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第3章:水の心臓編
057 ダンジョンへの道
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「……プハーッ! 生き返るなぁ!」
コップから口を離したフレアは、明るい声でそう言った。
それに笑いつつ、私はコップに口を付け、中に入った水をコクコクと飲んだ。
一日半の移動を経て、ようやく私達はリブラの首都リブラへと辿り着いた。
早速オアシスの調査をしたかったのだが、長い移動で喉が渇いていたので、先に水分補給を兼ねて食事をとることにした。
一応飲み物を全く持ってなかったわけではなかったのだが、調子に乗って飲みすぎるとすぐに無くなってしまうと判断し、節約してきた。
砂漠地帯は、気温が高い上に全体的に空気も乾燥している為、普通に過ごしているだけで喉が渇く。
喉が渇いたからと計画も立てずに飲んでいたらすぐに無くなって、脱水症状になってしまう。
「……しかし、これが水の心臓からの魔力で出来ていると思うと、何だか癪じゃのう」
私の隣で水を飲んでいたリートは、そう言いながら軽くコップを回して、中に入った水を見つめた。
それに、フレアは「気にしたら負けだろ」と言いながら、水を飲んだ。
「……そういえば、私達が水の心臓を回収しちゃったら、この町の人達って困らないのかな?」
なんとなく気になり、私はそう聞いてみた。
すると、リートはコップを置いて「知らぬ」と言い放った。
「知らぬ、って……」
「この国の情勢事情など、妾達には関係無いであろう? ……まぁ、仮にオアシスの水源が無くなったとしても、何とかするじゃろう。一応は、砂漠の民なのじゃからな」
リートがそう言った時、店員さんが「お待たせしました」と言って、頼んだ料理を持って来る。
私達が今回注文したのは、日替わりランチのような感じの定食だった。
今日のソレは魚料理がメインのようで、焼いた魚丸々一匹に、野菜の煮物のようなものが入った小鉢とパンとスープだった。
……米と味噌汁が欲しくなるメニューだな。
この世界では、パンと麺類が主流で、米はあまり有名ではないのだろうか?
いやでも、ヴォルノでルーヌイを食べた時に、店内にいたお客さんが残ったスープに米を投入しているのを見たことがあるぞ。
気候の問題で育てられないのだろうか……? それならいっそのこと、ガッツリ洋食が良かったな。
内心では文句を言いつつも口には出さず、私は定食を食べた。
主食に不満はあれど、定食自体は美味だったし、パンとスープでも悪くは無かった。
ただ、この和食風な定食はフレアの舌には合わないのか、どこか不満そうだった。
後から聞いた話によると、この定食は味が薄くて物足りないらしい。
……まぁ、和食はそういうものだしね。
意外だったのは、リートが割とこの定食を気に入っている様子だったことか。
彼女曰く、元々刺激物とか味の濃いものなどは食べられない方だったので、むしろこういう味付けの方が口に合うらしい。
食事を終えた私達は、その足でオアシスに向かった。
町のど真ん中に、まるでドーナツの穴のようにポッカリと大きく空いた場所があり、そこには大きな湖のようなものがあった。
恐らく、これがオアシスだろう。
分かりやすかった為に町に着いた瞬間から見えていて、今更探す必要も無かった。
「……これがオアシスとやらか」
湖を見下ろしながら、リートがそう呟く。
まぁ、それで間違いないだろう。
フレアも腰に手を当て、湖を見渡しながら「だな」と答えた。
「水の心臓の反応もこの辺からするし、間違い無いだろ。……デッケェ」
「ふむ……見張りなどは特におらんみたいじゃな」
湖周りを見回しながら言うリートに、私は周りを軽く見渡した。
彼女の言う通り、厳重に管理されたり見張りがいたりする様子も無いようだ。
フレアもそれを確認し、「うしっ」と小さく声を上げた。
「これなら、明日にはダンジョン攻略に行けそうだな」
「そうじゃな。……ところで、ダンジョンの入り口はどこじゃ?」
リートの言葉に、私は「そういえば」と言いながら、湖を見た。
しかし、パッと見ダンジョンの入り口らしきものは見つからず、町の真ん中にポツリとまん丸い湖があるだけの光景が広がっていた。
そこで、二人には心臓がある場所への道が分かることを思い出し、すぐに彼女等に視線を向けた。
「二人の力で探せないの? 心臓の所に行くまでの道筋、とか……」
「……分からなくは無いが、なんていうか……」
「反応が薄い、んだよな……」
珍しく歯切れの悪い語調で言う二人の様子に、私は「えっ?」と聞き返す。
すると、フレアはガシガシと頭を乱雑に掻きながら、困った様子で続けた。
「なんつーか、なんとなく方向は分かるんだけど、正確な道が分かんねぇんだよな」
「右に同じ、じゃ。……ダンジョンの入り口なぞ危ないだけじゃし、埋めたのかもしれんのう」
「う、埋めた……!?」
サラッと言うリートに、私はつい聞き返す。
すると、彼女は「当然であろう」と言った。
「妾達にとってこの国の奴等がどうでも良いのと同じように、この国の奴等にとっても、あの心臓はどうでも良いのじゃ。……危険なダンジョンへの入り口なんぞが町の中にあったら、埋めるなり何なりして隠すのが普通じゃ」
「……まっ、この国の奴等にとっては、水さえ手に入れられれば何でも良いだろうからな」
二人の言葉に、私は「なるほど……」と呟きながら、湖に視線を落とした。
まぁ、リートのいたダンジョンの入り口も封鎖されていたし、分からなくも無い。
しかし、埋めたとなると、ダンジョンに向かう術はいよいよ無いのではないか……?
同じことを考えたのか、リートは顎に手を当ててしばらく考え込むと、コクッと一度小さく頷いて口を開いた。
「イノセ、ちょっとこっち来い」
「……? 何?」
突然何なのかと思いつつも、私はリートの方に歩いて行った。
すると、彼女は私の袖を掴んで体を引き寄せ──「ちょッ……!?」──湖の中へと突き飛ばした。
驚いたのは一瞬のことで、すぐに視界が大きく回転し、バシャァッ! と大きな音と水飛沫を上げながら着水した。
視界に飛沫が映ったかと思うと、一気に息が苦しくなり、視界が効かなくなる。
咄嗟のことで息を止める間も無く、あっという間に鼻や口の中に水が入って来る。
驚いて、私はカッと目を見開く……が、水の中である為、すぐに水が入って来て目も開けていられなくなる。
しかし、すぐに何とか我に返り、慌てて水を掻いて体を浮かす。
「ブハァッ! ハァッ……ハァッ……!」
水から顔を出し、大きく呼吸を繰り返しながら、私はすぐに軽く泳いで近くの陸に手をついた。
ボタボタと髪から雫が落ちるのを視界に収めつつ、私は肩で息をしながら項垂れた。
すると、誰かが目の前に立つのが、気配で分かった。
「……ほれ、命令じゃ。ダンジョンの入り口を探してこい」
その言葉に、私はパッと顔を上げた。
するとそこでは、こちらを見下ろしているリートがいた。
よく見ると、彼女の傍にはフレアが立っており、その後ろでは通りすがりの方達が怪訝そうにこちらを見ていた。
「え? は……? ダンジョン?」
突然の言葉に、私はそう聞き返す。
すると、リートは小さく息をつき、続けた。
「もしかしたら、ダンジョンへの入り口がこの水の中にあるかもしれんじゃろう? 妾は泳いだことが無いし、探しに行って貰おうかと思ってのう」
「それは百歩譲って理解出来るけど……せめて一言くらい言ってくれない?」
「言ったら絶対拒否するであろう?」
「分かってるならやらないでよ」
私はそう言いつつ、顔に掛かる前髪を掻き上げた。
分かってるならなんで人を水に突き落とすかな。
