上 下
23 / 54
第一章

第23話 伝統を壊せ

しおりを挟む
「なにぃ!? 二人も勇者の娘だったのか!?」

 おっぱい騒動が収まり、改めて自己紹介したラヴリィちゃんとブレスツお姉ちゃん。
 そして二人が私たちと同じで聖勇者の家系と聞いて、おっぱいの時よりずっと驚いた反応を見せたセカイくんは、二人の手をガっと掴んで……

「勇者の娘……末永くよろしく。共に人類の未来のためにも魔族を根絶やしにしてやろうぜ!」
「あら、随分と情熱的なのね。って、あなたそんなことも知らないでブレスツの胸を触ったり、ぱ、ぱん……パンティーの中をまさぐったの!?」
「うふふふふ~、面白い男の子ですね~、はい~、よろしくです~………………あの、セフレになるかの回答は考えますのでまた後日~……」

 まさか、おっぱいより勇者とは……セカイくん、すごいな~……って、ブレスツお姉ちゃん、何をコソコソ話してるの?

「アネスト……あんた……あいつ堕とすの相当大変かもよ? いいの?」
「たしかに、ブレスツお姉さんにあそこまでしながら中断できるだなんて……それでは私のような貧相な身体に彼は靡くわけないと……って、何を言っているんですか!?」

 うん。もうアネストちゃん半分どころかもうだいぶ墜ちてるや……

「でも、シャイニたちとも昨日会ったばかりなのでしょう? なのに、もう一緒に食事してるなんて、随分と仲良くなったのね」
「ん? まぁ、仲良くというか……作戦会議だな。来月の合成魔法発表会に向けて」
「え? 発表会の?」
「おう、俺は何が何でもクラス優秀賞を取ろうと思っているんだ!」
「あら……へぇ~!」

 そういや、私たちは作戦会議してたんだっけ? すっかり頭から抜けちゃってたや。
 そして、そんなセカイくんの言葉を聞いて、ラヴリィちゃんはすごい感心したように笑顔になった。

「えらいじゃない! えっと、ちなみにあなたの班は……」
「ああ、アネスト、オレンジ、ピンクたちとだ」
「へぇ! ……オレンジ? ピンク? そういえば二人にはさっきからどうしてそんな呼び方なの?」
「いや、髪の色がそうだし、初対面の時にこいつらとちょっと揉めてオレンジビッチとピンクビッチと命名して……」
「は、はァ!? あ、だ、だからブレスツのことをブラウンビッチって……ちょ、それは二人が可哀想よ! っていうか、その流れだと私はどうなるの?」
「ん? ……ゴールドビッチ先輩?」
「やめて! なんか私がスペシャルなビッチみたいじゃない! 名前で呼んで、ラヴリィよ!」

 ぶほっ! ご、ごーるどびっち……ヤバい。オレンジビッチはまだマシかも。
 これには、アネストちゃんもディーちゃんもブレスツお姉ちゃんも噴き出して必死に笑いを堪えてる。

「っと、話を戻すけど、シャイニとディーも同じ班で、優秀クラス目指す作戦会議ってことは、二人も頑張るってこと? 前まで去年のレポートとか習得方法を教えてとか言っていたのに」
「まぁ~、流れでそうなっちゃってね……」
「アネストがやる気出しちゃったから、私は仕方なくよ。アネストったらエロスな本―――」
「ディイイイイイッ!!」
「あらあら~? エロスなって何ですか~?」

 と、また話がゴッチャゴチャに。そうじゃなくて、そう。合成魔法発表会だよね。


「とにかく、そこで優秀クラスになるためには、俺らだけじゃなくてクラスの連中もやる気出させなきゃならねぇ。そこでどうやってやる気出させるかってのを相談してんだよ」

「なるほど……クラスのやる気を……ねぇ。なかなか向上心があるのね、セカイくんは。アネストはまだしも、シャイニやディーも巻き込んでクラスの意識改革をしようだなんて。でも、それはなかなか大変なことね」

「ああそうだよ。それもこれも、おかしな伝統とやらがあるから、三ゆるだとか温い生徒ばかりになるんだよ」

 
 クラス皆のやる気をださせる。
 言葉にすれば単純だけど、それが簡単なことじゃないってことぐらい誰でも分かる。


「そもそも伝統とはいえ、なんで上級生は下級生にそんなレポートだとか習得方法とかをアッサリ伝授してんだよ」

「確かにそう……ね。だから、私はシャイニに頼まれても断ったし……まぁ、この子は私に断られたら他の子にお願いに行ったみたいだけどねぇ~」


 セカイくんの疑問に対して、ニッコリ笑って私のほっぺをつねってくるラヴリィちゃん。

「いひゃい、いひゃい!」
「それにこういうのは、何も合成魔法発表会だけに留まらないわ。年間の定期テストでも同じよ」

 そう言って、肩を竦めて苦笑するラヴリィちゃん。
 セカイくんはまだよく分からず首を傾げてるけど、ようするに……

「中間や期末の筆記試験……実は問題は毎年ほぼ同じなのよ」
「……?」
「つまり、昨年度の問題と答えを入手してその内容さえ押さえておけば、みんな落第しないような点数を取れちゃうってことなの」
「……はっ!?」

 うん。そういうことなの。
 だからこそ、頭の悪いアホ娘と言われている私も、落第しないで済んじゃうの。


「ちょっと待て、何でそんなことになってんだ!?」

「年間のカリキュラムは毎年同じだから試験範囲も同じで……先生方も毎年テスト問題を新たに作り直したりしないで、使い回している……っていうことで……」

「それじゃぁ、何も意味ねぇだろうが!? 何だこの学校は! 魔法騎士を養成するためじゃなくて、学校卒業の肩書を得るためだけの学校か!?」

「そ、それを言われると……何とも言えないわね……実際、ほとんどの生徒が入試時の時が一番頭良かったっていうのが多かったり……みんな入学したら……その……怠けて……」

「つか、あんたもだ! 自分はズルしてないかもしれねぇが、周りがそういうの横行してて何とも思わねえのかよ! オレンジには拒否したって言っても、こいつが他の先輩から情報入手してたら何も意味ねぇだろうが! 見て見ぬふりしている奴も同罪なんだよぉ!」

「………うっ………は、はい」


 私、生まれて初めて見ちゃったかも。ラヴリィちゃんがお説教されているところを。
 たぶん、お父さんやお母さんにも怒られたことないんじゃないのかな?
 あのいつも凛々しくて自信満々で高嶺の花みたいなラヴリィちゃんが俯いてシュンと……ん?

「……ぶつぶつ……怒られてるの? 私……怒られてるの? はあ、はあ……うそ、はじめて……怒られてる? ぶたれちゃう? 叩かれちゃうのかしら? お尻とか……ぶつぶつ……尻豚騎士なんて言われて……はあはあ」

 あれぇ? 小声で何かぶつぶつ言ってる?
 っていうか、なんかラヴリィちゃん顔を赤くして息荒くして……なんか内股になってモジモジしてない? あれ? なんか、色っぽい? 悦んでない?
 

「だいたい、そのおかしな伝統を……ん?」

「……?」


 するとその時だった。なんか、セカイくんがピタリと停止して……


「あ……そうか……ああ、そうだよ。初めからそれが……」

「セカイくん? どうしたのかしら? あの……もっと叱ってくれな……怒らないの?」


 セカイくんは何かを思いついたみたいで、徐々に顔に笑みを浮かべていって、そして……


「そうだよ! 今年に限って、上の学年から後輩にそういうの教えないようにさせりゃいいんだよ! そうすりゃ、全員のケツに火が付くんじゃねぇか!?」

「え? お尻に火を? 鞭とか肉棒ではなくて?」

 
 まさに、私たちの学年全員を敵に回すような発言をしちゃったよ……で、ラヴリィちゃん。ちょいちょい何言ってるの?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...