86 / 231
4章 港湾都市アイラ編
152話 大漁
しおりを挟む
南海の大海原を大型船が往く──
遠洋漁業に耐え得るよう改修を施した中古の元貨客船に乗り込んだ、シン&アリオスとサイモン率いる村の若い漁師達は目的地へと船を進める。
サイモンと挨拶を済ませたシンが話を持ちかけた当初、同行者のアリオスを含め全員が試算した利益予想に半信半疑だったが、商売が軌道に乗るまでの経費は全てこちら持ちという事でとりあえず納得してもらい、村長の号令一下、若い衆が集められて船に乗り込んでいる。若い方が仕事に慣れるのも早かろうと言う判断か。
船に揺られて3日、そろそろサイモンが言っていた目的地も近い。
「良い風ですねえ」
「おう、こんな穏やかなくせに帆に絡んでくれる風も珍しいな、シン、おめえ持ってんな」
「いやいや、村長の人徳の賜物ですよ」
「ジジイを持ち上げても何も出ねえぞ?」
「漁が成功するかもしれないじゃないですか」
「まあそういう事なら、乗せられてやるよ」
「………………………………うぷっ」
船首付近で駄弁っている2人の背後で、アリオスが船酔いと格闘中であった。
村にいても仕方が無いとシン達に同行したアリオスではあったが、航海初日で己の判断を後悔していた。
最初はシンやサイモン、若い漁師達も鍛え上げられた肉体に金髪・甘いマスクとなかなかの完璧超人が船酔いに苦しむ姿を笑っていたものの、2日目では可哀想なものを見るような目つきになり、3日目は無視するに至っていた。
「酔い止めの薬を飲んでもそれとか、致命的に船と相性が悪いようですね」
「おめえ、漁師の子に生まれなくてホントに良かったなあ?」
「わた……しはっ! 騎兵だから船に……乗れ、な……く……」
「馬も船もどっちも揺れる乗り物じゃないですか?」
シンが心底不思議そうに呟く。
「まる、で…………違うわ!」
「「……………………?」」
シンとサイモンは向かい合いながら「解らない」といった風に首を振る。
薬を処方している以上、後は状態異常解除の薬か魔法を、効果が切れるたびに使わなければならないが、無駄な労力でしかないのでシンは当然のように無視した。
「アリオスさん、近くの物を見てもユラユラと揺れてて気持ち悪いから遠くを見るといいですよ。ホラ、あの雲なんかオッパイに見えてきませんか?」
「……なんでそれで……私が興味を持つと、思ったんだ……?」
「おい、バカ話は置いといて、見えてきたぞ!」
サイモンの言葉通り船の行く先には、海面からゴツゴツとした岩の突き出た、いわゆる岩礁帯が現れる。
その手前数十メートルで船を止め、シンは漁師達に指示を飛ばしながら自ら率先して船縁に立ち、血抜きのされていない豚肉を釣り針にさすと海に放る。
「さあて、「サメ釣り」を始めましょうか!」
シン達が釣り糸をたらして数分、豚肉の血生臭い匂いに吸い寄せられてきた魚影が透明度の高い海面に影を作り出す。
そして、
「おお! かかったぞ──!!」
漁師の一人が声を上げると、別の場所からも同様の声が上がる。
ちなみに釣りと言ってはいるが、使っているのはいわゆる釣竿ではなく、荷下ろしに使われるクレーンを流用したものであり、リールに模した滑車を男が2人がかりで巻き取っている。
暫しの力比べの後、やがて根負けしたサメが船の近くに引き寄せられてきた所を見計らい、止めを刺すためにモリを構えた男が頭をのぞかせる。
そこへ、
ザバアアア────!!
突如としてサメがジャンプして海面から飛び出し、モリを構えた男に襲い掛からんとその大口を開く!
しかし──
「おお、全然届かねえな、こりゃ安全だぜ!」
通常の漁船と違い、貨客船を改造した船は甲板までが高く、体力の奪われたサメではとうていそこまで飛び上がることは出来ない。
反撃むなしく、特製の長いモリに突かれたサメは少しの間暴れたものの、やがて動かなくなり、大人しくクレーンで吊り(釣り)上げられる。
「で、コイツがそうなのか?」
「ええ、ガイランシャーク、目的の獲物ですね」
ガイランシャーク モンスターではない為ランク指定無し
サザント大陸遠海に生息する体長3メートルほどのサメ。
肉食で獰猛な性格をしているが、縄張りとしている岩礁帯からあまり離れる事は無いので被害件数は少ない。
歯は鋭いものの、それほど強度は無いので甲殻類は食べない。その為、外敵の少ないこの場所にはアワビやウニ、エビカニといった海の幸が豊富にある。
そしてそれを目当てに一攫千金を狙った漁師が毎年被害に遭う。
※魔物とそうでないものの違いは体内に魔石が存在するかどうか
釣り上げたガイランシャークを甲板に並べると、頭を切り落として更に口を上下に分断する。
そして両顎に並ぶ無数の歯を指差して、
「この歯列の3番目、必要なのはここだけなので間違えないでくださいね」
シンの指示通り、解体担当の男達が付近の鋭い歯に気をつけながら第3歯列の歯だけを丁寧に取り出し、1ヶ所に集める。
集めた歯を液体の入ったガラス瓶に入れ、蓋をしてから軽くシェイクし、そのまま船内の倉庫送りにする。
「あの液体は?」
「ただの濃縮したお酢ですよ、あのまま4~5日放置しておけば表面が溶けて中身が取り出しやすくなるんです」
「ほう、必要なのは中身だけか」
「ええ、そいつを加工すれば「歯の卵」の出来上がりです」
歯の卵──欠けた歯や抜け落ちた歯茎に詰めれば、かつての元気な歯に成ってくれるよう調合された歯胚の塊。
飽食・美食の輩と虫歯は馬車の両輪のように切っても切れない関係らしく、虫歯に悩むお貴族様は多いらしい。
この世界で虫歯治療と言えば基本的には虫歯になった歯を抜き、そのまま放置か義歯を埋めるかのどちらかだが、偽者より本物が評価が高いのはどこも同じ、歯が生え揃っているというのはある意味、自己管理・欲望に流されない節度の持ち主という評価がついてくる。
要はプライドと外聞の問題がここに生じる。
もちろん「こんなことで!」との声を無視すれば神殿で虫歯の「治癒」を頼む事は可能だが、当然貴族が事あるごとに神殿に通うようでは、
「あの貴族はしょっちゅう神殿に通っている、何やらよからぬ呪いか、よそで人に言えない病気でも貰ってきたのでは?」
などとの噂が立つ。
そんな、金よりもプライド大事な貴族連中に高く売りつけるための「歯の卵」、これを適当な大きさに分けて欠けた歯に、失われた歯茎に詰めておけば1週間ほどで元の綺麗な歯が戻ってくる、そんなありがたい薬である。
「金持ちってのはこんなモンに大金を出すってのかい……ったく、ワシ等とは本当にすむ世界が違うのう」
「何が商売になるかなんて分からないですよねえ」
言いだしっぺが何を? という視線を浴びせながら、本当にこれで村が潤うのなら嬉しい限りだ、という気持ちが漁師達の間に広がる。
そんな中、
「ところで、この歯の部分以外はどうするんだ、肉は臭くて食えねえぞ?」
ご他聞にもれず、その体内が尿素たっぷりのガイランシャークの肉は臭い、その為肉は海に投棄が基本な訳だが、
「あ~、どうしよっかなぁ……まあついでだからいいか、サメのヒレは切って残しておいて下さい!」
そう言ってシンはフカヒレの作り方を教える。
話を聞いた漁師の一人が、
「で、美味いのか?」
「味は無いですね、その後の調理で味付けするしかないですよ」
「オイ!!」
「その代わり調理次第でどんな味にも成るのが強みですかね、食感も面白いし、なにより「美容と健康」に良いんで、こっちも上手く売り込めば金持ち連中に売れますよ」
「美容と健康ねえ……」
「試しに奥さんにでも食べさせてみれば分かりますよ……多分、最初は皆さんが襲い掛かって、その後返り討ちとばかりに搾り取られて干からびた皆さんの未来が見えますねえ」
「マジかよ!?」
下世話なジョークで船上が和む中、サメ漁は続く。
そして、充分な量のサメの歯とヒレを確保したシン達は帰路につくため錨を上げて進路を陸地に向ける──
──が、
「オイ、どうした!? 船が動かねえぞ!!」
「そんなはず無え! 碇は上げたし……オイ、誰だ、糸がまだ1本垂れたまんまだぞ?」
ガクン────!!
「うおっ!?」
いきなり船体が横に傾き、バランスを崩した何人かがそのまま海に放り出される!
「急いで糸を切れ! 船が引き倒されっぞ!?」
すかさず糸を切断し、ゆり戻しで甲板が安定しないにもかかわらず猟師たちは見事な連携で落ちた仲間にロープを投げて引き上げる。幸いサメは近くにいなかったようで怪我人はいなかった。
「……ふぅ、一体なんだったんだ?」
誰かが呟くその声に、シンが岩礁帯の方角を眺めながら問いに答える。
「アレですかね……ところで皆さん、一つお聞きしたいのですが、蟹はお好きですか?」
「蟹だぁ? 今はそれどころじゃあ──あ、カニ?」
「ええ、蟹です。食べると美味しいアレですよ」
「そりゃまオメェ、好きだけどよ。この辺に現れるカニッつったら……ホラ、なぁ」
漁師達の声のトーンが徐々に下がっていく、普段シーラッド近海で獲れる蟹はズワイガニに似た蟹で、煮ても焼いても蒸しても美味しい。
ただ、目の前に現れた巨大な蟹は、どの調理法を使っても、硬くてとても食べられたものではない、そんな類の蟹だった──
「……今日一番の大物ですねえ。誰ですか、釣ったのは?」
全員が首を横に振る、自分では無いと全身で訴える
海面から顔を出す岩礁をよじ登り、こちらに向き直ると2つのハサミをガチガチと鳴らし威嚇行動をしている。
グレートオーシャンクラブ、Aランクモンスターが釣果の項目に追加された──
遠洋漁業に耐え得るよう改修を施した中古の元貨客船に乗り込んだ、シン&アリオスとサイモン率いる村の若い漁師達は目的地へと船を進める。
サイモンと挨拶を済ませたシンが話を持ちかけた当初、同行者のアリオスを含め全員が試算した利益予想に半信半疑だったが、商売が軌道に乗るまでの経費は全てこちら持ちという事でとりあえず納得してもらい、村長の号令一下、若い衆が集められて船に乗り込んでいる。若い方が仕事に慣れるのも早かろうと言う判断か。
船に揺られて3日、そろそろサイモンが言っていた目的地も近い。
「良い風ですねえ」
「おう、こんな穏やかなくせに帆に絡んでくれる風も珍しいな、シン、おめえ持ってんな」
「いやいや、村長の人徳の賜物ですよ」
「ジジイを持ち上げても何も出ねえぞ?」
「漁が成功するかもしれないじゃないですか」
「まあそういう事なら、乗せられてやるよ」
「………………………………うぷっ」
船首付近で駄弁っている2人の背後で、アリオスが船酔いと格闘中であった。
村にいても仕方が無いとシン達に同行したアリオスではあったが、航海初日で己の判断を後悔していた。
最初はシンやサイモン、若い漁師達も鍛え上げられた肉体に金髪・甘いマスクとなかなかの完璧超人が船酔いに苦しむ姿を笑っていたものの、2日目では可哀想なものを見るような目つきになり、3日目は無視するに至っていた。
「酔い止めの薬を飲んでもそれとか、致命的に船と相性が悪いようですね」
「おめえ、漁師の子に生まれなくてホントに良かったなあ?」
「わた……しはっ! 騎兵だから船に……乗れ、な……く……」
「馬も船もどっちも揺れる乗り物じゃないですか?」
シンが心底不思議そうに呟く。
「まる、で…………違うわ!」
「「……………………?」」
シンとサイモンは向かい合いながら「解らない」といった風に首を振る。
薬を処方している以上、後は状態異常解除の薬か魔法を、効果が切れるたびに使わなければならないが、無駄な労力でしかないのでシンは当然のように無視した。
「アリオスさん、近くの物を見てもユラユラと揺れてて気持ち悪いから遠くを見るといいですよ。ホラ、あの雲なんかオッパイに見えてきませんか?」
「……なんでそれで……私が興味を持つと、思ったんだ……?」
「おい、バカ話は置いといて、見えてきたぞ!」
サイモンの言葉通り船の行く先には、海面からゴツゴツとした岩の突き出た、いわゆる岩礁帯が現れる。
その手前数十メートルで船を止め、シンは漁師達に指示を飛ばしながら自ら率先して船縁に立ち、血抜きのされていない豚肉を釣り針にさすと海に放る。
「さあて、「サメ釣り」を始めましょうか!」
シン達が釣り糸をたらして数分、豚肉の血生臭い匂いに吸い寄せられてきた魚影が透明度の高い海面に影を作り出す。
そして、
「おお! かかったぞ──!!」
漁師の一人が声を上げると、別の場所からも同様の声が上がる。
ちなみに釣りと言ってはいるが、使っているのはいわゆる釣竿ではなく、荷下ろしに使われるクレーンを流用したものであり、リールに模した滑車を男が2人がかりで巻き取っている。
暫しの力比べの後、やがて根負けしたサメが船の近くに引き寄せられてきた所を見計らい、止めを刺すためにモリを構えた男が頭をのぞかせる。
そこへ、
ザバアアア────!!
突如としてサメがジャンプして海面から飛び出し、モリを構えた男に襲い掛からんとその大口を開く!
しかし──
「おお、全然届かねえな、こりゃ安全だぜ!」
通常の漁船と違い、貨客船を改造した船は甲板までが高く、体力の奪われたサメではとうていそこまで飛び上がることは出来ない。
反撃むなしく、特製の長いモリに突かれたサメは少しの間暴れたものの、やがて動かなくなり、大人しくクレーンで吊り(釣り)上げられる。
「で、コイツがそうなのか?」
「ええ、ガイランシャーク、目的の獲物ですね」
ガイランシャーク モンスターではない為ランク指定無し
サザント大陸遠海に生息する体長3メートルほどのサメ。
肉食で獰猛な性格をしているが、縄張りとしている岩礁帯からあまり離れる事は無いので被害件数は少ない。
歯は鋭いものの、それほど強度は無いので甲殻類は食べない。その為、外敵の少ないこの場所にはアワビやウニ、エビカニといった海の幸が豊富にある。
そしてそれを目当てに一攫千金を狙った漁師が毎年被害に遭う。
※魔物とそうでないものの違いは体内に魔石が存在するかどうか
釣り上げたガイランシャークを甲板に並べると、頭を切り落として更に口を上下に分断する。
そして両顎に並ぶ無数の歯を指差して、
「この歯列の3番目、必要なのはここだけなので間違えないでくださいね」
シンの指示通り、解体担当の男達が付近の鋭い歯に気をつけながら第3歯列の歯だけを丁寧に取り出し、1ヶ所に集める。
集めた歯を液体の入ったガラス瓶に入れ、蓋をしてから軽くシェイクし、そのまま船内の倉庫送りにする。
「あの液体は?」
「ただの濃縮したお酢ですよ、あのまま4~5日放置しておけば表面が溶けて中身が取り出しやすくなるんです」
「ほう、必要なのは中身だけか」
「ええ、そいつを加工すれば「歯の卵」の出来上がりです」
歯の卵──欠けた歯や抜け落ちた歯茎に詰めれば、かつての元気な歯に成ってくれるよう調合された歯胚の塊。
飽食・美食の輩と虫歯は馬車の両輪のように切っても切れない関係らしく、虫歯に悩むお貴族様は多いらしい。
この世界で虫歯治療と言えば基本的には虫歯になった歯を抜き、そのまま放置か義歯を埋めるかのどちらかだが、偽者より本物が評価が高いのはどこも同じ、歯が生え揃っているというのはある意味、自己管理・欲望に流されない節度の持ち主という評価がついてくる。
要はプライドと外聞の問題がここに生じる。
もちろん「こんなことで!」との声を無視すれば神殿で虫歯の「治癒」を頼む事は可能だが、当然貴族が事あるごとに神殿に通うようでは、
「あの貴族はしょっちゅう神殿に通っている、何やらよからぬ呪いか、よそで人に言えない病気でも貰ってきたのでは?」
などとの噂が立つ。
そんな、金よりもプライド大事な貴族連中に高く売りつけるための「歯の卵」、これを適当な大きさに分けて欠けた歯に、失われた歯茎に詰めておけば1週間ほどで元の綺麗な歯が戻ってくる、そんなありがたい薬である。
「金持ちってのはこんなモンに大金を出すってのかい……ったく、ワシ等とは本当にすむ世界が違うのう」
「何が商売になるかなんて分からないですよねえ」
言いだしっぺが何を? という視線を浴びせながら、本当にこれで村が潤うのなら嬉しい限りだ、という気持ちが漁師達の間に広がる。
そんな中、
「ところで、この歯の部分以外はどうするんだ、肉は臭くて食えねえぞ?」
ご他聞にもれず、その体内が尿素たっぷりのガイランシャークの肉は臭い、その為肉は海に投棄が基本な訳だが、
「あ~、どうしよっかなぁ……まあついでだからいいか、サメのヒレは切って残しておいて下さい!」
そう言ってシンはフカヒレの作り方を教える。
話を聞いた漁師の一人が、
「で、美味いのか?」
「味は無いですね、その後の調理で味付けするしかないですよ」
「オイ!!」
「その代わり調理次第でどんな味にも成るのが強みですかね、食感も面白いし、なにより「美容と健康」に良いんで、こっちも上手く売り込めば金持ち連中に売れますよ」
「美容と健康ねえ……」
「試しに奥さんにでも食べさせてみれば分かりますよ……多分、最初は皆さんが襲い掛かって、その後返り討ちとばかりに搾り取られて干からびた皆さんの未来が見えますねえ」
「マジかよ!?」
下世話なジョークで船上が和む中、サメ漁は続く。
そして、充分な量のサメの歯とヒレを確保したシン達は帰路につくため錨を上げて進路を陸地に向ける──
──が、
「オイ、どうした!? 船が動かねえぞ!!」
「そんなはず無え! 碇は上げたし……オイ、誰だ、糸がまだ1本垂れたまんまだぞ?」
ガクン────!!
「うおっ!?」
いきなり船体が横に傾き、バランスを崩した何人かがそのまま海に放り出される!
「急いで糸を切れ! 船が引き倒されっぞ!?」
すかさず糸を切断し、ゆり戻しで甲板が安定しないにもかかわらず猟師たちは見事な連携で落ちた仲間にロープを投げて引き上げる。幸いサメは近くにいなかったようで怪我人はいなかった。
「……ふぅ、一体なんだったんだ?」
誰かが呟くその声に、シンが岩礁帯の方角を眺めながら問いに答える。
「アレですかね……ところで皆さん、一つお聞きしたいのですが、蟹はお好きですか?」
「蟹だぁ? 今はそれどころじゃあ──あ、カニ?」
「ええ、蟹です。食べると美味しいアレですよ」
「そりゃまオメェ、好きだけどよ。この辺に現れるカニッつったら……ホラ、なぁ」
漁師達の声のトーンが徐々に下がっていく、普段シーラッド近海で獲れる蟹はズワイガニに似た蟹で、煮ても焼いても蒸しても美味しい。
ただ、目の前に現れた巨大な蟹は、どの調理法を使っても、硬くてとても食べられたものではない、そんな類の蟹だった──
「……今日一番の大物ですねえ。誰ですか、釣ったのは?」
全員が首を横に振る、自分では無いと全身で訴える
海面から顔を出す岩礁をよじ登り、こちらに向き直ると2つのハサミをガチガチと鳴らし威嚇行動をしている。
グレートオーシャンクラブ、Aランクモンスターが釣果の項目に追加された──
0
お気に入りに追加
8,026
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
スキル【合成】が楽しすぎて最初の村から出られない
紅柄ねこ(Bengara Neko)
ファンタジー
15歳ですべての者に授けられる【スキル】、それはこの世界で生活する為に必要なものであった。
世界は魔物が多く闊歩しており、それによって多くの命が奪われていたのだ。
ある者は強力な剣技を。またある者は有用な生産スキルを得て、生活のためにそれらを使いこなしていたのだった。
エメル村で生まれた少年『セン』もまた、15歳になり、スキルを授かった。
冒険者を夢見つつも、まだ村を出るには早いかと、センは村の周囲で採取依頼をこなしていた。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。