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第二章 新たなメンバーは黄
第50話 律の発案
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やはり千紘の長剣はなかなかキメラには当たらない。飛んでいるので、軽くかわされてしまうのだ。
律のダガーもキメラの身体に届く前に、大きな羽で叩き落されてしまう。
それでも秋斗に目を向かせないよう、ひたすら自分たちに引きつける。
幸いというべきか、千紘と律もキメラの攻撃をかわすことはできていた。後は、秋斗が核のある場所を見つけてくれれば、勝機もある。
しばらく一進一退の攻防を繰り広げていると、ようやく秋斗の声が離れたところから聞こえてきた。
「多分だけど、見つかった!」
その声に、千紘と律はほっとする。
「で、どこだよ!」
ちらりと秋斗を振り返りながら、千紘が声を張り上げた。
「えっと、額に赤い宝石みたいなの見えないか? あれが核じゃないかと思う。小さいけどよく見たら何かこうアピールするみたいにキラキラ光ってるし。試しに攻撃してみてくれ!」
「違ったらどうするんだよ!」
「そしたらまた考えるから!」
「随分曖昧だけど、今はそれくらいしかできないもんな。わかった!」
千紘は大きな声で返事をして、改めて前を向く。
秋斗が言っていたキメラの額をよく観察してみた。
飛んでいるのと、毛に覆われているせいで少々見えにくいが、時折チラチラと毛の隙間から小さくて、赤く光る宝石のようなものが覗いているのはわかる。
きっとこれのことだろう。
「じゃあ早速試してみるか!」
千紘が地面を蹴って、キメラとの距離を一気に詰める。
そのまま額を狙って長剣を両手で振り下ろすが、その攻撃はあっさりかわされてしまった。
「くっ、的も小さいし、飛んでるからやっぱり攻撃しにくいな……」
攻撃が空振りに終わり、千紘は悔しそうに歯嚙みする。
千紘の場合、飛んでいるキメラの額に攻撃しようとするなら、頭上に振りかぶる必要があるが、それだとどうしても避けられやすい。
(下にいる時なら横に薙いだりすることもできるけど、空中ではまず無理だ。なら羽を攻撃して飛べなくさせるか……それとも……)
千紘はそんなことをグルグルと考える。
自分が額を狙うなら、まずはキメラを下に落とさなければならないだろう。だが、攻撃自体がなかなか当たらない状況で、どうやって落とせばいいのか。
その時である。
千紘の耳に、律の凛とした声が響いた。
「千紘さんが攻撃しにくいなら、僕がやってみます!」
「具体的には?」
ちょうどキメラの攻撃を受け流した千紘が、律にちらりと視線をやる。
律の攻撃もほとんどキメラには効いていない。そんな状況で一体どうするのか、と視線だけで問うと、また力強い言葉が返ってきた。
「僕が直接ダガーで核を狙います。剣で上から攻撃するよりは、遠距離で直接狙った方が当たりやすいかもしれません。さっきまでとは逆に、千紘さんがキメラの気を引いてもらえますか?」
そのしっかりとした口調に、千紘は思わず頬を緩める。
律のスターレンジャーでのダガー使いは偽物ではない。撮影時に使っている四本のダガーは殺傷力の低い小道具だが、重さや形などは実物とほとんど変わらないものを使っていたのだ。
少しでも格好よく見えるように、周りの大人たちに負けないように、と撮影の合間に懸命になってダガーの扱い方を研究し、ひたすら練習していることを千紘はよく知っていた。それはきっと秋斗も同じはずである。
その律が「自分に任せてくれ」と言うのだ。断る理由はどこにもないだろう。
「よし、じゃあそれで行ってみるか!」
ダメならまた考えればいい。それに遠距離からの攻撃なら、律に危険が及ぶ可能性も低いはずだと考え、千紘は素直にその案に乗ることにした。
律のダガーもキメラの身体に届く前に、大きな羽で叩き落されてしまう。
それでも秋斗に目を向かせないよう、ひたすら自分たちに引きつける。
幸いというべきか、千紘と律もキメラの攻撃をかわすことはできていた。後は、秋斗が核のある場所を見つけてくれれば、勝機もある。
しばらく一進一退の攻防を繰り広げていると、ようやく秋斗の声が離れたところから聞こえてきた。
「多分だけど、見つかった!」
その声に、千紘と律はほっとする。
「で、どこだよ!」
ちらりと秋斗を振り返りながら、千紘が声を張り上げた。
「えっと、額に赤い宝石みたいなの見えないか? あれが核じゃないかと思う。小さいけどよく見たら何かこうアピールするみたいにキラキラ光ってるし。試しに攻撃してみてくれ!」
「違ったらどうするんだよ!」
「そしたらまた考えるから!」
「随分曖昧だけど、今はそれくらいしかできないもんな。わかった!」
千紘は大きな声で返事をして、改めて前を向く。
秋斗が言っていたキメラの額をよく観察してみた。
飛んでいるのと、毛に覆われているせいで少々見えにくいが、時折チラチラと毛の隙間から小さくて、赤く光る宝石のようなものが覗いているのはわかる。
きっとこれのことだろう。
「じゃあ早速試してみるか!」
千紘が地面を蹴って、キメラとの距離を一気に詰める。
そのまま額を狙って長剣を両手で振り下ろすが、その攻撃はあっさりかわされてしまった。
「くっ、的も小さいし、飛んでるからやっぱり攻撃しにくいな……」
攻撃が空振りに終わり、千紘は悔しそうに歯嚙みする。
千紘の場合、飛んでいるキメラの額に攻撃しようとするなら、頭上に振りかぶる必要があるが、それだとどうしても避けられやすい。
(下にいる時なら横に薙いだりすることもできるけど、空中ではまず無理だ。なら羽を攻撃して飛べなくさせるか……それとも……)
千紘はそんなことをグルグルと考える。
自分が額を狙うなら、まずはキメラを下に落とさなければならないだろう。だが、攻撃自体がなかなか当たらない状況で、どうやって落とせばいいのか。
その時である。
千紘の耳に、律の凛とした声が響いた。
「千紘さんが攻撃しにくいなら、僕がやってみます!」
「具体的には?」
ちょうどキメラの攻撃を受け流した千紘が、律にちらりと視線をやる。
律の攻撃もほとんどキメラには効いていない。そんな状況で一体どうするのか、と視線だけで問うと、また力強い言葉が返ってきた。
「僕が直接ダガーで核を狙います。剣で上から攻撃するよりは、遠距離で直接狙った方が当たりやすいかもしれません。さっきまでとは逆に、千紘さんがキメラの気を引いてもらえますか?」
そのしっかりとした口調に、千紘は思わず頬を緩める。
律のスターレンジャーでのダガー使いは偽物ではない。撮影時に使っている四本のダガーは殺傷力の低い小道具だが、重さや形などは実物とほとんど変わらないものを使っていたのだ。
少しでも格好よく見えるように、周りの大人たちに負けないように、と撮影の合間に懸命になってダガーの扱い方を研究し、ひたすら練習していることを千紘はよく知っていた。それはきっと秋斗も同じはずである。
その律が「自分に任せてくれ」と言うのだ。断る理由はどこにもないだろう。
「よし、じゃあそれで行ってみるか!」
ダメならまた考えればいい。それに遠距離からの攻撃なら、律に危険が及ぶ可能性も低いはずだと考え、千紘は素直にその案に乗ることにした。
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