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第六章 ダンジョン編
第90話 まさかの犯人
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スレーム・ガングの5人は都市ヨゴオートノへの入り口である門前に到達した。都市を囲んでいる外壁の手前側はそれほど高くはないが奥側はかなりの高さになっており、竹を斜めに切ったそぎの形状のようだ。
門は常時開かれていて奥の高台の上に立つ大きな城を見ることができる。
「あれが数少ない残存する城と呼ばれる建物ですね」
「へー、なんか絵物語の中に入った感じがしますね。
皆、実物の城を見るのは初めてですよね?」
「白馬の騎士とか出てきそうだわ。実はその人が王子様だったりして」
ん? ロッカ、意外と乙女?
「さ、お城見物はここまでにして博士の邸宅に向かいましょう」
あれ? 都市には入らないの?
どうやら都市ヨゴオートノはメルクベルとは違って敷地が狭いらしく、博士の邸宅は建てられなかったようだ。地下を掘ることも禁止されているらしい。城からの脱出通路が地下にあるのではないかと噂されているようだ。
◇◇
一同が向かった先は都市の外壁の外側を東に向かった場所だった。
都市の外壁の外側もそこそこ栄えているようだ。外壁に囲まれている東大陸と同様な博士の邸宅がここにもあった。
外壁に囲まれているのは一緒だな。人通りも少ないし。
近所の家も博士関連の人たちが住んでいるんだろうか。
でもここは都市内部じゃないから周辺でモンスターは出るかもしれないぞ。
邸宅を訪ねると執事のロラックが出迎えた。
「いらっしゃいませ。旦那様から話は伺っております。
皆様、初めましてですね。私はロラックと申します」
なんか初めて会う人なのに同じような顔を三人も見ているせいか親近感しかない。
「ワーオ。来たようだよ! レオ!チナ!」
「クルーロ、だからボクをチナって言わないでって言ってるにゃ」
若い男女の二人が邸宅の中からロラックを押しのけて飛び出して来た。男のほうは珍しい白髪の青年だ。
「バン、ロッカ。久しぶり!
他の人は初めましてだね。俺、クルーロ! 宜しく!」
「ボクはリサレーチナにゃ!」
年上組って話だったけど、なんか愉快な人たちのようだな~。
二人と一通り挨拶をかわしたあと邸宅の中に通されると、ラウンジで一人の男がふてぶてしく座って待っていた。
「やっと来たか。博士の秘蔵っ子ども」
「レオ~、初めて会う人たちもいるんだからちゃんと挨拶しろよ~」
「そうだな、オレはレオだ。宜しく頼むぜ!」
ん? レオって人、どっかで・・・。
「あーーー! レオリット!?」
「ん? もしかしてお前、トウマか?」
「そうだよ、トウマだよ!
なんでレオリットがここに? それにレオって」
「バカ! こいつらにはレオで通してるんだ。その名で言うなって」
クルーロとリサレーチナがニタニタし出した。
「ふふ~ん。レオってホントはレオリットって名前なんだ。
レ・オ・リッ・ト」
「レ・オ・リッ・ト」
「くお~、やっぱ二人とも馬鹿にしてきやがった」
頭を傾げていたロッカはトウマに聞いた。
「トウマ、レオと知り合いだったの?」
「はい。レオリットとは同じ村で育ったんです。
じいちゃんから剣術を教わってたので兄弟子みたいな感じですかね?」
「レオって東大陸出身だったのね」
「言ってなかったか」
にしてもレオリット、村を出たときより更に逞しくなってるな。
一目では誰だか分からなかったよ。ふてぶてしさも増してる感じするし。
じいちゃんに弟子入りして力つけてから俺様感強かったけど。
「トウマ、積もる話はあとだ。ちょうどあと5部屋空いてるから荷物置いて来いよ」
「分かった」
「あはは。レオがそれ言うかにゃ? 気を使ってるの初めて見たにゃ」
「完全に話そらしてんね。普段なら絶対言わないぞ。
今はレオリットだからか? わはは!」
「くっ」
◇◇
レオリットはトウマより4つ年上で3年ほど早く村を出た。
レオリットは16歳になってからの1年間は村の護衛者として働いていて外出していることが多く、その頃になるとトウマとは余り会わなくなって話す機会はほとんどなくなっていた。そして17歳で討伐者になると村を出て行ったのだ。
