14 / 47
14、駆け落ち
しおりを挟む
自分は処刑されるかもしれない。冷たい地下室の牢に閉じ込められ、食事もろくに与えられず衰弱死していく運命か……覚悟していたヴェロニカだが、意外にも首の治療を施され、これまでと同じように客人の扱いを受けた。ただ部屋は家具がほとんど置かれていない簡素な場所へと替えられた。それでも一人で過ごすには十分すぎる広さであることに変わりはなかったが。
他に変わったことと言えば、部屋にはいつも一人以上の見張りがつき、刃物や傷つける類のものは一切目に触れさせない、室内に持ち込まないよう決めたことだろう。鍵ももちろんかけられた。
「窓には鉄格子がはめられておりますので」
夜の支度をした時と同じ侍女がそう釘を刺した。飛び降りて逃げることも――死ぬことも叶わないから騒ぎを起こすな、という忠告である。
(諦めるものですか)
ジュリアンが会いに来たらまた脅してやる。ヴェロニカはそう思って今か今かと息を潜めて彼の訪れを待ったが、あの夜以来彼は会いに来ない。
(私が怖くなったのかしら)
それならそれで早く解放しろと怒りが湧いてくる。なぜ子どもたちに会えない。夫と引き離す。
(いっそのこと逃げ出そうかしら……)
鍵をかける瞬間、侍女の目を掻い潜って部屋を抜け出す。一度くらいは可能かもしれない。だがそれからどうする。ヴェロニカは王宮の構造をほぼ知らない。やみくもに逃げ出してもすぐに捕えられる。そして今度こそ地下牢に放り込まれるかもしれない。
(せめてハロルドと合流できれば……)
彼のことだからきっとヴェロニカを取り返そうと頭を働かせているはずだ。子どもたちにも頼りになる乳母や使用人たちがついている。
(だからきっと、大丈夫)
それでもヴェロニカは不安を拭いきれなかった。じわじわと足元から不安が絡みついてきて全身を飲み込んでしまいそうな恐怖があった。
数日が経過した。
朝食を済ませたヴェロニカのもとへジュリアンはふらりと足を運んだ。ヴェロニカにとっては突然の訪問だったので、少しばかり焦って緊張もしたが、ようやく来たかという怒りが勝って堂々と迎えた。
「ようこそいらっしゃいました、陛下」
ジュリアンはヴェロニカの首に巻かれた白い包帯に目をやりながら言った。
「傷の具合はもういいのか」
「あら、心配して下さりますの?」
おまえのせいで怪我したのに、というヴェロニカの嫌味が聞こえたのだろう。ジュリアンは苦々しい表情を浮かべた。
「そなたは魔女ではなく、女騎士……いや、嫉妬深い女神のようだ」
神々の愛は人間よりもずっと深く、それゆえ一度間違いを犯せば、死よりも恐ろしい報復が待っている。神話の話を持ち出すあたり、やはり高貴なお人なのだなと思った。
「まぁ、女神のように美しいなんて照れてしまいますわ」
「その図太い神経は称賛に値するな」
ジュリアンはじろじろとヴェロニカを見ながら離れた場所に腰を下ろす。彼の方が自分から距離をとろうとして、彼女はおかしく思う。
「陛下。私のこと、もう嫌気が差したでしょう? ね、こんな面倒な女、早く捨てて下さい」
「私を退けたことで勝ったつもりか? 思い上がるなよ。おまえのような人間、どうとでもできる」
おまえ、という見下した呼び名になっている。怒りを露わにする王は確かに迫力があったが、ヴェロニカの目にはどこか子どもの癇癪のように映った。
「そうですか。では私も教えて差し上げます。人間、死のうと思えばどんな方法でも死ねますわ」
「またナイフでも取り出して私を脅すのか? だがもうそんなものはないはずだ」
ヴェロニカは微笑む。
「ええ、あなたの優秀な臣下たちが食事の時もスプーンしか差し出してくれず、食べ終わった後も何か隠していないかその都度私の身体を確かめますもの。だから今、私は何も持っておりませんわ」
お調べになりますか、というように両手を広げれば、やめろというようにジュリアンが眉根を寄せる。
「ふん。ならばやはり無理ではないか」
「でもね、陛下。別に凶器がなくったって、あの世へ逝くことはできるわ。例えば、私が壁に思い切り頭をぶつけるとか。何度もぶつければ、さすがに頭の中がびっくりして、美しい天使さまが迎えに来てくれるとは思いませんか? 陛下はどう思う……あら、そんな目をしてどうなされたんですか」
まるで気でも狂ったかと言いたげな目でジュリアンはヴェロニカを見つめた。さすがに彼もひいたらしい。
「そこまでして私に抱かれたくないのか」
「当たり前です」
ジュリアンの言葉にヴェロニカはスッと笑みを消して答えた。
「あなたがやっていることはただの強姦だわ。平民ならば死刑よ」
ずけずけ物を言うヴェロニカに護衛として付き添っている騎士が咎めるように鋭い視線を投げやった。ヴェロニカの言い方こそが不敬であり、死刑にあたる可能性があった。
けれど彼女は腹が立って仕方がなかったのだ。
(王様だからって何だというの?)
「ははっ、夫がいる身の女を襲った私は重罪人か」
「そうよ」
ジュリアンはきっぱりと言い切ったヴェロニカを見つめる。
「ではカトリーナは? 他に妻がいる男の子種をもらって子を産んだ。そんな女も、そなたは汚らわしいと思うのか?」
「カトリーナ様は、違うでしょう」
「なぜ」
「なぜって……カトリーナ様はそれがお役目だから」
彼女が結婚したのは、家の都合だ。彼女自身の意思ではない。ジュリアンの血を引いた子どもはこの国にとって必要であり、その役目を果たすためにカトリーナが選ばれた。
「そうか。ではカトリーナが私以外の男に抱かれたらどうだ」
ジュリアン以外の男。
彼の言葉に、二人の空気が変わった。
「……それはどういう意味かしら」
「カトリーナが私ではなく、ハロルドに抱かれたらどうなるんだ」
そんなことあの人は絶対しない!
ヴェロニカは全身が沸騰したように熱く、頭の中は真っ白になった。
こんなことをたずねるジュリアンを強く睨まなければ、とても正気を保っていられなかっただろう。
「……そうね。そうしたらやっぱり妻を裏切ったわけですから、大罪人でしょうね」
必死で冷静な声を出す。
「ふうん。だがハロルドはもうそなたの夫ではないのだから、何も問題はないのではないか」
「私は今でもあの人の妻よ。これからもずっと」
「そうか。まぁ、どちらにせよハロルドはカトリーナへの想いを遂げてしまうだろうな」
「彼はそんなことしない!」
とうとう我慢しきれず、大声で否定したヴェロニカをジュリアンが罠にかかったなというように口の端を上げた。
「ほう。なぜそんなこと言える」
「あの人は真面目で高潔な人だわ。私がいて、子どももいるのに、そんな不道徳なことしない!」
「ずいぶんハロルドに対して立派な理想を抱いているんだな。だがあいつも男だぞ? 美しい女がそばにいれば、理性を抑えきれなくなるのではないか?」
「やめて。あなたがあの人の何を知っているというの? あなたはそうかもしれないけれど、あの人は違う。あなたみたいな人と一緒にしないで!」
言ってしまってハッとする。
ジュリアンは冷え冷えとした目でヴェロニカの癇癪を眺めていた。
「あ、陛下。私……」
「私が何を知っているか、か……確かにそうだな。私はおまえの前で振る舞うハロルドを知らない。おまえしか見ることのできないやつの姿があるんだろう」
「そ、そうです。だから、」
「ではおまえは知っているのか。私やおまえにも見せぬ、カトリーナの前でしか見せぬあいつの姿を」
