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第25話 早速口説く
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「戦いが終われば皆仲間……私はあなたを見くびっていたわ……そんなセリフが当たり前のように出てきて、当たり前のように実践できるとは……」
悔しいとさえ、光華は思った。
人間界の先頭に立って魔界と戦い、そして長年の戦争に終止符を打った。
だが、戦争は終わっても、両種族間のわだかまりが無くなったわけではない。
センフィを見ていれば分かる。彼女は今でもこの学園では避けられている。
両種族が分け隔てなく友好を結ぶことの困難さは、彼女たちが一番良く分かっている。
だというのに、今、目の前にはそれを当たり前のように実践している魔族が居た。
しかもそれは、世間から白い目で見られている魔族である。
それが少し、光華には悔しかった。
そして、同時に知りたいとも思った。
「あの……どうやって……どうやって、そんな簡単に人間の友人を作れたの?」
「んなものん、俺がヤバくて強くてぶっとんでて、イカしたボーイだからだろ?」
「マジメに!」
「いや、つーか、別に人間と友達になったわけじゃなくて、同じ不良同士だしよ……」
知りたかった。だからこそ、彼女は自分でも驚くぐらい声を荒らげた。
少しビクッとなったハルト。
本当は適当に流そうと思ったが、その真剣な眼差しに押されて、少し考えた後に答えた。
「そうだな……昔、強くてイカして、ギラギラで最高にカッコ良かった不良が居たんだ」
光華はまた、マジメに答えてくれと言おうとしたが、今のハルトは真剣だった。
「そいつが俺たち不良界の頂点に立ったんだ」
ハルトの脳裏に、瞼の裏に、魂に刻まれた一人の男。
あの男が居たからこそ、自分たちは一つになれたんだと、迷わず思った。
「喧嘩が一番強い奴が偉い。それが俺たちの世界の法律だ。だから、俺たちはその男の背中を追いかけた。人間も魔族も関係なくな」
ハルトは語りだした。昔を懐かしむように、そしてどこか誇らしげに。
光華は、途中で気になってツッコミたいところがたくさんあった。
だが、今は、歪んだ瞳から少年のような瞳に変わった、ハルトの言葉に耳を傾けた。
「あん時だな。おっさんが魔王軍入隊前の不良として最後の喧嘩。前々から睨み合っていた人間界の暴走族どもが乗り込んできて、相手の総長をぶっ倒した時だった」
その日を、ハルトは今でも鮮明に覚えている。
「相手の総長も強かった。だが、おっさんは勝った。すると、ぶっ倒した相手に、楽しかったって言って、手を差し出したんだっけな。あん時はみんな笑っちまったな。敵も味方もなく」
「…………」
「そっからだよ。その暴走族どもはチョクチョク魔界に遊びに来たり、そいつらの傘下だった他のチームの連中まで俺たちに紹介して、一緒に騒いだり歌ったり踊ったり、力試しで喧嘩してみたり……バイクの乗り方も教えてもらったりしたな……楽しかったよ」
ハルトにとって、それは最高の日々だった。思い出しただけで笑みが溢れる。
涙が出るほど笑ってしまった。
「くはははははは」
「レ、レオン・ハルト君?」
「あれほどバカだと思ったこともない。あれほど、不良を誇りと思った日は無かった。あんな男が同じ不良であることが、俺たち不良にとって最高の誇りみたいなもんだった」
だが、急にハルトの心がしんみりした。その変化に、光華も気づいた。
原因は? ハルトは自分でそれを理解していた。
「そして……その誇りはもう居ない……そうさ……だから、俺が取り戻すんだ」
「レオン・ハルトくん?」
「とはいえ……」
そう言って苦笑しながら、隣に居る光華の顔をジッと見つめる。
至近距離から見つめられ、思わずドキッとしてしまった光華にハルトは告げる。
「そんな喧嘩する気満々で乗り込んだ人間界で……こんな話の合う新しいダチができるとは思わなかったぜ」
「ッ!?」
昔から友人が少なかったという光華に対して、もう自分たちは友であると当たり前のように言った。
(しかも話が合うだけじゃなくて……ツラも……)
その言葉に光華は徐々に胸が高鳴り……さらにハルトは追い打ちをかけるように……
「しかもこんな美人の良い女だ」
「ふぇ……え!? な、なにを……」
「カッカッカ、チョロい反応だなお前。さては男に口説かれなれてねーな?」
「んななななな、な、なに、何を!」
「そういう反応を、俺みてーな女好きのドスケベ野郎の前で見せると……」
「あ……」
笑みを浮かべながら、指で光華の顎をクイッとあげ……
「ダチを超えて……自分の女にしたくなる」
そして、ストレートに口説いた。
「な、なにを、だけど……わ、私、人間よ? な、なにを……」
「ああ? 男と女だろ? 俺はもう、秒でお前を抱きたいぜ」
「ッ!?」
そう言って、徐々に顔を近づけてくるハルト。
光華は振り払おうと思えば簡単に振り払える。
目の前のハルトを突き飛ばそうと思えば簡単に突き飛ばせるし、なんなら戦って倒すこともできる自信もある。
最悪、声を上げて悲鳴を……だけど……
「だ、だめよ……こんな……」
光華がこういった状況を経験したことが無いことと、既にハルトに心を許してしまっていることも合わさり……
「ん」
「あっ……ん」
その唇を拒絶することができなかった。
悔しいとさえ、光華は思った。
人間界の先頭に立って魔界と戦い、そして長年の戦争に終止符を打った。
だが、戦争は終わっても、両種族間のわだかまりが無くなったわけではない。
センフィを見ていれば分かる。彼女は今でもこの学園では避けられている。
両種族が分け隔てなく友好を結ぶことの困難さは、彼女たちが一番良く分かっている。
だというのに、今、目の前にはそれを当たり前のように実践している魔族が居た。
しかもそれは、世間から白い目で見られている魔族である。
それが少し、光華には悔しかった。
そして、同時に知りたいとも思った。
「あの……どうやって……どうやって、そんな簡単に人間の友人を作れたの?」
「んなものん、俺がヤバくて強くてぶっとんでて、イカしたボーイだからだろ?」
「マジメに!」
「いや、つーか、別に人間と友達になったわけじゃなくて、同じ不良同士だしよ……」
知りたかった。だからこそ、彼女は自分でも驚くぐらい声を荒らげた。
少しビクッとなったハルト。
本当は適当に流そうと思ったが、その真剣な眼差しに押されて、少し考えた後に答えた。
「そうだな……昔、強くてイカして、ギラギラで最高にカッコ良かった不良が居たんだ」
光華はまた、マジメに答えてくれと言おうとしたが、今のハルトは真剣だった。
「そいつが俺たち不良界の頂点に立ったんだ」
ハルトの脳裏に、瞼の裏に、魂に刻まれた一人の男。
あの男が居たからこそ、自分たちは一つになれたんだと、迷わず思った。
「喧嘩が一番強い奴が偉い。それが俺たちの世界の法律だ。だから、俺たちはその男の背中を追いかけた。人間も魔族も関係なくな」
ハルトは語りだした。昔を懐かしむように、そしてどこか誇らしげに。
光華は、途中で気になってツッコミたいところがたくさんあった。
だが、今は、歪んだ瞳から少年のような瞳に変わった、ハルトの言葉に耳を傾けた。
「あん時だな。おっさんが魔王軍入隊前の不良として最後の喧嘩。前々から睨み合っていた人間界の暴走族どもが乗り込んできて、相手の総長をぶっ倒した時だった」
その日を、ハルトは今でも鮮明に覚えている。
「相手の総長も強かった。だが、おっさんは勝った。すると、ぶっ倒した相手に、楽しかったって言って、手を差し出したんだっけな。あん時はみんな笑っちまったな。敵も味方もなく」
「…………」
「そっからだよ。その暴走族どもはチョクチョク魔界に遊びに来たり、そいつらの傘下だった他のチームの連中まで俺たちに紹介して、一緒に騒いだり歌ったり踊ったり、力試しで喧嘩してみたり……バイクの乗り方も教えてもらったりしたな……楽しかったよ」
ハルトにとって、それは最高の日々だった。思い出しただけで笑みが溢れる。
涙が出るほど笑ってしまった。
「くはははははは」
「レ、レオン・ハルト君?」
「あれほどバカだと思ったこともない。あれほど、不良を誇りと思った日は無かった。あんな男が同じ不良であることが、俺たち不良にとって最高の誇りみたいなもんだった」
だが、急にハルトの心がしんみりした。その変化に、光華も気づいた。
原因は? ハルトは自分でそれを理解していた。
「そして……その誇りはもう居ない……そうさ……だから、俺が取り戻すんだ」
「レオン・ハルトくん?」
「とはいえ……」
そう言って苦笑しながら、隣に居る光華の顔をジッと見つめる。
至近距離から見つめられ、思わずドキッとしてしまった光華にハルトは告げる。
「そんな喧嘩する気満々で乗り込んだ人間界で……こんな話の合う新しいダチができるとは思わなかったぜ」
「ッ!?」
昔から友人が少なかったという光華に対して、もう自分たちは友であると当たり前のように言った。
(しかも話が合うだけじゃなくて……ツラも……)
その言葉に光華は徐々に胸が高鳴り……さらにハルトは追い打ちをかけるように……
「しかもこんな美人の良い女だ」
「ふぇ……え!? な、なにを……」
「カッカッカ、チョロい反応だなお前。さては男に口説かれなれてねーな?」
「んななななな、な、なに、何を!」
「そういう反応を、俺みてーな女好きのドスケベ野郎の前で見せると……」
「あ……」
笑みを浮かべながら、指で光華の顎をクイッとあげ……
「ダチを超えて……自分の女にしたくなる」
そして、ストレートに口説いた。
「な、なにを、だけど……わ、私、人間よ? な、なにを……」
「ああ? 男と女だろ? 俺はもう、秒でお前を抱きたいぜ」
「ッ!?」
そう言って、徐々に顔を近づけてくるハルト。
光華は振り払おうと思えば簡単に振り払える。
目の前のハルトを突き飛ばそうと思えば簡単に突き飛ばせるし、なんなら戦って倒すこともできる自信もある。
最悪、声を上げて悲鳴を……だけど……
「だ、だめよ……こんな……」
光華がこういった状況を経験したことが無いことと、既にハルトに心を許してしまっていることも合わさり……
「ん」
「あっ……ん」
その唇を拒絶することができなかった。
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