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ディディの事件簿 解決編
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ゆっくりと馬車が速度を落としてるのがわかった。
どうやら一度停車するらしい。
ドキドキしながら息をのんで待っていると、ガタっと音を立てて外のかんぬきが外された。
「長旅お疲れさまでした」
逆光だけどなんとなく笑っているのがわかる。
かんぬきを開けたのは、見たことのない制服を着た男だった。
「どちらさま?」
「申し訳ございません。名乗ることは禁じられています。けれどご安心ください。我らは陛下直属の騎士です」
差し出された手をとり、久しぶりに外へでると、きちんと仕立てられた制服に身を包んだ5名が膝をついて待っていた。
「多少予定を変更しましたが、ここまでくればもう安心です」
「はあ」
「サテラス国の間抜けどもは、今頃居もしない王女を探して右往左往していることでしょう」
「は?」
かんぬきを開けた騎士の顔を見上げると、さわやかーな笑顔を振りまいてくれた。わぁイケメン。でも今、そういうのいらない。
「あなたたちは、どこの誰なの」
「申し訳ありません。理由は様々ですが、今はまだお伝えできないのです」
「……我が国の騎士ではないのね?」
「困ります。あまりいじめないでください」
いじめないでって、つまり、私から質問はダメってこと?
「さて、今日はここで野宿となります。王女殿下は夕食後、再び馬車の中に戻っていただくことになります」
かんぬきの騎士が手を振ると、それまで膝をついていた残りの騎士がそれぞれ立ち上がる。
その中に二人、見覚えのある人物がいた。
最初に泊まってた宿でお世話になった男性と、今朝馬車に案内してくれた女性。二人とも立派な騎士の恰好をしていて、今なら平民だと勘違いすることもないだろう。なんだかまとう雰囲気まで違う気がする。
「彼らは情報収集を主に担当する者たちです。昨日今日は宿に潜り込んでいました。必要な物は彼らに頼めばすぐに手配してくれますから、便利に使ってください」
かんぬき騎士がそう言うと、男はぺこりと頭を下げてからふらっと他の騎士のもとへ行き、女性は私のそばへやってきた。
「女性同士の方が話しやすいでしょう? 私はしばらく離れていますね……王女殿下のおそばを離れるな」
「はっ!」
私に笑顔で話しかけたあと、女性騎士に厳しい目を向けて命令したかんぬき騎士は馬がつながれている場所へ移動した。その背中を目で追ったあと、残された女性騎士をあらためて見る。
「だましたのね」
「申し訳ございません」
「それで、今のあなたはどこのどなたかしら」
「申し訳ございません」
「……名前は?」
「申し訳ございません」
「馬車の中の果物は食べていいの」
「もちろんです。全て王女殿下のために用意致しました」
「あなたの事はなんと呼べばいいのかしら?」
一応会話をする気はあるようなので、せめて呼び名くらいは教えてくれてもいいじゃないかと詰め寄る。
「申し訳ございません。お許しください」
キリっとした顔で許しを請われても、イラつくだけだと初めて知った。
「陛下直属、ってどこの陛下かしら」
「申し訳ございません」
ずっとこの調子でいくつもりか、こちらの疑問には一切答える気がないらしい。
今朝は質問すれば笑顔で丁寧に教えてくれたってのに。
「お食事の用意ができました……あいにく料理の腕はいまいちな者の集まりなので、満足いただけないでしょうが、明日は宿をとりますので、今日のところはお許しください」
かんぬき騎士が他の騎士が用意した食事を手に持ち、戻ってきた。
私は馬車の中で食べなければいけないらしい。
馬車の中に戻ると、クッションの上に薄い毛布が用意されていた。
「申し訳ありませんが、夜はこの者と一緒にお過ごしください」
皿を受け取りに来たと思ったら、そのまま唯一の女性騎士が馬車の中に乗り込んできた。
「外へ出たいときは、必ず彼女をお連れください」
そして、またかんぬきが閉められた。
どうやら一度停車するらしい。
ドキドキしながら息をのんで待っていると、ガタっと音を立てて外のかんぬきが外された。
「長旅お疲れさまでした」
逆光だけどなんとなく笑っているのがわかる。
かんぬきを開けたのは、見たことのない制服を着た男だった。
「どちらさま?」
「申し訳ございません。名乗ることは禁じられています。けれどご安心ください。我らは陛下直属の騎士です」
差し出された手をとり、久しぶりに外へでると、きちんと仕立てられた制服に身を包んだ5名が膝をついて待っていた。
「多少予定を変更しましたが、ここまでくればもう安心です」
「はあ」
「サテラス国の間抜けどもは、今頃居もしない王女を探して右往左往していることでしょう」
「は?」
かんぬきを開けた騎士の顔を見上げると、さわやかーな笑顔を振りまいてくれた。わぁイケメン。でも今、そういうのいらない。
「あなたたちは、どこの誰なの」
「申し訳ありません。理由は様々ですが、今はまだお伝えできないのです」
「……我が国の騎士ではないのね?」
「困ります。あまりいじめないでください」
いじめないでって、つまり、私から質問はダメってこと?
「さて、今日はここで野宿となります。王女殿下は夕食後、再び馬車の中に戻っていただくことになります」
かんぬきの騎士が手を振ると、それまで膝をついていた残りの騎士がそれぞれ立ち上がる。
その中に二人、見覚えのある人物がいた。
最初に泊まってた宿でお世話になった男性と、今朝馬車に案内してくれた女性。二人とも立派な騎士の恰好をしていて、今なら平民だと勘違いすることもないだろう。なんだかまとう雰囲気まで違う気がする。
「彼らは情報収集を主に担当する者たちです。昨日今日は宿に潜り込んでいました。必要な物は彼らに頼めばすぐに手配してくれますから、便利に使ってください」
かんぬき騎士がそう言うと、男はぺこりと頭を下げてからふらっと他の騎士のもとへ行き、女性は私のそばへやってきた。
「女性同士の方が話しやすいでしょう? 私はしばらく離れていますね……王女殿下のおそばを離れるな」
「はっ!」
私に笑顔で話しかけたあと、女性騎士に厳しい目を向けて命令したかんぬき騎士は馬がつながれている場所へ移動した。その背中を目で追ったあと、残された女性騎士をあらためて見る。
「だましたのね」
「申し訳ございません」
「それで、今のあなたはどこのどなたかしら」
「申し訳ございません」
「……名前は?」
「申し訳ございません」
「馬車の中の果物は食べていいの」
「もちろんです。全て王女殿下のために用意致しました」
「あなたの事はなんと呼べばいいのかしら?」
一応会話をする気はあるようなので、せめて呼び名くらいは教えてくれてもいいじゃないかと詰め寄る。
「申し訳ございません。お許しください」
キリっとした顔で許しを請われても、イラつくだけだと初めて知った。
「陛下直属、ってどこの陛下かしら」
「申し訳ございません」
ずっとこの調子でいくつもりか、こちらの疑問には一切答える気がないらしい。
今朝は質問すれば笑顔で丁寧に教えてくれたってのに。
「お食事の用意ができました……あいにく料理の腕はいまいちな者の集まりなので、満足いただけないでしょうが、明日は宿をとりますので、今日のところはお許しください」
かんぬき騎士が他の騎士が用意した食事を手に持ち、戻ってきた。
私は馬車の中で食べなければいけないらしい。
馬車の中に戻ると、クッションの上に薄い毛布が用意されていた。
「申し訳ありませんが、夜はこの者と一緒にお過ごしください」
皿を受け取りに来たと思ったら、そのまま唯一の女性騎士が馬車の中に乗り込んできた。
「外へ出たいときは、必ず彼女をお連れください」
そして、またかんぬきが閉められた。
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