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第二章 新たなメンバーは黄
第35話 次の目的地は
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村長の家を後にした千紘たち三人とリリアは村の中を歩きながら、今度は別の場所へと向かっていた。
目的地はリリアの家。すでに用意されているという荷物を受け取るためである。
この辺りの手際のよさからも、千紘たちに頼み込もうとしていたことが明白だ。
(最初から俺たちにやらせる気満々じゃねーか……)
千紘は一番後ろを歩きながら、うんざりしたように肩を落とし、嘆息した。
村長の家ではなくリリアの家なのは、何となく察しがついている。
前回地球に帰る際、リリアに千紘の長剣などを返していったから、きっとそのままそれらがリリアの家に保管されていて、今回はついでに荷物も一緒に置いておくことにしたとか、おそらくそんなところだろう。
「あ、そうだ」
途中で秋斗が何かを思い出したように声を上げると、全員がその場で立ち止まった。揃って首を傾げる。
すぐに反応したのは千紘だ。
「秋斗、いきなりどうしたんだよ?」
「いや、りっちゃんも何かの能力があるんじゃないかなーと思って」
「能力って、秋斗の水魔法とか俺の剣みたいなやつか……」
「言われてみればそうね」
思わず顔をしかめた千紘に向けて、秋斗は大きく頷く。リリアも秋斗に同意しながら両手を合わせた。どうやら千紘の表情の変化には気づいていないようだ。
いや、二人とも気づいていてスルーした可能性もあるが、そこは今の千紘にとってはどうでもいいことである。秋斗の話が本当かどうかの方が大事だからだ。
(確かに律にも能力がある可能性は高いか)
千紘は『アンシュタートに来た時点で、自分たちの存在がこの世界の理に書き換わり、何らかの能力を得る』と、以前リリアが言っていたことを思い返した。
当然、何もないよりは、何かしらの能力があった方がいいに決まっている。
もし戦闘向きの能力ならば、いざという時はそれで身を守ることができるだろうし、能力自体も律にとって間違いなくマイナスにはならないはずだ。千紘と秋斗にとっても同様である。
「えっと、どういうことですか?」
やはり律は状況が理解できず、ただ首を傾げるだけである。
そんな律に、秋斗は笑顔で端的に説明した。
「この世界、アンシュタートに来るとおれたちにも何らかの特殊能力が備わるって話なんだけど、詳しくは後でゆっくり話すな」
「……はい!」
あまりにもざっくりとした説明ではあったが、それでもその中の言葉に惹かれるものがあったらしく、律は途端に瞳をキラキラと輝かせた。
おそらく『何らかの特殊能力』という部分だろう、と千紘は推測するが、これは間違っていないはずだ。
(前回の秋斗みたいだな……)
楽しそうな律の様子に、千紘はそっと目を伏せて苦笑する。
秋斗が水魔法で、自分は剣を扱う能力。それがわかった時の秋斗も「これでおれも魔法使いだ!」なんて、心底嬉しそうに瞳を輝かせていた。それとそっくりだ。
(まあ、別にいいけど)
律はまだ高校生だから、秋斗と違って浮かれても構わないだろう。秋斗が少しお子様なのが気にかかるくらいで、特に問題はない。
千紘が納得しながら顔を上げる。その双眸に映ったのは、ちょうどリリアが律の額に手をかざそうとしているところだった。
目的地はリリアの家。すでに用意されているという荷物を受け取るためである。
この辺りの手際のよさからも、千紘たちに頼み込もうとしていたことが明白だ。
(最初から俺たちにやらせる気満々じゃねーか……)
千紘は一番後ろを歩きながら、うんざりしたように肩を落とし、嘆息した。
村長の家ではなくリリアの家なのは、何となく察しがついている。
前回地球に帰る際、リリアに千紘の長剣などを返していったから、きっとそのままそれらがリリアの家に保管されていて、今回はついでに荷物も一緒に置いておくことにしたとか、おそらくそんなところだろう。
「あ、そうだ」
途中で秋斗が何かを思い出したように声を上げると、全員がその場で立ち止まった。揃って首を傾げる。
すぐに反応したのは千紘だ。
「秋斗、いきなりどうしたんだよ?」
「いや、りっちゃんも何かの能力があるんじゃないかなーと思って」
「能力って、秋斗の水魔法とか俺の剣みたいなやつか……」
「言われてみればそうね」
思わず顔をしかめた千紘に向けて、秋斗は大きく頷く。リリアも秋斗に同意しながら両手を合わせた。どうやら千紘の表情の変化には気づいていないようだ。
いや、二人とも気づいていてスルーした可能性もあるが、そこは今の千紘にとってはどうでもいいことである。秋斗の話が本当かどうかの方が大事だからだ。
(確かに律にも能力がある可能性は高いか)
千紘は『アンシュタートに来た時点で、自分たちの存在がこの世界の理に書き換わり、何らかの能力を得る』と、以前リリアが言っていたことを思い返した。
当然、何もないよりは、何かしらの能力があった方がいいに決まっている。
もし戦闘向きの能力ならば、いざという時はそれで身を守ることができるだろうし、能力自体も律にとって間違いなくマイナスにはならないはずだ。千紘と秋斗にとっても同様である。
「えっと、どういうことですか?」
やはり律は状況が理解できず、ただ首を傾げるだけである。
そんな律に、秋斗は笑顔で端的に説明した。
「この世界、アンシュタートに来るとおれたちにも何らかの特殊能力が備わるって話なんだけど、詳しくは後でゆっくり話すな」
「……はい!」
あまりにもざっくりとした説明ではあったが、それでもその中の言葉に惹かれるものがあったらしく、律は途端に瞳をキラキラと輝かせた。
おそらく『何らかの特殊能力』という部分だろう、と千紘は推測するが、これは間違っていないはずだ。
(前回の秋斗みたいだな……)
楽しそうな律の様子に、千紘はそっと目を伏せて苦笑する。
秋斗が水魔法で、自分は剣を扱う能力。それがわかった時の秋斗も「これでおれも魔法使いだ!」なんて、心底嬉しそうに瞳を輝かせていた。それとそっくりだ。
(まあ、別にいいけど)
律はまだ高校生だから、秋斗と違って浮かれても構わないだろう。秋斗が少しお子様なのが気にかかるくらいで、特に問題はない。
千紘が納得しながら顔を上げる。その双眸に映ったのは、ちょうどリリアが律の額に手をかざそうとしているところだった。
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