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第23話 刹那の選択
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どれだけの時間、戦っていたか。
ほぼ全ての建造物は崩れ、砕け散り瓦礫となった。悪魔の苛烈な攻撃によって地形までもが変わり、平和な街並みは見る影もない。
天国から地獄へ。全てが奈落に落ちる程の変化でありながら、未だに戦いは終わらない。
『――――――――――――――――――ッ!!』
世界を揺るがす悪魔の咆哮は衰えることなく、赤き山の如き肉体も傷一つ見当たらない。形を成した災害は、尚も健在だ。
「くそが……」
対して、街すら飲み込む悪魔と戦い続けるヴィーダは疲労困憊だ。
いくら十三騎士に匹敵する強さを持つとはいえ、所詮は人。荒れ狂う嵐の中でなにができようか。
怪我こそないが、身体中に汗をかき、息は切れている。手に力が入らなくなっていき、刀は数倍の重さになったかのようだ。
削りに削られ、体力は限界に近い。いつ倒れてもおかしくないほどだ。身体に重しを付けて戦っているような感覚。
そんな最悪の体調でも動きを鈍らせるわけにはいかない。一瞬でも動きを止めたならば、悪魔の一撃によって形すら残らない死が待つのみ。死に物狂いで戦うしか道はない。例え狂人であろうとも。
「ふふ。どこまで……持つかしらね?」
言動こそ余裕を残すが、ファインの疲労も目に見えて明らかだ。ヴィーダと同じように息を切らせ、顔色は青い。
十三騎士であれ、華奢な女性であることに変わりはない。体力的にはヴィーダよりも劣るだろう。
であるならば、ファインから先に落ちるのも必然であったか。
衰えることのない悪魔の拳を避け、攻撃に転じようとしたのか剣を生成した時に、それは起こった。
「――あら?」
ファインが驚きの声を上げて、その場に止まった。正確に言えば、動くことができなかった。
「おいっ!?」
彼女の意志に反して震える膝を見て、肉体に限界が来たことを察した。
ヴィーダは咄嗟に叫び、手助けに回ろうとするが、敵対者の行動は迅速であった。ファインが動けないと見るや、ヴィーダを無視して動けない彼女に拳を放つ。
絶体絶命の瞬間、何を思ったか、ファインは聖女のように穏やかな微笑みを浮かべた。
「――――ああ……楽しかったけれど、少し心残りがあるわね」
近付く死に恐れはなく、全てを受け入れるように立ち尽くす。
その光景を見て、心臓が一つ跳ねる。かつて見た光景と重なる。
『ごめんね』
瞬間、頭に血が上った。
なにを勝手に死を受け入れてやがる。なにを一人満足してやがる。人を残して勝手に死ぬなんて許さない。死ぬというのなら、俺の手によって殺されろ!
悲鳴を上げる軟弱な身体に鞭打ち、ヴィーダは飛び出す。後先なぞ考えず、迫る拳とファインの間に勢いそのままに割り込んだ。
「馬鹿がっ。勝手に死のうとしてんじゃねぇ!」
「――――え」
瞳を見開き、初めて本当の女性らしい驚きを見せたファインの腕を掴み、勢い良くぶん投げる。
投げられたファインは、体勢を立て直すことも忘れ、驚愕のままにヴィーダを見つめてくる。
「ヴィーダくん?」
その顔は、如実に「どうしてこんなことをしたのか」と語っているが、知ったことではない。言い訳はいろいろあるが、総じて勝手に死んだ師匠が悪いということにする。
なにより、事は全て手遅れだ。
『――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!!』
国さえも滅ぼす悪魔の拳は止まることなく、ヴィーダを襲い吹き飛ばす。
ほぼ全ての建造物は崩れ、砕け散り瓦礫となった。悪魔の苛烈な攻撃によって地形までもが変わり、平和な街並みは見る影もない。
天国から地獄へ。全てが奈落に落ちる程の変化でありながら、未だに戦いは終わらない。
『――――――――――――――――――ッ!!』
世界を揺るがす悪魔の咆哮は衰えることなく、赤き山の如き肉体も傷一つ見当たらない。形を成した災害は、尚も健在だ。
「くそが……」
対して、街すら飲み込む悪魔と戦い続けるヴィーダは疲労困憊だ。
いくら十三騎士に匹敵する強さを持つとはいえ、所詮は人。荒れ狂う嵐の中でなにができようか。
怪我こそないが、身体中に汗をかき、息は切れている。手に力が入らなくなっていき、刀は数倍の重さになったかのようだ。
削りに削られ、体力は限界に近い。いつ倒れてもおかしくないほどだ。身体に重しを付けて戦っているような感覚。
そんな最悪の体調でも動きを鈍らせるわけにはいかない。一瞬でも動きを止めたならば、悪魔の一撃によって形すら残らない死が待つのみ。死に物狂いで戦うしか道はない。例え狂人であろうとも。
「ふふ。どこまで……持つかしらね?」
言動こそ余裕を残すが、ファインの疲労も目に見えて明らかだ。ヴィーダと同じように息を切らせ、顔色は青い。
十三騎士であれ、華奢な女性であることに変わりはない。体力的にはヴィーダよりも劣るだろう。
であるならば、ファインから先に落ちるのも必然であったか。
衰えることのない悪魔の拳を避け、攻撃に転じようとしたのか剣を生成した時に、それは起こった。
「――あら?」
ファインが驚きの声を上げて、その場に止まった。正確に言えば、動くことができなかった。
「おいっ!?」
彼女の意志に反して震える膝を見て、肉体に限界が来たことを察した。
ヴィーダは咄嗟に叫び、手助けに回ろうとするが、敵対者の行動は迅速であった。ファインが動けないと見るや、ヴィーダを無視して動けない彼女に拳を放つ。
絶体絶命の瞬間、何を思ったか、ファインは聖女のように穏やかな微笑みを浮かべた。
「――――ああ……楽しかったけれど、少し心残りがあるわね」
近付く死に恐れはなく、全てを受け入れるように立ち尽くす。
その光景を見て、心臓が一つ跳ねる。かつて見た光景と重なる。
『ごめんね』
瞬間、頭に血が上った。
なにを勝手に死を受け入れてやがる。なにを一人満足してやがる。人を残して勝手に死ぬなんて許さない。死ぬというのなら、俺の手によって殺されろ!
悲鳴を上げる軟弱な身体に鞭打ち、ヴィーダは飛び出す。後先なぞ考えず、迫る拳とファインの間に勢いそのままに割り込んだ。
「馬鹿がっ。勝手に死のうとしてんじゃねぇ!」
「――――え」
瞳を見開き、初めて本当の女性らしい驚きを見せたファインの腕を掴み、勢い良くぶん投げる。
投げられたファインは、体勢を立て直すことも忘れ、驚愕のままにヴィーダを見つめてくる。
「ヴィーダくん?」
その顔は、如実に「どうしてこんなことをしたのか」と語っているが、知ったことではない。言い訳はいろいろあるが、総じて勝手に死んだ師匠が悪いということにする。
なにより、事は全て手遅れだ。
『――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!!』
国さえも滅ぼす悪魔の拳は止まることなく、ヴィーダを襲い吹き飛ばす。
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