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第1章:奴隷契約編
019 出来ることと出来ないこと
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ダンジョン内を歩きながら、リートの出来ること、出来ないことについて説明を聞いた。
まず、彼女の色々な知識については、彼女自身は豊富な方であると自負しているらしい。
彼女がまだごく普通の人間だった頃から本を読む方だったらしく、ダンジョンに封印されてからは、たまに迷い込んでくる冒険者が本を持っていると、それを読んで知識を蓄えていったそうだ。
とはいえ、それでも彼女の知識には偏りがあるし、最近のこの世界の情勢や地理などは分からない部分が多い。
それから、魔法について。
禁忌を犯すことで、リートの魔力や魔法適性は膨大なものとなっていた。
そして、普通なら二つしかないはずの適合属性が、全属性使用可能となった。
しかし、心臓の分裂によりその属性も分裂し、彼女の現在の適合属性は闇属性のみとなっている。
つまり、魔力は高いが、闇魔法以外は使えないという状態なのだとか。
あとは、あくまで強力なのは魔力のみで、体自体はあまり強くない……いや、むしろ弱い方らしい。
不老不死と言われているが、それでも近接攻撃をされれば太刀打ちは出来ない。
オマケに、心臓が核のようなものらしく、心臓を破壊されれば自力では再生することが出来ずに死んでしまうそうだ。
しかも、今は心臓が七分の一しか無いために、余計に肉体の再生能力等も下がっているというわけだ。
「つまり、今ここで私がリートの心臓を破壊して逃げれば奴隷として仕えなくて済む、と……?」
「じゃから妾を攻撃出来ない能力にしたのじゃ。あと、奴隷契約さえ済ませれば奴隷は主に攻撃できぬからのぅ」
「……抜かりないですね」
どこか誇らしげに言うリートに、私はそう返した。
それで奴隷の剣ってわけね……ていうか、何気にオーバーフローの願いも弄られてるし……。
何だよ、リートの奴隷になりたいって。
とはいえ、ステータスについては、奴隷の剣関連以外はあまり気にならなかった。
能力値は全体的に莫大に上がっているし、スキルも何だか強そうなものに変わっている。
リート曰く、東雲と葛西の指輪に入っていた力を、全て私の力として還元されるように指輪を改造したらしい。
HP等の数値的なものは、そのまま私の能力値が上がるように。
スキルは私の覚えていたものも含め、全てレベルを上げる経験値に還元された。
適合属性はそのまま引き継がれ、二人の適合属性に加えてリートの唯一の適合属性である闇も含めた七種類が、私が使える属性らしい。
ただ、スキルについては本当にどうしようもないらしく、リートの魔力を注ぐことで闇属性のスキルのみを覚えている状況なのだとか。
ちなみに、個人的に慣れ親しんだソードシールドは防御力の底上げスキルのようなものなので、こういった適合属性関連の縛りからは逃れている。
……しかし、形はどうであれ、こうしてチートのような強さを手に入れるとなんだかワクワクする。
スキルは見たこと無いものばかりだが、まぁ、使っていれば覚えられるだろう。
リートの奴隷としてではあるが、これからは、この力を使って無双できるのか。
そう考えると、胸が高鳴ってくる。
「あぁ、そうそう」
すると、リートが何かを思い出したように口を開く。
それに視線を向けると、彼女はピシッと私を指さして口を開いた。
「しばらくの間は、お主はそのスキルの使用は禁止じゃ」
「……はぁッ!?」
まさかの言葉に、私は素っ頓狂な声を上げてしまう。
すると、彼女はどこか得意げに指を立てて続けた。
「お主の使えるスキルは、今は闇属性のものばかりであろう?」
「……まぁ……はい……」
「だからダメじゃ。妾は闇属性は好かん」
「んなッ……」
あまりにも横暴で理不尽な命令に、私は口を開けてしばらく固まった。
しかし、とあることに気付き、私は慌てて口を開く。
「で、でも……リートが使える魔法も闇属性だけでしょ!? ステータスが高い私ならともかく、魔法を使わないとなると苦戦するんじゃ……」
「自分で使うのは別に良い。じゃが、人が使うのを見るのは不愉快じゃ」
「なッ……」
横暴に横暴を重ねるような身勝手な言葉に、私はいよいよ言葉を失う。
口をパクパクとさせることしか出来ずにいると、リートは私の顔を見上げ、ゆっくりと続ける。
「何じゃ? 何か文句あるか?」
「……文句しかありませんけど……」
「ほう……では、残念じゃったのぅ」
そう言いながら、リートは少し早歩きで私の前まで回り込む。
咄嗟に立ち止まろうとするも、そうすぐに止まることは出来ず、リートの突き出した指に胸が当たる。
それでようやく足を止めると、彼女は私の顔を見上げ、ニヤリと怪しい笑みを浮かべた。
「奴隷に拒否権は無いぞ? イノセ」
……完敗だ。
良く考えれば、そうか……私はこの人の奴隷なんだっけ。
