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電車に乗って
十二
しおりを挟む気付いて無意識に匠の視線を辿る。
心が警戒音を発する。
ドクン……ドクンと激しく波打つ鼓動。
まさかあるはずない。
こんなに人が居る中で異常なんて───────。
「─────っつ!!!!」
反射的にガタッと大きな音をたてて立ち上がってしまった。
瞬間に匠が勢い良く立ち上がる。
”その”異常を凝視しながら立ち竦む私の腕を強く引いて、私を引きずるようにしてその場から早足で離れる。
汗ばんだ手のひらの感触。
それと同時に微かに震えているのがわかった。
でもそれがどちらの震えか定かじゃない。
私も大いに震えているから…。
周囲に恐らく”あれ”は見えてない。
見えてる人間がさも気にせずに何の反応も起こさないなんておかしいのだから。
だから見えてないと思う。
真っ赤な瞳のぼさぼさ髪の老婆を…………。
異常に肌が白かった。
白い…そう現すよりも青白いという言葉がしっくりくる。
昔見たことのある死人のそれと同じ色。
明らかに異質な老婆を人は見向きもしない。
此方に向かってにんまりと笑みながら、有り得ない早さでおいでおいでと手首を上下させる姿。
それは本当に有り得ないほどに早くて……その弱々しい容姿からは想像もできないほどに恐ろしいものだと瞬時に思った。
そもそも有り得ないのだ。
こんな人の多い中で……
ホームから丸見えの線路の上に立ってるなんて。
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