呆れていると、リートはポリポリと頬を掻きながら続けた。
「本当はフレアでも突き落とそうと考えたのじゃが、奴には力では勝てんしのう。イノセがちょうど良かったのじゃ」
「……私には勝てるもんね」
悪びれることも無く言うリートに、私はそう答えながら苦笑した。
まぁ、奴隷と主人の主従関係のおかげで、リートには力関係では完全に負けるからな。
そんな風に考えつつ顔に付いた水を手で拭っていた時、フレアに腕を掴まれた。
「ほら、いつまで水ん中にいんだよ。上がってこい」
「あ、うん……」
呆れた様子で言いながら、彼女は私の体を引き上げてくれる。
ひとまずポタポタと雫を滴り落としながら陸に上がると、なんだか足から力が抜け、その場にへたり込んだ。
すると、リートが道具袋からタオルを出してくれるので、ひとまずそれを受け取って体を拭く。
「……でも、パッと見この中に入り口はねぇだろ。俺達の能力も、水くらいなら余裕で通すだろうし」
「ふむ……じゃが、どこかに埋められているとなると、どっちにしろダンジョンに入れんしのう。参ったな」
リートはそう言いながらタオルをもう一枚取り出し、私の髪に当て、わしゃわしゃと拭き始める。
あ、これは割と気持ち良い。
「……ま、今は誰かさんのせいでイノセもこんな状態だし、今日は宿屋に行って休むか」
「……悪かったのう」
「気にしてないから大丈夫だよ」
珍しく素直に謝ってくるリートに戸惑いつつも、そう答えておいた。
まぁ、ある意味奴隷の使い方としては正しいものでもあるし。
……久々に奴隷らしい扱いを受けて、戸惑いはあったけど。
とは言え、フレアの言う通りこれ以上ここで色々話していても答えは見つからなさそうだし、今日はもう休んでしまった方が良いかもしれない。
明日また、ゆっくり調査すれば良いのだし。
私はある程度水が拭えたことを確認すると、ゆっくりと立ち上がった。
それから、三人で宿屋に向かって歩き出した。
コップから口を離したフレアは、明るい声でそう言った。
それに笑いつつ、私はコップに口を付け、中に入った水をコクコクと飲んだ。
一日半の移動を経て、ようやく私達はリブラの首都リブラへと辿り着いた。
早速オアシスの調査をしたかったのだが、長い移動で喉が渇いていたので、先に水分補給を兼ねて食事をとることにした。
一応飲み物を全く持ってなかったわけではなかったのだが、調子に乗って飲みすぎるとすぐに無くなってしまうと判断し、節約してきた。
砂漠地帯は、気温が高い上に全体的に空気も乾燥している為、普通に過ごしているだけで喉が渇く。
喉が渇いたからと計画も立てずに飲んでいたらすぐに無くなって、脱水症状になってしまう。
「……しかし、これが水の心臓からの魔力で出来ていると思うと、何だか癪じゃのう」
私の隣で水を飲んでいたリートは、そう言いながら軽くコップを回して、中に入った水を見つめた。
それに、フレアは「気にしたら負けだろ」と言いながら、水を飲んだ。
「……そういえば、私達が水の心臓を回収しちゃったら、この町の人達って困らないのかな?」
なんとなく気になり、私はそう聞いてみた。
すると、リートはコップを置いて「知らぬ」と言い放った。
「知らぬ、って……」
「この国の情勢事情など、妾達には関係無いであろう? ……まぁ、仮にオアシスの水源が無くなったとしても、何とかするじゃろう。一応は、砂漠の民なのじゃからな」
リートがそう言った時、店員さんが「お待たせしました」と言って、頼んだ料理を持って来る。
私達が今回注文したのは、日替わりランチのような感じの定食だった。
今日のソレは魚料理がメインのようで、焼いた魚丸々一匹に、野菜の煮物のようなものが入った小鉢とパンとスープだった。
……米と味噌汁が欲しくなるメニューだな。
この世界では、パンと麺類が主流で、米はあまり有名ではないのだろうか?
いやでも、ヴォルノでルーヌイを食べた時に、店内にいたお客さんが残ったスープに米を投入しているのを見たことがあるぞ。
気候の問題で育てられないのだろうか……? それならいっそのこと、ガッツリ洋食が良かったな。
内心では文句を言いつつも口には出さず、私は定食を食べた。
主食に不満はあれど、定食自体は美味だったし、パンとスープでも悪くは無かった。
ただ、この和食風な定食はフレアの舌には合わないのか、どこか不満そうだった。
後から聞いた話によると、この定食は味が薄くて物足りないらしい。
……まぁ、和食はそういうものだしね。
意外だったのは、リートが割とこの定食を気に入っている様子だったことか。
彼女曰く、元々刺激物とか味の濃いものなどは食べられない方だったので、むしろこういう味付けの方が口に合うらしい。
食事を終えた私達は、その足でオアシスに向かった。
町のど真ん中に、まるでドーナツの穴のようにポッカリと大きく空いた場所があり、そこには大きな湖のようなものがあった。
恐らく、これがオアシスだろう。
分かりやすかった為に町に着いた瞬間から見えていて、今更探す必要も無かった。
「……これがオアシスとやらか」
湖を見下ろしながら、リートがそう呟く。
まぁ、それで間違いないだろう。
フレアも腰に手を当て、湖を見渡しながら「だな」と答えた。
「水の心臓の反応もこの辺からするし、間違い無いだろ。……デッケェ」
「ふむ……見張りなどは特におらんみたいじゃな」
湖周りを見回しながら言うリートに、私は周りを軽く見渡した。
彼女の言う通り、厳重に管理されたり見張りがいたりする様子も無いようだ。
フレアもそれを確認し、「うしっ」と小さく声を上げた。
「これなら、明日にはダンジョン攻略に行けそうだな」
「そうじゃな。……ところで、ダンジョンの入り口はどこじゃ?」
リートの言葉に、私は「そういえば」と言いながら、湖を見た。
しかし、パッと見ダンジョンの入り口らしきものは見つからず、町の真ん中にポツリとまん丸い湖があるだけの光景が広がっていた。
そこで、二人には心臓がある場所への道が分かることを思い出し、すぐに彼女等に視線を向けた。
「二人の力で探せないの? 心臓の所に行くまでの道筋、とか……」
「……分からなくは無いが、なんていうか……」
「反応が薄い、んだよな……」
珍しく歯切れの悪い語調で言う二人の様子に、私は「えっ?」と聞き返す。
すると、フレアはガシガシと頭を乱雑に掻きながら、困った様子で続けた。
「なんつーか、なんとなく方向は分かるんだけど、正確な道が分かんねぇんだよな」
「右に同じ、じゃ。……ダンジョンの入り口なぞ危ないだけじゃし、埋めたのかもしれんのう」
「う、埋めた……!?」
サラッと言うリートに、私はつい聞き返す。
すると、彼女は「当然であろう」と言った。
「妾達にとってこの国の奴等がどうでも良いのと同じように、この国の奴等にとっても、あの心臓はどうでも良いのじゃ。……危険なダンジョンへの入り口なんぞが町の中にあったら、埋めるなり何なりして隠すのが普通じゃ」
「……まっ、この国の奴等にとっては、水さえ手に入れられれば何でも良いだろうからな」
二人の言葉に、私は「なるほど……」と呟きながら、湖に視線を落とした。
まぁ、リートのいたダンジョンの入り口も封鎖されていたし、分からなくも無い。
しかし、埋めたとなると、ダンジョンに向かう術はいよいよ無いのではないか……?
