21 / 34
第二章
君にさよなら⑴
しおりを挟む
ゆめみ祭から一ヶ月半の月日が経ち、終業式を迎えた。小指の固定も取れて、ほぼ元通りだ。
後夜祭でした綺原さんとのキスは無かったかのように、変わらない日常が過ぎている。彼女が何もなかったものとして振る舞っているのだから、僕も変に意識しないようにしているつもりだ。
あの意味を知りたくても、聞ける隙を作らないのは彼女らしい。
何もない真っ白な部屋の床へ横になり、そのままになっている楽譜をペラペラとめくる。病理学や歯科解剖学の教科書より、音符を眺めていた方がよっぽど面白い。
一週間前の夜。意を決して、父にピアノ関係の仕事をしたい旨を伝えた。歯科医院を継ぐ意思がないと知っても、あの人は顔色ひとつ変えなかった。
「学園祭でのお前のピアノが素晴らしかったと、患者さんから聞いた。また是非聴きたいそうだ。別の人からも、教える機会があったら娘に教えて欲しいと言われた。それほどまでとは、正直驚いた」
初めて聞く話に胸が熱くなった。ピアノの講師をする夢が開けた気がした。
「じゃあ」
「しかし、仕事は別物だ。お前のピアノは趣味に過ぎん。仕事が欲しいと思う人間がいる中で、すでに完成された場所が準備されているお前は幸せだと思わなければならん。将来について、もう一度よく考えろ」
あれから、父とは言葉を交わしていない。
乾いたため息が、だだっ広い空間にひとつ落ちる。
でも、この憂いを含んだ吐息の原因はそれだけではない。
半袖のカッターシャツに手を通して、制服のズボンを履く。登校日でないにも関わらず、僕は夏休み中の校門をくぐった。
運動部がグランドを走るなか、校舎へ足を踏み入れる。そのまま屋上へ向かうと、僕を待つ背中があった。
「来てくれないかと思った」
長い髪を耳にかけながら、にこりと笑う日南先生。
後夜祭で約束をすっぽかしてから、顔を合わせづらくてまともに話せていなかった。避けているのを知ってなのか、夏休みに入る前日、屋上で会えないかと言われていたのだ。
「あの、すみませんでした。後夜祭の日、行けなくて」
今更謝るのは違う気がするけど、いつまでもうじうじ黙っているのもいけない気がして。
「いいのよ。何かあったんだろうなって思ってたから」
どんな反応が来るのか身構えていたけど、笑ってしまうくらいあっさりしていて、普通だった。
気まずい空気をまとっていたのは、自分だけだったのだ。それが逆に虚しかったり。
「でも、理由くらい教えてくれても良かったのに」
「えっ?」
完全に油断して、風船の空気が抜けるような声が出た。
「来なかった理由、苗木くんから聞いたよ。綺原さんのこと探してたんだってね」
振り返った日南先生に、ドクンと脈が波打つ。
人形みたいに大きな目をして、それでいて瞬きすらしない。じっと僕を見据えながら、微かに笑みを浮かべて歩み寄る。
「あの、せんせ……?」
一歩下がると、一歩詰めてくる。いつもの日南先生ではないようで、瞳に影が落ちて見えた。浮気した恋人を責め立てるみたいな。
「どうして彼女を優先したの? 先に約束してたのは、私の方なのに」
「……すみませ」
「ねえ、直江くん。一緒に飛ぼっか」
掴まれた腕をとっさに払った。前にもこんなことがあったけど、今回は脅しじゃないと分かる。
ふらつきながら後ろへ進み、日南先生が校舎の端へ足を乗せた。
「せんっ、あぶな……!」
何か唇を動かしているけど、何も聞こえない。一筋の雫がこぼれ落ちたと思ったら、彼女の体は青空の下へと消えた。
「日南先生──っ‼︎」
ありったけ振り絞った声は、徐々に大きくなって、やがてその絶叫で目を覚ました。
掛け布団を握りしめながら、息を切らしている。しばらく天井を見つめて、頭の中を整理する。
今のは……夢、なのか?
