16 / 29
16. 過ち
しおりを挟む
「ダヴィド様。どこに行ってましたの」
離れに戻ると、マリアンヌがきつい口調でダヴィドに詰問した。彼は内心うんざりしながら、部屋の隅で赤ん坊をあやしている乳母へと歩み寄った。
赤ん坊はふっくらとした頬をしていた。髪の毛はまだうっすらとしか生えていないが金色で、母のマリアンヌの血が流れていることを証明していた。透き通るような緑の瞳も、彼女のものだった。彼女が命がけで産んだ息子のノエルを、じっとダヴィドは見つめた。
(他の男の子どもだと言えば、追い出せるだろうか)
だがマリアンヌが他の男のもとへ行く隙などなかった。自分が彼女をひと時も離したくないと独占していたからだ。だから生まれた子どもは間違いなく自分の子どもである。そのことはダヴィドが一番よく理解していた。
それでも彼女を追い出すことができたら、他に子どもが必要となったら――
「聞いていますの?」
「ああ。聞いているよ」
マリアンヌの声に、ダヴィドは己の恐ろしい考えを振り払った。
「少し仕事で外に出ていたんだ」
「……嘘ですわ」
決めつけたような言い方は気分を悪くした。たとえ彼女の指摘が正しくても。
「あの女のもとへ行っていたんでしょう?」
「……」
やっぱり! とマリアンヌは甲高い声をあげた。
「毎日、毎日、わたしが話しかけようとするたびにあなたはあの女のもとへ行く! ねえどうして!? わたしのことが好きなんでしょう!? 愛しているのでしょう!?」
母親の金切り声にそれまで大人しかったノエルがけたたましい泣き声を上げた。おろおろと乳母があやすも赤ん坊の泣き声は止まらない。鬱陶しそうに視線をやると、乳母が怯えたようにノエルを抱えて部屋を出て行った。
額に手をやりながら、ダヴィドは追い縋るマリアンヌを振り返った。宥めるように彼女の華奢な肩へ手を置く。
「落ち着け、マリアンヌ」
「ならもうあの女のもとへ行かないと約束してっ……」
あの女、あの女と繰り返す彼女に、こちらの言葉などちっとも聞こうとしない女の態度にダヴィドの心は苛立った。
「イレーナは私の妻だ。顔を合わせないというのは無理だ」
ひゅっとマリアンヌは大きな目をさらに見開き、信じられない表情で己を見上げた。だがすぐさま眉尻を吊り上げる。
「どうしてそんなことを言うの。どうしてわたしの言うことを聞いてくれないの? あなたはわたしを愛しているのでしょう? どうして今さらあの女のことを大事にしようとなさるの? あの女はただの飾りでしょう? 子も産めなかった役立たずでしょう?」
産めなかった、という言葉に思わず眉を寄せる。
「産めなかったのではない。産もうとしていないだけだ」
「だから産ませようとしているの!? わたしとノエルはどうなるの!?」
「だから……」
これでは堂々巡りだとダヴィドはため息をつき、背を向けた。
「どこへ行くの!」
「書斎で仕事をする。邪魔しないでくれ」
「まだお話はっ……」
バタンと扉を閉めた。どんどんと扉を叩く音がして、すすり泣くような声から大声で泣く声へと変わる。物に当たっているのか、何かが壊れる音も一緒に激しく響き渡る。
この一連の流れが、いつからか毎日の繰り返しとなっていた。ダヴィドはそれらから逃れるように部屋を遠ざかっていく。
(どうしてこんなことになったんだ)
マリアンヌが懐妊したと知った時はとても嬉しかった。舞踏会に出席した際、人気のないバルコニーで男性に襲われそうになった彼女を助け、お互い恋に落ちた。彼女は若く、子どものような幼さがあるものの、それもまた愛おしかった。感情を抑えるのが貴族だと躾けられているなか、ころころと変わるマリアンヌの表情は見ていて飽きなかった。
両親や友人たちにどんなに反対されても、彼はマリアンヌと結婚したかった。使用人たちが彼女をダヴィドの伴侶だと認めず、冷たくあたっても、ダヴィドだけは彼女の味方であった。
『わたし、ダヴィド様とただ一緒にいられるだけで幸せよ』
結婚するなら縁を切る。爵位も領地も、お前には何一つ渡さない。両親に脅すように言われた言葉に頭を悩ますダヴィドを、マリアンヌはそう言って支えてくれた。愛人のような立場に身を置くことを許してくれた。そんな健気な彼女が、ことさら愛おしく思えた。
マリアンヌに申し訳ないと思いつつ、ダヴィドは形だけの結婚をすることにした。どうせならたっぷりと持参金をもぎとってやればいい。向こうも金目当ての相手がいい。情の欠片もわかぬような、冷たい女を。
そうして選ばれたのがイレーナだった。アメジストのような紫の瞳が印象的で、人形のような女。どんなに非道に扱おうが、傷つきもしない女。この女ならば、愛することはないだろうとダヴィドは彼女を妻にした。
イレーナをお飾りの妻に据えて、ダヴィドはマリアンヌと思う存分愛し合った。周囲が諫めれば諫めるほど、彼女への愛で溺れてゆく。イレーナは何も言わなかった。勝手にしてくれという態度に安堵しつつ、冷たい女だと蔑んだ。マリアンヌと大違いである。
いつか子どもができて、家族が増えたら、子ができないことを理由にイレーナと離縁しよう。そしてマリアンヌと本当の夫婦になろう。自分には彼女しかいない。マリアンヌとの愛は永遠に続く。
そんなことを、疑いもなく信じていた。
だが、マリアンヌが子どもを身ごもってから二人の関係は変わった。吐き気や眩暈。今までのように体調が万全でなくなったのか、マリアンヌは常に不安がった。そしてダヴィドに甘え、今まで以上に束縛するようになった。そして、要求した。
どこにも行かないで。そばにいて。抱きしめて。口づけして。わたしを愛して。
最初は可愛い我儘だと思った。だがしだいに膨らんでいく腹に、やつれていく表情に、ダヴィドの中で女としてのマリアンヌが受け入れ難くなっていった。加えて四六時中そばにいろという無茶な要求も、そんなことできるわけないだろと怒鳴り返したくなった。
愛する人の顔を見るのが億劫になった。そんな自分の変化に耐え切れず、ダヴィドはある日ふと屋敷の外へと目を向けた。
鬱蒼と茂る木々に、ずっと手入れを怠っていたせいで枯れ果てた庭。そこに、小さな人の姿が目に入った。妻のイレーナだ。彼女は暇さえあれば、庭の池など眺めているらしい。
(いい気なもんだ)
愛人に向けることのできない苛立ちが、自然と己の妻へと矛先を変える。
(そうだ。久しぶりに会いに行ってやろうか)
イレーナは自分の妻だ。妻として扱ってやらねばならぬ。そうだ。そうしてやろう。
あの冷たい表情がどう変わるのか見てやろう。泣いて許しを請うだろうか。あるいは快楽で泣き叫ぶだろうか。ダヴィドは実に楽しみであった。
しかし――
「――私はあなたのことがもっときちんと知りたいのです」
真っすぐ己を見つめる瞳に、なぜか目が離せなかった。今まで自分が作り上げてきた彼女はすべて偽物で、本当の彼女はまったくの別人であった。彼女が話すと、彼女が笑みを浮かべると、ダヴィドの思う通りに事は進まず、むしろ彼女に翻弄されていくこととなった。
「イレーナ……」
何がきっかけだったのか。あの、思わず微笑んでしまった時の表情か。わからないが、ダヴィドはしだいにイレーナに惹かれていった。
当たり前であるが、イレーナはマリアンヌと違って媚びなかった。形ばかりの微笑は浮かべているが、彼女自身の感情を露わにすることはない。そして何より、彼女はマリアンヌのことを気にしていた。最初は嫌味だと思っていた。拒むのもすべて、今まで妻を大切にしてこなかった自分への当てつけだと。
けれどイレーナは心の底から、マリアンヌとその子どものことを心配していた。
冷たいと思っていた女の優しさ。大人びた容貌に反する、どこか素直で子どもらしい無垢さ。間近で見ると宝石のような輝きを放つ、紫の瞳。薄い唇の溶けるような柔らかさ。知ろうとしていなかった彼女の魅力に、ダヴィドは抗えなかった。
子を産んだマリアンヌがますますヒステリックに自分を求めれば求めるほど、ダヴィドはイレーナのことを思い浮かべるようになった。彼女のことが欲しかった。身体を繋げ、心まで自分のものにしてしまいたかった。
「――ダヴィド様」
「……シエルか」
だがそれはできない。そうしたのは自分でもあるし、目の前の、美しい青年のせいでもあった。
離れに戻ると、マリアンヌがきつい口調でダヴィドに詰問した。彼は内心うんざりしながら、部屋の隅で赤ん坊をあやしている乳母へと歩み寄った。
赤ん坊はふっくらとした頬をしていた。髪の毛はまだうっすらとしか生えていないが金色で、母のマリアンヌの血が流れていることを証明していた。透き通るような緑の瞳も、彼女のものだった。彼女が命がけで産んだ息子のノエルを、じっとダヴィドは見つめた。
(他の男の子どもだと言えば、追い出せるだろうか)
だがマリアンヌが他の男のもとへ行く隙などなかった。自分が彼女をひと時も離したくないと独占していたからだ。だから生まれた子どもは間違いなく自分の子どもである。そのことはダヴィドが一番よく理解していた。
それでも彼女を追い出すことができたら、他に子どもが必要となったら――
「聞いていますの?」
「ああ。聞いているよ」
マリアンヌの声に、ダヴィドは己の恐ろしい考えを振り払った。
「少し仕事で外に出ていたんだ」
「……嘘ですわ」
決めつけたような言い方は気分を悪くした。たとえ彼女の指摘が正しくても。
「あの女のもとへ行っていたんでしょう?」
「……」
やっぱり! とマリアンヌは甲高い声をあげた。
「毎日、毎日、わたしが話しかけようとするたびにあなたはあの女のもとへ行く! ねえどうして!? わたしのことが好きなんでしょう!? 愛しているのでしょう!?」
母親の金切り声にそれまで大人しかったノエルがけたたましい泣き声を上げた。おろおろと乳母があやすも赤ん坊の泣き声は止まらない。鬱陶しそうに視線をやると、乳母が怯えたようにノエルを抱えて部屋を出て行った。
額に手をやりながら、ダヴィドは追い縋るマリアンヌを振り返った。宥めるように彼女の華奢な肩へ手を置く。
「落ち着け、マリアンヌ」
「ならもうあの女のもとへ行かないと約束してっ……」
あの女、あの女と繰り返す彼女に、こちらの言葉などちっとも聞こうとしない女の態度にダヴィドの心は苛立った。
「イレーナは私の妻だ。顔を合わせないというのは無理だ」
ひゅっとマリアンヌは大きな目をさらに見開き、信じられない表情で己を見上げた。だがすぐさま眉尻を吊り上げる。
「どうしてそんなことを言うの。どうしてわたしの言うことを聞いてくれないの? あなたはわたしを愛しているのでしょう? どうして今さらあの女のことを大事にしようとなさるの? あの女はただの飾りでしょう? 子も産めなかった役立たずでしょう?」
産めなかった、という言葉に思わず眉を寄せる。
「産めなかったのではない。産もうとしていないだけだ」
「だから産ませようとしているの!? わたしとノエルはどうなるの!?」
「だから……」
これでは堂々巡りだとダヴィドはため息をつき、背を向けた。
「どこへ行くの!」
「書斎で仕事をする。邪魔しないでくれ」
「まだお話はっ……」
バタンと扉を閉めた。どんどんと扉を叩く音がして、すすり泣くような声から大声で泣く声へと変わる。物に当たっているのか、何かが壊れる音も一緒に激しく響き渡る。
この一連の流れが、いつからか毎日の繰り返しとなっていた。ダヴィドはそれらから逃れるように部屋を遠ざかっていく。
(どうしてこんなことになったんだ)
マリアンヌが懐妊したと知った時はとても嬉しかった。舞踏会に出席した際、人気のないバルコニーで男性に襲われそうになった彼女を助け、お互い恋に落ちた。彼女は若く、子どものような幼さがあるものの、それもまた愛おしかった。感情を抑えるのが貴族だと躾けられているなか、ころころと変わるマリアンヌの表情は見ていて飽きなかった。
両親や友人たちにどんなに反対されても、彼はマリアンヌと結婚したかった。使用人たちが彼女をダヴィドの伴侶だと認めず、冷たくあたっても、ダヴィドだけは彼女の味方であった。
『わたし、ダヴィド様とただ一緒にいられるだけで幸せよ』
結婚するなら縁を切る。爵位も領地も、お前には何一つ渡さない。両親に脅すように言われた言葉に頭を悩ますダヴィドを、マリアンヌはそう言って支えてくれた。愛人のような立場に身を置くことを許してくれた。そんな健気な彼女が、ことさら愛おしく思えた。
マリアンヌに申し訳ないと思いつつ、ダヴィドは形だけの結婚をすることにした。どうせならたっぷりと持参金をもぎとってやればいい。向こうも金目当ての相手がいい。情の欠片もわかぬような、冷たい女を。
そうして選ばれたのがイレーナだった。アメジストのような紫の瞳が印象的で、人形のような女。どんなに非道に扱おうが、傷つきもしない女。この女ならば、愛することはないだろうとダヴィドは彼女を妻にした。