同じことを考えたのか、リートは顎に手を当ててしばらく考え込むと、コクッと一度小さく頷いて口を開いた。
「イノセ、ちょっとこっち来い」
「……? 何?」
突然何なのかと思いつつも、私はリートの方に歩いて行った。
すると、彼女は私の袖を掴んで体を引き寄せ──「ちょッ……!?」──湖の中へと突き飛ばした。
驚いたのは一瞬のことで、すぐに視界が大きく回転し、バシャァッ! と大きな音と水飛沫を上げながら着水した。
視界に飛沫が映ったかと思うと、一気に息が苦しくなり、視界が効かなくなる。
咄嗟のことで息を止める間も無く、あっという間に鼻や口の中に水が入って来る。
驚いて、私はカッと目を見開く……が、水の中である為、すぐに水が入って来て目も開けていられなくなる。
しかし、すぐに何とか我に返り、慌てて水を掻いて体を浮かす。
「ブハァッ! ハァッ……ハァッ……!」
水から顔を出し、大きく呼吸を繰り返しながら、私はすぐに軽く泳いで近くの陸に手をついた。
ボタボタと髪から雫が落ちるのを視界に収めつつ、私は肩で息をしながら項垂れた。
すると、誰かが目の前に立つのが、気配で分かった。
「……ほれ、命令じゃ。ダンジョンの入り口を探してこい」
その言葉に、私はパッと顔を上げた。
するとそこでは、こちらを見下ろしているリートがいた。
よく見ると、彼女の傍にはフレアが立っており、その後ろでは通りすがりの方達が怪訝そうにこちらを見ていた。
「え? は……? ダンジョン?」
突然の言葉に、私はそう聞き返す。
すると、リートは小さく息をつき、続けた。
「もしかしたら、ダンジョンへの入り口がこの水の中にあるかもしれんじゃろう? 妾は泳いだことが無いし、探しに行って貰おうかと思ってのう」
「それは百歩譲って理解出来るけど……せめて一言くらい言ってくれない?」
「言ったら絶対拒否するであろう?」
「分かってるならやらないでよ」
私はそう言いつつ、顔に掛かる前髪を掻き上げた。
分かってるならなんで人を水に突き落とすかな。
呆れていると、リートはポリポリと頬を掻きながら続けた。
「本当はフレアでも突き落とそうと考えたのじゃが、奴には力では勝てんしのう。イノセがちょうど良かったのじゃ」
「……私には勝てるもんね」
悪びれることも無く言うリートに、私はそう答えながら苦笑した。
まぁ、奴隷と主人の主従関係のおかげで、リートには力関係では完全に負けるからな。
そんな風に考えつつ顔に付いた水を手で拭っていた時、フレアに腕を掴まれた。
「ほら、いつまで水ん中にいんだよ。上がってこい」
「あ、うん……」
呆れた様子で言いながら、彼女は私の体を引き上げてくれる。
ひとまずポタポタと雫を滴り落としながら陸に上がると、なんだか足から力が抜け、その場にへたり込んだ。
すると、リートが道具袋からタオルを出してくれるので、ひとまずそれを受け取って体を拭く。
「……でも、パッと見この中に入り口はねぇだろ。俺達の能力も、水くらいなら余裕で通すだろうし」
「ふむ……じゃが、どこかに埋められているとなると、どっちにしろダンジョンに入れんしのう。参ったな」
リートはそう言いながらタオルをもう一枚取り出し、私の髪に当て、わしゃわしゃと拭き始める。
あ、これは割と気持ち良い。
「……ま、今は誰かさんのせいでイノセもこんな状態だし、今日は宿屋に行って休むか」
「……悪かったのう」
「気にしてないから大丈夫だよ」
珍しく素直に謝ってくるリートに戸惑いつつも、そう答えておいた。
まぁ、ある意味奴隷の使い方としては正しいものでもあるし。
……久々に奴隷らしい扱いを受けて、戸惑いはあったけど。
とは言え、フレアの言う通りこれ以上ここで色々話していても答えは見つからなさそうだし、今日はもう休んでしまった方が良いかもしれない。
明日また、ゆっくり調査すれば良いのだし。
私はある程度水が拭えたことを確認すると、ゆっくりと立ち上がった。
それから、三人で宿屋に向かって歩き出した。
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