186 / 208
第6章:光の心臓編
180 アランとミルノVS光の心臓の守り人
しおりを挟む
---
「キシャァッ!」
巨大なカメレオンのような見た目をした魔物は、しゃがれた声を上げながら長い舌を射出して攻撃を繰り出す。
アランはそれを大槌で弾き飛ばし、その背後からミルノが矢を放って攻撃した。
カメレオンはその巨体に似合わぬ素早い動きでそれを躱していくが、流石に全ての矢を完全に躱しきることは難しく、何本かの矢が体を掠って傷を付ける。
しかしすぐさまその傷は回復し、一瞬にして今までの攻防が全て無に帰してしまった。
「あ~! また回復してぇ! ズルいよ!」
「ズルではありません。自分の力を使って心臓を守る為に最善を尽くすのは、心臓の守り人として当然のことではありませんか」
地団駄を踏みながら子供のように駄々をこねるアランに対し、ルミナは杖を構えた姿勢のまま口元に微笑を浮かべてそう言うと、杖の構えを解いて自分の手元に戻した。
そんな彼女の言葉に、アランはむぅ、と不満そうに頬を膨らませる。
しかし、すぐにミルノが「危ない!」と声を張り上げながら彼女の手を引いて後方へと引っ張った。
直後、先程までアランがいた場所にカメレオンの前足が勢いよく振り下ろされ、刃物のように鋭く尖った爪が岩の地面に傷をつける。
「っとと、危なぁ……ごめん、ミルノちゃん。ありがとう」
「そ、それは全然、良いんだけど……攻撃しても、回復されちゃう、のは……厄介、だね……」
か細い声で言うミルノの言葉に、アランはコクッと小さく頷きながら、戦場内を縦横無尽に動き回るカメレオンに視線を向けた。
ただでさえ奴の動きは素早く、連射できるミルノの弓矢ならともかく、アランの大槌による大振りな攻撃で捉えるのは不可能と言っても過言では無かった。
ミルノの攻撃自体も全て命中させられる訳でもなく、先程のように掠り傷を与えたり一本か二本の弓矢を直撃させるのが関の山、と言ったところ。
しかし、その程度の攻撃ではミルノの光魔法によって瞬時に回復させられてしまい、致命傷には至らない。
「こんな所でグズグズしてる場合じゃないのに……! どうしよう!?」
「えぇ!? ど、どうするって、言われても……」
突然解決策を聞かれたミルノが驚いていた時、二人のやり取りを遮るようにカメレオンの追撃が入り、すぐさま二人はその場を離れる。
カメレオンを仕留める為には、ルミナに回復の隙を与えないようほぼ一撃で仕留める必要がある。
しかし、ミルノの弓矢には一撃で仕留められる程の攻撃力は無く、それを可能に出来るであろうアランの攻撃は躱されてしまう。
……つまり、カメレオンの動きを一時的にでも止めることが出来れば、アランの攻撃によって仕留めることが出来るのではないか。
「ッ……!」
ふと沸き上がった解決の糸口に、ミルノはすぐさま弓矢を構えて、壁や天井を素早く這いずり回るカメレオンへと標準を合わせる。
奴は体色を周囲の壁や天井に合わせている為に中々視認しづらいが、それでも素早く動き回っているおかげで全く分からない訳では無い。
ミルノは矢を引く手に魔力を込めた状態で一瞬息を止め、すぐさま矢を放った。
「ミルノちゃん!?」
突然矢を放つミルノに、アランは驚いた様子で動きを止めながら声を上げる。
直後、彼女の放った矢はカメレオンの周囲の壁に突き刺さり、そこから生えた何本もの蔦が奴を拘束しようと絡みつく。
しかしカメレオンは本能で自身の危険を察知したのか、咄嗟に壁を蹴って空中に身を投げることでそれを躱した。
その際に一本の蔦が奴の足に絡みついたが、それも素早く引きちぎられてしまう。
──やっぱり、そう中々上手くはいかないか……。
ミルノはそれを見てグッと口を噤むが、それらの攻防を見ていたアランがすぐに「そういうことか!」と声を上げ、足元の地面に手を突いた。
するとカメレオンが着地しようとしていた地面が泥沼になり、奴が着地した瞬間ドパァンッ! と音を立てて泥水が飛沫を上げる。
しかし、アランがすぐさま魔力を込めたことで泥沼は一瞬にして岩へと変化し、沼にハマったままだったカメレオンの動きが止められる。
「よし……!」
カメレオンの動きが止まったことを確信したアランは、すぐにトドメを刺すべく、大槌を構えて走り出す。
岩による拘束を解こうと必死にもがいていたカメレオンは、自分に向かって突進してくるアランに気付くとその口を開き、長い舌を用いて迎撃しようとする。
それを見たミルノは素早く奴の周囲に矢を放ち、地面から生やした蔦で口を含む岩で拘束しきれていない部分を束縛した。
