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Ⅰ ラブ∞家族
E08 湯けむりカポーン
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「かなりの湯けむりですねー。少し前が見えないわ。皆、いるわね?」
もさもさっと湯気の中へ。
皆が近くにいるはずなのに、ぼんやりとしか見えない程で、不思議なお風呂だ。
ひなぎくもメガネを外しているから、尚更、見えにくい。
「はい」
「はい」
「います」
もやもやーん。
「よしよし。転ばないでね」
「私、サウナから入ろうかなー。んーっと」
もやもやーん。
すらりとした体が隣で伸びをしている。
蓮花は疲れているのだろうか。
「あら、サウナだなんて体は大丈夫なの? 蓮花さん」
「結構、しぼるの好きなのですよ。ひなぎくさんは、サウナはどうですか?」
「困ったわねー。虹花ちゃんと澄花ちゃんを見ていたいから、ご一緒できないわ」
もやもやーん。
例のお困りのポーズらしいひなぎく。
「あー、二人のことはうっかりしていたな。サウナに行くのは、ワガママでした」
「大丈夫よ。私がいますし」
「ワガママ、ごめんなさい。サウナは、そんなに子どもではありませんから。一人で行けますよ。話し相手が欲しかっただけです」
そうよね。
大学生にもなって、サウナで倒れたりしないわよね。
「無理しないのよ」
「はい、そうですね。先に体を洗ってから入ろうかな」
「じゃあ、皆で洗いましょう」
洗い桶と椅子を各々支度して横に並んだ。
ひなぎくの両隣は、虹花に澄花だ。
「ねー、ひなぎくさん、ここはツルツルしているのね」
「かけっこはなしよ、虹花ちゃん。あ、バレエはもっとダメよ」
もやもやーん。
あわあわゴシゴシ。
「はい、いいこにしています」
「澄花ちゃんは、おとなしいけど、大切なお話しはきちんとするのね」
もやもやーん。
あわあわゴシゴシ。
「キャー。虹花ちゃんでしょう。目隠しやだ。髪の毛もやだ、引っ張らない」
「澄子ちゃんが嫌がっているでしょう。おいたはダメよ」
もやもやーん。
もみっもみっ。
「あああん。ちょっと、私の胸を誰が……。ここは女湯のはずよ」
「ああ、澄花ちゃん!」
もやもやーん。
「だって、ママンみたいなんだもん。ちょっとしか覚えていないけど」
もやもやーん。
ひなぎくは、ぴくりとした。
「私のは? 虹花ちゃんに澄花ちゃん」
「蓮花お姉ちゃんのは、つかむ所がないんだもん」
「蓮花お姉ちゃんのは、つかむ所がないんだもん」
「それ、酷くない? そんなのはハモらないのよ」
もやもやーん。
蓮花は丁度バストを洗っていた。
「酷いかな。本当のことを言わないのは罪だとテレビで言っていたもん」
虹花が、蓮花を突っつく。
「何のテレビ?」
「日本の国営らしい、『今日もすくすく』って番組の再放送だよ」
「私が後で潰しにかかるわ」
もやもやーん。
二人は、パキリポキリと指をならす音が湯けむりにこだまして、ちょっと怖いと思った。
「蓮花ちゃん、困ったわねー」
もやもやーん。
先におさげの虹花の髪を洗っていた。
丁寧にコンディショナーで流したら、つやっつや。
「困っているのは、私の胸よ。つかむ所がないなんて、タンスの引き出しみたいに言われて、泣けて来ない?」
「小さい子は分からないのよ」
もやもやーん。
ボブカットの澄花を今度は洗っていた。
ひなぎくは、おっとりしているが要領がいい。
「それより、ひなぎくさん、湯けむりでも目立つ程バインバインなのですが」
「中学の頃はこんなになかったのにね。途中で、牛乳飲み始めたら、変わったの」
もやもやーん、やーん。
二人の体も洗い終わり、シャワーで流して仕上げた。
自分も洗い始めた。
髪は最後に洗うとは、ひなぎくのゲン担ぎであった。
「あああ、私も牛乳飲みます!」
もやもやーん。
泡がある所がひなぎくの胸だとしたらと、蓮花は興奮してしまった。
あれならEカップはあるでしょう。
産後のお母さんですか?
蓮花はAカップだから、嫉妬してしまう。
妄想、とーまれっ。
「お風呂から上がったら、早速売っているか聞いてみるわね。もしかしたら、お食事で頼めばあるかも。ここは乳牛の産地でもあるのですって」
「本当? なら、大学はここから離れていない所にしようっと。国立で文系ならそれなりにあるのよね」
「あらあら。いい話になって来たわね」
もやんっ。
声色の優し気なひなぎくに、皆も楽しくなった。
「わたくしは、りんごジュースがいいな」
「いいわよ、澄花ちゃん。虹花ちゃんは、何か飲みたいものある?」
「オレジュー百ってブランドの日本のオレンジジュースがいい。あれ、輸出もしているんだよ。百って書いてあるのに、百パーセントのジュースではないの。甘くて舌がおかしくなるのよ」
「着色料とか大丈夫かしら」
もやもやっ。
ひなぎくは、やはりお母さん目線でみてしまう。
「じゃあ、サウナに行って来ます」
もやもやーん。
蓮花が露天風呂方面にあるサウナへ向かうと、ひなぎくは、鏡の前の忘れ物に気が付いた。
「はい。タオル忘れているわよ」
「お恥ずかしい」
もやもやーん。
顔を隠して、受け取ったようだ。
蓮花に彼氏はいるのだろうか?
こんなことは邪推だなとひなぎくは反省しきりだ。
「私は、露天風呂に行きたいなー。二人はどうする?」
「混浴って何?」
「混浴って何?」
「ああ、女風呂と男風呂に別々の入り口があったでしょう。あの戸を開けると、男の人も女の人も一緒のお風呂なのよ」
「ああ。だから、蓮花お姉ちゃんは見られたくないのねー」
もやもやーん
「サウナは男女別だものね。気兼ねがないわよね。二人は和くんや劉樹お兄ちゃんを気にするの?」
「気にするって? うちはお風呂はシャワーだったから」
「そうか、二人は、パリが長いのだものね」
もやっ。
失言は繰り返さないと決めたばかりなのにと思った。
「蓮花お姉ちゃんの所に行きたいな」
「あそこはとても蒸し暑いのよ。まだ無理かなー」
もやもやーん。
二人が倒れたら一大事だわとかがんで手をつないだ。
「えー、もう三年生なのにダメなの?」
「私も行かないから、違うので遊ぼうか」
「何々?」
「何々?」
「うーん。打たせ湯は肩こりにいいけど、二人には荒行よね」
もやっ。
ひなぎくは、首を捻ってばかりである。
「どうしたの?」
「ジャグジーに行きましょう。ブクブクが楽しいわよ」
「はーい」
「はーい」
「ひなぎくさん、ブクブクが肩に当たるのー。気持ちが悪いよ」
もやっと、んがーん。
二人は、まだ小さかったっけ。
子ども目線ができなくて、ひなぎくは、お母さんの目は結構大変だと思った。
「ごめんなさいね。それは、失敗でした。隣の大浴場に入ろう。泳げそうよ」
「ひなぎくさんは、泳げないってパーパーが言ってたよ」
もやっ。
さっき、聞きました。
「それは、間違いよ。人魚みたいなんだから」
もやもやーん。
童話、読んでいるかな。
人魚って分かる?
ひなぎくは、楽しくなって来た。
「泳いでくださーい」
「恥ずかしいから、勘弁してください」
もやもやーん。
拝むように頼んだけど、湯けむりがどうしてか漂い過ぎて、見えたかな。
「三人で、ちゃぽこんしよう」
「何それ」
「何それ」
「肩まで、温まろうって意味なの。おかしかったかな」
もやもやーん。
ちゃぷっ。
お手本にひなぎくが先につかった。
「分かりました。百数えます。澄花は算数得意なんだよ」
「アン、ドゥ、トロワ……(一、二、三……)」
「まあ、上手ね。今度もこうして一緒に入りましょう」
にこやかにしたら、ぴたっと二人がくっついて来た。
もう、もやっとしていない。
二人の体温がひしと伝わる。
「ええー、また、一緒に入ってくれるの?」
「ええー、また、一緒に入ってくれるの?」
「いつでもいいわよ」
ガタリ。
「あら? あの露天風呂の方から物音がするわね……」
もさもさっと湯気の中へ。
皆が近くにいるはずなのに、ぼんやりとしか見えない程で、不思議なお風呂だ。
ひなぎくもメガネを外しているから、尚更、見えにくい。
「はい」
「はい」
「います」
もやもやーん。
「よしよし。転ばないでね」
「私、サウナから入ろうかなー。んーっと」
もやもやーん。
すらりとした体が隣で伸びをしている。
蓮花は疲れているのだろうか。
「あら、サウナだなんて体は大丈夫なの? 蓮花さん」
「結構、しぼるの好きなのですよ。ひなぎくさんは、サウナはどうですか?」
「困ったわねー。虹花ちゃんと澄花ちゃんを見ていたいから、ご一緒できないわ」
もやもやーん。
例のお困りのポーズらしいひなぎく。
「あー、二人のことはうっかりしていたな。サウナに行くのは、ワガママでした」
「大丈夫よ。私がいますし」
「ワガママ、ごめんなさい。サウナは、そんなに子どもではありませんから。一人で行けますよ。話し相手が欲しかっただけです」
そうよね。
大学生にもなって、サウナで倒れたりしないわよね。
「無理しないのよ」
「はい、そうですね。先に体を洗ってから入ろうかな」
「じゃあ、皆で洗いましょう」
洗い桶と椅子を各々支度して横に並んだ。
ひなぎくの両隣は、虹花に澄花だ。
「ねー、ひなぎくさん、ここはツルツルしているのね」
「かけっこはなしよ、虹花ちゃん。あ、バレエはもっとダメよ」
もやもやーん。
あわあわゴシゴシ。
「はい、いいこにしています」
「澄花ちゃんは、おとなしいけど、大切なお話しはきちんとするのね」
もやもやーん。
あわあわゴシゴシ。
「キャー。虹花ちゃんでしょう。目隠しやだ。髪の毛もやだ、引っ張らない」
「澄子ちゃんが嫌がっているでしょう。おいたはダメよ」
もやもやーん。
もみっもみっ。
「あああん。ちょっと、私の胸を誰が……。ここは女湯のはずよ」
「ああ、澄花ちゃん!」
もやもやーん。
「だって、ママンみたいなんだもん。ちょっとしか覚えていないけど」
もやもやーん。
ひなぎくは、ぴくりとした。
「私のは? 虹花ちゃんに澄花ちゃん」
「蓮花お姉ちゃんのは、つかむ所がないんだもん」
「蓮花お姉ちゃんのは、つかむ所がないんだもん」
「それ、酷くない? そんなのはハモらないのよ」
もやもやーん。
蓮花は丁度バストを洗っていた。
「酷いかな。本当のことを言わないのは罪だとテレビで言っていたもん」
虹花が、蓮花を突っつく。
「何のテレビ?」
「日本の国営らしい、『今日もすくすく』って番組の再放送だよ」
「私が後で潰しにかかるわ」
もやもやーん。
二人は、パキリポキリと指をならす音が湯けむりにこだまして、ちょっと怖いと思った。
「蓮花ちゃん、困ったわねー」
もやもやーん。
先におさげの虹花の髪を洗っていた。
丁寧にコンディショナーで流したら、つやっつや。
「困っているのは、私の胸よ。つかむ所がないなんて、タンスの引き出しみたいに言われて、泣けて来ない?」
「小さい子は分からないのよ」
もやもやーん。
ボブカットの澄花を今度は洗っていた。
ひなぎくは、おっとりしているが要領がいい。
「それより、ひなぎくさん、湯けむりでも目立つ程バインバインなのですが」
「中学の頃はこんなになかったのにね。途中で、牛乳飲み始めたら、変わったの」
もやもやーん、やーん。
二人の体も洗い終わり、シャワーで流して仕上げた。
自分も洗い始めた。
髪は最後に洗うとは、ひなぎくのゲン担ぎであった。
「あああ、私も牛乳飲みます!」
もやもやーん。
泡がある所がひなぎくの胸だとしたらと、蓮花は興奮してしまった。
あれならEカップはあるでしょう。
産後のお母さんですか?
蓮花はAカップだから、嫉妬してしまう。
妄想、とーまれっ。
「お風呂から上がったら、早速売っているか聞いてみるわね。もしかしたら、お食事で頼めばあるかも。ここは乳牛の産地でもあるのですって」
「本当? なら、大学はここから離れていない所にしようっと。国立で文系ならそれなりにあるのよね」
「あらあら。いい話になって来たわね」
もやんっ。
声色の優し気なひなぎくに、皆も楽しくなった。
「わたくしは、りんごジュースがいいな」
「いいわよ、澄花ちゃん。虹花ちゃんは、何か飲みたいものある?」
「オレジュー百ってブランドの日本のオレンジジュースがいい。あれ、輸出もしているんだよ。百って書いてあるのに、百パーセントのジュースではないの。甘くて舌がおかしくなるのよ」
「着色料とか大丈夫かしら」
もやもやっ。
ひなぎくは、やはりお母さん目線でみてしまう。
「じゃあ、サウナに行って来ます」
もやもやーん。
蓮花が露天風呂方面にあるサウナへ向かうと、ひなぎくは、鏡の前の忘れ物に気が付いた。
「はい。タオル忘れているわよ」
「お恥ずかしい」
もやもやーん。
顔を隠して、受け取ったようだ。
蓮花に彼氏はいるのだろうか?
こんなことは邪推だなとひなぎくは反省しきりだ。
「私は、露天風呂に行きたいなー。二人はどうする?」
「混浴って何?」
「混浴って何?」
「ああ、女風呂と男風呂に別々の入り口があったでしょう。あの戸を開けると、男の人も女の人も一緒のお風呂なのよ」
「ああ。だから、蓮花お姉ちゃんは見られたくないのねー」
もやもやーん
「サウナは男女別だものね。気兼ねがないわよね。二人は和くんや劉樹お兄ちゃんを気にするの?」
「気にするって? うちはお風呂はシャワーだったから」
「そうか、二人は、パリが長いのだものね」
もやっ。
失言は繰り返さないと決めたばかりなのにと思った。
「蓮花お姉ちゃんの所に行きたいな」
「あそこはとても蒸し暑いのよ。まだ無理かなー」
もやもやーん。
二人が倒れたら一大事だわとかがんで手をつないだ。
「えー、もう三年生なのにダメなの?」
「私も行かないから、違うので遊ぼうか」
「何々?」
「何々?」
「うーん。打たせ湯は肩こりにいいけど、二人には荒行よね」
もやっ。
ひなぎくは、首を捻ってばかりである。
「どうしたの?」
「ジャグジーに行きましょう。ブクブクが楽しいわよ」
「はーい」
「はーい」
「ひなぎくさん、ブクブクが肩に当たるのー。気持ちが悪いよ」
もやっと、んがーん。
二人は、まだ小さかったっけ。
子ども目線ができなくて、ひなぎくは、お母さんの目は結構大変だと思った。
「ごめんなさいね。それは、失敗でした。隣の大浴場に入ろう。泳げそうよ」
「ひなぎくさんは、泳げないってパーパーが言ってたよ」
もやっ。
さっき、聞きました。
「それは、間違いよ。人魚みたいなんだから」
もやもやーん。
童話、読んでいるかな。
人魚って分かる?
ひなぎくは、楽しくなって来た。
「泳いでくださーい」
「恥ずかしいから、勘弁してください」
もやもやーん。
拝むように頼んだけど、湯けむりがどうしてか漂い過ぎて、見えたかな。
「三人で、ちゃぽこんしよう」
「何それ」
「何それ」
「肩まで、温まろうって意味なの。おかしかったかな」
もやもやーん。
ちゃぷっ。
お手本にひなぎくが先につかった。
「分かりました。百数えます。澄花は算数得意なんだよ」
「アン、ドゥ、トロワ……(一、二、三……)」
「まあ、上手ね。今度もこうして一緒に入りましょう」
にこやかにしたら、ぴたっと二人がくっついて来た。
もう、もやっとしていない。
二人の体温がひしと伝わる。
「ええー、また、一緒に入ってくれるの?」
「ええー、また、一緒に入ってくれるの?」
「いつでもいいわよ」
ガタリ。
「あら? あの露天風呂の方から物音がするわね……」
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