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普通の恋愛がしたかった
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シーン02 普通の恋愛がしたかった
雑踏ひしめく街を歩いている。
鷹城百合香という、とてつもない美少女と一緒に。
「ふふふっ。本当にみーんな、私たちの方を見てるわね」
「……普通の恋愛がしたかった」
「イクミちゃんの普通ってなぁに?」
「いくみ……ちゃん!?」
「……君付けで呼んで欲しいの?」
「あっ、今は『ちゃん』でお願いします……」
「なら、私のことも百合香って呼んで欲しいな~。ね、ね? 今呼んでみて?」
「……百合香、さん」
「呼び捨て」
「……ゆ、百合香」
「それ! 今後はそれでよろしくね!」
ここだけ切り取りとラブコメ的青春なんだけどなぁ……。
「それでさ。イクミちゃんの言う普通の恋愛ってなぁに?」
「えっと、何となく話すようになって、友達になって、何回か遊んで、告白して……みたいな?」
僕は悩みながら、たどたどしくそう答えた。
「それって充分、特別じゃない?」
「僕にとっては特別だけど、普通はこういう感じじゃないの? よくわからないけど……」
「どうしても普通がいいの?」
「……そう、だね。僕の家はいろいろ特殊だから『普通』に凄く憧れる」
「ふーん……」
鷹城さんこと百合香が何か考え込んでいる。
彼女も『普通』とは言いがたい自分の家について思いを巡らせているのだろうか。
「イクミちゃんって兄妹はいるの?」
「えっと、双子の妹と……」
「イクミちゃんの妹さん!? しかも双子!? 絶対かわいい! 会いたい!」
「だめ!」
でも、本当はウチの妹、ユリカの大ファンなんだよなぁ。でも、悪い予感しかしないから黙っておこう。
「う~。けちー」
兄もいるけれど、それについて語るタイミングを失ってしまった。
「ま、『普通』の家って方が珍しいんじゃない?」
「だから、憧れるんだ」
親がちゃんと子供を愛してくれる家に。
「ごめん、家の話はあんまりしたくない……」
「ううん。私の方こそ嫌なこと聞いてごめんね。でも、悩み事とか苦しい事があったら何でも言って欲しいな~。独りだと、つらい気持ちがどんどん大きくなっちゃうでしょ? ね?」
優しげに彼女が笑う。
その笑顔に、また心臓を射貫かれた。
「あ、ありがとう、鷹城さ――」
「ゆ、り、か」
「……ありがとう、百合、香」
「真っ赤になっちゃってかわい~! ガマンできないからセクハラしちゃう!」
「ひゃあ!」
突然、百合香に後ろから抱きつかれ、お腹をさわさわされた。
色々とアレな道具を押し込んでいるショルダーバッグを落としそうになった。
中には、いろいろとエッチな道具が入っている。
中身をぶちまけたら大変なことになってしまうので、それだけは防いだ。
「わぁ~! お腹もスベスベ~」
「みんな見てるから!」
「じゃあ、二人きりならセクハラしていいのね?」
「二人きりでもダメ!」
「……これからもっと凄いことをしようとしてるのに?」
耳元で囁かれて、ぞわぞわっとした。
「それとこれとは別だから……!」
「も~。けちー」
百合香は渋々離れてくれた。
自分の背がもっと高くてカッコよければ、こんな目に遭うこともなかっただろう。
恋愛映画みたいなドラマティックなものじゃなく、ごく普通の、ありきたりな恋愛がしたかった。
なのに、そういう過程をすっ飛ばして、僕はこれから彼女にお尻の処女を奪われるわけで……。
せめて痛くありませんように。
僕は大きくため息を吐いて、そう願うばかりだった。
雑踏ひしめく街を歩いている。
鷹城百合香という、とてつもない美少女と一緒に。
「ふふふっ。本当にみーんな、私たちの方を見てるわね」
「……普通の恋愛がしたかった」
「イクミちゃんの普通ってなぁに?」
「いくみ……ちゃん!?」
「……君付けで呼んで欲しいの?」
「あっ、今は『ちゃん』でお願いします……」
「なら、私のことも百合香って呼んで欲しいな~。ね、ね? 今呼んでみて?」
「……百合香、さん」
「呼び捨て」
「……ゆ、百合香」
「それ! 今後はそれでよろしくね!」
ここだけ切り取りとラブコメ的青春なんだけどなぁ……。
「それでさ。イクミちゃんの言う普通の恋愛ってなぁに?」
「えっと、何となく話すようになって、友達になって、何回か遊んで、告白して……みたいな?」
僕は悩みながら、たどたどしくそう答えた。
「それって充分、特別じゃない?」
「僕にとっては特別だけど、普通はこういう感じじゃないの? よくわからないけど……」
「どうしても普通がいいの?」
「……そう、だね。僕の家はいろいろ特殊だから『普通』に凄く憧れる」
「ふーん……」
鷹城さんこと百合香が何か考え込んでいる。
彼女も『普通』とは言いがたい自分の家について思いを巡らせているのだろうか。
「イクミちゃんって兄妹はいるの?」
「えっと、双子の妹と……」
「イクミちゃんの妹さん!? しかも双子!? 絶対かわいい! 会いたい!」
「だめ!」
でも、本当はウチの妹、ユリカの大ファンなんだよなぁ。でも、悪い予感しかしないから黙っておこう。
「う~。けちー」
兄もいるけれど、それについて語るタイミングを失ってしまった。
「ま、『普通』の家って方が珍しいんじゃない?」
「だから、憧れるんだ」
親がちゃんと子供を愛してくれる家に。
「ごめん、家の話はあんまりしたくない……」
「ううん。私の方こそ嫌なこと聞いてごめんね。でも、悩み事とか苦しい事があったら何でも言って欲しいな~。独りだと、つらい気持ちがどんどん大きくなっちゃうでしょ? ね?」
優しげに彼女が笑う。
その笑顔に、また心臓を射貫かれた。
「あ、ありがとう、鷹城さ――」
「ゆ、り、か」
「……ありがとう、百合、香」
「真っ赤になっちゃってかわい~! ガマンできないからセクハラしちゃう!」
「ひゃあ!」
突然、百合香に後ろから抱きつかれ、お腹をさわさわされた。
色々とアレな道具を押し込んでいるショルダーバッグを落としそうになった。
中には、いろいろとエッチな道具が入っている。
中身をぶちまけたら大変なことになってしまうので、それだけは防いだ。
「わぁ~! お腹もスベスベ~」
「みんな見てるから!」
「じゃあ、二人きりならセクハラしていいのね?」
「二人きりでもダメ!」
「……これからもっと凄いことをしようとしてるのに?」
耳元で囁かれて、ぞわぞわっとした。
「それとこれとは別だから……!」
「も~。けちー」
百合香は渋々離れてくれた。
自分の背がもっと高くてカッコよければ、こんな目に遭うこともなかっただろう。
恋愛映画みたいなドラマティックなものじゃなく、ごく普通の、ありきたりな恋愛がしたかった。
なのに、そういう過程をすっ飛ばして、僕はこれから彼女にお尻の処女を奪われるわけで……。
せめて痛くありませんように。
僕は大きくため息を吐いて、そう願うばかりだった。
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