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え……?!困惑のタイムスリップ
二
しおりを挟む…流れる涙を強引に脱ぐって、蒼子は大きく深呼吸をする。
「何でだろう。私…また死ねなかったんだな」
大きなため息と同時に襖が開けられ無表情の男性と、強面の男性、優しそうな男性と、眼鏡をかけてにこやかに微笑む男性が入ってきた。
布団に寝たままの状態から、慌てて起き上がろうとして目眩を起こした。
「っ………!?」
ぐらりとぐらついて、上半身を起き上がらせる事も出来ずに布団にポフッと逆戻りした。
そんな私を見て、優しそうな男性は慌てて私に駆け寄ってきた。
「大丈夫かね?
無理して起きることはない!
そのままで構わないから少し話を聞きたいんだ。良いかね?」
ワタワタしながら話す彼は、裏表が無さそうに見えた。
彼は優しいんだ、無条件で。
彼の言葉にこくりと頷けば、にっこり笑ってくれる。
そんな私を見て、強面の男性が口を開く。
「それじゃあ本題だ、早速だが無駄な話は省かせてもらう。お前、名前と住まいは何処だ?何故ここで倒れていた?着ていたこの着物はなんだ?」
ひらりと蒼子の前で広げられる学校指定の制服に、蒼子は青ざめる。
慌てて自分の着てるものを見てみれば見たこともない着流しだった。
「こ…これ…誰が着替えさせたんですか?」
顔をしかめる強面の男性は、面倒臭そうに口を開いた。
「安心しろ!女中だ。それより質問に答えろ」
…………良かった。
安堵して蒼子は口を開く。
「桜蒼子です。えっと住所は…東京都渋谷区です」
「あぁぁん?!」
不良のそれに似てる。
唸るようにガンをつけられた。
桜と名乗るのはヤバかったかな?
わざと不思議そうに顔を傾げれば、蒼子は胸ぐらを捕まれた。
この人……桜の人に恨みでも………………。
ツキン…………。
また胸の痛みが襲った。
「正直に言え」
殺意すら感じるが、今はそれどころじゃない。
「離…してっ!苦し…い…」
男性の腕を掴みながら、片手で心臓の辺りを押さえつける。
「と…歳、離すんだ!」
慌てる優しそうな男性が、強面の男性をたしなめる。
舌打ちしながら離してくれたが、胸が苦しい。
呼吸が乱れる。
だけど…分かる。
これは軽い発作だ。
落ち着こう!
深呼吸を何度も繰り返して、蒼子は落ち着こうと努力した。
その間、始終笑顔の男性が口を開いた。
「心の臓の病だね?」
良くわからない…心臓の病かってことだよね?
こくりと頷けば、近付いてきて頭を撫でてくれる。
「落ち着きなさい。
大丈夫だから…彼は乱暴ですまないね」
ゆったりとした声に蒼子は目を閉じた。
この人…癒しだ。
滅多にいない、とっても貴重な人だ。
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