「ナイス……!」
アランは小さく笑みを浮かべながらそう言うと大槌を振り上げ、拘束されているカメレオンの頭に向かって、思い切り振り下ろ──
「そこまで」
──そうとしたところで、ルミナの静かな制止の声が入り、アランは反射的に動きを止めた。
力強く振り下ろされていた大槌は、カメレオンの頭を粉砕する寸前の位置で止まる。
突然の制止に二人が驚いていると、離れた場所から戦況を観察していたルミナが二人の元にゆっくりと歩み寄り、拘束されたカメレオンの頭を軽く撫でながら口を開いた。
「ここまですれば、もうこの子の逆転は不可能でしょう。……貴方達の勝利です」
「え、でも……倒さないと、ダメなんじゃ……?」
淡々とした口調で自身の敗北を認めるルミナの言葉に、アランは驚いた様子でそう聞き返した。
ミルノもイマイチ状況を理解出来ていない様子で、カメレオンとルミナの顔を何度も交互に見つめながら、アランの元に歩み寄る。
ルミナはそんな二人の方に顔を向けつつ口元に小さく笑みを浮かべると、未だにカメレオンの頭の上で止まったままの大槌に軽く手を添え、その首を小さく横に振った。
「私は、今まで心臓の魔女がしてきたように、このダンジョンを攻略して下さいと言いました。……お二人がここにいるということは、魔女も守り人を殺さずにダンジョンを攻略して心臓を回収してきた、ということでしょう?」
「それは……そう、だけど……」
「あと、私も無益な殺生は好みません。……ですから、お二人の勝利ということで構いません。約束通り光の心臓は差し上げますし、魔女の治療も行いましょう」
にこやかに告げられたその言葉に、アランは拍子抜けしたような表情を浮かべつつ、ずっと構えていた大槌を引いて自分の手元に戻した。
そんな彼女の背中に隠れるようにしていたミルノだったが、すぐにハッとした表情を浮かべると、彼女の肩を掴んで口を開いた。
「あ、アランちゃん……! それじゃあ、早くリンさんを……!」
「んぇ? ……あっ!」
慌てた様子で言われた言葉に、アランは一瞬何のことか分からず間抜けな声を発したが、すぐにリンのことを思い出して声を上げた。
ルミナはそんな二人のやり取りを見て「リンサン……?」と首を傾げるが、アランはそんな彼女の腕を掴んで口を開いた。
「ルミナちゃん、ちょっと来て! 先に助けて欲しい人がいるの!」
「えっ? 一体誰が……──」
驚いた様子で聞き返すルミナだったが、アランはそんな彼女の腕を強引に引っ張り、心臓が封印されている部屋を飛び出した。
戦いが終わっても来なかったということは、未だに双子と交戦しているか、戦いの末に動けない状況となっている可能性が高い。
双子がこちらまで来ていない以上、敗北した可能性は無いと考えても良いだろうが……相討ちになったか、未だに交戦している可能性は拭いきれない。
どちらにせよ、一刻も早く合流して救出しなければならない。
そんな焦燥から、アランはルミナの手を引いて緩く湾曲した通路を駆ける。
「ちょっ、ちょっと、急に何なんですッ? 助けて欲しい人とは、一体──」
突然引っ張られて走らされている状況に抗議の声を上げるルミナだったが、通路の先にある弱々しい生命の気配を察知し、すぐさま口を噤んだ。
通路の広範囲を染め上げる夥しい血痕と、その中央に位置する岩に凭れ掛かっている理沙の姿を見たアランは、すぐにルミナの手を離して駆け出した。
「リンちゃんッ!? 大丈夫ッ!? しっかりしてッ!」
アランは慌てた様子で声を掛けながら理沙の元に駆け寄ると、彼女の肩を掴んでガクガクと揺らす。
鼻につく血の匂いと、その中心にある今にも消えそうなか細い魔力の気配に、ルミナは微かに息を呑んだ。
すると、後方から追いついてきたミルノが彼女の横を通り過ぎ、すぐさま理沙の元に駆け寄り口を開いた。
「り、リンさん……! し、しっかりして下さい……ッ! あ、アランちゃん、そんなに揺らしたら、危ないよ……!」
「だって、リンちゃんが……ッ!」
明らかに動揺した様子で交わされるやり取りに、ルミナは少し面食らいそうになったが、すぐに気を取り直して二人の元へと小走りで駆け寄った。
「落ち着いて下さい、この方はまだ生きています。……この方を回復すれば良いのですよね?」
「……! うん! お願い、ルミナちゃん!」
アランに頼まれたルミナは一度大きく頷くと、満身創痍の理沙の体に触れ、その手に魔力を込めた。
すると、彼女の全身に走る夥しい数の傷を光が包み、少しずつ癒していく。
──……この人……片腕が、無い……?
