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序章
五
しおりを挟む「────お嬢さん」
不意に人の声がして飛び上がった。
声の主は木々の隙間に伺えたが、何故そこにいるのか理解できない。
暗がりでなんとか影だけは伺えるが、顔も見れない。
声から老婆だと理解するが、僅かに引っかかりを感じた。
「お嬢さん、こんな場所で何を?」
「…………………」
返事を返せなかった。
…………この人は何故、私を女だとわかってるんだろう。
しかも”お嬢さん”って呼んでるって事はまだ若いのだと承知して呼んでる。
目の前の人影、恐らく老婆だろうそれに違和感を感じた。
こちらから向こうは伺えない。
街灯がないのだ、向こうだってそうに決まってる。
「…………………」
無言で一歩後ずさった。
背中に冷たい汗がつぅっと伝うのがわかる。
「…あぁ。匂いが違うね、魅入られたのかい?それとも迷い子かね?」
「…………………えっ?」
老婆が気の毒そうにそう呟いた気がした。
ぼけてるのだろうか……。
声しかわからないが相当歳をくってるはずだった。
「悪いことは言わん。駅に戻りなさい、あそこはまだ安全だ」
駅からだいぶ歩いた気がする。
この老婆は何故私が駅から来たと知ってるのだろう。
確かにこの道は駅に通じるけど行き止まりじゃない、駅の向こう側もあるのだ。
困惑する私に気づいてか、クスリと笑いが聞こえた。
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