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君が倒れた時
三
しおりを挟む再び霧のように現れたロアンと顔見知りである初老の医師。
医師は目を丸くして今にも息が絶えてしまいそうなリアをみて呟く。
「……これは、また……何故こんな」
「それがわからないから呼んだんだよ、さっさと診て、ヘマしたらその首飛ばすから」
パジャマ姿の医師をロアンの冷たい声色が脅す。
リアが聞いたら驚くだろうな……。
リアの前では絶対にそんな声色は発しないロアン……。
「リアにもしもの事があったら本家の奴等も、今まで僕達に関わった全ての物たちを殺して回ってやる」
ギリッと歯を食いしばるロアン。
「………………………」
本家に行って荒ぶってるな……。
この短時間だが何があったのかは容易に想像できる。
「……これは発作ですね。心臓の音が不規則でとても弱い」
「原因は?」
冷たく睨み付ければ、医師は首を振った。
「我々はヴァンパイアです、薬など本来皆無である事はご存知のはず。ましてや生前の病を再び発症するなど………………」
初めてみました、と医師は言う。
「坊ちゃん達は歴代の中でも珍しいケースです。なので……何が起こってもおかしくはありません。寧ろこの数世紀何も起きなかったことがおかしかったのかもしれ…………………………ぐっ」
ダンッと鈍い音をたてて医師はロアンの手によって床に押し倒された。
「おい!!!!」
俺が止める側かよ!!!!!
「投げ出してみろ、この世からお前の妻を消してやる」
唸るロアンの腕を俺はつかみあげた。
「やめろ、この医師以外誰がリアを診てくれるって言うんだ」
手を貸してくれる者は少ない。
それをわからないロアンじゃないだろ……。
ギリギリとチカラを込める。
俺だって止めたくは無い。
いっその事感情に任せて八つ裂きにしたい。
だが……リアが目覚めた時なんと言うんだ。
愛想をつかされたら……
それこそお終いだ。
「……わたしは坊ちゃん達の味方です。幼い頃からずっと」
「リア……が………………」
唸るロアン。
グッと握られるロアンの拳が震えてる事に医師は気付いた。
幼い頃から本家に使えてる身として、この不器用な双子が……
二人して見つけたたった一人の大切な人。
溺愛して、囲って、片時も離れない大事にしている彼女がどんな人間なのか知っている。
見た目もさる事ながら、ヴァンパイアの中でもそして人間の中でもとても珍しく純粋で優しい心の持ち主だった。
まるでお伽話の中の善人のようだった。
真っ白なのだ。
悪意などなく悪意等知りもしないような……。
「…………坊ちゃん落ち着いてください。
人間界の薬を手配します。昔より遥かによく効きます」
「………………………………」
「原因を探しましょう」
言いながら寝ているリアの方を見据えた。
床に寝転がらされてここからでは見えないが、ヴァンパイアの血は機能してないようにみえた。
二人の純血の血がどう作用したのかわからないが数世紀無事だったのだ……。
だが……………………………………
そう、初めから彼女は異質ではあった。
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