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第一章

第30話 休日

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 今日は休日。いつもなら、ダラダラしたり遊んだりこっそり部屋で一人エ……色々としてるけど、今日はちょっと真面目に過ごすことになった。

「シャイニお嬢様。お出かけですか?」
「うん。今日はアネストちゃんの家いくから~」
「そうですか。でしたら馬車を……」
「いらない。すぐなんだから」
「ですが、お嬢様に何かありましたら……」
「ないってば。同じ高級住宅街でなんの心配あんのさ?」

 出かける寸前、執事のバトウラさんに呼び止められ、過保護な心配をされるのはいつものこと。
 将来勇者になる私は大事に育てなきゃ……なんて言って、過保護に甘やかしてくるので、大事にしてても強くする気があるのかはよく分かんない。
 まっ、お父さんとお母さんも過保護だから仕方ないんだけどね。

「ところでお嬢様、今晩ですが……」
「わかってるよ~。なんか、お父さんとお母さんがお話があるんでしょ? ひょっとしてお見合いの話かな~?」
「私には何とも……」

 でも、そんな過保護なお父さんとお母さんが今晩は大事な話があるからと言われた。二人は私が将来、聖勇者になる気が無いことはなんとなく察しているけど、そのことをあまり強く言ってこない。まぁ、私自身の成績や才能がそんなんでもないからかもしれないけど。
 だけど、その血を絶やすわけにはいかない。
 そうなると……

「ふ~ん……ま、どーでもいいけどね。んじゃ、行ってくるよ~」
「お嬢様!」
「夜には帰るから~」

 ま、そういう話はちょいちょいこれまでもあったりしたから、どうでもいいやって思った。
 私だけじゃなく、勇者を目指す気がないディーちゃんにもそういう話は来てるだろう。
 でも、私たちの人生も……結婚も……「勇者」に縛られたくない。
 これが超絶イケメンのお見合いならまだしも、お父さんたちが持ってくるお見合い相手は、一回り以上年上の軍人おじさんだったり、どっかの貴族の息子のおデブさんとかヒョロヒョロくんとか、本当に勘弁だった。
 だからテキトーに流せばいいやと思って、私は特に気にせず家を出た。
 それに。今晩のことよりも、今はこっちの方が重要。

「あっ、もういる! ディーちゃーん! セカイくーん! おっはよーう」

 待ち合わせ場所には既にディーちゃんとセカイくんが待っている。
 ディーちゃんはヒラヒラの黒いミニスカートとベージュのブラウス着て、な~んかいつもより気合入れてる? やっぱ男の子も一緒だから……でセカイくん……なにそれ?
 上着の背中にド派手なドラゴンの刺繍……

「よう」
「セカイくんの私服……なにそれ?」
「あ? 知らねえのか? スカイドラゴンジャンパー……スカジャン……」
「……わぉ」

 派手! しかも初めて見たけど、なんかワイルド! なんかもう不良って感じ!
 
「ね? ダサいと思うでしょ? 一緒に待ってて恥ずかしかったわ」
「ああん? スカジャンの良さを分からねえとは、人間……じゃなくて、まだガキだなお前ら」

 確かに、待ち合わせで待ってた二人を見てもとてもカップルには見えなかった。
 でも、出かける寸前あんな話をしてたからか……

「う~ん」
「あん? なんだよ、オレンジ」
「ううん。何でもないよ~」

 もし、お見合いを進めてきたお父さんとお母さんに、こんな人を「私には彼氏がいるから」なんて言って連れてったらどうなるかな~? なんて考えちゃった。
 でも、もうそんな話は今は忘れて、 

「はぁ~……それにしても、せっかくの休日なのに、合成魔法発表会に向けた特訓かぁ~……」
 
 そう、今日の目的はこれ。
 いつもならこんなことやらなくてもいいのに、クラスを引っ張る自分たちがまず誰よりも質もレベルも高い発表にしなくちゃいけないから、休日返上して頑張ろうというアネストちゃんの提案。
 それにはセカイくんもすっかりやる気をだしちゃって……

「まぁ、いいじゃねぇか。先に目途が出るぐらい準備しといた方が、後で楽になるだろうが」
「めんどくさいわね……まっ、やるしかないんだけどね……ね? セカイ♪ あんたは休日ぐらいしか気が休まらないんだし」
「ぬぐ……」

 こうして、私とディーちゃんとセカイくんは休日に待ち合わせし、今からアネストちゃんの屋敷に行って作戦会議と特訓をすることになった。
 それもこれも、全ては昨日の所為。
 セカイくんはしばらくの間、私たちと集中して一緒に訓練とかできなくなっちゃったから。


『はあ、はあ……というわけだ、お前ら! センコーの邪魔も入ったのでこれ以上はできねーが……とりあえず、このゲームは俺の勝ちだ! 約束通りお前らは―――』

『『『『『納得できるかッ!!』』』』』


 寸止め戦争ゲーム。先生たちに大激怒され、とりあえず服を着なおして教室に戻った私たち。
 最後まではできなかったけど、セカイくんは自分の勝ちだったと口にした瞬間、クラス皆から大ブーイング。

『どう考えても、最後は僕たちが追い詰めていた!』
『あーしにメッチャくらくらしてたじゃん!』
『私のお尻だって!』
『最後、俺たちの連携が決まっていれば、多分勝っていた!』

 意外なセカイくんの弱点が発覚して、最後の方は追い詰められていたセカイくん。あれで勝ったのはセカイくんだなんて言われても、納得できないよね。

『ああん? どう考えてもテメエらみんなすっぽんぽんだっただろうが! 脱衣で負けなんだよ!』
『ふざけないでよ! わたし、おっぱい見られたけど……でも、心折れなかったもん! 心折れなきゃ負けじゃないんじゃないの?』
『私も……あそこ……見られちゃったけど……でも、負けたって思わなかった!』

 脱がされたニプルちゃんたちや、いつも引っ込み思案なローリーちゃんまで開き直って抗議した。
 

『ざけんな、どう考えても俺の勝ちだ! テメエら全員がかりだろうと俺には勝てねえ! 隙を突こうが、急に襲い掛かろうが、どれだけやろうとも――――』

『へぇ~……なら、それで試させてもらうのはどう?』

『……あ゛?』


 するとそのとき、セカイくんが口を突いて言ってしまったことに、一人の男の子が反応した。

『なぁ、セカイくん。流石に今日だけの結果じゃ納得できないよ』
『ぬっ……』
『だからさ、このゲームはまた改めてできないかな?』
『なに?』

 クラスのイケメン代表タンショーンくんが爽やかにセカイくんに提案した。


『合同魔法発表会までまだ時間あるし……それに僕たちは事前準備無しにいきなりセカイくんに戦争を仕掛けられた。なら、今度は僕たちの条件も飲んでよ』

『……条件?』

『この寸止め戦争ゲーム……君が今言った、いつでもどこでも……っていうのはどうだい?』

『ぬっ……』

『これから俺たちはそうだな……今月残り一週間。それまでの間にセカイくんに休み時間だろうと授業中だろうとトイレだろうと襲い掛かり、セカイくんを取り押さえて無力化したら勝ち……っていうのはどうだい?』

 
 それは、どう考えてもセカイくんが不利すぎる条件。
 クラス全員、いつでもどこでもセカイくんに襲い掛かるとか……

『あっ、それとも天才セカイくんは俺たち三ゆる生徒の挑戦を受けないの?』
『ああん?』
『なーんだ、結構さむいんだね、セカイくんは……』
『ッ!?』

 どう考えても分かりやすすぎる挑発。
 でも、売り言葉に買い言葉みたいな感じで、セカイくんは……


『あ~、上等だ! テメエら全員今月が終わるまでいつでもどこでも何人がかりでも俺にかかってこいよ! 全員返り討ちにしてやるよ! だから、今月終わるまでに俺を無力化できなけりゃ、テメエら真面目にやれよな!』

 
 その瞬間、皆の目がキラリと光った。

『なら、セカイくんが負けたら校長に交渉ね』
『は? 負けたら? できるもんならやってみろよ、草食動物共が!』

 てなことになっちゃって……それ以来……

『よっしゃ、セカイくんが小便中だ、覚悟ぉぉぉお!!』
『うおりゃああああ!』

 トイレ中に襲い掛かられたり……

『セカイく~ん、アネストたちとばっかと一緒にいないでさ~、放課後はあーしらと遊ぼうよ~』
『人のおっぱい見たんだし、奢ってぐらいして欲しいな~』
『んもう、嫌そうな顔しないで。お尻見たでしょ?』
『何も私たち……へんなことかんがえてないよ? あんぜんだよ? 今日は安全日なんだよ?』

 放課後、ヤリィマンヌちゃん、ニプルちゃん、オリシちゃん、ローリーちゃんの四人に放課後誘われて……

「なんか、セカイくん……昨日から色んな人に絡まれてて、人気者になっちゃったね?」
「うるせぇ……」

 そんなこんなで、私たち自身の特訓はこうして安全な学校外で……ということになっちゃった。
 すると…… 

「ねぇ……昨日の放課後……私はべつに気にしてないんだけど、アネストがあんたのことを心配してたわ。襲われたんじゃないかって……」

 ディーちゃんも昨日のことを思い出し、そして実は私も聞こうとしていたことを聞いてくれた。
 あの後、ヤリィマンヌちゃんたちとどうなったのかなって。


「………………」

「ねえ、まさか……あんた……」

「負けてねぇよ。ちょっと全身リップされたり、三人同時フェラとかケツ舐めとかされたが、何とか全員をクンニと手マンで返り討ちにした……だから大丈夫だ」

「「それは大丈夫と言わない!!??」」


 やっぱ襲われたんだ。でも、なんとか逃げ切ったんだね。
 そのこと気にしてたもんね、アネストちゃん。セカイくんがヤリィマンヌちゃんたちとシちゃってないかって気が気じゃなかったからね。
 一応、クンニと手マンならセーフ?
 なんだかんだで私もディーちゃんも心配だったからホッとしたかも。
 でも……

「……俺……どうしちまったんだろうな……」
「「?」」

 セカイくんが急に目を細めて遠くを見つめるように……

「ビッチは死ぬほど嫌いだ……だが……たかがビッチが4人程度……本来なら返り討ちにして絶頂させて……なのに……」

 あれ? セカイくん……なんだろう……すごい苦しそう?

「本とか水晶では問題なかったのに、目の前に女の裸やエロいことが現れると耐えきれなくなるなんて……俺は……男として終わったのかもしれねぇな……」

 クラスのみんなはセカイくんの弱点ととらえて、私たちも笑って見ていた。
 でも、なんか今のセカイくんの様子を見ると、とても重くて、そして何か私たちには分からない深い事情があるのかな?
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