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第二章 新たなメンバーは黄
第41話 階段を塞ぐ岩山
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この塔はずっと昔からここに存在しているらしく、タフリ村の村長もいつできたのかはさっぱりわからないそうだ。
皆、あるのが当たり前に育ってきたから、誰も疑問に思わないのだという。
それと同じように、誰も疑問に思わないことがもう一つ。
「ここにあるランタンがずっと消えないってすごいよな!」
辺りを見回していた秋斗が、感嘆した声を上げる。
そうなのだ。ここの壁にぶら下がっているいくつものランタンは、決して消えることがないらしい。
これも塔ができた時から消えたことがないという話で、誰も何とも思わないそうだが、おそらく魔法の力ではないかと、村長がそのように話していた。
「まあおかげで明るいから、ランタンを持ち歩かなくていいってのはありがたいけどな」
「リリアさんから『念のために』って預かってきましたけど、使わなくていいですもんね」
秋斗の言葉に、千紘と律も同意しながら頷いた。
「それでもやっぱり、少し不気味な感じはするんだけどさ」
今度は秋斗が苦笑しながら、少し声のトーンを落とすと、
「確かにな。やっぱり洞窟や塔ってのはそういうもんなのかね」
珍しくまた同意した千紘が「やれやれ」と両手を上げ、首を左右に振る。
「いくら一本道で明かりがあっても、ここを一人で通るのは嫌だな。何となく怖いし。千紘とりっちゃんがいてくれてホントによかったよ!」
「そりゃどーも」
「少しでも役に立ててるならよかったです」
どうやら怖がりらしい秋斗にそれぞれが返事をすると、秋斗はさらにほっとしたような表情になった。
※※※
少なくとも五階に魔物はいないようである。
そのことに安心しながら三人は階段を探そうとするが、すぐに入り口からまっすぐ突き当たったところ――一番奥にそれを見つけることができた。
「リリアさんたちが言ってた通り、全然入り組んでないですね」
「でもこれが螺旋階段だったら、まっすぐ一直線に一階まで行けたんじゃないか?」
「秋斗はそろそろ俺たちにツッコミ入れさせるのやめてくれ。一応真面目に答えとくと、当時はそんなことまで考えてなかったんじゃないか? 後は技術がなかったとか何か他の理由があるのかもだけど、今は別にどうでもいいしな」
現在はほとんどが隠れてしまっている階段、その前で三人はそんなことをそれぞれ話す。
階段が隠れてしまっている理由は簡単だ。
塔に来る前にリリアと村長が話していた通り、『魔物が来れないように塞いだ』からである。
おそらく急ごしらえで、何も考えず無造作に積み上げたのだろう。下へと続く階段を塞ぐ形で、大きな岩がいくつも、山のようになって積まれている。
その高さは三人の中で一番身長が高い千紘以上、おそらく二メートルはあるように見えた。
「明らかにここが下への階段だってのはわかるけどさ」
どうするよ、と千紘が岩山の隙間からちらりと覗く階段に目を凝らし、秋斗と律に問う。
この岩たちを退かさないと四階には下りられない。そんなことは誰もがわかっている。
「そうだなぁ。とりあえず座って考えるか!」
秋斗は言うなり、その場にどっかりと座り、考え込む仕草をみせた。
「そうですね」
律も秋斗の意見に従ってしゃがみ込む。
「それしかないもんな」
二人の様子に、千紘もおとなしく腰を下ろしてあぐらをかいた。
階段が目の前にあるのはわかっているのだ。次は、それを塞いでいる岩を退かす方法を考えなければならない。
そのためには、まずは落ち着いて座った方が楽だし、わざわざ立ったままで相談する必要もないだろう。
三人ともそんな結論にすぐ至ったのである。
皆、あるのが当たり前に育ってきたから、誰も疑問に思わないのだという。
それと同じように、誰も疑問に思わないことがもう一つ。
「ここにあるランタンがずっと消えないってすごいよな!」
辺りを見回していた秋斗が、感嘆した声を上げる。
そうなのだ。ここの壁にぶら下がっているいくつものランタンは、決して消えることがないらしい。
これも塔ができた時から消えたことがないという話で、誰も何とも思わないそうだが、おそらく魔法の力ではないかと、村長がそのように話していた。
「まあおかげで明るいから、ランタンを持ち歩かなくていいってのはありがたいけどな」
「リリアさんから『念のために』って預かってきましたけど、使わなくていいですもんね」
秋斗の言葉に、千紘と律も同意しながら頷いた。
「それでもやっぱり、少し不気味な感じはするんだけどさ」
今度は秋斗が苦笑しながら、少し声のトーンを落とすと、
「確かにな。やっぱり洞窟や塔ってのはそういうもんなのかね」
珍しくまた同意した千紘が「やれやれ」と両手を上げ、首を左右に振る。
「いくら一本道で明かりがあっても、ここを一人で通るのは嫌だな。何となく怖いし。千紘とりっちゃんがいてくれてホントによかったよ!」
「そりゃどーも」
「少しでも役に立ててるならよかったです」
どうやら怖がりらしい秋斗にそれぞれが返事をすると、秋斗はさらにほっとしたような表情になった。
※※※
少なくとも五階に魔物はいないようである。
そのことに安心しながら三人は階段を探そうとするが、すぐに入り口からまっすぐ突き当たったところ――一番奥にそれを見つけることができた。
「リリアさんたちが言ってた通り、全然入り組んでないですね」
「でもこれが螺旋階段だったら、まっすぐ一直線に一階まで行けたんじゃないか?」
「秋斗はそろそろ俺たちにツッコミ入れさせるのやめてくれ。一応真面目に答えとくと、当時はそんなことまで考えてなかったんじゃないか? 後は技術がなかったとか何か他の理由があるのかもだけど、今は別にどうでもいいしな」
現在はほとんどが隠れてしまっている階段、その前で三人はそんなことをそれぞれ話す。
階段が隠れてしまっている理由は簡単だ。
塔に来る前にリリアと村長が話していた通り、『魔物が来れないように塞いだ』からである。
おそらく急ごしらえで、何も考えず無造作に積み上げたのだろう。下へと続く階段を塞ぐ形で、大きな岩がいくつも、山のようになって積まれている。
その高さは三人の中で一番身長が高い千紘以上、おそらく二メートルはあるように見えた。
「明らかにここが下への階段だってのはわかるけどさ」
どうするよ、と千紘が岩山の隙間からちらりと覗く階段に目を凝らし、秋斗と律に問う。
この岩たちを退かさないと四階には下りられない。そんなことは誰もがわかっている。
「そうだなぁ。とりあえず座って考えるか!」
秋斗は言うなり、その場にどっかりと座り、考え込む仕草をみせた。
「そうですね」
律も秋斗の意見に従ってしゃがみ込む。
「それしかないもんな」
二人の様子に、千紘もおとなしく腰を下ろしてあぐらをかいた。
階段が目の前にあるのはわかっているのだ。次は、それを塞いでいる岩を退かす方法を考えなければならない。
そのためには、まずは落ち着いて座った方が楽だし、わざわざ立ったままで相談する必要もないだろう。
三人ともそんな結論にすぐ至ったのである。
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