スマホ画面を確認して、今日が約束の日であると知り、心底ホッとした。
半袖のカッターシャツに手を通して、制服のズボンを履く。
夏休み中の校門をくぐり、運動部がグランドを走るなか、校舎へ足を踏み入れる。屋上へ向かうと、夢と同じ、僕を待つ背中があった。
「来てくれないかと思った」
長い髪を耳にかけながら、にこりと笑う日南先生。
「あの、すみませんでした。後夜祭の日、行けなくて」
「いいのよ。何かあったんだろうなって思ってたから」
これは、一度目の記憶じゃない。昨日見た夢の展開と全く同じだ。先に起こることを想像して、背筋がゾッとする。
まさかと思いながらも、とりあえず腕を掴んだ。この行動に意味があるのかと問われると、頷ける自信はないけど、保険みたいなものだ。
不思議そうに、日南先生が首を傾げる。そして、気付いた。細い手首に巻きつけられた包帯。
「……その手」
「ああ、これ? 朝起きたらベッドから落ちてて、手首を捻挫しちゃったの」
日南先生が、ハハッと軽く笑う。
顔から血の気が引いて、心臓が不穏な音を立てる。
ベッドから……落ちた?
脳裏で何度も繰り返される夢の光景。僕には、それを偶然という言葉では消化しきれなかった。
***
「それで、せっかくの夏休みを満喫中に急遽呼び出されたってわけね」
クーラーのよく効いた図書館で、綺原さんが積み上げられた本を開く。
日南先生と別れたあと、会えないか連絡を入れた。彼女のアパートから自転車で十分たらずの場所にある市立図書館を指定して。
二十分もしないうちに駆けつけてくれたことから、すぐ支度をして出て来てくれたのだと分かった。
チラリと視線が絡み合う。ぎこちなく逸らしてしまった。
なんでもないような態度でいるけど、綺原さんとキスをしたのだ。少しも意識していないと言ったら嘘になる。
わざとらしく咳払いが響いて、綺原さんの目が訴えかけてくる。早く話せと。
「夢の世界が崩壊してから、ほとんど夢は見てなかったんだ。日南先生の怪我といい……何か意味がある気がして」
何も言わないで、綺原さんは上から三番目の本を引き出す。
僕の前に差し出したのは、『夢とシンクロニシティ』というタイトルの本。他のものと比べて、まだ真新しい色をしている。
「共有夢って、知ってるかしら」
「聞いたことはある。二人の人間が同じ夢を見るってやつだよね? 前に見ていた夢は、それに近いのかなって勝手に思ってた」
現在、夢には二種類の仮定があると言われている。
脳が夢を作り出し、脳内で繰り広げられている神経作用に過ぎないこと。
もう一つは、夢という別の空間があり、それらを知覚している可能性がある説だ。
科学的根拠は証明されていないが、二人が同じ夢を見ていた事例は何件も出ているらしい。
「たしかに、前の梵くんの夢はそうだったのかもしれない。でも今回、菫先生は否定しているんでしょう?」
変な夢を見なかったかと聞いた時、日南先生は首を振った。
微かに唇の端を上げて、儚んでいるような、何かを隠しているような表情に読みとれた。
綺原さんが見ている未来を映し出す夢になってしまわないかと、不安もある。
「同じ夢を見るって表現が正しいのか。それとも、夢が侵食されていると捉えるのか」
「どういう意味?」
「他人の夢に入り込むことが、不可能じゃないって言ってるの」
「それって、現実で? SF映画じゃなくて?」
本を開いたページに、明晰夢と書かれている。夢だと認識しながら、自分の行動がコントロールできる状態にある夢のことだ。
「たしかに、今は架空の物語に過ぎない。でも、実際に私たちの身に起こり得ないことが起こっているのも事実でしょ」
タイムリープに夢の世界。どちらも言葉で説明したところで、理解してくれる人はほぼいないだろう。
本をパタンと閉じて、さらに僕の前へ置くと、
「今度またおかしな夢が現れたら、私を出してくれないかしら」
「……出すって、夢に? どうやって?」
「梵くんの夢は特殊。もしも行動をコントロール出来るなら、念じた人物を出せるかもしれない。そしたら、夢を共有することが出来る可能性があるわ。日南先生の時と同じように」
蓬の夢を見ていた時、意識がはっきりしていた。現実ではないと知りながら、向かう方向や発言をコントロール出来た。
反対に、動けと命じても動けないこともあった。全てが思い通りになるわけではないけど、可能性はゼロじゃない。
「……やってみるよ」
根拠のない約束。それをしてどうなるかも分からない。想像を積み上げて、不安を紛らわせているだけ。
だけど、何もないよりマシだ。
手の中にある『夢とシンクロニシティ』という文字を見るだけで、綺原さんの落ち着いた眼差しを思い出すだけで、大丈夫だと思える。
再び夢を見たのは、それから三日後のことだった。
後夜祭でした綺原さんとのキスは無かったかのように、変わらない日常が過ぎている。彼女が何もなかったものとして振る舞っているのだから、僕も変に意識しないようにしているつもりだ。
あの意味を知りたくても、聞ける隙を作らないのは彼女らしい。
何もない真っ白な部屋の床へ横になり、そのままになっている楽譜をペラペラとめくる。病理学や歯科解剖学の教科書より、音符を眺めていた方がよっぽど面白い。
一週間前の夜。意を決して、父にピアノ関係の仕事をしたい旨を伝えた。歯科医院を継ぐ意思がないと知っても、あの人は顔色ひとつ変えなかった。
「学園祭でのお前のピアノが素晴らしかったと、患者さんから聞いた。また是非聴きたいそうだ。別の人からも、教える機会があったら娘に教えて欲しいと言われた。それほどまでとは、正直驚いた」
初めて聞く話に胸が熱くなった。ピアノの講師をする夢が開けた気がした。
「じゃあ」
「しかし、仕事は別物だ。お前のピアノは趣味に過ぎん。仕事が欲しいと思う人間がいる中で、すでに完成された場所が準備されているお前は幸せだと思わなければならん。将来について、もう一度よく考えろ」
あれから、父とは言葉を交わしていない。
乾いたため息が、だだっ広い空間にひとつ落ちる。
でも、この憂いを含んだ吐息の原因はそれだけではない。
半袖のカッターシャツに手を通して、制服のズボンを履く。登校日でないにも関わらず、僕は夏休み中の校門をくぐった。
運動部がグランドを走るなか、校舎へ足を踏み入れる。そのまま屋上へ向かうと、僕を待つ背中があった。
「来てくれないかと思った」
長い髪を耳にかけながら、にこりと笑う日南先生。
後夜祭で約束をすっぽかしてから、顔を合わせづらくてまともに話せていなかった。避けているのを知ってなのか、夏休みに入る前日、屋上で会えないかと言われていたのだ。
「あの、すみませんでした。後夜祭の日、行けなくて」
今更謝るのは違う気がするけど、いつまでもうじうじ黙っているのもいけない気がして。
「いいのよ。何かあったんだろうなって思ってたから」
どんな反応が来るのか身構えていたけど、笑ってしまうくらいあっさりしていて、普通だった。
気まずい空気をまとっていたのは、自分だけだったのだ。それが逆に虚しかったり。
「でも、理由くらい教えてくれても良かったのに」
「えっ?」
完全に油断して、風船の空気が抜けるような声が出た。
「来なかった理由、苗木くんから聞いたよ。綺原さんのこと探してたんだってね」
振り返った日南先生に、ドクンと脈が波打つ。
人形みたいに大きな目をして、それでいて瞬きすらしない。じっと僕を見据えながら、微かに笑みを浮かべて歩み寄る。
「あの、せんせ……?」
一歩下がると、一歩詰めてくる。いつもの日南先生ではないようで、瞳に影が落ちて見えた。浮気した恋人を責め立てるみたいな。
「どうして彼女を優先したの? 先に約束してたのは、私の方なのに」
「……すみませ」
「ねえ、直江くん。一緒に飛ぼっか」
掴まれた腕をとっさに払った。前にもこんなことがあったけど、今回は脅しじゃないと分かる。
ふらつきながら後ろへ進み、日南先生が校舎の端へ足を乗せた。
「せんっ、あぶな……!」
何か唇を動かしているけど、何も聞こえない。一筋の雫がこぼれ落ちたと思ったら、彼女の体は青空の下へと消えた。
「日南先生──っ‼︎」
ありったけ振り絞った声は、徐々に大きくなって、やがてその絶叫で目を覚ました。
掛け布団を握りしめながら、息を切らしている。しばらく天井を見つめて、頭の中を整理する。
今のは……夢、なのか?
スマホ画面を確認して、今日が約束の日であると知り、心底ホッとした。
半袖のカッターシャツに手を通して、制服のズボンを履く。
夏休み中の校門をくぐり、運動部がグランドを走るなか、校舎へ足を踏み入れる。屋上へ向かうと、夢と同じ、僕を待つ背中があった。
「来てくれないかと思った」
長い髪を耳にかけながら、にこりと笑う日南先生。
「あの、すみませんでした。後夜祭の日、行けなくて」
「いいのよ。何かあったんだろうなって思ってたから」
これは、一度目の記憶じゃない。昨日見た夢の展開と全く同じだ。先に起こることを想像して、背筋がゾッとする。
まさかと思いながらも、とりあえず腕を掴んだ。この行動に意味があるのかと問われると、頷ける自信はないけど、保険みたいなものだ。
不思議そうに、日南先生が首を傾げる。そして、気付いた。細い手首に巻きつけられた包帯。
「……その手」
「ああ、これ? 朝起きたらベッドから落ちてて、手首を捻挫しちゃったの」
日南先生が、ハハッと軽く笑う。
顔から血の気が引いて、心臓が不穏な音を立てる。
ベッドから……落ちた?
脳裏で何度も繰り返される夢の光景。僕には、それを偶然という言葉では消化しきれなかった。
***
「それで、せっかくの夏休みを満喫中に急遽呼び出されたってわけね」
クーラーのよく効いた図書館で、綺原さんが積み上げられた本を開く。
日南先生と別れたあと、会えないか連絡を入れた。彼女のアパートから自転車で十分たらずの場所にある市立図書館を指定して。
二十分もしないうちに駆けつけてくれたことから、すぐ支度をして出て来てくれたのだと分かった。
チラリと視線が絡み合う。ぎこちなく逸らしてしまった。
なんでもないような態度でいるけど、綺原さんとキスをしたのだ。少しも意識していないと言ったら嘘になる。
わざとらしく咳払いが響いて、綺原さんの目が訴えかけてくる。早く話せと。
「夢の世界が崩壊してから、ほとんど夢は見てなかったんだ。日南先生の怪我といい……何か意味がある気がして」
何も言わないで、綺原さんは上から三番目の本を引き出す。
僕の前に差し出したのは、『夢とシンクロニシティ』というタイトルの本。他のものと比べて、まだ真新しい色をしている。
「共有夢って、知ってるかしら」
「聞いたことはある。二人の人間が同じ夢を見るってやつだよね? 前に見ていた夢は、それに近いのかなって勝手に思ってた」
現在、夢には二種類の仮定があると言われている。
脳が夢を作り出し、脳内で繰り広げられている神経作用に過ぎないこと。
もう一つは、夢という別の空間があり、それらを知覚している可能性がある説だ。
科学的根拠は証明されていないが、二人が同じ夢を見ていた事例は何件も出ているらしい。
「たしかに、前の梵くんの夢はそうだったのかもしれない。でも今回、菫先生は否定しているんでしょう?」
変な夢を見なかったかと聞いた時、日南先生は首を振った。
微かに唇の端を上げて、儚んでいるような、何かを隠しているような表情に読みとれた。
綺原さんが見ている未来を映し出す夢になってしまわないかと、不安もある。
「同じ夢を見るって表現が正しいのか。それとも、夢が侵食されていると捉えるのか」
「どういう意味?」
「他人の夢に入り込むことが、不可能じゃないって言ってるの」
「それって、現実で? SF映画じゃなくて?」
本を開いたページに、明晰夢と書かれている。夢だと認識しながら、自分の行動がコントロールできる状態にある夢のことだ。
「たしかに、今は架空の物語に過ぎない。でも、実際に私たちの身に起こり得ないことが起こっているのも事実でしょ」
タイムリープに夢の世界。どちらも言葉で説明したところで、理解してくれる人はほぼいないだろう。
本をパタンと閉じて、さらに僕の前へ置くと、
「今度またおかしな夢が現れたら、私を出してくれないかしら」
「……出すって、夢に? どうやって?」
「梵くんの夢は特殊。もしも行動をコントロール出来るなら、念じた人物を出せるかもしれない。そしたら、夢を共有することが出来る可能性があるわ。日南先生の時と同じように」
蓬の夢を見ていた時、意識がはっきりしていた。現実ではないと知りながら、向かう方向や発言をコントロール出来た。
反対に、動けと命じても動けないこともあった。全てが思い通りになるわけではないけど、可能性はゼロじゃない。
「……やってみるよ」
根拠のない約束。それをしてどうなるかも分からない。想像を積み上げて、不安を紛らわせているだけ。
だけど、何もないよりマシだ。
手の中にある『夢とシンクロニシティ』という文字を見るだけで、綺原さんの落ち着いた眼差しを思い出すだけで、大丈夫だと思える。
再び夢を見たのは、それから三日後のことだった。
1
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
真っ白なあのコ
冴月希衣@商業BL販売中
青春
【私だけの、キラキラ輝く純白の蝶々。ずっとずっと、一緒にいましょうね】
一見、儚げな美少女、花村ましろ。
見た目も性格も良いのに、全然彼氏ができない。というより、告白した男子全てに断られ続けて、玉砕の連続記録更新中。
めげずに、今度こそと気合いを入れてバスケ部の人気者に告白する、ましろだけど?
ガールズラブです。苦手な方はUターンお願いします。
☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆
◆本文、画像の無断転載禁止◆
No reproduction or republication without written permission.
青天のヘキレキ
ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ
高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。
上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。
思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。
可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。
お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。
出会いは化学変化。
いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。
お楽しみいただけますように。
他コンテンツにも掲載中です。
呪配
真霜ナオ
ホラー
ある晩。いつものように夕食のデリバリーを利用した比嘉慧斗は、初めての誤配を経験する。
デリバリー専用アプリは、続けてある通知を送り付けてきた。
『比嘉慧斗様、死をお届けに向かっています』
その日から不可解な出来事に見舞われ始める慧斗は、高野來という美しい青年と衝撃的な出会い方をする。
不思議な力を持った來と共に死の呪いを解く方法を探す慧斗だが、周囲では連続怪死事件も起こっていて……?
「第7回ホラー・ミステリー小説大賞」オカルト賞を受賞しました!
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
Head or Tail ~Akashic Tennis Players~
志々尾美里
SF
テニスでは試合前にコイントスでサーブの順番を決める。
そのときコインを投げる主審が、選手に問う。
「Head or Tail?(表か、裏か)」
東京五輪で日本勢が目覚ましい活躍をみせ、政府主導のもとスポーツ研究が盛んになった近未来の日本。
テニス界では日本人男女ペアによって初のグランドスラム獲得の偉業が達成され、テニスブームが巻き起こっていた。
主人公、若槻聖(わかつきひじり)は一つ上の幼馴染、素襖春菜(すおうはるな)に誘われテニスを始める。
だが春菜の圧倒的な才能は二人がペアでいることを困難にし、聖は劣等感と“ある出来事”からテニスを辞めてしまう。
時は流れ、プロ選手として活動拠点を海外に移そうとしていた春菜の前に聖が現れる。
「今度こそ、春菜に相応しいペアになる」
そう誓った聖は、誰にも話せなかった“秘密のラケット”の封印を解く。
類稀なる才能と果てしない研鑚を重ね、鬼や怪物が棲まう世界の頂上に挑む者たち
プロの世界に夢と希望を抱き、憧れに向かって日々全力で努力する追う者たち
テニスに生き甲斐を見出し、プロさながらに己の限界を超えるべく戦う者たち
勝利への渇望ゆえ歪んだ執念に憑りつかれ、悪事に手を染めて足掻く者たち
夢を絶たれその道を諦め、それでもなお未だ燻り続ける彷徨う者たち
現在・過去・未来、遍く全ての記憶と事象を網羅した「アカシック・レコード」に選ばれた聖は、
現存する全ての選手の技を自在に操る能力を手に、テニスの世界に身を投じる。
そして聖を中心に、テニスに関わる全ての者たちの未来の可能性が、“撹拌”されてゆく――。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
遠い空のデネブ
雪鳴月彦
青春
僕たちは夢を追う。
その夢が叶うのか、道半ばで挫折するのか。
そんなありきたりで残酷な不安や憂鬱感を引きずりながら、それでも未来を目指す僕たちにとって、妃夏はきっと遠い空に輝く道標のような存在だったのかもしれない――。
天ヶ崎高校二年男子バレーボール部員本田稔、幼馴染に告白する。
山法師
青春
四月も半ばの日の放課後のこと。
高校二年になったばかりの本田稔(ほんだみのる)は、幼馴染である中野晶(なかのあきら)を、空き教室に呼び出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる