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”さんず”から”やみ”へ
七
しおりを挟むゆっくりゆっくり闇を移動する小さな光。
「……………………」
その間、何故か無言。
互いに黙ってしまって何とも気まずい。
匠────だよね?
言い知れぬ不安が過ぎった。
駅をでる前からずっと繋いでたんだし、違う人でした何てことないと思うけど…。
それに私が匠を間違えるはずない……。
うん。
大丈夫。
大丈夫…………多分。
なんだか自信が無くなってきちゃった。
ぼんやり匠の顔を照らそうと言うとき、匠の焦ったような声が耳を着いた。
それは私の腕を掴むのと同時にその胸へと顔を強く押しつけられる。
「きゃあ!!!??」
何が起きたかわからない。
ただ、やはり目の前の人物は匠だ。
顔は確認してないけど間違いない。
『沙耶!!!』
その声は確かに聞こえたから。
闇の中、抱き合う形の私達。
匠は焦っていた。
私の背後に………何か居た?
せわしなく、どくどくと波打つ匠の鼓動。
「匠?」
「っつ…黙って」
うん。
やっぱり匠だ。
「何か…いたの?」
「しっ!!」
話すなと口を塞がれて、どうすることもできない。
携帯の明かりを消せと耳元で囁かれて、無意識にすぐに明かりを消した私。
その後すぐに匠も明かりを消してしまう。
「明かりなしで行こう……」
どうしたの?
でかかった言葉を飲み込んで、私は手を引かれながらもそれに頷いた。
匠からそれは見えないけど。
匠は何をみた?
なんでこんなに急いでるのだろう。
慎重に進まないと何があるのかなんてわからないのに。
何をみた?
私が光を当てた途端だったから……背後に…何か…。
───────見た?
すぐ近く。
深い闇の中で光が届くほどに近くに…いたんだ。
何かが。
聴覚が敏感に背後に向く。
音はしない。
私と匠の荒い呼吸だけ…。
足音さえもしない静かな闇。
誰が居たの?
気配も吐息さえも感じず、私の後ろにソッと佇んでたそれを思って鳥肌がゾワッと体中に広がった。
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