上 下
41 / 105
第二章 新たなメンバーは黄

第41話 階段を塞ぐ岩山

しおりを挟む
 この塔はずっと昔からここに存在しているらしく、タフリ村の村長もいつできたのかはさっぱりわからないそうだ。

 皆、あるのが当たり前に育ってきたから、誰も疑問に思わないのだという。

 それと同じように、誰も疑問に思わないことがもう一つ。

「ここにあるランタンがずっと消えないってすごいよな!」

 辺りを見回していた秋斗が、感嘆した声を上げる。

 そうなのだ。ここの壁にぶら下がっているいくつものランタンは、決して消えることがないらしい。

 これも塔ができた時から消えたことがないという話で、誰も何とも思わないそうだが、おそらく魔法の力ではないかと、村長がそのように話していた。

「まあおかげで明るいから、ランタンを持ち歩かなくていいってのはありがたいけどな」
「リリアさんから『念のために』って預かってきましたけど、使わなくていいですもんね」

 秋斗の言葉に、千紘と律も同意しながら頷いた。

「それでもやっぱり、少し不気味な感じはするんだけどさ」

 今度は秋斗が苦笑しながら、少し声のトーンを落とすと、

「確かにな。やっぱり洞窟や塔ってのはそういうもんなのかね」

 珍しくまた同意した千紘が「やれやれ」と両手を上げ、首を左右に振る。

「いくら一本道で明かりがあっても、ここを一人で通るのは嫌だな。何となく怖いし。千紘とりっちゃんがいてくれてホントによかったよ!」
「そりゃどーも」
「少しでも役に立ててるならよかったです」

 どうやら怖がりらしい秋斗にそれぞれが返事をすると、秋斗はさらにほっとしたような表情になった。


  ※※※


 少なくとも五階に魔物はいないようである。

 そのことに安心しながら三人は階段を探そうとするが、すぐに入り口からまっすぐ突き当たったところ――一番奥にそれを見つけることができた。

「リリアさんたちが言ってた通り、全然入り組んでないですね」
「でもこれが螺旋らせん階段だったら、まっすぐ一直線に一階まで行けたんじゃないか?」
「秋斗はそろそろ俺たちにツッコミ入れさせるのやめてくれ。一応真面目に答えとくと、当時はそんなことまで考えてなかったんじゃないか? 後は技術がなかったとか何か他の理由があるのかもだけど、今は別にどうでもいいしな」

 現在はほとんどが隠れてしまっている階段、その前で三人はそんなことをそれぞれ話す。

 階段が隠れてしまっている理由は簡単だ。
 塔に来る前にリリアと村長が話していた通り、『魔物が来れないように塞いだ』からである。

 おそらく急ごしらえで、何も考えず無造作に積み上げたのだろう。下へと続く階段を塞ぐ形で、大きな岩がいくつも、山のようになって積まれている。
 その高さは三人の中で一番身長が高い千紘以上、おそらく二メートルはあるように見えた。

「明らかにここが下への階段だってのはわかるけどさ」

 どうするよ、と千紘が岩山の隙間からちらりと覗く階段に目を凝らし、秋斗と律に問う。

 この岩たちを退かさないと四階には下りられない。そんなことは誰もがわかっている。

「そうだなぁ。とりあえず座って考えるか!」

 秋斗は言うなり、その場にどっかりと座り、考え込む仕草をみせた。

「そうですね」

 律も秋斗の意見に従ってしゃがみ込む。

「それしかないもんな」

 二人の様子に、千紘もおとなしく腰を下ろしてあぐらをかいた。

 階段が目の前にあるのはわかっているのだ。次は、それを塞いでいる岩を退かす方法を考えなければならない。

 そのためには、まずは落ち着いて座った方が楽だし、わざわざ立ったままで相談する必要もないだろう。

 三人ともそんな結論にすぐ至ったのである。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!

KeyBow
ファンタジー
 日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】  変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。  【アホが見ーる馬のけーつ♪  スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】  はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。  出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!  行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。  悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!  一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!

処理中です...