これからこんな理不尽な命令に従っていかなければならないと考えると、何だか頭が痛くなってくる。
彼女の復讐とやらを果たすまで、私は正気を保っていられるだろうか……。
一人頭を悩ませていると、リートは「そうじゃ」と言いながら、私の左手を取った。
「この指輪、妾の許可無く外してはならんぞ」
「……? 別に良いけど……なんで?」
リートの言葉に、私はそう聞き返す。
右手に付けている指輪のおかげで、指輪自体には慣れているし、別に気になるものでもない。
外すなと言われて困りはしないが、理由が気になる。
私の言葉に、リートは私の手を離し、続けた。
「この魔道具は色々と複雑で繊細じゃからのぅ。強引に外すと、お主の体にどんな影響が出るか分からぬ」
「へぇ……」
リートの言葉に、私はそう小さく呟いた。
まぁでも、納得は出来る。
異世界の人間の内に秘めた力を引き出すってだけでも色々複雑そうな上に、東雲や葛西の指輪に残っていた力を私の力に還元しているのだ。
魔道具のことなんてチンプンカンプンだけど、外さない方が良いということだけは分かる。
私は左手を強く握り締め、ゆっくりと頷いた。
「分かった。絶対外さないよ」
「……それで良い」
私の言葉に、リートはそう言って小さく笑みを浮かべる。
しかし……と、私は辺りを見渡す。
これだけのんびりと話しながら、まるで散歩のように歩いているにも関わらず、魔物が一向に襲って来ない。
不思議に思う私に気付いたのか、リートが「どうした?」と聞いて来る。
それに、私は「いや」と口を開く。
「なんていうか……魔物が全然いないなぁ、と思って」
「……あぁ。それなら、多分妾を恐れているのだろう」
「リートを?」
つい聞き返すと、彼女は「うむ」と頷いた。
「まぁ、妾だってずっとあの部屋に籠っているわけにもいかないからのぉ。たまに出歩く時に魔物に会った時に闇魔法で対抗しておったら、すっかり恐れられて近寄られんくなったわい」
その言葉に、私がカマキリに殺されかけていた時に、あのカマキリがリートを見て逃げ出したのを思い出す。
なるほどね……闇魔法で無双しまくった結果、魔物に恐れられる存在になったわけか。
……あれ? これ、やっぱり私がリートの奴隷になった意味無くね?
「……ん?」
その時、遠くにとあるものを見つけ、私はその場で立ち止まった。
すると、リートはそれより数歩程度前に歩いてから足を止め、こちらに振り向いた。
「イノセ? どうしたのじゃ?」
「いや……あれ……」
私はそう言いながら、目の前のソレを指さした。
すると、リートは私が指さした方向に視線を向ける。
薄暗い通路の奥に見えたのは……巨大なカマキリが、誰か人間を殺そうとしている現場だった。
まず、彼女の色々な知識については、彼女自身は豊富な方であると自負しているらしい。
彼女がまだごく普通の人間だった頃から本を読む方だったらしく、ダンジョンに封印されてからは、たまに迷い込んでくる冒険者が本を持っていると、それを読んで知識を蓄えていったそうだ。
とはいえ、それでも彼女の知識には偏りがあるし、最近のこの世界の情勢や地理などは分からない部分が多い。
それから、魔法について。
禁忌を犯すことで、リートの魔力や魔法適性は膨大なものとなっていた。
そして、普通なら二つしかないはずの適合属性が、全属性使用可能となった。
しかし、心臓の分裂によりその属性も分裂し、彼女の現在の適合属性は闇属性のみとなっている。
つまり、魔力は高いが、闇魔法以外は使えないという状態なのだとか。
あとは、あくまで強力なのは魔力のみで、体自体はあまり強くない……いや、むしろ弱い方らしい。
不老不死と言われているが、それでも近接攻撃をされれば太刀打ちは出来ない。
オマケに、心臓が核のようなものらしく、心臓を破壊されれば自力では再生することが出来ずに死んでしまうそうだ。
しかも、今は心臓が七分の一しか無いために、余計に肉体の再生能力等も下がっているというわけだ。
「つまり、今ここで私がリートの心臓を破壊して逃げれば奴隷として仕えなくて済む、と……?」
「じゃから妾を攻撃出来ない能力にしたのじゃ。あと、奴隷契約さえ済ませれば奴隷は主に攻撃できぬからのぅ」
「……抜かりないですね」
どこか誇らしげに言うリートに、私はそう返した。
それで奴隷の剣ってわけね……ていうか、何気にオーバーフローの願いも弄られてるし……。
何だよ、リートの奴隷になりたいって。
とはいえ、ステータスについては、奴隷の剣関連以外はあまり気にならなかった。
能力値は全体的に莫大に上がっているし、スキルも何だか強そうなものに変わっている。
リート曰く、東雲と葛西の指輪に入っていた力を、全て私の力として還元されるように指輪を改造したらしい。
HP等の数値的なものは、そのまま私の能力値が上がるように。
スキルは私の覚えていたものも含め、全てレベルを上げる経験値に還元された。
適合属性はそのまま引き継がれ、二人の適合属性に加えてリートの唯一の適合属性である闇も含めた七種類が、私が使える属性らしい。
ただ、スキルについては本当にどうしようもないらしく、リートの魔力を注ぐことで闇属性のスキルのみを覚えている状況なのだとか。
ちなみに、個人的に慣れ親しんだソードシールドは防御力の底上げスキルのようなものなので、こういった適合属性関連の縛りからは逃れている。
……しかし、形はどうであれ、こうしてチートのような強さを手に入れるとなんだかワクワクする。
スキルは見たこと無いものばかりだが、まぁ、使っていれば覚えられるだろう。
リートの奴隷としてではあるが、これからは、この力を使って無双できるのか。
そう考えると、胸が高鳴ってくる。
「あぁ、そうそう」
すると、リートが何かを思い出したように口を開く。
それに視線を向けると、彼女はピシッと私を指さして口を開いた。
「しばらくの間は、お主はそのスキルの使用は禁止じゃ」
「……はぁッ!?」
まさかの言葉に、私は素っ頓狂な声を上げてしまう。
すると、彼女はどこか得意げに指を立てて続けた。
「お主の使えるスキルは、今は闇属性のものばかりであろう?」
「……まぁ……はい……」
「だからダメじゃ。妾は闇属性は好かん」
「んなッ……」
あまりにも横暴で理不尽な命令に、私は口を開けてしばらく固まった。
しかし、とあることに気付き、私は慌てて口を開く。
「で、でも……リートが使える魔法も闇属性だけでしょ!? ステータスが高い私ならともかく、魔法を使わないとなると苦戦するんじゃ……」
「自分で使うのは別に良い。じゃが、人が使うのを見るのは不愉快じゃ」
「なッ……」
横暴に横暴を重ねるような身勝手な言葉に、私はいよいよ言葉を失う。
口をパクパクとさせることしか出来ずにいると、リートは私の顔を見上げ、ゆっくりと続ける。
「何じゃ? 何か文句あるか?」
「……文句しかありませんけど……」
「ほう……では、残念じゃったのぅ」
そう言いながら、リートは少し早歩きで私の前まで回り込む。
咄嗟に立ち止まろうとするも、そうすぐに止まることは出来ず、リートの突き出した指に胸が当たる。
それでようやく足を止めると、彼女は私の顔を見上げ、ニヤリと怪しい笑みを浮かべた。
「奴隷に拒否権は無いぞ? イノセ」
……完敗だ。
良く考えれば、そうか……私はこの人の奴隷なんだっけ。
これからこんな理不尽な命令に従っていかなければならないと考えると、何だか頭が痛くなってくる。
彼女の復讐とやらを果たすまで、私は正気を保っていられるだろうか……。
一人頭を悩ませていると、リートは「そうじゃ」と言いながら、私の左手を取った。
「この指輪、妾の許可無く外してはならんぞ」
「……? 別に良いけど……なんで?」
リートの言葉に、私はそう聞き返す。
右手に付けている指輪のおかげで、指輪自体には慣れているし、別に気になるものでもない。
外すなと言われて困りはしないが、理由が気になる。
私の言葉に、リートは私の手を離し、続けた。
「この魔道具は色々と複雑で繊細じゃからのぅ。強引に外すと、お主の体にどんな影響が出るか分からぬ」
「へぇ……」
リートの言葉に、私はそう小さく呟いた。
まぁでも、納得は出来る。
異世界の人間の内に秘めた力を引き出すってだけでも色々複雑そうな上に、東雲や葛西の指輪に残っていた力を私の力に還元しているのだ。
魔道具のことなんてチンプンカンプンだけど、外さない方が良いということだけは分かる。
私は左手を強く握り締め、ゆっくりと頷いた。
「分かった。絶対外さないよ」
「……それで良い」
私の言葉に、リートはそう言って小さく笑みを浮かべる。
しかし……と、私は辺りを見渡す。
これだけのんびりと話しながら、まるで散歩のように歩いているにも関わらず、魔物が一向に襲って来ない。
不思議に思う私に気付いたのか、リートが「どうした?」と聞いて来る。
それに、私は「いや」と口を開く。
「なんていうか……魔物が全然いないなぁ、と思って」
「……あぁ。それなら、多分妾を恐れているのだろう」
「リートを?」
つい聞き返すと、彼女は「うむ」と頷いた。
「まぁ、妾だってずっとあの部屋に籠っているわけにもいかないからのぉ。たまに出歩く時に魔物に会った時に闇魔法で対抗しておったら、すっかり恐れられて近寄られんくなったわい」
その言葉に、私がカマキリに殺されかけていた時に、あのカマキリがリートを見て逃げ出したのを思い出す。
なるほどね……闇魔法で無双しまくった結果、魔物に恐れられる存在になったわけか。
……あれ? これ、やっぱり私がリートの奴隷になった意味無くね?
「……ん?」
その時、遠くにとあるものを見つけ、私はその場で立ち止まった。
すると、リートはそれより数歩程度前に歩いてから足を止め、こちらに振り向いた。
「イノセ? どうしたのじゃ?」
「いや……あれ……」
私はそう言いながら、目の前のソレを指さした。
すると、リートは私が指さした方向に視線を向ける。
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