくら何でもそんな簡単な話ではないだろう。夢見がちな母にイリスは軽く呆れてしまう。
(それに殿下はラファエルの仕える主だわ)
イリスとくっつくということは、臣下の恋人を奪うということだ。恋愛小説では胸がときめく展開であったが、現実で実際に起こったら、権力を笠に着た最低な振る舞いでしかない。イリスはそんなの絶対に嫌だ。
「前にも言いましたけれど、わたしはラファエルと結婚します」
「あら。でも王子様相手なら、ラファエルだって諦めるしかないわ」
「そんなことしないわ!」
ついムキになって言い返すと、怒らないでと母は揶揄う口調で宥めた。イリスをいつまでたっても子どものように扱う母の態度にますます腹が立ってしまう。
「ねぇ、お母さま。どうしてそんなにラファエル以外の男性を勧めてくるの? わたしと彼はもう婚約しているんでしょう? それなのにわたしが他の男性と一緒になろうとしているなんて、そんなのおかしいわ」
ラファエルからすれば、酷い裏切り行為だ。イリスだって逆のことをされたらとても悲しいし、許せない。たとえそれが彼の意思ではなく、両親の差し金だったとしても。
「説明して、お母さま」
イリスは正面から母にぶつかった。何か事情があるのなら、隠さないで伝えて欲しい。
どこまでも真剣な気持ちで訴えかけたのだが、マリエットの態度はやはりどこか軽々しく、子猫を相手にするようなものであった。
「イリス。たしかにあなたとラファエルは婚約しているわ。幼い頃、ラファエルのお父様であるデュラン伯爵と、あなたのお父様の間で、歳が近いから、一応婚約を交わしておくという内容でね」
「一応?」
では正式には結んでないのかとイリスが問えば、マリエットはそれもちょっと違うと答えた。
「あなたたちが婚約者同士であることは間違いないわ。書類にもきちんと残されているから。でもそれは別に破棄しても構わないの」
「わからないわ、お母さま」
「効力は弱いってこと。それほど真剣に捉える必要はないのよ、イリス。だってまだ幼い頃に結んだ約束なんですもの」
「でも! わたしとラファエルはずっと本気だったわ!」
「あなたたちはまだ小さな子どもだった。大きくなればそれぞれ自我を持って、趣味趣向だって変わる。好きな人だって、当然変わる可能性がある。私たち大人はそう考えているのよ」
でも、とイリスは必死で反論する。
「もうわたしたちは子どもじゃないでしょう? ラファエルだって騎士になって、わたしだって社交界デビューしたわ。もう大人の仲間でしょう?」
「ふふ。私たちからすれば、あなたはまだまだ危なっかしい娘のままよ?」
「揶揄うのはやめて。お母さまがそんなふうに言ったって、わたしもラファエルも、簡単に諦めきれる想いじゃないの」
あの時からずっと、イリスはラファエルが好きだ。
けれど母は全てまやかしだというように薄く微笑むだけだ。
「イリス。あなたの気持ちもわかるわ。ラファエルはすてきな人よね。ずっと好きだった相手だもの。結ばれたいって思うのは当然よね。でもね、結婚してしまったらもう二度と後戻りはできないのよ。もう一度よく考えみて欲しいの。苦労するのも、後悔するのも、あなたの人生にすべて跳ね返ってくるんですからね」
後悔なんてしない。
イリスはそう答えようとしたけれど、母の口調がその時だけやけに真剣だったので、何も言えず黙り込んでしまう。
「デュラン伯爵も最初からそのつもりでこのお話を受けてくれたの。もともと向こうは我が家より一段劣る家柄ですもの。たとえあなたが別の殿方と結ばれようと、何も文句は言わないはずよ」
「……けれど、信頼は裏切るのではなくて?」
「そうね。でも可愛い一人娘の幸せのためだもの。向こうだって子どもがいる身。伯爵だって息子のラファエルには幸せになって欲しいと思っているはず。それが親だもの。だから最後には理解してくれるはずよ」
イリス、とマリエットが俯く娘の顔を上げさせ、優しい口調で語りかけてくる。
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いつもは少女のような可憐なマリエットが初めて母親らしい表情でそう言ったので、イリスはそれ以上強く言い返すことができなかった。
母の言葉は幸せに浸っていたイリスをあっという間に現実へと引き戻した。
(結婚するって決まっていても、実際にどうこうする話っていうのはまだ決まっていないのよね……)
とりあえず社交界が終わってから、とイリスは漠然と思っていたが、両親の思惑では社交界でラファエル以外の男性と出会わせるつもりだったのかもしれない。
(だからって王太子殿下とどうこうなることを期待するなんて……)
いくら何でもあり得ないとイリスは思った。
(お茶会、どうしても行かないといけないかしら……)
体調不良を理由に欠席しようか。しかし嘘をつくのは良心が咎める。ベルティーユもせっかく誘ってくれたのに断るなんて……そもそも断ることなど許されるのだろうか。
(やっぱり、参加するしかないよね……)
はぁ、とため息をつく。結婚したら今よりずっと人との付き合いは増えるだろう。これくらいで根を上げていたらとてもやっていける気がしない。そうはわかっていても、やはり気が重いのは重い。
(どうしよう……あら、)
もう一度手紙を読み直していると、イリスはあることに気づき、じっくりとその箇所を眺めた。
(そうだわ。一人がだめならせめて……)
イリスは執事を呼び、調べて欲しい人がいると頼んだ。
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