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仲睦まじい姿*
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リュシエンヌは積極的にランスロットと国の公式行事に参加し、民にも二人の仲を覚えさせた。姫と騎士という組み合わせは民衆の心をくすぐり、特に年頃の娘たちは二人の関係に憧れを抱いていく。
そうして二年の婚約期間を終え、とうとう結婚することとなったが、結婚式は国民の関心を大いに集め、それはもう盛大に執り行われた。
「姫様! ご結婚おめでとうございます!」
「騎士様とどうかお幸せに!」
リュシエンヌたちの姿を一目見ようと、大聖堂の前まで大勢の人だかりができていた。
好奇の眼差しにリュシエンヌは臆することなく、笑みを浮かべてランスロットと共に祝福された。二頭立ての白い四輪馬車で街を回り、目についた人々に手を振れば、割れんばかりの歓声が湧き起こった。
中には「女神アリアーヌ様に幸あれ!」という言葉もあり、それを一緒に聞いていたランスロットの顔は少し曇った。
「――姫様は姫様なのに」
「本当は全然違うのにね」
長い長い一日が終わり、二人はようやく寝室で一息つくことができた。
ランスロットは昼間の言葉が気になるのか、珍しく愚痴を零している。
「本当ですよ。姫様は俺だけの奥方だというのに」
「怒るところはそこなの?」
「ええ、大事なところです。女神さまにだって、愛する夫がいるんですから。一緒にしては失礼です」
(愛する夫、か……)
アリアーヌはノワール帝国の皇女であった。政略結婚で大公のもとへ嫁ぎながら、彼を深く愛し、次の皇帝となった兄の命令にも背き、セレスト公国を守る道を選んだ。
『愚かで、救いようがない女だった』
不意にギュスターヴの言葉が蘇り、ぞくりとする。
「姫様?」
ランスロットが具合でも悪いのかと顔を覗き込んでくる。
「ううん。何でもない。いろいろあって、疲れてしまっただけ」
「大勢の人間に囲まれましたからね。俺も今日はさすがに緊張しました。……お疲れなら、今日はもう休みましょうか」
「……ううん。まだ、大丈夫」
寝台に腰かけるランスロットのシャツを、リュシエンヌは俯きながら掴んだ。
沈黙が落ちて、やがて「いいんですか」と静かに問いかける声があった。
「これから行うことは、姫様のお身体に負担をかけることになります。無理なさらず明日でも――」
「いいの」
リュシエンヌは顔を上げ、恥ずかしかったがきちんと伝えた。
「痛くても、辛くても、いいの。あなたと結ばれる日を、ずっと待ち望んでいたから……」
「姫様……」
ランスロットの温かな掌が頬へ触れ、顔が近づく。リュシエンヌは目を閉じて、口づけを交わした。言葉はなく、ただ夢中で唇を重ね、舌を絡めていくうちに、ゆっくりとランスロットが寝台に押し倒し、首筋に顔を埋めたり、目に焼きつけるようにリュシエンヌの顔を見つめてきて、もう一度深く口づけした。
そうしてリュシエンヌを床に寝かせたまま、夜着の釦に手をかける。じっと指先を見ていれば、微かに震えていることに気づいた。……もしかすると、一度目も同じだったかもしれない。
時間をかけてすべての布を剥ぎ取ると、彼は感嘆のため息を漏らした。部屋の灯りは明るく、消してくれと頼まなかったので、リュシエンヌの裸体は余すところなくランスロットの視線に晒された。
恥ずかしい気持ちはあったが、それでも手で隠すことはしなかった。
どれくらい時間が過ぎたか。やがて彼が壊れ物にでも触れるかのように恐る恐る触ろうとしたところで、リュシエンヌはその手を取り、身を起こした。
「姫様?」
「……あなたのも、脱がせたい」
ランスロットは数秒、驚きに時間を要した。リュシエンヌは、自分の裸を見たいと言っているのだ。
「怖く、ありませんか?」
こくりと小さく頷き、リュシエンヌはランスロットのシャツに手をかけた。
彼がかけた時間と同じくらい慎重に前を肌蹴させ、目を逸らさず彼の上半身を見た。筋肉がついていて、硬そうだなと思った。
