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電車に乗って
九
しおりを挟むスッと後ろから伸ばされた匠の腕に飛び退く私。
その手はドアノブへと伸ばされる。
「落ち着け、沙耶。引くんだよ、押すんじゃない」
「……………………」
ガチャンと開いた扉。
そこから溢れる空気が懐かしく感じた。
扉が開くと同時に部屋の音楽がゆったり流れ出して、やっと異常を感じなくなったと安堵の涙を溢れさせた。
「た………くみ……」
嗚咽が溢れ出して、匠が強ばりながらも笑顔を向けて頭をなでてくれた。
「場所を変えよう、人の多いところで」
「うん…………」
強く強く頷いた。
こんな思いはもう嫌だよ。
さっきのは何だったんだろう。
考えたところで分かるはずもなく、カラオケ店を後にする。
もう二度ときたくない。
匠と強く握られた手。
だがその間に会話はなかった。
お互い先程起こった事が頭を巡り、忘れ、話を弾ませられる物じゃなかった。
「………………」
最後の言葉が頭を過ぎる。
あの女はなんと言っていた?
”鬼の子”──────。
フッと気分が沈むのは、きっと昔言われた言葉だからだ。
私達が目指す”きさらぎ”と何か関係があるのかな……。
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