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【ヒロイン視点】私の身体に触れて欲しくて
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エピローグ 私の身体に触れて欲しくて
私の目の前で、初恋のひとがノートPCのキーボードを叩いている。
ここは夕暮れの文芸部部室。
山吹色に染まった室内が幻想的で、夕陽が彼の綺麗な横顔を包むように照らしていた。
メイクなんて必要ないくらい目鼻立ちが整っていて、まつげも長い。伸びた髪を後ろで無造作に束ねていて前髪もボサボサだけど、もろもろ整えれば若手男性アイドルにだって負けないと思う。
その魅力に気づいている人はクラスに何人かいるようで、だから私は焦って告白した。
返事はもらっていないけれど、このまま押せ押せでいく。
誰にも渡さないもん。
私は心地のよいキータッチ音を聞きながら改めてそう誓った。
ちなみに彼以外の部員はみんな幽霊部員で、普段はここに来ないらしい。
だから、私と彼の二人きりだ。にへへ。
「……………………」
彼は執筆に集中している。
書いているのは私の大好きなエロゲのシナリオ。
日常会話を書いているのだろうか、それともエッチな大人のシーンだろうか。
真剣な表情から、それを察することはできない。
ただ、滑らかに動く彼の指がとてもセクシーで、私はそれを見ているだけでドキドキする。濡れる。
ああ、その指で私の身体に触れて欲しい。誰も触れたことがない秘密の花園を思うがままにいじって欲しい。
エロゲの主人公になりたい私は、エロゲヒロインにもなりたいのだ。
「……? 百合香、また変な妄想してる? その、ヨダレが……」
「――はっ!?」
あっちの世界に行っていた。
「私のことはいいの。続けて続けて」
彼の視線は再びノートPCの液晶画面へ。
そして、セクシーな指が再び軽やかなダンスを踊り始める。
素敵だなと思う。
指だけじゃなく、その表情も、身にまとう静謐な雰囲気も。
私は同じような魅力を持つ人たちを知っている。
それはテレビの仕事で共演するベテランの俳優さんやスタッフさんだ。
大きなモノを背負い、傷つきながら社会と戦っている。そして、万人の心を動かすほどの結果を出す。
育巳くんと初エッチした後、お風呂で彼の境遇を聞いて納得した。
彼も双子の妹さんという大切なモノを背負って、社会と戦っている。
親の言うままに生きてきた私とは全然違う。
しなかやか強さと覚悟、そしてこの世を生き抜く力を、高校二年生で既に持っている。
尊敬する。心から。
最初はファミレスでキーボードを打つ姿に心奪われたけれど、彼の内情を知った今、もっと好きになった。
「………………大好き」
その呟きは、執筆に集中してる彼の耳には届かない。
ちょっと切ない。
彼には何度も好きって伝えているけれど、実は毎回えいやと勇気を出して言っている。
連発し過ぎて、軽々しい印象を与えてしまったかもしれない。反省。
もっと構って欲しいけれど、執筆の邪魔は絶対しない。
書くことは彼の聖域だと思うから。
そこには足を踏み入れない。それが彼の恋人となる絶対必要条件だと思うから。
私は今日の分の執筆が終わるのを、ただただ待つ。
旦那様の帰りを待つ新婚の奥さんのような気持ちで。
私の目の前で、初恋のひとがノートPCのキーボードを叩いている。
ここは夕暮れの文芸部部室。
山吹色に染まった室内が幻想的で、夕陽が彼の綺麗な横顔を包むように照らしていた。
メイクなんて必要ないくらい目鼻立ちが整っていて、まつげも長い。伸びた髪を後ろで無造作に束ねていて前髪もボサボサだけど、もろもろ整えれば若手男性アイドルにだって負けないと思う。
その魅力に気づいている人はクラスに何人かいるようで、だから私は焦って告白した。
返事はもらっていないけれど、このまま押せ押せでいく。
誰にも渡さないもん。
私は心地のよいキータッチ音を聞きながら改めてそう誓った。
ちなみに彼以外の部員はみんな幽霊部員で、普段はここに来ないらしい。
だから、私と彼の二人きりだ。にへへ。
「……………………」
彼は執筆に集中している。
書いているのは私の大好きなエロゲのシナリオ。
日常会話を書いているのだろうか、それともエッチな大人のシーンだろうか。
真剣な表情から、それを察することはできない。
ただ、滑らかに動く彼の指がとてもセクシーで、私はそれを見ているだけでドキドキする。濡れる。
ああ、その指で私の身体に触れて欲しい。誰も触れたことがない秘密の花園を思うがままにいじって欲しい。
エロゲの主人公になりたい私は、エロゲヒロインにもなりたいのだ。
「……? 百合香、また変な妄想してる? その、ヨダレが……」
「――はっ!?」
あっちの世界に行っていた。
「私のことはいいの。続けて続けて」
彼の視線は再びノートPCの液晶画面へ。
そして、セクシーな指が再び軽やかなダンスを踊り始める。
素敵だなと思う。
指だけじゃなく、その表情も、身にまとう静謐な雰囲気も。
私は同じような魅力を持つ人たちを知っている。
それはテレビの仕事で共演するベテランの俳優さんやスタッフさんだ。
大きなモノを背負い、傷つきながら社会と戦っている。そして、万人の心を動かすほどの結果を出す。
育巳くんと初エッチした後、お風呂で彼の境遇を聞いて納得した。
彼も双子の妹さんという大切なモノを背負って、社会と戦っている。
親の言うままに生きてきた私とは全然違う。
しなかやか強さと覚悟、そしてこの世を生き抜く力を、高校二年生で既に持っている。
尊敬する。心から。
最初はファミレスでキーボードを打つ姿に心奪われたけれど、彼の内情を知った今、もっと好きになった。
「………………大好き」
その呟きは、執筆に集中してる彼の耳には届かない。
ちょっと切ない。
彼には何度も好きって伝えているけれど、実は毎回えいやと勇気を出して言っている。
連発し過ぎて、軽々しい印象を与えてしまったかもしれない。反省。
もっと構って欲しいけれど、執筆の邪魔は絶対しない。
書くことは彼の聖域だと思うから。
そこには足を踏み入れない。それが彼の恋人となる絶対必要条件だと思うから。
私は今日の分の執筆が終わるのを、ただただ待つ。
旦那様の帰りを待つ新婚の奥さんのような気持ちで。
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