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電車に乗って
電車に乗って一
しおりを挟む香織と沙耶が勤める会社から、匠の家まではそう遠くない。
電車で二駅程度だ。
沙耶はほぼ匠の家に入り浸っているため、今は近い。
問題は香織だ。
仲は良いけど家まで知らないのだ。
いつも私が先におりてしまっていたし、外で遊ぶことが多かったから……。
「家まで知らなくて良いでしょ?」
クスクスと笑われる。
「最終にその電車乗ってたって事は乗り換えはないだろうし、今日はその最終電車乗ってみよ」
「うん」
何事もなく最終まで行ってしまったら悲しいが……。
匠の言うとおり家まで知る必要はない。
いつも乗る電車が最終だし、その間に乗り換えするような駅もない。
……私としては匠がいるし、異次元駅に行ってくれない方がいいんどけど。
香織のことを思うといますぐにでも行きたい。
矛盾だ。
だが場所が場所なだけに最早運だろう……。
一応、都市伝説なわけだし。
行ける人間は本当にごく僅かだろうから。
とりあえず時間も早いし会社近くの最寄り駅まで行くことになった。
「………沙耶。飲む?」
無言で考え込んでいた私に、匠はペットボトルを差し出してくる。
中身は家で入れたお茶。
……家庭的だ。
そんな事を思いながら礼を言いそれを受け取った。
私にとっては日常。
だが。
そんな中で狂気が潜んでる事なんて誰も知らない。
この電車だってもしかしたら異次元駅に行ってしまうかも知れないのだ。
誰も気づいてない怪奇が存在する。
現実のすぐ隣り合わせに。
ゾクッとした。
普段考えもしないそれに気づいて。
そう。
気づいてないだけなんだ。
人の死はいつもチラツいてるし、怪奇だって狂気だって隣り合わせ。
いつだってそうなのに、誰も気づかないそれが一番の恐怖だと思った。
意味の分からない恐怖を感じて、ペットボトルを持ちながらジッと外を見据える。
「……………………」
この世に平和なんてない。
そんな事を思って。
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