イレーナをお飾りの妻に据えて、ダヴィドはマリアンヌと思う存分愛し合った。周囲が諫めれば諫めるほど、彼女への愛で溺れてゆく。イレーナは何も言わなかった。勝手にしてくれという態度に安堵しつつ、冷たい女だと蔑んだ。マリアンヌと大違いである。
いつか子どもができて、家族が増えたら、子ができないことを理由にイレーナと離縁しよう。そしてマリアンヌと本当の夫婦になろう。自分には彼女しかいない。マリアンヌとの愛は永遠に続く。
そんなことを、疑いもなく信じていた。
だが、マリアンヌが子どもを身ごもってから二人の関係は変わった。吐き気や眩暈。今までのように体調が万全でなくなったのか、マリアンヌは常に不安がった。そしてダヴィドに甘え、今まで以上に束縛するようになった。そして、要求した。
どこにも行かないで。そばにいて。抱きしめて。口づけして。わたしを愛して。
最初は可愛い我儘だと思った。だがしだいに膨らんでいく腹に、やつれていく表情に、ダヴィドの中で女としてのマリアンヌが受け入れ難くなっていった。加えて四六時中そばにいろという無茶な要求も、そんなことできるわけないだろと怒鳴り返したくなった。
愛する人の顔を見るのが億劫になった。そんな自分の変化に耐え切れず、ダヴィドはある日ふと屋敷の外へと目を向けた。
鬱蒼と茂る木々に、ずっと手入れを怠っていたせいで枯れ果てた庭。そこに、小さな人の姿が目に入った。妻のイレーナだ。彼女は暇さえあれば、庭の池など眺めているらしい。
(いい気なもんだ)
愛人に向けることのできない苛立ちが、自然と己の妻へと矛先を変える。
(そうだ。久しぶりに会いに行ってやろうか)
イレーナは自分の妻だ。妻として扱ってやらねばならぬ。そうだ。そうしてやろう。
あの冷たい表情がどう変わるのか見てやろう。泣いて許しを請うだろうか。あるいは快楽で泣き叫ぶだろうか。ダヴィドは実に楽しみであった。
しかし――
「――私はあなたのことがもっときちんと知りたいのです」
真っすぐ己を見つめる瞳に、なぜか目が離せなかった。今まで自分が作り上げてきた彼女はすべて偽物で、本当の彼女はまったくの別人であった。彼女が話すと、彼女が笑みを浮かべると、ダヴィドの思う通りに事は進まず、むしろ彼女に翻弄されていくこととなった。
「イレーナ……」
何がきっかけだったのか。あの、思わず微笑んでしまった時の表情か。わからないが、ダヴィドはしだいにイレーナに惹かれていった。
当たり前であるが、イレーナはマリアンヌと違って媚びなかった。形ばかりの微笑は浮かべているが、彼女自身の感情を露わにすることはない。そして何より、彼女はマリアンヌのことを気にしていた。最初は嫌味だと思っていた。拒むのもすべて、今まで妻を大切にしてこなかった自分への当てつけだと。
けれどイレーナは心の底から、マリアンヌとその子どものことを心配していた。
冷たいと思っていた女の優しさ。大人びた容貌に反する、どこか素直で子どもらしい無垢さ。間近で見ると宝石のような輝きを放つ、紫の瞳。薄い唇の溶けるような柔らかさ。知ろうとしていなかった彼女の魅力に、ダヴィドは抗えなかった。
子を産んだマリアンヌがますますヒステリックに自分を求めれば求めるほど、ダヴィドはイレーナのことを思い浮かべるようになった。彼女のことが欲しかった。身体を繋げ、心まで自分のものにしてしまいたかった。
「――ダヴィド様」
「……シエルか」
だがそれはできない。そうしたのは自分でもあるし、目の前の、美しい青年のせいでもあった。
225
お気に入りに追加
1,164
あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。

妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。
火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。
しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。
数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる