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第二章 わずかに歩み寄る二人
第10話 綺麗な指揮と卵とのリンク・1
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翌日の朝。
昨日は結局あまり眠れなかった蒼真と弘祈だが、そのわりには元気があった。まだ若さの方が勝っているらしい。
「よし、さっさと帰還の魔法陣とやらがあるリエンル神殿に行って地球に帰るぞ!」
「うん、わかった」
ガッツポーズで気合を入れた蒼真が歩き出すと、弘祈はすぐさまそれを追う。
弘祈の持つ鞄に入っているオリジンの卵は、つい先ほど確認した時は優しい色をしていた。どうやら落ち着いているようである。
「魔物が卵を狙ってくるなら気をつけないとな」
「鞄の中に入ってるうちは多分大丈夫だと思うんだけど」
でも絶対に安全とは言えないもんね、と弘祈が同意しながら頷いた。
この森がどれくらい広いのかわからない。地図を見てもそれはさっぱりだった。森の中の詳細までは描かれていないのだから当然だ。
おそらく半分以上は進んできたと思う。いや、そう信じたいのだが、まだ出口には辿り着けていない。
二人は慎重に、けれど少しでも早くここを抜けようと、森の中を進んでいく。
獣道を辿っている途中だった。
大きな木の陰から何かが飛び出してきて、二人は即座に足を止めるとそのまま身構えた。
「狼……っぽい魔物か?」
「そう見えるね」
蒼真が冷静に狼を見据えると、弘祈は卵の入った鞄を守るようにしっかり抱える。
「だったらさっさと倒して、今日はベッドで寝る!」
野宿はもう嫌だと言わんばかりに、蒼真が大声を上げた。
こんなところで時間を取られているわけにはいかない。今は少しでも早く先に進みたいのだ。
右手に細身の剣を出現させて柄を握ると、狼の方へ向かって駆け出す。
流れるような動きで一息に剣を薙ぐが、狼は後ろに飛びのき、それを軽くかわした。
しかし蒼真は気にすることなく、次の行動へと移る。
(ここは『ヴィヴァーチェ』、活発に速く……!)
タン、タン、タン、タンと四拍子でリズムを取りながら攻撃のタイミングを窺う。
そんな蒼真に我慢できなくなったのか、少しして狼が大きくジャンプした。
(今だ!)
タイミングを掴んだ蒼真は姿勢を低くし、勢いよく踏み込む。
下から斜めに剣を振り上げると、ジャンプしていた狼は攻撃を避けることができず、そのまま蒼真の剣に斬られて地面に落下した。
落ちた後はすぐに蒸発するようにして、その場から消え去る。
完全に狼がいなくなったのを確認してから、蒼真は右手の剣を消した。
「蒼真、大丈夫!?」
後ろの方から聞こえてくる声に振り返る。
見れば、鞄を抱えた弘祈が駆け寄ってきていた。
「これくらい楽勝だって」
俺を甘く見るなよ、蒼真はそう言いながら、元気に両腕をグルグルと回してみせる。
その様子に、弘祈が安堵の溜息を零した。
「それならいいけど、もしかして今回は指揮を意識してた?」
「ああ。自然とそんな感じになったけど、何となくその方が戦いやすかったな。やっぱ指揮に見えた?」
「うん、綺麗な指揮だったよ」
「……そっか。よかった」
弘祈に褒められた蒼真はそれだけを答えると、照れくさそうに頬を掻く。
「普段の指揮もあれくらい綺麗ならいいのにね」
「な……っ!」
ずいぶんと失礼だ、と途端に怒りたくなる蒼真だが、弘祈がヴァイオリンを出したのでその言葉を仕方なしに飲み込んだ。
「戦闘後はちゃんと音楽を聴かせないとね」
次に弘祈はそう言って、鞄からオリジンの卵を取り出す。しかし、やはりというべきか卵は青ざめた色になっていた。
「また怯えてるのか。まるで子供みたいだな」
弘祈と一緒に卵の様子を見た蒼真が腕を組んで、「やっぱりか」と唸るような声を漏らす。
「僕を『親』として認めたってことは、まだ子供ってことなんじゃないの? 卵なんだし」
「うーん、確かにそうか」
「とにかく今はヴァイオリンを弾いた方がよさそうだね。はい、持ってて」
真剣な表情の弘祈は、さも当たり前のように蒼真に卵を預けると、すぐにヴァイオリンを構えた。
昨日は結局あまり眠れなかった蒼真と弘祈だが、そのわりには元気があった。まだ若さの方が勝っているらしい。
「よし、さっさと帰還の魔法陣とやらがあるリエンル神殿に行って地球に帰るぞ!」
「うん、わかった」
ガッツポーズで気合を入れた蒼真が歩き出すと、弘祈はすぐさまそれを追う。
弘祈の持つ鞄に入っているオリジンの卵は、つい先ほど確認した時は優しい色をしていた。どうやら落ち着いているようである。
「魔物が卵を狙ってくるなら気をつけないとな」
「鞄の中に入ってるうちは多分大丈夫だと思うんだけど」
でも絶対に安全とは言えないもんね、と弘祈が同意しながら頷いた。
この森がどれくらい広いのかわからない。地図を見てもそれはさっぱりだった。森の中の詳細までは描かれていないのだから当然だ。
おそらく半分以上は進んできたと思う。いや、そう信じたいのだが、まだ出口には辿り着けていない。
二人は慎重に、けれど少しでも早くここを抜けようと、森の中を進んでいく。
獣道を辿っている途中だった。
大きな木の陰から何かが飛び出してきて、二人は即座に足を止めるとそのまま身構えた。
「狼……っぽい魔物か?」
「そう見えるね」
蒼真が冷静に狼を見据えると、弘祈は卵の入った鞄を守るようにしっかり抱える。
「だったらさっさと倒して、今日はベッドで寝る!」
野宿はもう嫌だと言わんばかりに、蒼真が大声を上げた。
こんなところで時間を取られているわけにはいかない。今は少しでも早く先に進みたいのだ。
右手に細身の剣を出現させて柄を握ると、狼の方へ向かって駆け出す。
流れるような動きで一息に剣を薙ぐが、狼は後ろに飛びのき、それを軽くかわした。
しかし蒼真は気にすることなく、次の行動へと移る。
(ここは『ヴィヴァーチェ』、活発に速く……!)
タン、タン、タン、タンと四拍子でリズムを取りながら攻撃のタイミングを窺う。
そんな蒼真に我慢できなくなったのか、少しして狼が大きくジャンプした。
(今だ!)
タイミングを掴んだ蒼真は姿勢を低くし、勢いよく踏み込む。
下から斜めに剣を振り上げると、ジャンプしていた狼は攻撃を避けることができず、そのまま蒼真の剣に斬られて地面に落下した。
落ちた後はすぐに蒸発するようにして、その場から消え去る。
完全に狼がいなくなったのを確認してから、蒼真は右手の剣を消した。
「蒼真、大丈夫!?」
後ろの方から聞こえてくる声に振り返る。
見れば、鞄を抱えた弘祈が駆け寄ってきていた。
「これくらい楽勝だって」
俺を甘く見るなよ、蒼真はそう言いながら、元気に両腕をグルグルと回してみせる。
その様子に、弘祈が安堵の溜息を零した。
「それならいいけど、もしかして今回は指揮を意識してた?」
「ああ。自然とそんな感じになったけど、何となくその方が戦いやすかったな。やっぱ指揮に見えた?」
「うん、綺麗な指揮だったよ」
「……そっか。よかった」
弘祈に褒められた蒼真はそれだけを答えると、照れくさそうに頬を掻く。
「普段の指揮もあれくらい綺麗ならいいのにね」
「な……っ!」
ずいぶんと失礼だ、と途端に怒りたくなる蒼真だが、弘祈がヴァイオリンを出したのでその言葉を仕方なしに飲み込んだ。
「戦闘後はちゃんと音楽を聴かせないとね」
次に弘祈はそう言って、鞄からオリジンの卵を取り出す。しかし、やはりというべきか卵は青ざめた色になっていた。
「また怯えてるのか。まるで子供みたいだな」
弘祈と一緒に卵の様子を見た蒼真が腕を組んで、「やっぱりか」と唸るような声を漏らす。
「僕を『親』として認めたってことは、まだ子供ってことなんじゃないの? 卵なんだし」
「うーん、確かにそうか」
「とにかく今はヴァイオリンを弾いた方がよさそうだね。はい、持ってて」
真剣な表情の弘祈は、さも当たり前のように蒼真に卵を預けると、すぐにヴァイオリンを構えた。
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