「触っても、いい?」
迷いながらもそう尋ねれば、ランスロットはふっと微笑んだ。
「ええ。どうぞ」
リュシエンヌは恐る恐る触れて、意外にも柔らかい感触に驚きながら、そのまま下へと手を下ろしていった。そして今度は下を脱がせようとしたが、さすがに一人では難しかったので、腰を浮かせてランスロットにも手伝ってもらった。彼はリュシエンヌの行動に恐らくいろいろ疑問は抱いているのだろうが、黙って好きにさせてくれた。
「あ……」
下穿きを寛げると、ぼろんと大きな肉棒が飛び出たので、リュシエンヌは戸惑った。とっさにランスロットを見れば、彼はじっと何か言いたげに自分を見つめている。
その意を汲むようにリュシエンヌは彼の雄に触れた。指先が触れるだけで、彼の竿は生き物のようにぴくんと動いたので、リュシエンヌは驚いてしまう。
「もう終わりですか?」
面白がるような響きを含ませて、ランスロットが問いかける。
「もっと、触ってもいいの?」
「ええ。……たくさん、触れてください」
リュシエンヌは肉棒を支えるように両手で包み込んだ。……しかし、ここからどうしていいかわからない。目線で問えば、ランスロットは自分の手をリュシエンヌの上から重ね、上下に扱いていく。
肉棒はどんどん硬くなり、先端から透明な液体を零していた。あまりにも強く擦っているので、リュシエンヌはなんだか不安になってくる。
「ランスロット、痛くない?」
「まさか……。すごく、いい……。姫様が俺のを、はぁ……すみません。こんなこと、貴女にさせて……」
射精の気配が近づいてきているのか、ランスロットの息は上がっていく。その様子を間近で見せられ、また自分の手で導いていると思えば、リュシエンヌは首を横に振っていた。
「いいの。気持ちよく、なって……」
「くっ、姫様……っ」
生温かい液体が掌に出され、リュシエンヌはランスロットに強く抱き寄せられた。乱れた呼吸が整ってくると、今度はランスロットに触っていいかどうか尋ねられる。
リュシエンヌは頬を赤らめながらも頷き、膝をついた状態で、彼の手が自分の胸を揉み、脚の付け根の先を撫でられていくのを見ていた。時々互いに目が合えば、顔を寄せ、激しく唇を貪られる。
(はぁ……きもちいい……)
舌先を吸われると、全身が痺れたように力が抜けて、蜜壺からとろとろと蜜を零してしまう。花びらを割ってかき出すように音を鳴らされていくうちに、リュシエンヌの身体はじっとしていられず、ぶるぶると震え始める。
「はぁ、ぁ……っ、ランスロットっ」
「大丈夫、そのまま……」
ランスロットにしがみつき、彼の指をきゅうっと咥えた。
抱きしめられた形で髪や背中を撫でられ、ゆっくりと身体が寝台へ沈んでいく。膝を左右に大きく開かされ、驚く間もなく秘所に顔を埋められ、花芯や蕾を舐められていく。
「ぁっ……ん……っ、んんっ……あっ、あぁっ……」
悩ましい声を上げながらリュシエンヌは枕やシーツを掴み、決してランスロットの邪魔はしなかった。彼が与えてくれる快楽を素直に享受し、とめどなく愛液を溢れさせ、尻を浮かせて高みに昇った。
「はぁ……はぁ……」
何度か気をやって、ようやくランスロットが身を起こした。
心ゆくまでリュシエンヌの蜜を啜って満足したかと思えば、ランスロットはまだやめる気配はなく、むしろますます飢えた表情をしてリュシエンヌの秘所に自分の昂りを擦りつけてきた。
「姫様、いいですか?」
「ええ。きて……」
四度目の人生、ランスロットに処女を捧げるのは三度目だった。何度経験しても、どれほど丁寧な愛撫で身体を蕩かされても、貫かれる時はやはり痛みを覚えた。
でもこの痛みが、幻でも夢でもなく、生きていることを――愛する人と一つになれたことを伝えてくれる。互いの体温を感じ、肌が触れ合う度に愛おしさが生まれてくる。
「ランスロット、好き……」
目を潤ませながら、リュシエンヌはランスロットに溢れる気持ちを口にする。
「あなたが大好き……。愛しているわ」
