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第29話 肉 男
しおりを挟むそして今、テーブルの中央に置かれた鍋を囲むようにして 俺たちは座っている
この場にいる全員 真剣な眼差しだ。それもそうだろう
すき焼きは! 戦争なのだから!!
「・・・では、始めようか」
「あぁ・・・始めちゃってくれ・・・っ!!」
「ごくり・・・!」
充分過ぎるほど熱せられた鍋に 仙道が牛脂を引いていく
じゅ~~~!
あぁ、ぁああ!!こ、香ばしい!牛脂を引いただけだと言うのに、この高揚感!たまらねぇ!
「次、着物ちゃんだよ」
「は、はい!」
牛脂を引き終わったら 次は牛肉を焼く。緊張した面持ちで 一枚ずつ牛肉を置いてゆく
じゅわ~~~っ!!じゅわ~~~っ!!
俺のヨダレもじゅわ~~~だよこんちくしょう!!
「よし、味付けは俺に任せてくれ・・・」
焼けた肉に砂糖をふる。程よく染み込ませたあと、料理酒、醤油を加える
「す、すごいすごい!いい匂い!」
バンバンとテーブルを叩きながら、声を上げる幼女ちゃん。 はは、可愛い奴め
「さて、肉が焼ける前に」
仙道が卵を配る。
それはまるで、冒険の旅に出ることになった勇者が 王様から銅の剣を貰う時のような・・・ そうだ。俺たちは勇者だ。 卵は剣だ
・・・いやちがう、卵は卵だ。
コンコンコン・・・ パカッ!
なれた手つきで卵を割り かき混ぜる。
俺ほどの腕前になれば、片手で殻を皿に混入させることなく 投入できるのだが
ゴンゴン!・・・ ガチャ・・・
「あうぅ・・・ 殻がお皿に入っちゃった・・・」
こんな奴もいる。放っておこう 戦場では、付いてこれない奴は置いていかれるのだ。幼女が戦場にいること自体、おかしいのだ。
「そろそろ、いい頃合じゃないかな」
仙道が鍋をのぞき込む。自然と俺たちものぞき込む
そこには、追い求めていた宝石があった。
ぐつぐつと踊る牛肉が、まるで俺たちを歓迎するかのような 魅惑のダンス。
食欲を刺激する匂い。この空気・・・!
こんなの、美味いに決まってるじゃないか!
「じゃあ、一枚ずつ取ろうか」
「安心してね まだまだ食材はいっぱいあるんやから・・・っ!」
その通り すき焼きにおいて、こんなのはまだまだ序盤も序の口。肉だけを味わったあとに待ちうける、野菜や豆腐などの猛者たち・・・
くぅう!体が震える、武者震いってやつか
だがまずは、目の前の肉に集中しよう・・・
スッ・・・
可憐な少女を抱き締めるが如く やさしく引き寄せる
ぐぐっ・・・! びちゃ
隣に座っている幼女ちゃんが 悪戦苦闘しているようだ。お箸の扱いに慣れていないのか・・・
しょーがない。今回だけだぞ
スッ・・・
「!」
パァア・・・!と明るくなる幼女ちゃん。べ、別にアンタのために取ってあげたわけじゃないんだからね!勘違いしないでよね!
「さて、みんな肉はとったね?」
こくこくこく!
三人同時に首を縦にふる。右手には、伝説の聖剣『ohasi』が握られ いつでも戦えると、そう訴えているようだ
「では・・・頂こう」
「いただきます・・・」
「頂きます・・・!」
「いただきまーす!」
ぱく!
ぱく!
ぱく!
ぱく!
もぐもぐ・・・
あぁ・・・あぁぁあ・・・!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!あぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!
すぅーーー・・・
アァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!
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