魂の輪廻から外されました

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第69話 体力回復男

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「ヴォールくん、起きてますかー」

「・・・」


仰向けになり、目を瞑る彼は私の呼びかけに無反応。ほんとに寝ちゃってるのかな


ヴォールのすぐ横でちょこんと座り、空を見る。雲一つない青空が広がっている。薄暗い地獄では見ることの出来ない風景に、マクアはすこし感動していた


マクアは地獄から出たことがない。物心ついたときからツノ様に仕えていたからだ。その事に不満を覚えたことはないし、それが当然の務めだと思っていた

ゆえに同年代の友達というものはいない。天界にはたくさんの天使がいるそうだが、地獄はそうではない


強大な力を持つ悪魔が数人いるだけだ。数で勝負の天界と、質で勝負の地獄。両者のパワーバランスは奇跡的に保たれている


「むにゃ・・・か、噛まないで・・・幼女ちゃん・・・」


寝言。どうやらほんとに寝てるらしい。幼女ちゃんって誰だろう、友達かなぁ。

しかも噛まないでって・・・夢の中で何が起きてるの。なんでそんなに嬉しそうなの。噛まれてるのに嬉しいの?


「・・・はっ!」


も、もしかして。ヴォールくんは噛まれるのがすきなのかも?!

噛まれるとしたらどこがいいんだろ・・・手?


ボロボロで、傷ついたヴォールの手を見る。そっと撫でると、ここまで登ってきた苦労と痛みが心に伝わってくる気がした


「・・・」


彼の手を持ち上げ、自分の顔に近づける。間近で見ると、自分の細くて小さい手と対照的な、大きくてゴツゴツとした手。

そんな些細な事で、女の自分と男のヴォールの違いを感じ、何故か顔が熱くなった


おかしい・・・ヴォールくんに血を吸われてからというもの、私の中で彼という存在が大きくなってる。

この気持ちは、ヴァンパイアの魔眼のせい・・・?


「ヴォールくん、私はどうしちゃったのでしょうか」


彼の手をギュッと抱きしめる。ただそれだけのことで、心臓が笑えるくらいドキドキしてしまう。これが魔眼の力なのだとしたら、私は完全に魅了させられてしまっているな・・・





───ヴォール視点



マクアさんが、俺の腕を抱きしめている


・・・なぜ?!


まってこれどういう状況なの。幼女ちゃんに噛まれまくる夢を見て、起きたら


マクアさんが、俺の腕を抱きしめている


・・・なんで?!


思わず寝たふりしてしまったよー。はっ、まさかこの状況。マクアさんから俺へのネタ振り?なんつってー!ハハッ!

笑っとる場合かアホタレ。さてどうしたものかな。さっきからずっとマクアさん俺の腕抱きしめてるし、離す気配もねぇし


ここは一つ、芝居をうってやるか。もうすぐ起きますよー的な感じで


「うーん・・・」

「っ!?」


ドカッ!


マクアは抱きしめていた腕を勢いよく地面に叩きつけた


いてぇ!痛いよマクアさん!俺の手ボロボロなんだからもっと優しく離してくれよぉ!


「くっ・・・おはようございますマクアさん」

「よく眠れましたか?」

「えぇ、おかげさまで。体力も回復しました」


最後の一撃で腕は痛めたけどな!
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