ランスロットは微かに目を瞠った後、泣きそうな顔で微笑んでキスを落とし、耳元で「俺も」と囁いた。
「貴女が好きだ。貴女だけをずっと、愛している」
その言葉が嬉しくてリュシエンヌが微笑めば、彼も笑みを返し、抱きしめてくれた。
◇
蜜月を過ごし、晴れてランスロットの妻となったリュシエンヌは再び公務に励むようになった。
(一通り手紙のお返事は書き終ったし、ランスロットを迎えに行こうかしら)
彼がいる場所は騎士たちが鍛錬する訓練場だ。
ランスロットはそこで、剣の稽古をつけてもらっている。もともとリュシエンヌの護衛を任されているとあって腕もあり、鍛錬も欠かさず行っていたのだが、結婚して何か思うところがあったのか、以前よりも練習量を増やしていた。
リュシエンヌはランスロットがしたいことをしてほしいと思っているので、そっと見守っている。
そしていつも彼の方から自分のもとへ来させているので(護衛なので当然と言えば当然なのだが)、たまには自分から彼に会いに行って驚かせてやろうと、ランスロットの代わりに宛がわれた騎士と侍女を伴って訓練場へ向かった。
(あ、いた)
ランスロットの姿はすぐにわかった。
なぜなら彼は他の騎士たちに囲まれ、一番注目の的だったからだ。
ランスロットと一人の騎士が、激しい剣戟を繰り広げていた。
「まぁ、なんて激しいこと……」
付き添っていた侍女がはらはらした様子で口元を覆えば、一緒にいる護衛の騎士が説明する。
「本物の剣ではなく木刀ですので、大丈夫ですよ」
「そう言いますけれど、やはり見ていてひやひやしますわ。姫様は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ」
全く心配ないというわけではなかったが、リュシエンヌはこれまでの人生で本気で命を奪う戦いを実際に目にしてきた。それらと比べれば、木刀での戦闘はどこか余裕を持って見ることができる。
(でもすごい迫力……)
素人であるリュシエンヌの目からは、剣劇を見ているような流麗さがあった。
息の合った呼吸で身体を引き、剣を前へ突き出し、一体どこに隙があるのかと問いたくなる。
だがそれは剣を手にして戦ったことのないリュシエンヌの感想であり、剣術に通じている者からすれば、見え方が違うようだ。
おお、という歓声が上がった所で、ランスロットが相手の喉元に剣先を向けていた。
「いいぞランスロット! あと一本!」
「先輩頑張ってください! 俺の今夜の晩飯がかかっているんです!」
「そうだぞ! こっちは明日の分までかかってるんだ!」
「おまえら! ランスロットばかりにベットして、俺に賭けてるやつはいないのか! というか、そもそも騎士が賭け事をするな!」
ランスロットの対戦相手が腹を立てて言い返す。それまでの真剣な雰囲気が霧散し、ランスロットも剣を下げて笑った様子で何か言い返していた。
(ランスロットってば、人気者なのね……)
賭け事の対象にされて怒る騎士たちのやり取りを目にしながらリュシエンヌがそんなことを思っていると、ふとぱちりとランスロットと目が合った。
「姫様!」
破顔した彼はリュシエンヌに向かって大きく手を上げた。周りの騎士たちも一斉にこちらを見たので気まずい思いをするが、堂々としていていいと以前訪れた時ランスロットに言われたので、にこやかな笑みを作って胸の前で小さく振り返す。
「すみません。わざわざこんな所までご足労いただいて」
「いいの。わたしがここへ来たかったのだから」
駆け寄ってきたランスロットは、リュシエンヌの言葉を聞いて笑った。
「姫様も物好きですね。こんなむさ苦しい場所に来たいだなんて」
それはランスロットがいるからであり、彼に会うことが目当てなのだが……リュシエンヌは特に言及せず、彼の後ろにいる騎士たちに向かって微笑んだ。
「こんにちは。邪魔をしてしまって、ごめんなさいね」
「いいえそんな! むしろこちらこそ変な場面を公女殿下にお見せしてしまって……」
「あの、決して毎回こんなことをしているわけではないんですよ?」
「そうです。普段は真面目に稽古しておりまして……」
どうやら大公の娘に騎士としては相応しくない場面を見られたことでまずいと思ったようだ。
「ええ、もちろんよくわかっています」
彼らはセレスト公国の平和を担っている。有事の際には、一番力を求められるのが彼らの仕事だ。
「あなた方のおかげで我が国の平和が守られているのです。深く感謝しております。……いつもありがとう」
そう言ってはにかむように微笑めば、騎士たちはみなポカンとした顔を晒した。ランスロットが近くにいた騎士の肩をがばりと組み、快活に言い放った。
「だそうだ。よかったな、みんな。我らが姫様に最上級のお褒めの言葉をいただけて」
「お、おお……」
ランスロットの言葉を皮切りに騎士たちは照れ臭そうに微笑んで、お礼を述べてきた。
「リュシエンヌ様にそう言っていただけると、我らも誇らしいです」
「これからもセレスト公国のために忠誠を誓います」
「ありがとう。頼りにしています」
そんなやり取りをした後、リュシエンヌはランスロットを連れて訓練場を後にした。彼は汗臭くないかどうかしきりに気にしていたが、リュシエンヌは大丈夫よと笑った。
「それより、やっぱりあんまり頻繁に来ない方がいいかしら」
「いやいや構いませんよ。むしろ公女殿下自ら足を運んで労いの言葉をかけてもらえれば、彼らの士気も上がります」
「そう? なら、いいのだけれど……」
「はい。姫様さえよろしければ、またお越しください。俺も、我が愛しの妻を自慢したいんで」
「もう。またそんなこと言って」
「冗談ではありません。心の底から申し上げております」
口調は軽かったが、眼差しはどこまでも優しかった。リュシエンヌは少し恥ずかしげに俯き、昨夜夕食の時に出た話題を口にする。
「昨日、新婚旅行のことをお父様たちに聞かれたでしょう?」
「はい。俺は姫様と一緒ならば、国内でも、どこでも構いませんよ」
「なら……」
近隣諸国へ行こう、と提案すれば、さすがに意外だったのかランスロットは目を丸くした。しかしすぐに心得たようにニッと微笑んで、「いいですね」と言ってくれた。
そうして二年の婚約期間を終え、とうとう結婚することとなったが、結婚式は国民の関心を大いに集め、それはもう盛大に執り行われた。
「姫様! ご結婚おめでとうございます!」
「騎士様とどうかお幸せに!」
リュシエンヌたちの姿を一目見ようと、大聖堂の前まで大勢の人だかりができていた。
好奇の眼差しにリュシエンヌは臆することなく、笑みを浮かべてランスロットと共に祝福された。二頭立ての白い四輪馬車で街を回り、目についた人々に手を振れば、割れんばかりの歓声が湧き起こった。
中には「女神アリアーヌ様に幸あれ!」という言葉もあり、それを一緒に聞いていたランスロットの顔は少し曇った。
「――姫様は姫様なのに」
「本当は全然違うのにね」
長い長い一日が終わり、二人はようやく寝室で一息つくことができた。
ランスロットは昼間の言葉が気になるのか、珍しく愚痴を零している。
「本当ですよ。姫様は俺だけの奥方だというのに」
「怒るところはそこなの?」
「ええ、大事なところです。女神さまにだって、愛する夫がいるんですから。一緒にしては失礼です」
(愛する夫、か……)
アリアーヌはノワール帝国の皇女であった。政略結婚で大公のもとへ嫁ぎながら、彼を深く愛し、次の皇帝となった兄の命令にも背き、セレスト公国を守る道を選んだ。
『愚かで、救いようがない女だった』
不意にギュスターヴの言葉が蘇り、ぞくりとする。
「姫様?」
ランスロットが具合でも悪いのかと顔を覗き込んでくる。
「ううん。何でもない。いろいろあって、疲れてしまっただけ」
「大勢の人間に囲まれましたからね。俺も今日はさすがに緊張しました。……お疲れなら、今日はもう休みましょうか」
「……ううん。まだ、大丈夫」
寝台に腰かけるランスロットのシャツを、リュシエンヌは俯きながら掴んだ。
沈黙が落ちて、やがて「いいんですか」と静かに問いかける声があった。
「これから行うことは、姫様のお身体に負担をかけることになります。無理なさらず明日でも――」
「いいの」
リュシエンヌは顔を上げ、恥ずかしかったがきちんと伝えた。
「痛くても、辛くても、いいの。あなたと結ばれる日を、ずっと待ち望んでいたから……」
「姫様……」
ランスロットの温かな掌が頬へ触れ、顔が近づく。リュシエンヌは目を閉じて、口づけを交わした。言葉はなく、ただ夢中で唇を重ね、舌を絡めていくうちに、ゆっくりとランスロットが寝台に押し倒し、首筋に顔を埋めたり、目に焼きつけるようにリュシエンヌの顔を見つめてきて、もう一度深く口づけした。
そうしてリュシエンヌを床に寝かせたまま、夜着の釦に手をかける。じっと指先を見ていれば、微かに震えていることに気づいた。……もしかすると、一度目も同じだったかもしれない。
時間をかけてすべての布を剥ぎ取ると、彼は感嘆のため息を漏らした。部屋の灯りは明るく、消してくれと頼まなかったので、リュシエンヌの裸体は余すところなくランスロットの視線に晒された。
恥ずかしい気持ちはあったが、それでも手で隠すことはしなかった。
どれくらい時間が過ぎたか。やがて彼が壊れ物にでも触れるかのように恐る恐る触ろうとしたところで、リュシエンヌはその手を取り、身を起こした。
「姫様?」
「……あなたのも、脱がせたい」
ランスロットは数秒、驚きに時間を要した。リュシエンヌは、自分の裸を見たいと言っているのだ。
「怖く、ありませんか?」
こくりと小さく頷き、リュシエンヌはランスロットのシャツに手をかけた。
彼がかけた時間と同じくらい慎重に前を肌蹴させ、目を逸らさず彼の上半身を見た。筋肉がついていて、硬そうだなと思った。
「触っても、いい?」
迷いながらもそう尋ねれば、ランスロットはふっと微笑んだ。
「ええ。どうぞ」
リュシエンヌは恐る恐る触れて、意外にも柔らかい感触に驚きながら、そのまま下へと手を下ろしていった。そして今度は下を脱がせようとしたが、さすがに一人では難しかったので、腰を浮かせてランスロットにも手伝ってもらった。彼はリュシエンヌの行動に恐らくいろいろ疑問は抱いているのだろうが、黙って好きにさせてくれた。
「あ……」
下穿きを寛げると、ぼろんと大きな肉棒が飛び出たので、リュシエンヌは戸惑った。とっさにランスロットを見れば、彼はじっと何か言いたげに自分を見つめている。
その意を汲むようにリュシエンヌは彼の雄に触れた。指先が触れるだけで、彼の竿は生き物のようにぴくんと動いたので、リュシエンヌは驚いてしまう。
「もう終わりですか?」
面白がるような響きを含ませて、ランスロットが問いかける。
「もっと、触ってもいいの?」
「ええ。……たくさん、触れてください」
リュシエンヌは肉棒を支えるように両手で包み込んだ。……しかし、ここからどうしていいかわからない。目線で問えば、ランスロットは自分の手をリュシエンヌの上から重ね、上下に扱いていく。
肉棒はどんどん硬くなり、先端から透明な液体を零していた。あまりにも強く擦っているので、リュシエンヌはなんだか不安になってくる。
「ランスロット、痛くない?」
「まさか……。すごく、いい……。姫様が俺のを、はぁ……すみません。こんなこと、貴女にさせて……」
射精の気配が近づいてきているのか、ランスロットの息は上がっていく。その様子を間近で見せられ、また自分の手で導いていると思えば、リュシエンヌは首を横に振っていた。
「いいの。気持ちよく、なって……」
「くっ、姫様……っ」
生温かい液体が掌に出され、リュシエンヌはランスロットに強く抱き寄せられた。乱れた呼吸が整ってくると、今度はランスロットに触っていいかどうか尋ねられる。
リュシエンヌは頬を赤らめながらも頷き、膝をついた状態で、彼の手が自分の胸を揉み、脚の付け根の先を撫でられていくのを見ていた。時々互いに目が合えば、顔を寄せ、激しく唇を貪られる。
(はぁ……きもちいい……)
舌先を吸われると、全身が痺れたように力が抜けて、蜜壺からとろとろと蜜を零してしまう。花びらを割ってかき出すように音を鳴らされていくうちに、リュシエンヌの身体はじっとしていられず、ぶるぶると震え始める。
「はぁ、ぁ……っ、ランスロットっ」
「大丈夫、そのまま……」
ランスロットにしがみつき、彼の指をきゅうっと咥えた。
抱きしめられた形で髪や背中を撫でられ、ゆっくりと身体が寝台へ沈んでいく。膝を左右に大きく開かされ、驚く間もなく秘所に顔を埋められ、花芯や蕾を舐められていく。
「ぁっ……ん……っ、んんっ……あっ、あぁっ……」
悩ましい声を上げながらリュシエンヌは枕やシーツを掴み、決してランスロットの邪魔はしなかった。彼が与えてくれる快楽を素直に享受し、とめどなく愛液を溢れさせ、尻を浮かせて高みに昇った。
「はぁ……はぁ……」
何度か気をやって、ようやくランスロットが身を起こした。
心ゆくまでリュシエンヌの蜜を啜って満足したかと思えば、ランスロットはまだやめる気配はなく、むしろますます飢えた表情をしてリュシエンヌの秘所に自分の昂りを擦りつけてきた。
「姫様、いいですか?」
「ええ。きて……」
四度目の人生、ランスロットに処女を捧げるのは三度目だった。何度経験しても、どれほど丁寧な愛撫で身体を蕩かされても、貫かれる時はやはり痛みを覚えた。
でもこの痛みが、幻でも夢でもなく、生きていることを――愛する人と一つになれたことを伝えてくれる。互いの体温を感じ、肌が触れ合う度に愛おしさが生まれてくる。
「ランスロット、好き……」
目を潤ませながら、リュシエンヌはランスロットに溢れる気持ちを口にする。
「あなたが大好き……。愛しているわ」
ランスロットは微かに目を瞠った後、泣きそうな顔で微笑んでキスを落とし、耳元で「俺も」と囁いた。
「貴女が好きだ。貴女だけをずっと、愛している」
その言葉が嬉しくてリュシエンヌが微笑めば、彼も笑みを返し、抱きしめてくれた。
◇
蜜月を過ごし、晴れてランスロットの妻となったリュシエンヌは再び公務に励むようになった。
(一通り手紙のお返事は書き終ったし、ランスロットを迎えに行こうかしら)
彼がいる場所は騎士たちが鍛錬する訓練場だ。
ランスロットはそこで、剣の稽古をつけてもらっている。もともとリュシエンヌの護衛を任されているとあって腕もあり、鍛錬も欠かさず行っていたのだが、結婚して何か思うところがあったのか、以前よりも練習量を増やしていた。
リュシエンヌはランスロットがしたいことをしてほしいと思っているので、そっと見守っている。
そしていつも彼の方から自分のもとへ来させているので(護衛なので当然と言えば当然なのだが)、たまには自分から彼に会いに行って驚かせてやろうと、ランスロットの代わりに宛がわれた騎士と侍女を伴って訓練場へ向かった。
(あ、いた)
ランスロットの姿はすぐにわかった。
なぜなら彼は他の騎士たちに囲まれ、一番注目の的だったからだ。
ランスロットと一人の騎士が、激しい剣戟を繰り広げていた。
「まぁ、なんて激しいこと……」
付き添っていた侍女がはらはらした様子で口元を覆えば、一緒にいる護衛の騎士が説明する。
「本物の剣ではなく木刀ですので、大丈夫ですよ」
「そう言いますけれど、やはり見ていてひやひやしますわ。姫様は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ」
全く心配ないというわけではなかったが、リュシエンヌはこれまでの人生で本気で命を奪う戦いを実際に目にしてきた。それらと比べれば、木刀での戦闘はどこか余裕を持って見ることができる。
(でもすごい迫力……)
素人であるリュシエンヌの目からは、剣劇を見ているような流麗さがあった。
息の合った呼吸で身体を引き、剣を前へ突き出し、一体どこに隙があるのかと問いたくなる。
だがそれは剣を手にして戦ったことのないリュシエンヌの感想であり、剣術に通じている者からすれば、見え方が違うようだ。
おお、という歓声が上がった所で、ランスロットが相手の喉元に剣先を向けていた。
「いいぞランスロット! あと一本!」
「先輩頑張ってください! 俺の今夜の晩飯がかかっているんです!」
「そうだぞ! こっちは明日の分までかかってるんだ!」
「おまえら! ランスロットばかりにベットして、俺に賭けてるやつはいないのか! というか、そもそも騎士が賭け事をするな!」
ランスロットの対戦相手が腹を立てて言い返す。それまでの真剣な雰囲気が霧散し、ランスロットも剣を下げて笑った様子で何か言い返していた。
(ランスロットってば、人気者なのね……)
賭け事の対象にされて怒る騎士たちのやり取りを目にしながらリュシエンヌがそんなことを思っていると、ふとぱちりとランスロットと目が合った。
「姫様!」
破顔した彼はリュシエンヌに向かって大きく手を上げた。周りの騎士たちも一斉にこちらを見たので気まずい思いをするが、堂々としていていいと以前訪れた時ランスロットに言われたので、にこやかな笑みを作って胸の前で小さく振り返す。
「すみません。わざわざこんな所までご足労いただいて」
「いいの。わたしがここへ来たかったのだから」
駆け寄ってきたランスロットは、リュシエンヌの言葉を聞いて笑った。
「姫様も物好きですね。こんなむさ苦しい場所に来たいだなんて」
それはランスロットがいるからであり、彼に会うことが目当てなのだが……リュシエンヌは特に言及せず、彼の後ろにいる騎士たちに向かって微笑んだ。
「こんにちは。邪魔をしてしまって、ごめんなさいね」
「いいえそんな! むしろこちらこそ変な場面を公女殿下にお見せしてしまって……」
「あの、決して毎回こんなことをしているわけではないんですよ?」
「そうです。普段は真面目に稽古しておりまして……」
どうやら大公の娘に騎士としては相応しくない場面を見られたことでまずいと思ったようだ。
「ええ、もちろんよくわかっています」
彼らはセレスト公国の平和を担っている。有事の際には、一番力を求められるのが彼らの仕事だ。
「あなた方のおかげで我が国の平和が守られているのです。深く感謝しております。……いつもありがとう」
そう言ってはにかむように微笑めば、騎士たちはみなポカンとした顔を晒した。ランスロットが近くにいた騎士の肩をがばりと組み、快活に言い放った。
「だそうだ。よかったな、みんな。我らが姫様に最上級のお褒めの言葉をいただけて」
「お、おお……」
ランスロットの言葉を皮切りに騎士たちは照れ臭そうに微笑んで、お礼を述べてきた。
「リュシエンヌ様にそう言っていただけると、我らも誇らしいです」
「これからもセレスト公国のために忠誠を誓います」
「ありがとう。頼りにしています」
そんなやり取りをした後、リュシエンヌはランスロットを連れて訓練場を後にした。彼は汗臭くないかどうかしきりに気にしていたが、リュシエンヌは大丈夫よと笑った。
「それより、やっぱりあんまり頻繁に来ない方がいいかしら」
「いやいや構いませんよ。むしろ公女殿下自ら足を運んで労いの言葉をかけてもらえれば、彼らの士気も上がります」
「そう? なら、いいのだけれど……」
「はい。姫様さえよろしければ、またお越しください。俺も、我が愛しの妻を自慢したいんで」
「もう。またそんなこと言って」
「冗談ではありません。心の底から申し上げております」
口調は軽かったが、眼差しはどこまでも優しかった。リュシエンヌは少し恥ずかしげに俯き、昨夜夕食の時に出た話題を口にする。
「昨日、新婚旅行のことをお父様たちに聞かれたでしょう?」
「はい。俺は姫様と一緒ならば、国内でも、どこでも構いませんよ」
「なら……」
近隣諸国へ行こう、と提案すれば、さすがに意外だったのかランスロットは目を丸くした。しかしすぐに心得たようにニッと微笑んで、「いいですね」と言ってくれた。
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この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
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