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優しい夢の中*

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 リュシエンヌは十六歳の時にランスロットと婚約し、それから少しずつ、今のような関係になっていった。キスをしたのは、ランスロットからだった。挨拶のような、軽いものであったが、結婚までは手を出してこないと思っていたリュシエンヌは驚いた……気がする。

 昔のことは、ひどく曖昧だった。よく、思い出せない。いや、言われるとそうだったときちんと引き出しからその時の記憶が出てくるのだが、なんだかもっと別の記憶が正しいような気がして、本当にそうだったのか一瞬戸惑いが生じる。

「姫様。考え事ですか?」
「ふぅ、んっ……」

 しかし深く考えようとすると、その必要はないとランスロットの優しく、甘い声が遮る。

「どんどん、溢れてきますね……」
「いやぁ……もう、見ないで……」

 薄暗い部屋の中。僅かな灯りに照らされて、鏡台に寄りかかっていたリュシエンヌは下半身をランスロットの眼前に晒していた。

 彼の吐息を感じるたびに、ひくひくと淡い桃色の花弁がひくつき、中からとろとろと蜜を零しながら、彼女の目は潤み、白い頬は紅を差したように赤く染まっていた。

 もちろんそれは羞恥心だけでなく、ランスロットの舌と指で散々可愛がられたからでもある。

「まるでもっと味わってくれ、って催促しているようですね」
「ちが、あっ、だめ……ぁ、あ、やぁ、んっ……」

 白い絹のストッキングを履いた太股をがっしりと押さえ、ランスロットは花びらに口づけし、溢れる蜜を啜っていく。

 リュシエンヌは持っているよう命じられたドレスの裾を片手で握りしめ、もう片方の手の甲で声を塞ごうとする。しかしそれを阻止するかのようにランスロットの舌がますます執拗に蜜で濡れた柔らかい襞を舐め回し、ふっくらと膨らんだ花芽を吸ったので、快感で身体が震え、ランスロットの後頭部に両手をやっていた。

 決して押し付けたかったわけではないが、引き剥がすには、あまりにも彼の与えてくれるものは甘美であった。――もっと、欲しかった。

「はぁ……ぁっ、いい……っ、もっと、あぁ――……」

 いつしか鏡台の上に上半身を預け、捲り上げたドレスの裾はすっぽりとランスロットの姿を覆い隠して、中で行われる密事をリュシエンヌの頭の中に思い描かせ、心と身体を乱れさせた。

「――姫様、気持ち良かったですか」

 何度か果てて、ようやくランスロットがドレスの中からごそごそと出てくる。衣装の中は熱がこもっていたからか、あるいは彼もこのやり方で興奮したのか、頬が上気していた。

「ええ……とても……」

 掠れた甘い声で素直に吐露すれば、ランスロットは嬉しそうに目を細め、彼女に口づけする。

「今日はもっと、特別なことをしましょう」

 そう言って彼は力の抜けたリュシエンヌの身体をひっくり返し、うつ伏せにさせると、ドレスを捲り、尻や太股をひんやりとした空気に触れさせた。

「ランスロット、もう、ん……」

 臀部に熱い塊を押し当てられ、きゅんと下腹が疼くと共に理性がひやりとする。

「だめ、ランスロット、それだけは……」

 振り返って挿入を押しとどめるリュシエンヌにランスロットは微笑み、わかっていますと内緒話のように顔を近づけて囁いた。

「脚を閉じて、俺のを感じてください」

 そう言うやいなや、リュシエンヌの閉じた太股を割って硬い肉棒が挟み込まれた。

「っ……」

 熱くて硬い肉槍は確かにリュシエンヌの中を貫かず、蜜口を滑るだけだ。しかしそれが耐え難いほどの愉悦を与えた。指や舌とも違う。本来男女が繋がる時に女性の胎中なかを満たし、繋がる役目を果たすもので擦られているのだ。雌としての本能を引きずり出すような激しい情欲を掻き立てられる気がした。

「んっ、ぅ……ぁ、あっ……あぁっ、ん……」

 くちゅくちゅと鳴り響く淫音や抑えきれない自分のか細い喘ぎ声、そしてランスロットの荒い呼吸に、ますますリュシエンヌは乱れて、自分からねだるように尻を彼に押しつけていた。

「どうしたんですか、はぁ、姫様、もう、やめてほしい、のですか?」

 腰を動かすのをやめ、太股から引き抜こうとするランスロットの雄を、リュシエンヌはとっさにきゅっと柔らかな肉で挟んでいた。

 ランスロットは何も言ってくれない。彼はリュシエンヌの言葉を待っているのだ。

「……だめ、抜いちゃ……。まだ、……って、ないから……」

 小さな声であったが、ランスロットにはきちんと伝わったようだ。喉奥で笑うと、リュシエンヌの腰を掴み、また花芯を擦り始めた。

「はぁ、姫様……、気持ちいい、ですか?」
「ぅん……すごく、いい……っ、ランスロット、は?」

 自分だけ快楽を得ていては彼に申し訳なく、寂しかった。

「ええ、俺も、すごく、いいです……あぁ、たまらない……」

 色香の混じった声でそう教えてくれたランスロットは突然鏡台にくっついていたリュシエンヌの上半身を剥がし、立った状態で自分の方へともたれかからせた。

 後ろに彼の身体が密着し、互いの熱を伝えてくる。

「姫様、キスを……」
「んっ、ふ、ぅんんっ……」

 顎を掬われ、後ろを向かされると、ちゅぱちゅぱと口を吸われる。
 体勢的に苦しかったが、心はどこまでも満たされていた。

「ふ……ぁっ、ランスロット、わたし、いっちゃう……っ」
「ええ、俺も……一緒に、いきましょう」
「うん、きて、一緒に……、ぁ、ん、んっ――……」

 リュシエンヌは後ろへ軽く身を仰け反らせ、彼女を支えるようにきつくランスロットが抱きとめた。二人は同時に高みへ昇った。

 そのままゆっくりと鏡台の方へ落ちていき、ひんやりとした台へリュシエンヌは頬と胸を押しつけ、浅い息を繰り返した。生温かい液体が太股を伝って落ちていくのがわかる。

「姫様……」
「ん、ランスロット……」

 後ろに覆い被さっていたランスロットがむき出しのうなじや背中に指を這わせ、肌を強く吸ったので、リュシエンヌはだめと言うように身じろぎした。

「この後戻るから……だから、あとはつけないで……」

 舞踏会の最中に二人は抜け出していた。リュシエンヌはほんの少し休憩したらすぐに戻るつもりだったのだが、なぜかランスロットとの行為に耽っていた。

 公女である自分がこんな調子では示しがつかない。そもそも公女云々の前に、結婚もまだの女性が、いくら婚約者とはいえ、身体を委ね過ぎであった。

 だからせめて今からでもきちんと振る舞うべきだ……そう思い、リュシエンヌはランスロットに痕をつけることをやめさせようとしたのだが、ランスロットは微かに笑って、肌を強く吸った。

「いいえ、姫様。これで、いいんです」
「や……だめ……」

 ランスロットはリュシエンヌの制止を無視して、次々と吸い痕をうなじや背中に残していく。その出来栄えを主に見せるようにリュシエンヌの腰を浮かせ、白い肌に散っている花を鏡に映させた。これではもう、大広間に戻ることはできない。

「ひどいわ、ランスロット……」

 リュシエンヌは鏡越しに彼をそう詰るも、彼はちっとも堪えた様子はなく、リュシエンヌを抱き起こすと、機嫌を取るように頬をすり寄せてきた。

「乱してしまえば、もう夜会へ戻る必要もなくなるでしょう?」
「お父様たちが、心配なさるわ……」
「では侍女に伝言を頼みましょう。姫様のお加減が悪くなったので、護衛騎士に介抱されて今日はもう失礼させてもらうと……」
「わたしのせいにしないで……」

 それにその言い訳では結局心配させてしまうと述べれば、彼は頬をくっつけたまま、甘い声で囁いた。

「じゃあ俺が姫様を誰にも見せたくなくて、独り占めしたくて事に及んでしまったと告げましょうか」

 口調こそ優しく、甘い感じであったが、彼の目は決して冗談ではないと告げていた。

 リュシエンヌが戸惑って何も言えないでいると、先にランスロットがふっと笑って会話を繋いだ。

「いいえ。そんなことを言えば、陛下たちも貴女とのご結婚を許してくれなくなるかもしれませんね。ここはやはり無難に、疲れてしまったから早く休むことにした、という案でもよろしいでしょうか」
「……ええ、それで構わないわ」

 どうにかそう答えると、「承知いたしました」と言って、ランスロットはリュシエンヌを抱きしめ、首筋に顔を埋める。

「早く、貴女と結婚したい。俺だけのものにしたい」

(ランスロット……)

 後ろから抱きしめられていたリュシエンヌはランスロットの呟きに強く胸が締め付けられ、泣きそうになった。そして彼だけが同じ気持ちではないと伝えたくて、腕をそっと撫でた。

「わたしもよ、ランスロット。早くあなたと一緒になりたい」

 リュシエンヌの告白にランスロットはゆっくりと目を開け、どこか寂しそうな、泣きそうな表情で笑みを浮かべると、今度は向かい合う形でリュシエンヌを抱きしめた。

 二人はお互いが今ここにいるのだと感じるように身体を触れ合わせ、やがてゆっくりと抱擁を解いていく。言葉もなく見つめ合い、そのままランスロットはリュシエンヌを抱き上げ、寝台のある部屋へと向かった。

 それから夜が更けるまで、二人は互いの想いを確かめ合った。

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