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引きこもりは読書中
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誘拐されてから10日経過しました。
窓から眺める街の景色は今日も美しいです。
飛び降りと逃走防止で、バルコニーに出ることができないのが惜しいほどに。
「いつまでこうしていればいいのかしら?」
「今しばらくお待ちください」
私を開放するよう誘拐犯に働きかけているシリアに聞いても、ここ数日はずっと同じ返事です。
最初の頃「刺激し過ぎると何をしでかすかわからない」と言われたので、大人しくシリアの成果がでるのを待つしかないですけど。
指定された部屋から出られない私には困っていることが山のようにありますけど、新たな悩みの1つが「アルと呼んで欲しい」と誘拐犯から言われるようになったことです。
なぜ、誘拐された私が、誘拐犯を名で呼ばなければならないのでしょうか?
サリーナと名前で呼んでほしいとお願いした時、フレッドは「お嬢様とは身分が違います。名を呼ぶのは不敬になりますから」と拒絶したことがあります。
あの頃はフレッドも我が家に来たばかりで他人行儀でしたし、他に通いで来ている使用人や町の人にも冷たい態度だったので仕方がないですけど、親しくなってからも、名前で呼ばれたことはありません。
他の人はサリーナお嬢さんとか、サリーナ様と呼んでいるので「平民が貴族の名前を言っちゃいけないっていうのは嘘だ」と面と向かって指摘しても、なんだかんだ理由をつけて「お姫さん」と呼び始めたほど。
自分は平民だから、なんて言っていた男が、貴族よりも余程贅沢な暮らしぶりを見せつけながら、私に対して名を呼んで欲しいと請い願う。なんて滑稽な。
アルと名乗る顔を半分隠した誘拐犯、どう見ても聞いてもフレッドにしか思えない誘拐犯。
囚われた私がお前にサリーナと呼んで欲しいと頼んだら、お前はどうするのかしら?
古参の護衛兵士が引退するのと交代して入ったフレッドは、簡単な調査で、違う町の出身の平民で借金や犯罪歴などないと判明したから雇い入れたはずの男。
毎日贅沢な食事を用意して、誘拐した娘のドレスをオーダーメイドで何着も注文し、流行りの物語を大量に買い与える資金を持ち、数部屋見ただけで広い屋敷だと確信する家の主人である男とは何もかも違い過ぎます。
アルという男はいったい、何者なのでしょう?
窓から眺める街の景色は今日も美しいです。
飛び降りと逃走防止で、バルコニーに出ることができないのが惜しいほどに。
「いつまでこうしていればいいのかしら?」
「今しばらくお待ちください」
私を開放するよう誘拐犯に働きかけているシリアに聞いても、ここ数日はずっと同じ返事です。
最初の頃「刺激し過ぎると何をしでかすかわからない」と言われたので、大人しくシリアの成果がでるのを待つしかないですけど。
指定された部屋から出られない私には困っていることが山のようにありますけど、新たな悩みの1つが「アルと呼んで欲しい」と誘拐犯から言われるようになったことです。
なぜ、誘拐された私が、誘拐犯を名で呼ばなければならないのでしょうか?
サリーナと名前で呼んでほしいとお願いした時、フレッドは「お嬢様とは身分が違います。名を呼ぶのは不敬になりますから」と拒絶したことがあります。
あの頃はフレッドも我が家に来たばかりで他人行儀でしたし、他に通いで来ている使用人や町の人にも冷たい態度だったので仕方がないですけど、親しくなってからも、名前で呼ばれたことはありません。
他の人はサリーナお嬢さんとか、サリーナ様と呼んでいるので「平民が貴族の名前を言っちゃいけないっていうのは嘘だ」と面と向かって指摘しても、なんだかんだ理由をつけて「お姫さん」と呼び始めたほど。
自分は平民だから、なんて言っていた男が、貴族よりも余程贅沢な暮らしぶりを見せつけながら、私に対して名を呼んで欲しいと請い願う。なんて滑稽な。
アルと名乗る顔を半分隠した誘拐犯、どう見ても聞いてもフレッドにしか思えない誘拐犯。
囚われた私がお前にサリーナと呼んで欲しいと頼んだら、お前はどうするのかしら?
古参の護衛兵士が引退するのと交代して入ったフレッドは、簡単な調査で、違う町の出身の平民で借金や犯罪歴などないと判明したから雇い入れたはずの男。
毎日贅沢な食事を用意して、誘拐した娘のドレスをオーダーメイドで何着も注文し、流行りの物語を大量に買い与える資金を持ち、数部屋見ただけで広い屋敷だと確信する家の主人である男とは何もかも違い過ぎます。
アルという男はいったい、何者なのでしょう?
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