『カトリーナはそなたのことをずっと愛しているのだ』
「そなたも薄々わかっていたのではないか? ハロルドの心に他の誰かが図々しくも居座っていること」
「……」
わからない、と言うべきであったが、ヴェロニカは何も言えず黙り込んでしまった。
ジュリアンの指摘は、ヴェロニカがずっと思い悩んでいたことだからだ。
確実な証拠はなかった。ハロルドは結婚してからずっとヴェロニカに対して優しく、誠実な夫であった。父親になってからはますます家族を大切にし、軽率な行動はとらないよう常に自分を律していた。それは一番近くにいたヴェロニカが誰よりもわかっていた。
――けれど、だからこそ彼が時々何かを――誰かのことを考えるように物思いに耽る姿が気になった。それは常に彼が一人の時であり、ヴェロニカや子どもたちの前では決して見せぬ姿であったが、彼を深く愛するヴェロニカはいつの頃からか気づいてしまった。
「知っているか? カトリーナとハロルドは幼い頃からの付き合いで、私のもとへ嫁ぐ以前から、ずいぶんと親しくしていたそうだ」
(ただの顔見知りだとおっしゃったのに……)
何でもない、とあんなにはっきりとヴェロニカの目を見て言ってくれたのに。本当のことを言ってくれなかったのは、隠したいことがあったからなのか。ハロルドが好きだったという気持ちを。
(でも……)
「ただの、幼い頃でしょう? そんなの、誰にだってあるわ……」
カトリーナの家は過去降嫁した王族の血も引いている大貴族だ。同じ貴族だとはいえ、ハロルドとは埋められない身分差がある。淡い初恋があっても、しだいにお互いの立場を意識して自然と消えていく想いなのではないか。
(そうよ。それくらい、別に……)
大切なのは――
「私との結婚が正式に決まった時、カトリーナはハロルドに自分と駆け落ちしてくれるよう頼んだそうだぞ」
『私とカトリーナ様の間に、やましい関係は一切ありませんでした』
ハロルドの声がまざまざと蘇るようだった。
(うそ、だったの……?)
ジュリアンはヴェロニカの言葉も出ない様子に満足したのか、帰って行った。また来る、と言い残して。
他に変わったことと言えば、部屋にはいつも一人以上の見張りがつき、刃物や傷つける類のものは一切目に触れさせない、室内に持ち込まないよう決めたことだろう。鍵ももちろんかけられた。
「窓には鉄格子がはめられておりますので」
夜の支度をした時と同じ侍女がそう釘を刺した。飛び降りて逃げることも――死ぬことも叶わないから騒ぎを起こすな、という忠告である。
(諦めるものですか)
ジュリアンが会いに来たらまた脅してやる。ヴェロニカはそう思って今か今かと息を潜めて彼の訪れを待ったが、あの夜以来彼は会いに来ない。
(私が怖くなったのかしら)
それならそれで早く解放しろと怒りが湧いてくる。なぜ子どもたちに会えない。夫と引き離す。
(いっそのこと逃げ出そうかしら……)
鍵をかける瞬間、侍女の目を掻い潜って部屋を抜け出す。一度くらいは可能かもしれない。だがそれからどうする。ヴェロニカは王宮の構造をほぼ知らない。やみくもに逃げ出してもすぐに捕えられる。そして今度こそ地下牢に放り込まれるかもしれない。
(せめてハロルドと合流できれば……)
彼のことだからきっとヴェロニカを取り返そうと頭を働かせているはずだ。子どもたちにも頼りになる乳母や使用人たちがついている。
(だからきっと、大丈夫)
それでもヴェロニカは不安を拭いきれなかった。じわじわと足元から不安が絡みついてきて全身を飲み込んでしまいそうな恐怖があった。
数日が経過した。
朝食を済ませたヴェロニカのもとへジュリアンはふらりと足を運んだ。ヴェロニカにとっては突然の訪問だったので、少しばかり焦って緊張もしたが、ようやく来たかという怒りが勝って堂々と迎えた。
「ようこそいらっしゃいました、陛下」
ジュリアンはヴェロニカの首に巻かれた白い包帯に目をやりながら言った。
「傷の具合はもういいのか」
「あら、心配して下さりますの?」
おまえのせいで怪我したのに、というヴェロニカの嫌味が聞こえたのだろう。ジュリアンは苦々しい表情を浮かべた。
「そなたは魔女ではなく、女騎士……いや、嫉妬深い女神のようだ」
神々の愛は人間よりもずっと深く、それゆえ一度間違いを犯せば、死よりも恐ろしい報復が待っている。神話の話を持ち出すあたり、やはり高貴なお人なのだなと思った。
「まぁ、女神のように美しいなんて照れてしまいますわ」
「その図太い神経は称賛に値するな」
ジュリアンはじろじろとヴェロニカを見ながら離れた場所に腰を下ろす。彼の方が自分から距離をとろうとして、彼女はおかしく思う。
「陛下。私のこと、もう嫌気が差したでしょう? ね、こんな面倒な女、早く捨てて下さい」
「私を退けたことで勝ったつもりか? 思い上がるなよ。おまえのような人間、どうとでもできる」
おまえ、という見下した呼び名になっている。怒りを露わにする王は確かに迫力があったが、ヴェロニカの目にはどこか子どもの癇癪のように映った。
「そうですか。では私も教えて差し上げます。人間、死のうと思えばどんな方法でも死ねますわ」
「またナイフでも取り出して私を脅すのか? だがもうそんなものはないはずだ」
ヴェロニカは微笑む。
「ええ、あなたの優秀な臣下たちが食事の時もスプーンしか差し出してくれず、食べ終わった後も何か隠していないかその都度私の身体を確かめますもの。だから今、私は何も持っておりませんわ」
お調べになりますか、というように両手を広げれば、やめろというようにジュリアンが眉根を寄せる。
「ふん。ならばやはり無理ではないか」
「でもね、陛下。別に凶器がなくったって、あの世へ逝くことはできるわ。例えば、私が壁に思い切り頭をぶつけるとか。何度もぶつければ、さすがに頭の中がびっくりして、美しい天使さまが迎えに来てくれるとは思いませんか? 陛下はどう思う……あら、そんな目をしてどうなされたんですか」
まるで気でも狂ったかと言いたげな目でジュリアンはヴェロニカを見つめた。さすがに彼もひいたらしい。
「そこまでして私に抱かれたくないのか」
「当たり前です」
ジュリアンの言葉にヴェロニカはスッと笑みを消して答えた。
「あなたがやっていることはただの強姦だわ。平民ならば死刑よ」
ずけずけ物を言うヴェロニカに護衛として付き添っている騎士が咎めるように鋭い視線を投げやった。ヴェロニカの言い方こそが不敬であり、死刑にあたる可能性があった。
けれど彼女は腹が立って仕方がなかったのだ。
(王様だからって何だというの?)
「ははっ、夫がいる身の女を襲った私は重罪人か」
「そうよ」
ジュリアンはきっぱりと言い切ったヴェロニカを見つめる。
「ではカトリーナは? 他に妻がいる男の子種をもらって子を産んだ。そんな女も、そなたは汚らわしいと思うのか?」
「カトリーナ様は、違うでしょう」
「なぜ」
「なぜって……カトリーナ様はそれがお役目だから」
彼女が結婚したのは、家の都合だ。彼女自身の意思ではない。ジュリアンの血を引いた子どもはこの国にとって必要であり、その役目を果たすためにカトリーナが選ばれた。
「そうか。ではカトリーナが私以外の男に抱かれたらどうだ」
ジュリアン以外の男。
彼の言葉に、二人の空気が変わった。
「……それはどういう意味かしら」
「カトリーナが私ではなく、ハロルドに抱かれたらどうなるんだ」
そんなことあの人は絶対しない!
ヴェロニカは全身が沸騰したように熱く、頭の中は真っ白になった。
こんなことをたずねるジュリアンを強く睨まなければ、とても正気を保っていられなかっただろう。
「……そうね。そうしたらやっぱり妻を裏切ったわけですから、大罪人でしょうね」
必死で冷静な声を出す。
「ふうん。だがハロルドはもうそなたの夫ではないのだから、何も問題はないのではないか」
「私は今でもあの人の妻よ。これからもずっと」
「そうか。まぁ、どちらにせよハロルドはカトリーナへの想いを遂げてしまうだろうな」
「彼はそんなことしない!」
とうとう我慢しきれず、大声で否定したヴェロニカをジュリアンが罠にかかったなというように口の端を上げた。
「ほう。なぜそんなこと言える」
「あの人は真面目で高潔な人だわ。私がいて、子どももいるのに、そんな不道徳なことしない!」
「ずいぶんハロルドに対して立派な理想を抱いているんだな。だがあいつも男だぞ? 美しい女がそばにいれば、理性を抑えきれなくなるのではないか?」
「やめて。あなたがあの人の何を知っているというの? あなたはそうかもしれないけれど、あの人は違う。あなたみたいな人と一緒にしないで!」
言ってしまってハッとする。
ジュリアンは冷え冷えとした目でヴェロニカの癇癪を眺めていた。
「あ、陛下。私……」
「私が何を知っているか、か……確かにそうだな。私はおまえの前で振る舞うハロルドを知らない。おまえしか見ることのできないやつの姿があるんだろう」
「そ、そうです。だから、」
「ではおまえは知っているのか。私やおまえにも見せぬ、カトリーナの前でしか見せぬあいつの姿を」
『カトリーナはそなたのことをずっと愛しているのだ』
「そなたも薄々わかっていたのではないか? ハロルドの心に他の誰かが図々しくも居座っていること」
「……」
わからない、と言うべきであったが、ヴェロニカは何も言えず黙り込んでしまった。
ジュリアンの指摘は、ヴェロニカがずっと思い悩んでいたことだからだ。
確実な証拠はなかった。ハロルドは結婚してからずっとヴェロニカに対して優しく、誠実な夫であった。父親になってからはますます家族を大切にし、軽率な行動はとらないよう常に自分を律していた。それは一番近くにいたヴェロニカが誰よりもわかっていた。
――けれど、だからこそ彼が時々何かを――誰かのことを考えるように物思いに耽る姿が気になった。それは常に彼が一人の時であり、ヴェロニカや子どもたちの前では決して見せぬ姿であったが、彼を深く愛するヴェロニカはいつの頃からか気づいてしまった。
「知っているか? カトリーナとハロルドは幼い頃からの付き合いで、私のもとへ嫁ぐ以前から、ずいぶんと親しくしていたそうだ」
(ただの顔見知りだとおっしゃったのに……)
何でもない、とあんなにはっきりとヴェロニカの目を見て言ってくれたのに。本当のことを言ってくれなかったのは、隠したいことがあったからなのか。ハロルドが好きだったという気持ちを。
(でも……)
「ただの、幼い頃でしょう? そんなの、誰にだってあるわ……」
カトリーナの家は過去降嫁した王族の血も引いている大貴族だ。同じ貴族だとはいえ、ハロルドとは埋められない身分差がある。淡い初恋があっても、しだいにお互いの立場を意識して自然と消えていく想いなのではないか。
(そうよ。それくらい、別に……)
大切なのは――
「私との結婚が正式に決まった時、カトリーナはハロルドに自分と駆け落ちしてくれるよう頼んだそうだぞ」
『私とカトリーナ様の間に、やましい関係は一切ありませんでした』
ハロルドの声がまざまざと蘇るようだった。
(うそ、だったの……?)
ジュリアンはヴェロニカの言葉も出ない様子に満足したのか、帰って行った。また来る、と言い残して。
175
お気に入りに追加
1,081
あなたにおすすめの小説
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲


【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。

だってわたくし、悪女ですもの
さくたろう
恋愛
妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。
しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。
小説家になろう様にも投稿しています。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる