60 / 105
第二章 新たなメンバーは黄
第60話 イカの心臓はどこにある?
しおりを挟む
「多分、さっき壊した核と同じような感じのやつなんだろうな。ここからじゃ見えそうにないけど」
どうしたもんかな、と千紘が困ったように頬を掻き、少し離れた場所からダイオウイカの姿を眺める。
とりあえず三つめの核を探して壊そう、と意見がまとまった千紘たちだが、まずはその場所を見つけなくてはならない。
しかし、離れた場所から人間の目で核を探すのは、さすがに難しいように思われた。
三つめの核もすでに壊した二つと同じく体内にあるのではないか、と予想したまではいいが、あの身体のどこにあるのかが見当もつかない。
千紘たちから見れば大きい核だが、ダイオウイカの身体と比べればとても小さなものなので、見つけにくいのは当然のことである。
「確かにここからじゃわからないですよね」
律も表情を曇らせながら、千紘に同意した。
「なあ、秋斗。イカの心臓って、具体的な場所はわかんないのか? もしイカと同じならそこにありそうな気もするけど」
千紘が背後の秋斗を振り返って訊くと、秋斗は「そうだなぁ……」と何かを思い出そうとするかのように、宙を睨む。
千紘と律は、秋斗の返答を黙って待った。
少しして、視線を戻した秋斗がゆっくり口を開く。
「確か、胴体の真ん中辺りだったと思う。あの辺かな。あ、ちなみにイカの頭は腕がついてる方で、胴体は上の大きい方だからな。間違うんじゃないぞ」
そう答えながら、秋斗はダイオウイカの胴体、その中心辺りを指差した。
秋斗の指に導かれるように、千紘と律が顔をダイオウイカの胴体へと向ける。
「へー、じゃあ今は頭が下で逆さまになってるってことか。って、そんな豆知識今はいらねーよ……。あ、いや、今だから必要なのか。てことは、結構上にあるな」
場所をざっと確認した千紘が、納得した口調で頷いた。
秋斗が示したのは、目のずっと上の方である。
目は比較的下の方、海の近くにあるから、胴体はその上方になる。今千紘たちがいる地面からだと、空でも飛ばないとそこには辿り着けそうにない。
(スターレンジャーに変身してジャンプすれば、もしかしたら届くか……?)
千紘はちらりとそんなことを考えた。
変身すれば身体能力が上がるが、さすがに空を飛べないことはわかっている。スターレンジャーの設定に、そんな便利な能力はないのだ。
それでも、全力でジャンプすれば、目視で胴体に核があるかどうかの確認くらいはできるかもしれない、と思ったのである。
だが、千紘は自分が今無意識に考えてしまったことを、すぐに後悔する。
(いやいや! 変身だけは勘弁してくれ! あれは最終手段だ!)
勢いよく何度も頭を振ると、その恐ろしい考えを懸命に振り払った。
千紘の隣では、首を傾げた律が、不思議そうな表情で千紘を見つめている。
それに気づいた千紘は、少し気まずそうに小さく咳払いをすると、
「……まあ何とかして、胴体に核があるかどうか探してみるしかないか」
冷静を装いながら、ダイオウイカを改めて見上げた。
どうやら、律はまだ変身できることを思い出していないらしい。
ならば変身のことは言わないようにしないと、と千紘は心に固く誓う。
もし、律までが「変身しましょう」などと言い出したら、たまったものではないからだ。
「そうですね」
千紘の考えていることを知る由もない律は、真剣な表情に戻ると、素直に首を縦に振った。
「まずは少し近づいてみてからだな。そこから透けて見えればいいんだけど。ここからじゃ全然わかんないしな」
「じゃあ、僕もできるだけ近づいて探してみます」
千紘が長剣を手に、歩き出す。
律もダガーを両手に構えると、千紘の後に続いた。
どうしたもんかな、と千紘が困ったように頬を掻き、少し離れた場所からダイオウイカの姿を眺める。
とりあえず三つめの核を探して壊そう、と意見がまとまった千紘たちだが、まずはその場所を見つけなくてはならない。
しかし、離れた場所から人間の目で核を探すのは、さすがに難しいように思われた。
三つめの核もすでに壊した二つと同じく体内にあるのではないか、と予想したまではいいが、あの身体のどこにあるのかが見当もつかない。
千紘たちから見れば大きい核だが、ダイオウイカの身体と比べればとても小さなものなので、見つけにくいのは当然のことである。
「確かにここからじゃわからないですよね」
律も表情を曇らせながら、千紘に同意した。
「なあ、秋斗。イカの心臓って、具体的な場所はわかんないのか? もしイカと同じならそこにありそうな気もするけど」
千紘が背後の秋斗を振り返って訊くと、秋斗は「そうだなぁ……」と何かを思い出そうとするかのように、宙を睨む。
千紘と律は、秋斗の返答を黙って待った。
少しして、視線を戻した秋斗がゆっくり口を開く。
「確か、胴体の真ん中辺りだったと思う。あの辺かな。あ、ちなみにイカの頭は腕がついてる方で、胴体は上の大きい方だからな。間違うんじゃないぞ」
そう答えながら、秋斗はダイオウイカの胴体、その中心辺りを指差した。
秋斗の指に導かれるように、千紘と律が顔をダイオウイカの胴体へと向ける。
「へー、じゃあ今は頭が下で逆さまになってるってことか。って、そんな豆知識今はいらねーよ……。あ、いや、今だから必要なのか。てことは、結構上にあるな」
場所をざっと確認した千紘が、納得した口調で頷いた。
秋斗が示したのは、目のずっと上の方である。
目は比較的下の方、海の近くにあるから、胴体はその上方になる。今千紘たちがいる地面からだと、空でも飛ばないとそこには辿り着けそうにない。
(スターレンジャーに変身してジャンプすれば、もしかしたら届くか……?)
千紘はちらりとそんなことを考えた。
変身すれば身体能力が上がるが、さすがに空を飛べないことはわかっている。スターレンジャーの設定に、そんな便利な能力はないのだ。
それでも、全力でジャンプすれば、目視で胴体に核があるかどうかの確認くらいはできるかもしれない、と思ったのである。
だが、千紘は自分が今無意識に考えてしまったことを、すぐに後悔する。
(いやいや! 変身だけは勘弁してくれ! あれは最終手段だ!)
勢いよく何度も頭を振ると、その恐ろしい考えを懸命に振り払った。
千紘の隣では、首を傾げた律が、不思議そうな表情で千紘を見つめている。
それに気づいた千紘は、少し気まずそうに小さく咳払いをすると、
「……まあ何とかして、胴体に核があるかどうか探してみるしかないか」
冷静を装いながら、ダイオウイカを改めて見上げた。
どうやら、律はまだ変身できることを思い出していないらしい。
ならば変身のことは言わないようにしないと、と千紘は心に固く誓う。
もし、律までが「変身しましょう」などと言い出したら、たまったものではないからだ。
「そうですね」
千紘の考えていることを知る由もない律は、真剣な表情に戻ると、素直に首を縦に振った。
「まずは少し近づいてみてからだな。そこから透けて見えればいいんだけど。ここからじゃ全然わかんないしな」
「じゃあ、僕もできるだけ近づいて探してみます」
千紘が長剣を手に、歩き出す。
律もダガーを両手に構えると、千紘の後に続いた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
音楽とともに行く、異世界の旅~だけどこいつと一緒だなんて聞いてない~
市瀬瑛理
ファンタジー
いきなり異世界転移させられた小田桐蒼真(おだぎりそうま)と永瀬弘祈(ながせひろき)。
所属する市民オーケストラの指揮者である蒼真とコンサートマスターの弘祈は正反対の性格で、音楽に対する意見が合うこともほとんどない。当然、練習日には毎回のように互いの主張が対立していた。
しかし、転移先にいたオリジンの巫女ティアナはそんな二人に『オリジンの卵』と呼ばれるものを託そうとする。
『オリジンの卵』は弘祈を親と認め、また蒼真を自分と弘祈を守るための騎士として選んだのだ。
地球に帰るためには『帰還の魔法陣』のある神殿に行かなければならないが、『オリジンの卵』を届ける先も同じ場所だった。
仕方なしに『オリジンの卵』を預かった蒼真と弘祈はティアナから『指揮棒が剣になる』能力などを授かり、『帰還の魔法陣』を目指す。
たまにぶつかり合い、時には協力して『オリジンの卵』を守りながら異世界を行く二人にいつか友情は生まれるのか?
そして無事に地球に帰ることはできるのか――。
指揮者とヴァイオリン奏者の二人が織りなす、異世界ファンタジー。
※この作品は他の小説投稿サイトにも掲載しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる