上 下
26 / 54
第一章

第26話 抗議

しおりを挟む

 セカイくんが校長先生を脅したことで、そのすぐあとにソレは私たちへと通達された……


「「「「ええええええ!? 合成魔法発表会で平均点最下位のクラスは期末試験後の休みを返上で補習!!??」」」」


 やりやがったよ……セカイくん……

「その通りです、皆さん。期末試験後は本来なら三十日ほどの長期の休みがありますが、それを返上しての補習となります。ゆえに、最下位にならぬよう、クラス全員が気を引き締めねばなりません! これまでは先輩方から教えて戴いた合成魔法……仮に全員が同じ内容でも問題なかったですが、今年からは最下位の場合にペナルティが課せられます! 他のクラスも最下位にならないためにも修練と工夫をしてくるでしょう。私たちも今のままでは全員の休みが無くなりますよ?」

 そう言って教壇で熱弁するアネストちゃん。
 悲鳴を上げる皆。
 いや、私も協力するとは言いつつ、これに関しては悲鳴を上げちゃうよ……

「横暴だぁ、そんなの!」
「そうだそうだ! 学校側は一体何を考えているんだ! 不公平だ! 何で僕らの代からそんなことに!?」
「わたし、家族で旅行に行く予定なのに!」
「こんなの、保護者会も黙ってないんじゃないの?」
「っていうか……最下位の班とかならまだしも、クラス連帯ってどう考えてもおかしいでしょ!?」

 当然、不満と抗議のブーイングが響き渡る。
 というか、他のクラスも丁度同じタイミングで通達を聞いたんだろう。
 学校中から不満の声が聞こえてきた。
 でも……

「まっ、編入したばかりの俺には分からねえが、この学校で一番偉い校長先生が決定したんだから、もう覆せねえ。つまり全員死ぬ気で取り掛からねえと、休みが無くなるってことだ!」

 ニタニタと笑みを浮かべるセカイくんの言葉にクラス中が「うっ」となった。っていうか、君の所為だからね?
 一体、どんな交渉を校長先生と? しかも、校長先生は何で受け入れたの?
 分かんない。
 でも、セカイくんの所為だってのは分かるから、やっぱりムムムとなる。


「さらに校長の話では、例年使いまわしていたテスト問題も、今年から新しく作り変えるって言ってたな~……校長のポケットマ……コホン、とにかく教職員の基本給やボーナスもアップ、更に補習でもちゃんと特別手当を支給するということで、先生たちもやる気出すみてーだ……あ~、死ぬ気でやらね~と大変だなぁ」

「「「「テスト問題もッ!!??」」」」
 
「落第……しないようガチで勉強しねぇとな~」


 あのね、セカイくん。私は正直後悔してるよ。
 だって、それってつまりアホ娘って呼ばれている私まで必死に勉強しなきゃダメってことじゃん。一夜漬けでテスト問題と答えを暗記するだけじゃなくて……

「みなさん、今年からは色々と変わってくることになって大変かもしれませんが、これは己を高めるチャンスと考えましょう! まずは合成魔法発表会に向け、各々の班は真面目に取り組むしかありません。そして定期的にクラスのみんなで集まって中間発表をしたり、アドバイスを出しあったりなどをして、質を向上させましょう!」

 セカイくんが裏でコソコソと何かをやって、表ではアネストちゃんが皆を引っ張る。
 強制的に皆が「やらないとダメ」と思うようになっているのも幸いして、アネストちゃんも色々とトラウマがあったけど、堂々と皆を鼓舞して仕切っている。
 
「めんどくさいけど、皆でやるしかないわよね。私も休みなしは嫌よ」
「はぁ~だよねぇ~……」 

 ディーちゃんはもう諦めたみたいだけど……ディーちゃんはちゃんと頭いいし……う~、私にとっては死活問題だよぉ……。
 でも、そのときだった。

「待ってよ、どう考えてもおかしいと思うんだけど。こんなの受け入れて必死にやるよりも、今まで通りに戻してもらうよう、先生たちに抗議した方がいいんじゃないか? もちろん、保護者会にも動いてもらってさ」

 そのとき、クラスの男の子が手を挙げて、まさに私も是非そうしてもらいたいということを言ってくれた。
 いや、私だけじゃない。

「そうだよ、どう考えてもおかしいよ!」
「そうだ! これじゃぁ、遊べねーじゃねえか!」
「魔法騎士養成学校は、人生最後の長期休暇パラダイスって話でしょ? こんな真面目にガッツリやるなんて聞いてないわよ!」
「私も~、魔法サークルの先輩たちと海合宿とか山でキャンプとか花火とかに行く予定なのに~」
「今年こそ彼氏作るために色々と忙しいのに~」

 強制的に「やらなくちゃいけない」と思い始めていた皆が、「抵抗すべきだ」という声が上がった。
 どうしよう……私もそっち派……

「あ、あなたたち……」

 でも、私がそっちに行っちゃうと、アネストちゃんの敵になっちゃう。そんなのダメ。
 何か言わないと――――


「別にいいじゃねぇか、ガッツリやればよ。それが嫌な奴は退学でもして、今以上に生温い楽な環境にでも行ってろよ。所詮そんな奴は、戦場に行ってもすぐ魔族にやられて、犯され、喰われ、大事なものを全部失って破滅して後悔する……だったら迷惑かけないうちにやめりゃいいんだよ」

「「「「「ッッッ!!??」」」」」

「魔王軍を倒す倒さない以前に、自分がいざ『そういう場面』に遭遇しても何もできなくていいって言うならな……」


 そのとき、私やディーちゃんが何かを言い出す前に、セカイくんが挑発的な言葉を皆にぶつけた。
 うん、戦争に対する意識高い系のセカイくんらしい挑発。
 でも、戦争に対してイマイチピンと来ない私たちの世代からすれば……

「そういうのは、選ばれた勇者たちや、その一族とか他の天才とかがどうにかするんじゃねぇの?」
「あ゛?」

 だよね……痛いことを言われちゃったな……

「セカイくんは編入試験ですごかったらしいね。天才ってやつ? でも、俺らは違うしな」
「そうそう、俺らは才能ない一般人だからさ」
「うん、別に私たちは普通の家系だし、魔力が多いわけでもないしね」
「ここに居るのも将来の就職に便利だって話だし、卒業の肩書持ってりゃ、色々いいことあるし……」
「聖勇者の血を引く選ばれた存在とか天才の人たちとは違うんだからさ~」

 ダメだこりゃ……

「こ、こいつら……少しはアネストを見習えよ……」
「……セカイ……」

 そんな感じで、セカイくんも流石に呆れた顔で頭を抱えちゃったよ……

「っていうか~、セカイくんさ~、出会って一日でアネストちゃんとやけに親密じゃな~い?」
「それある! それ思った! アネストちゃんはセカイくんを呼び捨てで、セカイくんもビッチ呼びから名前呼びしてるし!」
「昨日はビッチビッチって喧嘩してたのにさ~、うわ……あれ? あれあれあれ~?」
「え? まさか、セカイくんから? それともアネストちゃんから?」
「えぇ~、もうカップル成立?」
「それじゃあさ……二人がこんな真剣にやろうとしてるの、休みにデートとか旅行に行けなくなるからだったりして~」
「うわ~、冷める~それで私たちにもやらせようとしてんの~?」

 そして、話は全然関係ない方向へ。

「ちょ、皆さん! 今はそんなこと関係ないでしょう! 私とセカイが親密とかカップルとか……お似合いとか……お似合い……あぅ……」
「そうよ、あんたたち、関係ないこと言ってんじゃないわよ!」
「ねぇ、みんな! あのさ――――」

 アネストちゃんとセカイくんを冷やかすかのような……アネストちゃん自身もちょっち暴走してるし……ってか、お似合いとは誰も言ってなくない?


「ふぅ……お前ら……はぁ~……ったく」


 そのとき、ゆっくりと立ち上がったセカイくんは、アネストちゃんのいる教壇まで行き、そして私たちに向かって……


「しゃーねぇ……今からお前ら全員、外へ出ろ。俺とケン……ゲームをしようぜ?」

 
 突然何を? っていうか、今……ケンカって言いそうにならなかった?
 でも、あまりにもいきなりすぎて、皆キョトン顔だし、何ならメンドクサイ?
 だけど、セカイくんは……


「まっ、新入りの俺が突然こんなことを言っても、ゆるくて温くてめんどくさがりなお前らはやる気にならねえだろうから、こういうのはどうだ? ここだけの話……俺は校長の弱みを握っている」

「「「「「ッッッ!!??」」」」」

「もし、このゲームにお前らが勝ったら……今回の通達とか新しい取り組みはなしにして、元の形に戻すよう、俺が必ず何とかしてやる……ってのはどうだ?」


 それは、流石にやる気にならざるを得ない言葉だった。

 でも、この時点では私たちはまだ知らなかった……

「セカイ、大丈夫なのですか? それにゲームっていったい……」
「俺とお前ら全員で対決し……先に完全無力化し、そして……寸止めまでした方が勝ちってゲームだ」
「無力化? それは一体……それに寸止めとは?」

 私たち男子も女子もこのゲームで……

「ま、いいじゃねえか。ほら、来いよ。そしてかかって来いよ、未来の魔法騎士たちよ」

 抗うことのできない、力、そしてクラスの脱衣大会、そして―――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

処理中です...