上 下
16 / 27

犯人はレイの姉? その二

しおりを挟む
「――というわけなんだ、ファリル姉さん」

「ふぅん・・・・・・。なるほどねぇ」

 話を聞き終えた姉さんは、のほほんとした顔で、

「つまりレイちゃんは、呪いの下着が、私の店で売ってた物かどうか、確かめてほしいと」

「そういうこと」

「わかりました。ほかならぬ弟の頼みですもの」

 姉さんはにっこりうなずくと、

「では早速、失礼しますね」

 言うなり、ぴらっ、とリズ様のスカートをめくり上げる。

「はひぃっ!?」

「――ぶっ」

 変な悲鳴をあげるリズ様。思わず吹き出す俺。

「な、なんてことすんですか、いきなりっ!」

 慌てて手を押さえるエレナに、

「だってー。
 呪いの下着を見ないと、私の作品かわからないでしょ?」

「じ、自分で脱ぎますからっ!」

 王女は真っ赤になって叫ぶと、服のボタンに手をかけて――上目遣いに俺の方をじーっと見つめる。

「さっさと後ろを向かんかっ!」

 エレナに頭を掴まれ、俺は、ぎぎぎっ、と後ろを向かされた。

「いててっ。
 ごっ、ごめん。うっかりしてた」

「全く、この姉弟は・・・・・・」

 ため息つくエレナ。

 しばらく衣擦れの音が聞こえたあと。

「これ、なんですけど・・・・・・」

 リズ様の恥ずかしげな声に続き、

「どれどれ。うーん・・・・・・」

 しばし、姉さんのうなる声が聞こえ――

「・・・・・・こ、これはっ!?」

「何かわかったっ?」

 突如あがった声に、俺は慌てて問いかける!

「あぁ、やっぱり王女の肌は、キメの細かさが違いますねぇ。
 私の作品が似合いそう・・・・・・」

 うっとりつぶやく姉さんに、

『真面目にやってくださいっ!』

 俺とエレナの声がハモる。

「あん、怖ーい」

 おどけて怯えた仕草をすると、姉さんは、ついっ、と視線をそらせて、

「残念ですけど、知りませんねぇ」

「・・・・・・本当?」

「可愛い弟に、嘘なんてつけないわ」

 にっこり微笑む姉を、俺はジト目で見つめ、

「たった今、目の前でついてますけど」

「しくしく。
 姉を疑うなんて、弟が反抗期ですー」

 ファリル姉さんは、嘘泣きして目元をぬぐうと、不意に真面目な口調になり、

「――というか。
 例え知ってても、教えられないんですよ、実は」

「な、なんでっ!?」

「いい、レイちゃん。よーく聞きなさい」

 たずねる俺の鼻先に、姉さんは、ぴっ、と人差し指を立てると、

「騎士には、騎士道精神があるように。
 大人の魔法グッズ屋にも、大切な仁義があるの。
 だから、顧客情報をチクるなんて鬼畜なこと、絶対できないわ。
 エッチアイテム職人の、プライドにかけても、ね」

「捨ててください! そんな恥ずかしいプライドっ!」

「感動してよー。せっかくいいコト言ったのにぃ」

「あきれることしかできませんっ!」

「ふーんだ。
 とにかく、いくら弟の頼みでも、こればっかりはダーメ」

 ツン、とそっぽを向くファリル姉さん。

「ちょっと姉さん!
 これは王族の・・・・・・いや、祖国の危機なんだよ!
 わがまま言わないで・・・・・・」

「あーあー。
 聞こえませ―ん」

 両手で耳ふさぎ、アッカンベーする二十二歳。

 子供か。あんたは。
 ――くっ、仕方ない。
 この手だけは使いたくなかったが・・・・・・

 俺は覚悟を決めると、コホンッ、と一つ、せき払いして、

「ま、まぁ。姉さんが作ったにしては、デザインが下品すぎるかな」

 その途端。

 ぴきっ

 舌出す姉さんの額に、青筋が立つ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

おいしいはなし〜あたしが聖女♡なの〜

十夜海
ファンタジー
あたし、サクラ。 サクちゃんって呼んでくれたら嬉しいわ。 まあ、ちょっとしたことがあって……気づいたらあたしの腕の中には可愛い少年がいたの。 え?この子が勇者? え?あたしが聖女? え?ええ?世界を2人で救う? なんで、あたしがそんなこと? というか聖女って……ついてたらまずいんじゃないの?何が?ってナニが。 あと、この子お持ち帰りしてもいいのかしら? なんて、おネエなおにい様が聖女として召喚されて、勇者様と戦いのたびに出るとか出ないとか、オネエ様にはとってもおいしいっていう、は♡な♡し。 うふ♡

DNAにセーブ&ロード 【前世は散々でしたが、他人のDNAからスキルを集めて、今度こそ女の子を幸せにしてみせます】

緋色優希
ファンタジー
 その幼児は天使の微笑みを浮かべながら大人の足に抱き着いていた。だが、油断してはいけない。そいつは【生体情報電磁交換】のスキルを駆使して、相手のDNAに記録された能力をコピーして盗んでいるのだから。  かつては日本で暮らしていた藤原隆。四股をかけていたため、24歳にして女に刺されるという無様な死に方をして、この異世界へ迷える魂【渡り人】として、異世界転生を果たした。女泣かせの前世を悔い、今度の人生は、ちゃんと女の子を幸せにしようと誓ったのであったが、田舎の農家に生まれたため、その前途は多難だった。かつて地球で集めた様々なスキル、そして異世界でもスキルや魔法集めに奔走し、新しい人生を切り開くのだった。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。 その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは? ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】妃が毒を盛っている。

ファンタジー
2年前から病床に臥しているハイディルベルクの王には、息子が2人いる。 王妃フリーデの息子で第一王子のジークムント。 側妃ガブリエレの息子で第二王子のハルトヴィヒ。 いま王が崩御するようなことがあれば、第一王子が玉座につくことになるのは間違いないだろう。 貴族が集まって出る一番の話題は、王の後継者を推測することだった―― 見舞いに来たエルメンヒルデ・シュティルナー侯爵令嬢。 「エルメンヒルデか……。」 「はい。お側に寄っても?」 「ああ、おいで。」 彼女の行動が、出会いが、全てを解決に導く――。 この優しい王の、原因不明の病気とはいったい……? ※オリジナルファンタジー第1作目カムバックイェイ!! ※妖精王チートですので細かいことは気にしない。 ※隣国の王子はテンプレですよね。 ※イチオシは護衛たちとの気安いやり取り ※最後のほうにざまぁがあるようなないような ※敬語尊敬語滅茶苦茶御免!(なさい) ※他サイトでは佳(ケイ)+苗字で掲載中 ※完結保証……保障と保証がわからない! 2022.11.26 18:30 完結しました。 お付き合いいただきありがとうございました!

処理中です...