レオリットは村を出てからの事をトウマにざっくりと話した。
最初にバルンに行ったのはトウマのときと一緒だ。
バルンで道具屋に寄ったら2スロットタイプの武器が売ってない事を知り、すぐにアーマグラスに向かい、アーマグラスにも2スロットタイプの武器が売ってなかったので大橋経由で中央大陸に渡ったそうだ。
レオリットは村を出てから2週間かからずに中央に来たらしい。
しかも、ギルドに登録せずに討伐者としてではなく一般人としてだ。
生活費は見かけたモンスターを倒して魔石を換金して稼いでいたようだ。
そしてメルクベルに着いたらしい。
パスを持っていなかったレオリットは都市に入れなかった。当てもなく都市周辺をウロウロしていたとき、たまたまモンスターに襲われそうになった行商人を助けてその伝手でパスを発行してもらったとのことだ。
そして都市に入り2スロットタイプの武器が手持ちの資金では買えない事を知ってからギルドに登録。クエストを受け始めたそうだ。
レオリットはパーティーを組まずしばらく一人で高難易度のクエストをこなしていた。そこで博士からのスカウトが来たらしい。
「なんか随分、ぶっ飛んでるね? レオリットらしいな。
で、何で名前レオって短くしたの?」
「なんか東大陸の道中で会った討伐者がよ。
短い名前で呼べたほうが連携取りやすいぞって言ってた気がしたからな。
なら最初から短い名前で登録しておくかって感じだ。知り合いもいなかったし」
「レオリットって相変わらず短絡的だな~」
「トウマもこれからはレオって呼べよ」
「うーん。レオねえ~、短くなっただけだから慣れればいいだけか」
「ところでケンじいは元気にしてるのか?」
「もう元気も元気、この間までメルクベルに来てたよ。
じいちゃん博士と知り合いだったんだ」
「ウソだろ?! まさかな・・・」
「何だよ。まさかって」
「ケンじいオレの事何か言ってたか?」
「ん-、特には。レオリットの名前すら出なかったよ」
「そ、そうか・・・。それはそれで何か寂しいな」
一息つき、二人ともお茶を飲んだ。
「あ、そうそう。バカだよな~、じいちゃん真魔玉盗まれたって」
「ぶーーーー!」
レオリットはお茶を噴出した。
「す、すまん。それオレだ」
「は? レオリットが盗んだ犯人だったの?」
「い、いや、ケンじい使ってなかったし、ちょっと借りてったつもりだったんだ。
オレも使ってみたくてよ。
そしたら2スロットタイプの武器がどこにも売ってなくてな」
「それで中央まで?」
「・・・そういうことになるな。
博士と契約することになって頼めば真魔玉くれそうだったからな。一回村まで返しに行こうとはしたんだ。ホントだぞ。
そしたらその頃から500万エーペル預けなきゃ中央出られなくなってよ。
それでそのままって感じだな」
「もしかしてじいちゃんが取り返しに中央までやって来たって思った?」
「うっ、か、返すから」
「いいよ。それはレオリットが持ってて。
じいちゃん心当たりありそうな感じだったし怒ってはいなかったよ。
それに俺もじいちゃんも博士から新しい真魔玉もらってるし、大丈夫だよ」
「そ、そうか。ふ~焦った」
「じいちゃん怒らすと怖いからね。会ったときは謝りなよ。ははは」
「分かったよ」
その頃、執事のロラックが馬次郎を連れて兄弟馬の兄馬に合わせていた。馬次郎は兄だと分かったのか随分嬉しそうな感じだったらしい。馬次郎の兄はモンスターの位置が分かるような特殊な馬ではないようだ。立派な馬だが普通にいる馬と大差ない。馬次郎が特別なのだ。馬次郎の馬齢は3歳でまだまだ成長余地を残している。
馬次郎の兄の馬名はファスティオン。ファスティオンの全弟の馬が競りで売りに出たとのことで購入されたのが馬次郎らしい。
馬次郎って誰が名付けたんだよ!(※ロッカです。)
門は常時開かれていて奥の高台の上に立つ大きな城を見ることができる。
「あれが数少ない残存する城と呼ばれる建物ですね」
「へー、なんか絵物語の中に入った感じがしますね。
皆、実物の城を見るのは初めてですよね?」
「白馬の騎士とか出てきそうだわ。実はその人が王子様だったりして」
ん? ロッカ、意外と乙女?