理沙の体に魔力を巡らせる中で、ルミナは彼女の体の構造に違和感を持つ。
全身の傷と同じように戦いの中で失ったものかと思ったが、すぐに、片腕を失ってからそれなりの時間が経過していることに気付いた。
光魔法で治せない訳では無いが、ただでさえ瀕死の彼女に欠損した四肢の修復まで行うのは身体への負担が大きいと考え、ひとまず今は傷の回復に集中することにした。
---
「キシャァッ!」
巨大なカメレオンのような見た目をした魔物は、しゃがれた声を上げながら長い舌を射出して攻撃を繰り出す。
アランはそれを大槌で弾き飛ばし、その背後からミルノが矢を放って攻撃した。
カメレオンはその巨体に似合わぬ素早い動きでそれを躱していくが、流石に全ての矢を完全に躱しきることは難しく、何本かの矢が体を掠って傷を付ける。
しかしすぐさまその傷は回復し、一瞬にして今までの攻防が全て無に帰してしまった。
「あ~! また回復してぇ! ズルいよ!」
「ズルではありません。自分の力を使って心臓を守る為に最善を尽くすのは、心臓の守り人として当然のことではありませんか」
地団駄を踏みながら子供のように駄々をこねるアランに対し、ルミナは杖を構えた姿勢のまま口元に微笑を浮かべてそう言うと、杖の構えを解いて自分の手元に戻した。
そんな彼女の言葉に、アランはむぅ、と不満そうに頬を膨らませる。
しかし、すぐにミルノが「危ない!」と声を張り上げながら彼女の手を引いて後方へと引っ張った。
直後、先程までアランがいた場所にカメレオンの前足が勢いよく振り下ろされ、刃物のように鋭く尖った爪が岩の地面に傷をつける。
「っとと、危なぁ……ごめん、ミルノちゃん。ありがとう」
「そ、それは全然、良いんだけど……攻撃しても、回復されちゃう、のは……厄介、だね……」
か細い声で言うミルノの言葉に、アランはコクッと小さく頷きながら、戦場内を縦横無尽に動き回るカメレオンに視線を向けた。
ただでさえ奴の動きは素早く、連射できるミルノの弓矢ならともかく、アランの大槌による大振りな攻撃で捉えるのは不可能と言っても過言では無かった。
ミルノの攻撃自体も全て命中させられる訳でもなく、先程のように掠り傷を与えたり一本か二本の弓矢を直撃させるのが関の山、と言ったところ。
しかし、その程度の攻撃ではミルノの光魔法によって瞬時に回復させられてしまい、致命傷には至らない。
「こんな所でグズグズしてる場合じゃないのに……! どうしよう!?」
「えぇ!? ど、どうするって、言われても……」
突然解決策を聞かれたミルノが驚いていた時、二人のやり取りを遮るようにカメレオンの追撃が入り、すぐさま二人はその場を離れる。
カメレオンを仕留める為には、ルミナに回復の隙を与えないようほぼ一撃で仕留める必要がある。
しかし、ミルノの弓矢には一撃で仕留められる程の攻撃力は無く、それを可能に出来るであろうアランの攻撃は躱されてしまう。
……つまり、カメレオンの動きを一時的にでも止めることが出来れば、アランの攻撃によって仕留めることが出来るのではないか。
「ッ……!」
ふと沸き上がった解決の糸口に、ミルノはすぐさま弓矢を構えて、壁や天井を素早く這いずり回るカメレオンへと標準を合わせる。
奴は体色を周囲の壁や天井に合わせている為に中々視認しづらいが、それでも素早く動き回っているおかげで全く分からない訳では無い。
ミルノは矢を引く手に魔力を込めた状態で一瞬息を止め、すぐさま矢を放った。
「ミルノちゃん!?」
突然矢を放つミルノに、アランは驚いた様子で動きを止めながら声を上げる。
直後、彼女の放った矢はカメレオンの周囲の壁に突き刺さり、そこから生えた何本もの蔦が奴を拘束しようと絡みつく。
しかしカメレオンは本能で自身の危険を察知したのか、咄嗟に壁を蹴って空中に身を投げることでそれを躱した。
その際に一本の蔦が奴の足に絡みついたが、それも素早く引きちぎられてしまう。
──やっぱり、そう中々上手くはいかないか……。
ミルノはそれを見てグッと口を噤むが、それらの攻防を見ていたアランがすぐに「そういうことか!」と声を上げ、足元の地面に手を突いた。
するとカメレオンが着地しようとしていた地面が泥沼になり、奴が着地した瞬間ドパァンッ! と音を立てて泥水が飛沫を上げる。
しかし、アランがすぐさま魔力を込めたことで泥沼は一瞬にして岩へと変化し、沼にハマったままだったカメレオンの動きが止められる。
「よし……!」
カメレオンの動きが止まったことを確信したアランは、すぐにトドメを刺すべく、大槌を構えて走り出す。
岩による拘束を解こうと必死にもがいていたカメレオンは、自分に向かって突進してくるアランに気付くとその口を開き、長い舌を用いて迎撃しようとする。
それを見たミルノは素早く奴の周囲に矢を放ち、地面から生やした蔦で口を含む岩で拘束しきれていない部分を束縛した。
「ナイス……!」
アランは小さく笑みを浮かべながらそう言うと大槌を振り上げ、拘束されているカメレオンの頭に向かって、思い切り振り下ろ──
「そこまで」
──そうとしたところで、ルミナの静かな制止の声が入り、アランは反射的に動きを止めた。
力強く振り下ろされていた大槌は、カメレオンの頭を粉砕する寸前の位置で止まる。
突然の制止に二人が驚いていると、離れた場所から戦況を観察していたルミナが二人の元にゆっくりと歩み寄り、拘束されたカメレオンの頭を軽く撫でながら口を開いた。
「ここまですれば、もうこの子の逆転は不可能でしょう。……貴方達の勝利です」
「え、でも……倒さないと、ダメなんじゃ……?」
淡々とした口調で自身の敗北を認めるルミナの言葉に、アランは驚いた様子でそう聞き返した。
ミルノもイマイチ状況を理解出来ていない様子で、カメレオンとルミナの顔を何度も交互に見つめながら、アランの元に歩み寄る。
ルミナはそんな二人の方に顔を向けつつ口元に小さく笑みを浮かべると、未だにカメレオンの頭の上で止まったままの大槌に軽く手を添え、その首を小さく横に振った。
「私は、今まで心臓の魔女がしてきたように、このダンジョンを攻略して下さいと言いました。……お二人がここにいるということは、魔女も守り人を殺さずにダンジョンを攻略して心臓を回収してきた、ということでしょう?」
「それは……そう、だけど……」
「あと、私も無益な殺生は好みません。……ですから、お二人の勝利ということで構いません。約束通り光の心臓は差し上げますし、魔女の治療も行いましょう」
にこやかに告げられたその言葉に、アランは拍子抜けしたような表情を浮かべつつ、ずっと構えていた大槌を引いて自分の手元に戻した。
そんな彼女の背中に隠れるようにしていたミルノだったが、すぐにハッとした表情を浮かべると、彼女の肩を掴んで口を開いた。
「あ、アランちゃん……! それじゃあ、早くリンさんを……!」
「んぇ? ……あっ!」
慌てた様子で言われた言葉に、アランは一瞬何のことか分からず間抜けな声を発したが、すぐにリンのことを思い出して声を上げた。
ルミナはそんな二人のやり取りを見て「リンサン……?」と首を傾げるが、アランはそんな彼女の腕を掴んで口を開いた。
「ルミナちゃん、ちょっと来て! 先に助けて欲しい人がいるの!」
「えっ? 一体誰が……──」
驚いた様子で聞き返すルミナだったが、アランはそんな彼女の腕を強引に引っ張り、心臓が封印されている部屋を飛び出した。
戦いが終わっても来なかったということは、未だに双子と交戦しているか、戦いの末に動けない状況となっている可能性が高い。
双子がこちらまで来ていない以上、敗北した可能性は無いと考えても良いだろうが……相討ちになったか、未だに交戦している可能性は拭いきれない。
どちらにせよ、一刻も早く合流して救出しなければならない。
そんな焦燥から、アランはルミナの手を引いて緩く湾曲した通路を駆ける。
「ちょっ、ちょっと、急に何なんですッ? 助けて欲しい人とは、一体──」
突然引っ張られて走らされている状況に抗議の声を上げるルミナだったが、通路の先にある弱々しい生命の気配を察知し、すぐさま口を噤んだ。
通路の広範囲を染め上げる夥しい血痕と、その中央に位置する岩に凭れ掛かっている理沙の姿を見たアランは、すぐにルミナの手を離して駆け出した。
「リンちゃんッ!? 大丈夫ッ!? しっかりしてッ!」
アランは慌てた様子で声を掛けながら理沙の元に駆け寄ると、彼女の肩を掴んでガクガクと揺らす。
鼻につく血の匂いと、その中心にある今にも消えそうなか細い魔力の気配に、ルミナは微かに息を呑んだ。
すると、後方から追いついてきたミルノが彼女の横を通り過ぎ、すぐさま理沙の元に駆け寄り口を開いた。
「り、リンさん……! し、しっかりして下さい……ッ! あ、アランちゃん、そんなに揺らしたら、危ないよ……!」
「だって、リンちゃんが……ッ!」
明らかに動揺した様子で交わされるやり取りに、ルミナは少し面食らいそうになったが、すぐに気を取り直して二人の元へと小走りで駆け寄った。
「落ち着いて下さい、この方はまだ生きています。……この方を回復すれば良いのですよね?」
「……! うん! お願い、ルミナちゃん!」
アランに頼まれたルミナは一度大きく頷くと、満身創痍の理沙の体に触れ、その手に魔力を込めた。
すると、彼女の全身に走る夥しい数の傷を光が包み、少しずつ癒していく。
──……この人……片腕が、無い……?
理沙の体に魔力を巡らせる中で、ルミナは彼女の体の構造に違和感を持つ。
全身の傷と同じように戦いの中で失ったものかと思ったが、すぐに、片腕を失ってからそれなりの時間が経過していることに気付いた。
光魔法で治せない訳では無いが、ただでさえ瀕死の彼女に欠損した四肢の修復まで行うのは身体への負担が大きいと考え、ひとまず今は傷の回復に集中することにした。
---
0
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説
女子高生、女魔王の妻になる
あかべこ
ファンタジー
「君が私の妻になってくれるならこの世界を滅ぼさないであげる」
漆黒の角と翼を持つ謎めいた女性に突如そんな求婚を求められた女子高生・山里恵奈は、家族と世界の平穏のために嫁入りをすることに。
つよつよ美人の魔王と平凡女子高生のファンタジー百合です。
君は今日から美少女だ
藤
恋愛
高校一年生の恵也は友人たちと過ごす時間がずっと続くと思っていた。しかし日常は一瞬にして恵也の考えもしない形で変わることになった。女性になってしまった恵也は戸惑いながらもそのまま過ごすと覚悟を決める。しかしその覚悟の裏で友人たちの今までにない側面が見えてきて……
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話
赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。
前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
声楽学園日記~女体化魔法少女の僕が劣等生男子の才能を開花させ、成り上がらせたら素敵な旦那様に!~
卯月らいな
ファンタジー
魔法が歌声によって操られる世界で、男性の声は攻撃や祭事、狩猟に、女性の声は補助や回復、農業に用いられる。男女が合唱することで魔法はより強力となるため、魔法学園では入学時にペアを組む風習がある。
この物語は、エリック、エリーゼ、アキラの三人の主人公の群像劇である。
エリーゼは、新聞記者だった父が、議員のスキャンダルを暴く過程で不当に命を落とす。父の死後、エリーゼは母と共に貧困に苦しみ、社会の底辺での生活を余儀なくされる。この経験から彼女は運命を変え、父の死に関わった者への復讐を誓う。だが、直接復讐を果たす力は彼女にはない。そこで、魔法の力を最大限に引き出し、社会の頂点へと上り詰めるため、魔法学園での地位を確立する計画を立てる。
魔法学園にはエリックという才能あふれる生徒がおり、彼は入学から一週間後、同級生エリーゼの禁じられた魔法によって彼女と体が入れ替わる。この予期せぬ出来事をきっかけに、元々女声魔法の英才教育を受けていたエリックは女性として女声の魔法をマスターし、新たな男声パートナー、アキラと共に高みを目指すことを誓う。
アキラは日本から来た異世界転生者で、彼の世界には存在しなかった歌声の魔法に最初は馴染めなかったが、エリックとの多くの試練を経て、隠された音楽の才能を開花させる。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ロリストーカー 【百合】
わまり
恋愛
R-15(有りだけどそこまでではないので)
誰もが性癖を持って生きている、青春時代。恋の対象は年齢なんて関係なくて…?
視線を感じて振り向くはロリ、
寂しがり屋なロリ、性癖の多い女の子。
個性豊かな登場人物が作り出す、ロリ×JKの百合物語!
時折Hな表現や性癖を含みます。
(この話は「短編小説パンドラ」からロリストーカーだけを切り離したものになります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる