聖女と団長とその暮らし

meeero

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崩壊と創造

そして夜が明ける*7

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「うっ………うあああああああ!!!」


バチバチと正聖女アルカナの体から膨大な魔力の波動が感じ取れた。

「っっ……正聖女様………!!?」

グレンリオはアルカナに駆け寄ろうとしたが膨大な魔力に近付けそうもない。

「あああああ!!」

魔力なんてさっきまで全然感じなかったのに!            後ろでガーランが叫んだ

ーー確かに、魔力が正聖女から感じ取れなかった。…確か、修道女のアンが皆魔法が禁じられた、と言っていた。正聖女も魔力が封じられていたのか…!!だがこの魔力量は俺より強く、多いぞ…!!

グレンリオは突風に耐えながら、何が起こっているのか思考を巡らせようとしたが、アルカナの異変に目をやると驚いた。

「額飾りが……!!!」

バチバチと音を立てながらアルカナの頭に食い込んでいるのか、血が出ている。多分それが、アルカナの魔力抑制具なのだろう。

「……っ!!魔法具を打ち破るか……!頭が割れるぞ…!!!やめろ!!」

「うああああああああああああ!!!!」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーー…
ーーーーーーーーーーーーーーーー……

は一瞬の出来事だった。
大きな破裂音と共に、額飾りが弾けアルカナから膨大な魔力が放出された。
その力は、上空で見たことも無い程の大きな魔方陣となり、雨を降らせた。その規模は、大国モーバンリッシュ全土を乾期などお構いなしに潤した。
また魔方陣は王都上空に消えることなく展開し続けて、星よりも輝きながら雨を1週間も降らせ続けたのは聖女の涙と言われモーバンリッシュの歴史に刻まれた。

「………雨を降らせた……のか…」

グレンリオは空を見上げていた。
上空に輝く美しい魔方陣。見たことも無い美しい風景に呆然とした

「団長!これで媒体探しに集中できますね!」

「あ、ああ…」

遠くで騎士団と避難民の歓声が聞こえている。
あれだけの力を正聖女となる少女が持っていたことに恐怖すら感じる。

ーーーーーードサッ

グレンリオの後ろで正聖女が倒れた

「大丈夫か!?」

「正聖女様!!」

慌てて駆け寄り、息を飲んだ。
額の魔法具は砕けているが、額に食い込み血が溢れている。
アルカナの血の気も引いており手足は凍えるように冷たい。グレンリオは息を確かめる。

「……!息が弱い!」

「隊長…治療兵を呼んで来ます…」

「そうしてくれ…!!」

口と鼻からも血が流れて来たーー…
グレンリオは回復系の魔法を極端に苦手としており、使えない。

なにもできず、ただ血を押さえるしかない。

「……死ぬな…死ぬな……!死ぬな!!」

うっすらと開いていたアルカナの瞳から光が消えかけている。

「死ぬな!!!死ぬな!!…………正聖女アルカナ!死ぬな!!!」

「団長!!!連れて参りました!!」

ぜえぜえと息を切らして駆け戻った兵と治療士達は直ぐにアルカナの元に寄った。

「こここここ、これは……」

ぐっと唾を飲み込んだ治療士は、震えている

「絶対に死なせるな!頼むぞ。」

「団員…申し訳有りませんが、どの兵も、治療兵も含め全てが魔力切れ間近です。応急処置しか現状出来ませんので、至急王宮の治癒党へお連れしなくては無さそうです。」

治療班隊長のガゼット・ウェーインがサクサク処置の指揮を取りつつ見つめた

「持ってどれくらいだ…」

「…今のままでは、一時間も無いかと。」

「………わかった。急ぎ王宮へ帰還する!が、馬車では時間が掛かるな。俺の馬で行く。」

「団長の馬で、ですか!?」

「無茶ですよ!!!」

「分かってる!俺の馬が1番速いだろう!だからおぶって行くんだよ!振動も考慮したうえだ!いいから準備しろ!!時間が無い。」

「「「は、はい…!!!」」」

グレンリオが口笛を吹くと意気揚々と愛馬が駆けてきた。
プライドが国王より高い、イシュゲーテだ。

「止血対策したのち、俺の背に縛れ。動かないようにな。」

「「「はい!」」」

そうしてグレンリオは王宮へと駆け出した。


   
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