35 / 105
第二章 新たなメンバーは黄
第35話 次の目的地は
しおりを挟む
村長の家を後にした千紘たち三人とリリアは村の中を歩きながら、今度は別の場所へと向かっていた。
目的地はリリアの家。すでに用意されているという荷物を受け取るためである。
この辺りの手際のよさからも、千紘たちに頼み込もうとしていたことが明白だ。
(最初から俺たちにやらせる気満々じゃねーか……)
千紘は一番後ろを歩きながら、うんざりしたように肩を落とし、嘆息した。
村長の家ではなくリリアの家なのは、何となく察しがついている。
前回地球に帰る際、リリアに千紘の長剣などを返していったから、きっとそのままそれらがリリアの家に保管されていて、今回はついでに荷物も一緒に置いておくことにしたとか、おそらくそんなところだろう。
「あ、そうだ」
途中で秋斗が何かを思い出したように声を上げると、全員がその場で立ち止まった。揃って首を傾げる。
すぐに反応したのは千紘だ。
「秋斗、いきなりどうしたんだよ?」
「いや、りっちゃんも何かの能力があるんじゃないかなーと思って」
「能力って、秋斗の水魔法とか俺の剣みたいなやつか……」
「言われてみればそうね」
思わず顔をしかめた千紘に向けて、秋斗は大きく頷く。リリアも秋斗に同意しながら両手を合わせた。どうやら千紘の表情の変化には気づいていないようだ。
いや、二人とも気づいていてスルーした可能性もあるが、そこは今の千紘にとってはどうでもいいことである。秋斗の話が本当かどうかの方が大事だからだ。
(確かに律にも能力がある可能性は高いか)
千紘は『アンシュタートに来た時点で、自分たちの存在がこの世界の理に書き換わり、何らかの能力を得る』と、以前リリアが言っていたことを思い返した。
当然、何もないよりは、何かしらの能力があった方がいいに決まっている。
もし戦闘向きの能力ならば、いざという時はそれで身を守ることができるだろうし、能力自体も律にとって間違いなくマイナスにはならないはずだ。千紘と秋斗にとっても同様である。
「えっと、どういうことですか?」
やはり律は状況が理解できず、ただ首を傾げるだけである。
そんな律に、秋斗は笑顔で端的に説明した。
「この世界、アンシュタートに来るとおれたちにも何らかの特殊能力が備わるって話なんだけど、詳しくは後でゆっくり話すな」
「……はい!」
あまりにもざっくりとした説明ではあったが、それでもその中の言葉に惹かれるものがあったらしく、律は途端に瞳をキラキラと輝かせた。
おそらく『何らかの特殊能力』という部分だろう、と千紘は推測するが、これは間違っていないはずだ。
(前回の秋斗みたいだな……)
楽しそうな律の様子に、千紘はそっと目を伏せて苦笑する。
秋斗が水魔法で、自分は剣を扱う能力。それがわかった時の秋斗も「これでおれも魔法使いだ!」なんて、心底嬉しそうに瞳を輝かせていた。それとそっくりだ。
(まあ、別にいいけど)
律はまだ高校生だから、秋斗と違って浮かれても構わないだろう。秋斗が少しお子様なのが気にかかるくらいで、特に問題はない。
千紘が納得しながら顔を上げる。その双眸に映ったのは、ちょうどリリアが律の額に手をかざそうとしているところだった。
目的地はリリアの家。すでに用意されているという荷物を受け取るためである。
この辺りの手際のよさからも、千紘たちに頼み込もうとしていたことが明白だ。
(最初から俺たちにやらせる気満々じゃねーか……)
千紘は一番後ろを歩きながら、うんざりしたように肩を落とし、嘆息した。
村長の家ではなくリリアの家なのは、何となく察しがついている。
前回地球に帰る際、リリアに千紘の長剣などを返していったから、きっとそのままそれらがリリアの家に保管されていて、今回はついでに荷物も一緒に置いておくことにしたとか、おそらくそんなところだろう。
「あ、そうだ」
途中で秋斗が何かを思い出したように声を上げると、全員がその場で立ち止まった。揃って首を傾げる。
すぐに反応したのは千紘だ。
「秋斗、いきなりどうしたんだよ?」
「いや、りっちゃんも何かの能力があるんじゃないかなーと思って」
「能力って、秋斗の水魔法とか俺の剣みたいなやつか……」
「言われてみればそうね」
思わず顔をしかめた千紘に向けて、秋斗は大きく頷く。リリアも秋斗に同意しながら両手を合わせた。どうやら千紘の表情の変化には気づいていないようだ。
いや、二人とも気づいていてスルーした可能性もあるが、そこは今の千紘にとってはどうでもいいことである。秋斗の話が本当かどうかの方が大事だからだ。
(確かに律にも能力がある可能性は高いか)
千紘は『アンシュタートに来た時点で、自分たちの存在がこの世界の理に書き換わり、何らかの能力を得る』と、以前リリアが言っていたことを思い返した。
当然、何もないよりは、何かしらの能力があった方がいいに決まっている。
もし戦闘向きの能力ならば、いざという時はそれで身を守ることができるだろうし、能力自体も律にとって間違いなくマイナスにはならないはずだ。千紘と秋斗にとっても同様である。
「えっと、どういうことですか?」
やはり律は状況が理解できず、ただ首を傾げるだけである。
そんな律に、秋斗は笑顔で端的に説明した。
「この世界、アンシュタートに来るとおれたちにも何らかの特殊能力が備わるって話なんだけど、詳しくは後でゆっくり話すな」
「……はい!」
あまりにもざっくりとした説明ではあったが、それでもその中の言葉に惹かれるものがあったらしく、律は途端に瞳をキラキラと輝かせた。
おそらく『何らかの特殊能力』という部分だろう、と千紘は推測するが、これは間違っていないはずだ。
(前回の秋斗みたいだな……)
楽しそうな律の様子に、千紘はそっと目を伏せて苦笑する。
秋斗が水魔法で、自分は剣を扱う能力。それがわかった時の秋斗も「これでおれも魔法使いだ!」なんて、心底嬉しそうに瞳を輝かせていた。それとそっくりだ。
(まあ、別にいいけど)
律はまだ高校生だから、秋斗と違って浮かれても構わないだろう。秋斗が少しお子様なのが気にかかるくらいで、特に問題はない。
千紘が納得しながら顔を上げる。その双眸に映ったのは、ちょうどリリアが律の額に手をかざそうとしているところだった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。
勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。
【完結】魔力・魔法が無いと家族に虐げられてきた俺は殺して殺して強くなります
ルナ
ファンタジー
「見てくれ父上!俺の立派な炎魔法!」
「お母様、私の氷魔法。綺麗でしょ?」
「僕らのも見てくださいよ〜」
「ほら、鮮やかな風と雷の調和です」
『それに比べて"キョウ・お兄さん"は…』
代々から強い魔力の血筋だと恐れられていたクライス家の五兄弟。
兄と姉、そして二人の弟は立派な魔道士になれたというのに、次男のキョウだけは魔法が一切使えなかった。
家族に蔑まれる毎日
与えられるストレスとプレッシャー
そして遂に…
「これが…俺の…能力…素晴らしい!」
悲劇を生んだあの日。
俺は力を理解した。
9/12作品名それっぽく変更
前作品名『亡骸からの餞戦士』
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界をスキルブックと共に生きていく
大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる