48 / 75
電車内の怪異
三
しおりを挟むプシュッウっと音を立てて開くドア。
外の景色は普通の駅と対して変わらない。
ただいつも通る駅にはない駅だ。
窓から見える景色はやはり草原ばかり……。
「匠………」
不安になって名前を呟けば、変わりに強く手が握られた。
まるで大丈夫だと言ってるかのように。
私もきっと酷い顔をしてるだろうけど、匠も酷い顔をしてる。
疲れたような窶れたような…それでいて強ばりっぱなしの表情。
どのくらいそのままだったんだろう。
ドアは開いたきり閉じようとしない。
乗客を見れば、はやり皆寝ている。
それでも降りるという考えはなかった。
降りてもろくな事にはならないだろう、それに私達が目指すのは”きさらぎ駅”なのだから。
電車はさんず駅に止まったまま。
どのくらい無音状態が続いただろう………。
それを覆したのは一人の男性の悲鳴だった。
外…つまり
さんずから聞こえる悲鳴。
断末魔と言ってもいい。
それ程に酷い悲鳴が突如上がって、私と匠はビクッと飛び跳ねた。
姿は見えない。
辺りを見渡してもそれは草原ばかりの美しい風景ばかり。
姿は見えないが悲鳴からいってだいぶ近いのだと判断できた。
耳障りなほどに心臓の音がどくどくと音を立てる。
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

闇に潜む者たち
シマセイ
ホラー
夜の静寂を切り裂く不気味な音が、あなたを恐怖の淵へと誘うホラー短編集。
古びた家に引っ越した彩花を襲う「影の住人」をはじめ、闇の中で響く足音や物音が、閉ざされた空間で次第に実体を現す。
逃げ場のない恐怖と向き合う人々の運命を描いた、背筋が凍る物語の数々。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる