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第22話 イザ行かん
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「ヒュー、かっくいー、さっすがオルガちゃんとカララちゃん!」
「もう、不良なんかやめてウチの店で働きなさいよ。あんたたちなら、簡単にトップになれるって!」
街中の喝采を浴びながら、立ち去る不良たちの背中を見ているオルガの隣にカララが近づき、互いを労うように、顔を合わせないまま軽く拳を出して、互いにコツンとぶつけた。
「とりあえず終わった」
「うむ。しかし、敗戦して職を失った傭兵崩れや盗賊かぶれたちが随分と好き放題してくれるの。『人魔不良界』が終わってからは、こんなつまらぬ喧嘩ばかりだの」
「逆に昔から存在する骨のある不良共と仲良くなりすぎた。ヌルくなってきた」
「まあの。確かにこれでは、自警団と変わらぬな。邪魔者を追っ払うばかりでの」
「殺した方が楽なんだが」
「そう言うな。余とて歯がゆい思いをしておる」
難しい顔をして苦笑するオルガ。すると、二人の元に街の至る所からチームのメンバーが顔を出した。
「カララちゃん、オルガ、こっちも終わったぜ!」
「ハルくんが留守だからって、ニトロクルセイダーズをナメんなっつう話しだぜ」
「今回は楽勝だったな。あいつら、魔法や魔闘術は使えるが『威(い)』を使えなかったからな」
それぞれが、他の場所で街の防衛と喧嘩という役目を終え、勝利という決着に満足そうだ。
「みなもやったようだの」
「遠征に行ってる奴らからも連絡あった。当然勝った。暫くはこの街もまた退屈になるな」
「うむ、ハルトに褒めてもらわんとな」
「いいや、こうなったのもハルトの所為だ。アイツが二代目のクセに、チームを放置して行方をくらませているからだ」
途端に不機嫌そうに口を膨らませるカララ。その膨らんだ口をオルガが苦笑しながら掴んで空気を吐き出させた。
「マグダも自由行動が目立ったが、あいつも大概だ。今度会ったら殺してやる」
「男も自由に生きたい時があるのであろう。浮気をしていないのなら、許してやろうぞ」
「浮気? してたらどうする?」
「わっはっはっはっはっはっはっ、あっ?」
「悪かった。何でもない」
オルガが二ターっと残酷な笑みを浮かべる。カララもほんの少しだけビビッた。
冗談だ。と言っておかないと恐いことになると判断したカララは慌てて何度も首を横に振った。
しかし、浮気云々は冗談にしても、ハルトが気がかりなのは二人とも同じだった。
「それに私だってあいつが居なくて……昨日も一人でオナニーするしかなかったんだ……」
「余もだ。自慰などむなしくて仕方ない……」
「あいつの所為だ……」
「うむ……あやつの所為だ」
一体何をしているのかと、二人がハルトの身を案じていると、軽快な音楽が聞こえた。
「ぬ?」
「おい、ケータイなっているぞ」
オルガがワイシャツの胸ポケットに手を入れて、バイブレーションして鳴り響いている携帯を取り出した。
「余だ。おお、『海堂さん』ではないか。こちらは変わりない。不良を引退したと聞いたが、そっちはどうだ? ん? こっちか? いや、こちらは余とカララの夫が消え、ん? なに?」
オルガの顔つきが変わった。その様子、ただ事ではなかった。
「海堂は何と言っていた?」
「海堂さんの元舎弟が不良ゲートの付近でハルトを見たそうだ。ケータイも繋がらぬが、人間界であやつは何か用があるのかと聞いてきた」
「そうか」
「うむ」
カララとオルガ。よくこの二人は聞かれる。「二人は仲が良いのか?」と。そのたびに二人は揃って答えた。「仲良くない」と。
だが、それでも疑いたくなるぐらい、二人の息はいつもピッタリだった。
「「人間界か」」
寸分の狂いもなく、二人の言葉と心が重なった瞬間だった。
「人に留守番をさせて、単身人間界だと?」
「ほほ~、もう少ししたら一緒に行こうと約束しておったのに、黙って行きおったか」
「私がどれだけ……アキハバラとやらに行きたいか、知っていた」
「トーキョー何とかランドという夢の国でデートしたいと、余が何度も呟いていたのを隣で聞いていたであろう?」
そして、怒りが重なった。
「捕まえ殺す」
「おしおきだの」
背中から瘴気のようなものが溢れ出す二人。
二人の顔を直接見ていない電話の主も、二人が今、何をしようとしているのかは察することができた。
『来るなら案内するぜ?』
電話の向こうから男の穏やかな声が聞こえ、オルガとカララは一瞬で肯定の返事を返したのだった。
「もう、不良なんかやめてウチの店で働きなさいよ。あんたたちなら、簡単にトップになれるって!」
街中の喝采を浴びながら、立ち去る不良たちの背中を見ているオルガの隣にカララが近づき、互いを労うように、顔を合わせないまま軽く拳を出して、互いにコツンとぶつけた。
「とりあえず終わった」
「うむ。しかし、敗戦して職を失った傭兵崩れや盗賊かぶれたちが随分と好き放題してくれるの。『人魔不良界』が終わってからは、こんなつまらぬ喧嘩ばかりだの」
「逆に昔から存在する骨のある不良共と仲良くなりすぎた。ヌルくなってきた」
「まあの。確かにこれでは、自警団と変わらぬな。邪魔者を追っ払うばかりでの」
「殺した方が楽なんだが」
「そう言うな。余とて歯がゆい思いをしておる」
難しい顔をして苦笑するオルガ。すると、二人の元に街の至る所からチームのメンバーが顔を出した。
「カララちゃん、オルガ、こっちも終わったぜ!」
「ハルくんが留守だからって、ニトロクルセイダーズをナメんなっつう話しだぜ」
「今回は楽勝だったな。あいつら、魔法や魔闘術は使えるが『威(い)』を使えなかったからな」
それぞれが、他の場所で街の防衛と喧嘩という役目を終え、勝利という決着に満足そうだ。
「みなもやったようだの」
「遠征に行ってる奴らからも連絡あった。当然勝った。暫くはこの街もまた退屈になるな」
「うむ、ハルトに褒めてもらわんとな」
「いいや、こうなったのもハルトの所為だ。アイツが二代目のクセに、チームを放置して行方をくらませているからだ」
途端に不機嫌そうに口を膨らませるカララ。その膨らんだ口をオルガが苦笑しながら掴んで空気を吐き出させた。
「マグダも自由行動が目立ったが、あいつも大概だ。今度会ったら殺してやる」
「男も自由に生きたい時があるのであろう。浮気をしていないのなら、許してやろうぞ」
「浮気? してたらどうする?」
「わっはっはっはっはっはっはっ、あっ?」
「悪かった。何でもない」
オルガが二ターっと残酷な笑みを浮かべる。カララもほんの少しだけビビッた。
冗談だ。と言っておかないと恐いことになると判断したカララは慌てて何度も首を横に振った。
しかし、浮気云々は冗談にしても、ハルトが気がかりなのは二人とも同じだった。
「それに私だってあいつが居なくて……昨日も一人でオナニーするしかなかったんだ……」
「余もだ。自慰などむなしくて仕方ない……」
「あいつの所為だ……」
「うむ……あやつの所為だ」
一体何をしているのかと、二人がハルトの身を案じていると、軽快な音楽が聞こえた。
「ぬ?」
「おい、ケータイなっているぞ」
オルガがワイシャツの胸ポケットに手を入れて、バイブレーションして鳴り響いている携帯を取り出した。
「余だ。おお、『海堂さん』ではないか。こちらは変わりない。不良を引退したと聞いたが、そっちはどうだ? ん? こっちか? いや、こちらは余とカララの夫が消え、ん? なに?」
オルガの顔つきが変わった。その様子、ただ事ではなかった。
「海堂は何と言っていた?」
「海堂さんの元舎弟が不良ゲートの付近でハルトを見たそうだ。ケータイも繋がらぬが、人間界であやつは何か用があるのかと聞いてきた」
「そうか」
「うむ」
カララとオルガ。よくこの二人は聞かれる。「二人は仲が良いのか?」と。そのたびに二人は揃って答えた。「仲良くない」と。
だが、それでも疑いたくなるぐらい、二人の息はいつもピッタリだった。
「「人間界か」」
寸分の狂いもなく、二人の言葉と心が重なった瞬間だった。
「人に留守番をさせて、単身人間界だと?」
「ほほ~、もう少ししたら一緒に行こうと約束しておったのに、黙って行きおったか」
「私がどれだけ……アキハバラとやらに行きたいか、知っていた」
「トーキョー何とかランドという夢の国でデートしたいと、余が何度も呟いていたのを隣で聞いていたであろう?」
そして、怒りが重なった。
「捕まえ殺す」
「おしおきだの」
背中から瘴気のようなものが溢れ出す二人。
二人の顔を直接見ていない電話の主も、二人が今、何をしようとしているのかは察することができた。
『来るなら案内するぜ?』
電話の向こうから男の穏やかな声が聞こえ、オルガとカララは一瞬で肯定の返事を返したのだった。
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