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第19話 勇者の妹
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センフィはハルトのことを覚えていた。
(あいつ……俺のことも覚えてるし、昔と今も何も変わらねえおめでたい女だが……今でもアナル好きなのかな……? ただのアナルセフレだが……あいつの言っていた……)
別にだからどうというわけではないが、本当は少しだけ嬉しかったりもした。
(……ダチができれば楽しいってことは、ウソじゃなかったな)
少し昔の夢を見て、ハルトは目が覚めた。
息を荒くして見渡すその場所は、見知らぬベッド。天井。
そして白いカーテンで周りを覆われ、消毒液のような匂いがする部屋だった。
ここはどこだ? そんな疑問を抱いた数秒後に、隣から声が聞こえた。
「あら、起きたの?」
目の前には椅子に座って本を読んでいる女生徒が居た。
ハルトが起きたというのに、本から一切顔を上げずに、ハルトにまるで興味を示さな……いや違う。
「~~~……」
女はどういうわけか、ハルトに興味無さそうにして本を読むフリをして、何故か視線だけが先ほどからチラチラチラチラとハルトを……ではなく、ハルトの顔から少し視線をズラした箇所を見ているようだった。
ピンク色の髪は肩の長さで揃えられている。真っ白い肌に、触れたら簡単に砕けそうな細い体。不良の自分とはまるで縁のない、お淑やかな文学少女に見える。
だが、それは上辺だけ。ハルトには分かる。女にはまるで隙がないことを。
「……誰だっけ?」
思わず身構えるハルトを、光華は手で制す。
「天壌光華。勇者の一味にして、あなたが襲い掛かった勇者ハジャの妹よ」
「げっ、勇者だと。あー、それでか。ただモンじゃねーとは思ったけどよ」
「落ち着きなさい。ここは保健室。あなたは三時間ほど意識を失っていたのよ」
「三時間……油断した。まさか俺があんな優男に遅れを取るとはな」
「その様子ではもう大丈夫そうね」
「まあ、多少は腹が痛むが、この程度どうってことねえよ。ちっくしょう、まさか一撃であのザマとは情けねえぜ」
ハルトにとっては、腹の痛みよりも、イラつきの方が問題だ。
今すぐにでもリベンジしたい衝動に駆られるが、光華は涼しい顔で告げる。
「越前屋先輩は病院に運ばれたわ。幸い命に別状は無かったけど、顔面陥没骨折。腕と腿の状態もヒドいわ。運ばれた病院に優秀な治癒術士が居なければ、消せない傷が残っていたかもしれないわ」
光華はただの報告のように淡々と告げているが、どこか語尾に感情がこもっていた。
自分との喧嘩でやられた者の状況に対してどう思うのか。その反応を伺っているような感じだ。
しかし、ハルトは微塵も悪びれなかった。
「知るかよ。何とか屋が弱いのは自己責任だろうが」
「ふーん、そういう考えなの」
「あたりめーだ。喧嘩に身を委ねたら破滅への覚悟は当たり前だ。そんなギリギリの全力で命懸けの状況だからこそ生きがいだって感じられるんだ。それが、戦争だろうと喧嘩だろうと、拳で生きてきた奴らの唯一無二のルールだろうが」
どこか誇らしげに喧嘩の矜持を語るハルトだが、どこか予想通りだったのか、光華は深く溜息をついた。
「は~、覚悟ね」
「そーだ、覚悟だ。それがどうかしたのか?」
「別に。ただ」
「ッ!」
「本当の覚悟も知らない、怠惰な日々を過ごしてきただけの不良が、したり顔で覚悟を語ってもらいたくないわね」
怒気の空気。
表情そのものはクールなのに、痺れるような空気が光華の感情を雄弁に語っていた。
思わず、ハルトの口角が吊り上がった。
「くははは、ならどうする? お前も女のツラを捨てる覚悟があるんなら、俺はこのままヤってもいいんだぜ?」
「あらあら、ナメられたものね……私とヤルって?」
「ああ。まっ、テメエはツラはすげーかわいいから、喧嘩よりこのままベッドで一戦交えたいものだがな」
「ッ!? あら、下品ね……ただ……」
一触即発。ベッドのシーツの下で、ハルトもいつでも飛び出せる準備をしていた。
相手は女とはいえ、戦争に勝った勇者一味の一人だ。
だが、しばらく見合っていた二人だが、光華は急に顔を赤らめて……
「ただ……その……君が寝ていたときからなんだけれど……」
「あ?」
「そ、その……あの……」
そして、ハルトもようやく先程から女がチラチラチラチラとしているのが気になり、その視線を追った。
そこには、自分が被っているベッドのシーツ……自身の股間の位置が雄々しくテントを張っていた。
「あ……」
「~~……」
「そっか……昔のこと思い出して……」
センフィと初めてアナルセックスした日を思い出したのと、寝起きの生理現象も合わさっての勃起。
「いい? 生理現象なのか知らないけど、今のようなセリフをたとえ冗談だったとしても、股間がそんな状態で言わないでくれないかしら! 冗談ではすまなくなるわよ!?」
知識としては知っていても、経験のない華雪にとっては初めて見るもの。
(信じられないわ、この変態魔族……っていうか、お、男の子?のって……あんなに? それともこの人が特別? 魔族だから? アレが女の子の中に? む、ムリよね……って、落ち着きなさい私。私は、かしこい可憐なクールビューティーよ……だ、男性の勃起を見たぐらいで……)
普段は冷静沈着クールを売りにしていると自負している華雪だったが、この時ばかりは声を荒げてしまったが、何とか落ち着けようとする。
だが、その態度でハルトには分かってしまった。
(こいつ……オウダと同じタイプだ……実はエロに興味津々だ……)
思わず苦笑してしまった。
そんなハルトを見て、華雪もムッとするが、すぐに深呼吸して自身を今一度落ち着かせる。
「ふぅ……と、とりあえず、元気そうで良かったわ。話が早くできそうだから」
「はあ? どういうことだ?」
「ふふ、越前屋先輩に感謝するのね。先輩が病院で言っていたけど、今回のことであなたに対して特別何かを訴える気はないそうよ? あれは、一対一の決闘で自分が負けた責任だって」
光華が何を言っているか分からなかった。
だが、次の瞬間、光華はハルトが予想もしていなかったことを告げた。
「だから、早いうちに魔界へ帰ってくれるかしら」
「帰るだと?」
「今朝の事件は処理できたわ。センフィ姫が魔族の代表として学園側に謝罪し、兄さんがそれを後押ししてあなたの不問を訴え、受け入れられたわ。良かったわね」
「不問だと? ふざけんな」
ありのままの事実を淡々と語っているが、それは聞捨てならないものだった。
(あいつ……俺のことも覚えてるし、昔と今も何も変わらねえおめでたい女だが……今でもアナル好きなのかな……? ただのアナルセフレだが……あいつの言っていた……)
別にだからどうというわけではないが、本当は少しだけ嬉しかったりもした。
(……ダチができれば楽しいってことは、ウソじゃなかったな)
少し昔の夢を見て、ハルトは目が覚めた。
息を荒くして見渡すその場所は、見知らぬベッド。天井。
そして白いカーテンで周りを覆われ、消毒液のような匂いがする部屋だった。
ここはどこだ? そんな疑問を抱いた数秒後に、隣から声が聞こえた。
「あら、起きたの?」
目の前には椅子に座って本を読んでいる女生徒が居た。
ハルトが起きたというのに、本から一切顔を上げずに、ハルトにまるで興味を示さな……いや違う。
「~~~……」
女はどういうわけか、ハルトに興味無さそうにして本を読むフリをして、何故か視線だけが先ほどからチラチラチラチラとハルトを……ではなく、ハルトの顔から少し視線をズラした箇所を見ているようだった。
ピンク色の髪は肩の長さで揃えられている。真っ白い肌に、触れたら簡単に砕けそうな細い体。不良の自分とはまるで縁のない、お淑やかな文学少女に見える。
だが、それは上辺だけ。ハルトには分かる。女にはまるで隙がないことを。
「……誰だっけ?」
思わず身構えるハルトを、光華は手で制す。
「天壌光華。勇者の一味にして、あなたが襲い掛かった勇者ハジャの妹よ」
「げっ、勇者だと。あー、それでか。ただモンじゃねーとは思ったけどよ」
「落ち着きなさい。ここは保健室。あなたは三時間ほど意識を失っていたのよ」
「三時間……油断した。まさか俺があんな優男に遅れを取るとはな」
「その様子ではもう大丈夫そうね」
「まあ、多少は腹が痛むが、この程度どうってことねえよ。ちっくしょう、まさか一撃であのザマとは情けねえぜ」
ハルトにとっては、腹の痛みよりも、イラつきの方が問題だ。
今すぐにでもリベンジしたい衝動に駆られるが、光華は涼しい顔で告げる。
「越前屋先輩は病院に運ばれたわ。幸い命に別状は無かったけど、顔面陥没骨折。腕と腿の状態もヒドいわ。運ばれた病院に優秀な治癒術士が居なければ、消せない傷が残っていたかもしれないわ」
光華はただの報告のように淡々と告げているが、どこか語尾に感情がこもっていた。
自分との喧嘩でやられた者の状況に対してどう思うのか。その反応を伺っているような感じだ。
しかし、ハルトは微塵も悪びれなかった。
「知るかよ。何とか屋が弱いのは自己責任だろうが」
「ふーん、そういう考えなの」
「あたりめーだ。喧嘩に身を委ねたら破滅への覚悟は当たり前だ。そんなギリギリの全力で命懸けの状況だからこそ生きがいだって感じられるんだ。それが、戦争だろうと喧嘩だろうと、拳で生きてきた奴らの唯一無二のルールだろうが」
どこか誇らしげに喧嘩の矜持を語るハルトだが、どこか予想通りだったのか、光華は深く溜息をついた。
「は~、覚悟ね」
「そーだ、覚悟だ。それがどうかしたのか?」
「別に。ただ」
「ッ!」
「本当の覚悟も知らない、怠惰な日々を過ごしてきただけの不良が、したり顔で覚悟を語ってもらいたくないわね」
怒気の空気。
表情そのものはクールなのに、痺れるような空気が光華の感情を雄弁に語っていた。
思わず、ハルトの口角が吊り上がった。
「くははは、ならどうする? お前も女のツラを捨てる覚悟があるんなら、俺はこのままヤってもいいんだぜ?」
「あらあら、ナメられたものね……私とヤルって?」
「ああ。まっ、テメエはツラはすげーかわいいから、喧嘩よりこのままベッドで一戦交えたいものだがな」
「ッ!? あら、下品ね……ただ……」
一触即発。ベッドのシーツの下で、ハルトもいつでも飛び出せる準備をしていた。
相手は女とはいえ、戦争に勝った勇者一味の一人だ。
だが、しばらく見合っていた二人だが、光華は急に顔を赤らめて……
「ただ……その……君が寝ていたときからなんだけれど……」
「あ?」
「そ、その……あの……」
そして、ハルトもようやく先程から女がチラチラチラチラとしているのが気になり、その視線を追った。
そこには、自分が被っているベッドのシーツ……自身の股間の位置が雄々しくテントを張っていた。
「あ……」
「~~……」
「そっか……昔のこと思い出して……」
センフィと初めてアナルセックスした日を思い出したのと、寝起きの生理現象も合わさっての勃起。
「いい? 生理現象なのか知らないけど、今のようなセリフをたとえ冗談だったとしても、股間がそんな状態で言わないでくれないかしら! 冗談ではすまなくなるわよ!?」
知識としては知っていても、経験のない華雪にとっては初めて見るもの。
(信じられないわ、この変態魔族……っていうか、お、男の子?のって……あんなに? それともこの人が特別? 魔族だから? アレが女の子の中に? む、ムリよね……って、落ち着きなさい私。私は、かしこい可憐なクールビューティーよ……だ、男性の勃起を見たぐらいで……)
普段は冷静沈着クールを売りにしていると自負している華雪だったが、この時ばかりは声を荒げてしまったが、何とか落ち着けようとする。
だが、その態度でハルトには分かってしまった。
(こいつ……オウダと同じタイプだ……実はエロに興味津々だ……)
思わず苦笑してしまった。
そんなハルトを見て、華雪もムッとするが、すぐに深呼吸して自身を今一度落ち着かせる。
「ふぅ……と、とりあえず、元気そうで良かったわ。話が早くできそうだから」
「はあ? どういうことだ?」
「ふふ、越前屋先輩に感謝するのね。先輩が病院で言っていたけど、今回のことであなたに対して特別何かを訴える気はないそうよ? あれは、一対一の決闘で自分が負けた責任だって」
光華が何を言っているか分からなかった。
だが、次の瞬間、光華はハルトが予想もしていなかったことを告げた。
「だから、早いうちに魔界へ帰ってくれるかしら」
「帰るだと?」
「今朝の事件は処理できたわ。センフィ姫が魔族の代表として学園側に謝罪し、兄さんがそれを後押ししてあなたの不問を訴え、受け入れられたわ。良かったわね」
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