「さ、お城見物はここまでにして博士の邸宅に向かいましょう」
あれ? 都市には入らないの?
どうやら都市ヨゴオートノはメルクベルとは違って敷地が狭いらしく、博士の邸宅は建てられなかったようだ。地下を掘ることも禁止されているらしい。城からの脱出通路が地下にあるのではないかと噂されているようだ。
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一同が向かった先は都市の外壁の外側を東に向かった場所だった。
都市の外壁の外側もそこそこ栄えているようだ。外壁に囲まれている東大陸と同様な博士の邸宅がここにもあった。
外壁に囲まれているのは一緒だな。人通りも少ないし。
近所の家も博士関連の人たちが住んでいるんだろうか。
でもここは都市内部じゃないから周辺でモンスターは出るかもしれないぞ。
邸宅を訪ねると執事のロラックが出迎えた。
「いらっしゃいませ。旦那様から話は伺っております。
皆様、初めましてですね。私はロラックと申します」
なんか初めて会う人なのに同じような顔を三人も見ているせいか親近感しかない。
「ワーオ。来たようだよ! レオ!チナ!」
「クルーロ、だからボクをチナって言わないでって言ってるにゃ」
若い男女の二人が邸宅の中からロラックを押しのけて飛び出して来た。男のほうは珍しい白髪の青年だ。
「バン、ロッカ。久しぶり!
他の人は初めましてだね。俺、クルーロ! 宜しく!」
「ボクはリサレーチナにゃ!」
年上組って話だったけど、なんか愉快な人たちのようだな~。
二人と一通り挨拶をかわしたあと邸宅の中に通されると、ラウンジで一人の男がふてぶてしく座って待っていた。
「やっと来たか。博士の秘蔵っ子ども」
「レオ~、初めて会う人たちもいるんだからちゃんと挨拶しろよ~」
「そうだな、オレはレオだ。宜しく頼むぜ!」
ん? レオって人、どっかで・・・。
「あーーー! レオリット!?」
「ん? もしかしてお前、トウマか?」
「そうだよ、トウマだよ!
なんでレオリットがここに? それにレオって」
「バカ! こいつらにはレオで通してるんだ。その名で言うなって」
クルーロとリサレーチナがニタニタし出した。
「ふふ~ん。レオってホントはレオリットって名前なんだ。
レ・オ・リッ・ト」
「レ・オ・リッ・ト」
「くお~、やっぱ二人とも馬鹿にしてきやがった」
頭を傾げていたロッカはトウマに聞いた。
「トウマ、レオと知り合いだったの?」
「はい。レオリットとは同じ村で育ったんです。
じいちゃんから剣術を教わってたので兄弟子みたいな感じですかね?」
「レオって東大陸出身だったのね」
「言ってなかったか」
にしてもレオリット、村を出たときより更に逞しくなってるな。
一目では誰だか分からなかったよ。ふてぶてしさも増してる感じするし。
じいちゃんに弟子入りして力つけてから俺様感強かったけど。
「トウマ、積もる話はあとだ。ちょうどあと5部屋空いてるから荷物置いて来いよ」
「分かった」
「あはは。レオがそれ言うかにゃ? 気を使ってるの初めて見たにゃ」
「完全に話そらしてんね。普段なら絶対言わないぞ。
今はレオリットだからか? わはは!」
「くっ」
◇◇
レオリットはトウマより4つ年上で3年ほど早く村を出た。
レオリットは16歳になってからの1年間は村の護衛者として働いていて外出していることが多く、その頃になるとトウマとは余り会わなくなって話す機会はほとんどなくなっていた。そして17歳で討伐者になると村を出て行ったのだ。
レオリットは村を出てからの事をトウマにざっくりと話した。
最初にバルンに行ったのはトウマのときと一緒だ。
バルンで道具屋に寄ったら2スロットタイプの武器が売ってない事を知り、すぐにアーマグラスに向かい、アーマグラスにも2スロットタイプの武器が売ってなかったので大橋経由で中央大陸に渡ったそうだ。
レオリットは村を出てから2週間かからずに中央に来たらしい。
しかも、ギルドに登録せずに討伐者としてではなく一般人としてだ。
生活費は見かけたモンスターを倒して魔石を換金して稼いでいたようだ。
そしてメルクベルに着いたらしい。
パスを持っていなかったレオリットは都市に入れなかった。当てもなく都市周辺をウロウロしていたとき、たまたまモンスターに襲われそうになった行商人を助けてその伝手でパスを発行してもらったとのことだ。
そして都市に入り2スロットタイプの武器が手持ちの資金では買えない事を知ってからギルドに登録。クエストを受け始めたそうだ。
レオリットはパーティーを組まずしばらく一人で高難易度のクエストをこなしていた。そこで博士からのスカウトが来たらしい。
「なんか随分、ぶっ飛んでるね? レオリットらしいな。
で、何で名前レオって短くしたの?」
「なんか東大陸の道中で会った討伐者がよ。
短い名前で呼べたほうが連携取りやすいぞって言ってた気がしたからな。
なら最初から短い名前で登録しておくかって感じだ。知り合いもいなかったし」
「レオリットって相変わらず短絡的だな~」
「トウマもこれからはレオって呼べよ」
「うーん。レオねえ~、短くなっただけだから慣れればいいだけか」
「ところでケンじいは元気にしてるのか?」
「もう元気も元気、この間までメルクベルに来てたよ。
じいちゃん博士と知り合いだったんだ」
「ウソだろ?! まさかな・・・」
「何だよ。まさかって」
「ケンじいオレの事何か言ってたか?」
「ん-、特には。レオリットの名前すら出なかったよ」
「そ、そうか・・・。それはそれで何か寂しいな」
一息つき、二人ともお茶を飲んだ。
「あ、そうそう。バカだよな~、じいちゃん真魔玉盗まれたって」
「ぶーーーー!」
レオリットはお茶を噴出した。
「す、すまん。それオレだ」
「は? レオリットが盗んだ犯人だったの?」
「い、いや、ケンじい使ってなかったし、ちょっと借りてったつもりだったんだ。
オレも使ってみたくてよ。
そしたら2スロットタイプの武器がどこにも売ってなくてな」
「それで中央まで?」
「・・・そういうことになるな。
博士と契約することになって頼めば真魔玉くれそうだったからな。一回村まで返しに行こうとはしたんだ。ホントだぞ。
そしたらその頃から500万エーペル預けなきゃ中央出られなくなってよ。
それでそのままって感じだな」
「もしかしてじいちゃんが取り返しに中央までやって来たって思った?」
「うっ、か、返すから」
「いいよ。それはレオリットが持ってて。
じいちゃん心当たりありそうな感じだったし怒ってはいなかったよ。
それに俺もじいちゃんも博士から新しい真魔玉もらってるし、大丈夫だよ」
「そ、そうか。ふ~焦った」
「じいちゃん怒らすと怖いからね。会ったときは謝りなよ。ははは」
「分かったよ」
その頃、執事のロラックが馬次郎を連れて兄弟馬の兄馬に合わせていた。馬次郎は兄だと分かったのか随分嬉しそうな感じだったらしい。馬次郎の兄はモンスターの位置が分かるような特殊な馬ではないようだ。立派な馬だが普通にいる馬と大差ない。馬次郎が特別なのだ。馬次郎の馬齢は3歳でまだまだ成長余地を残している。
馬次郎の兄の馬名はファスティオン。ファスティオンの全弟の馬が競りで売りに出たとのことで購入されたのが馬次郎らしい。
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