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序章

第2話 かつて俺が惚れた女

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『なぜ……テメエは俺についてくる……ラギル』

 いつだったかな? 
 魔界のアウトローどもと意味もなく命を懸けて血みどろな戦いを繰り広げる日々。
 道端で血反吐を吐いて倒れていた俺をあいつは介抱して匿って手当をしやがった。

『王子……どうか安静に……』

 ラギルは不思議な奴だった。そしてつまらない女だった。
 いつも無表情で人形みたいなツラしている。
 顔も長い髪も整って美しく、それでいてその肌は雪の彫刻のように触れてしまえば崩れてしまうのではないかと感じさせるほど目を見張るものであった。
 しかし、見方を変えればただの根暗な女。
 一緒に居てもつまらねえし、美しい体をしているが抱きたいと思うほど妖艶さがあるわけでもねぇ。
 ハッキリ言って、どうでもいい不可解な女だった。
 何でこの女は俺の後をいつもついてくるのかと。

『あまりご無理をなさらないでください……たとえあなたが望まなくとも、あなたは……』
『おい、俺の質問に答えろよ! いい加減、鬱陶しいんだよ』

 イラついて、胸倉をつかんでちょいと恫喝してやった。
 しかし、乱暴にして服が少し乱れようとも、あいつは目を丸くするだけで、特に動揺があるわけでもなかった。

『ならば……私を犯して捨てますか?』
『あ゛?』
『確かに……それぐらいならあなたでもできるでしょう……造作もなく』
『…………』

 一瞬、本気で殴ってやろうかと思った。
 誰に向かって言ってんだと。
 だが一方で、ここで手を上げちまうと、こいつのこの俺に対する無感情の中に見えるどこか失望を感じさせる色が濃くなってしまうように感じた。
 殴った瞬間に俺の値打ちが下がる……そう言われているような気がした……

『ちっ、うざってぇ……』
『……手当の続きをします……』
『るっせぇ! つーか、包帯グルグルしたり薬草使ったりするなら、回復魔法とか使えねーのかよ! 確かお前は魔界学校でも成績優秀だろうが!』
『すぐに怪我を治してしまっては、あなたも反省しないでしょう? 少しは痛みを長く感じながら、色々と考えられた方が良いと思いまして……』
『お前……結構アレな性格してるんだな……』

 結局俺はラギルをどうすることもできず、ただ負け惜しみのような文句を言うことしかできなかった。
 あの時はつくづく……

『お前……別にいいんだぜ? 名門貴族の娘だか許嫁だか知らねーけど……俺は結婚して魔王だとかそういうもんになる気もねーしな』
『…………』

 そう、どうしてこんな女が俺の許嫁なんだと思ったり、一方でこいつは何でそれを受け入れているんだと不思議に思ったもんだ。

『それとも貴族の娘として、王の妃になるという肩書は捨てがたいってか? かかか、残念ながらもうちょい胸とかケツとかが俺好みだったら、抱きまくってやったんだけどなぁ~』

 正直、調子が狂うし俺もそんな気はなかったから、どうにかこいつには離れてもらいたかった。
 俺は問題児のクズ王子。もうその評価を覆そうとも思わねえし、それでよかった。
 ただ、魔界を自由にブラブラ生きて、ムカつくアウトローどもをぶちのめして、最後は酒でも飲んでハシャイで寝る。
 そんなクソみたいな生活を何百年も過ごしていくことに躊躇いはなかった。
 魔王だとか戦争だとか正義だとか、そんな堅苦しくて息苦しい人生なんてまっぴらだった。
 だけど……

『確かに……私に今のあなたを好きになる要素もありませんし……』
『ああん?』
『だからこそ……』
『?』
『だからこそ……どこか好きになる要素は無いか……あなたの妻になりたいと思えることはないか……そのために、あなたを知りたいと思う努力をしている最中なのだと思ってください』

 無感情のくせに、どこか意思のあるハッキリとした言葉をあいつはぶつけてきた。
 よく分からん理屈をコネて、結局俺から離れない。

『よく分からな……ん? おい、何か落ちたぞ?』
『ッ!? あっ、そ、それは……!』

 と、そのとき、あいつの胸倉をつかんだ時に、あいつの胸元から何かメモ用紙のようなものがベッドに落ちていたことに気づいて、中を覗いてみた。
 すると、あいつはやけに慌てたように俺から取り返そうとしてくるが、その前に俺は……

『王子はピーマン苦手。かわいい……エッチ……振り向いてもらうにはバストアップ訓練が―――』
『こ、これは違うのです!』

 チラッと中を読んだ瞬間、あいつはこれまでの無表情とは打って変わり、顔を真っ赤にしてプルプル震えながらメモ帳を俺から奪い返した。
 ただそのとき、俺は初めてあいつの本当の感情のようなものを知れた気がした……

『……ぷっ……』
『な……なんです?』
『知らなかった。あんたもそんな顔をするんだな』

 そして、その瞬間俺は初めてあいつの前で笑い、少しだけあいつに興味を持つようになった。


 そして、俺があいつとそんな日々を過ごしているうちに惹かれ……男と女の関係にもなり……惚れるのも時間の問題だった。

『ん……どうした?』
『いえ……キスというものは初めてで……』
『……い、嫌だったか?』
『ふふふ……何を不安そうな顔をしているのです? いつもの強気はどうされたのです? 私はただ……』
『ん!?』
『ちゅぶ、ん♡ ちゅぷる……ぷは……わ、私が想定していたのは、もっと舌を絡め合うものでしたので……もっと……もっとしたい……と思っただけです♡』
『ッ!』
『あ……』

 初めて唇を重ねた日、俺はそのままこらえきれずにあいつを押し倒した。
 布一枚の隔たりすらもどかしくなり、ガッツついて、高級感漂う白いレースの下着を乱暴に引き千切ってしまった。

『王子……それは私の勝負用で……』
『あっ、ごめ……』
『ふふふ、許しません……この生娘の身体を満足させるまでは♡』
『ラギルッ!』
『あ、王子!』

 口の中を蹂躙するぐらい激しく舌を絡めながら、胸を揉みしだいた。
 手から零れ落ちるような大きさではないが、俺の手には丁度良いぐらいの愛らしさを感じた。
 
『あっ、ん♡ そ、そこは……』
 
 キスを続けた舌をそのままあいつの首筋に這わせながら、ピンと張ったピンク色の乳首に到達し、コリコリとした先で舐って、口に含んで、そして吸い、あいつがその度に体をビクビク揺らすのを嬉しく思いながら、俺は片手をあいつの股に滑り込ませた。

『あ……だ、め……』

 薄く生えそろったアンダーヘアーをかき分けて、ぐっしょりと俺の指先に温かい分泌液が触れた。
 その溢れ出る穴は狭く、傷一つなく、だけど熱い愛で溢れていた。
 
『もっと広げろ』

 俺はあいつの足元へ移動し、柔らかく細いあいつの両足を左右に大きくガバッと広げた。
 クールだったあいつもこの時ばかりは顔を真っ赤にさせて、手で顔を隠した。

『王子……そ、そんなにそこをジックリと見るのは……』
『好きだ、ラギル』
『っ~~~~~』
 
 パックリと割れ、そしてぷっくりと肉付いているラギルの膣穴。
 トロトロに溢れる愛液に俺の心は一瞬で奪われ、大切に、優しくと思っていたはずなのに、乱暴にむしゃぶりついて舐め回した。

『あっ、王子、だ、だめ、そんな、ぺ、ぺろぺろされては』
『ラギル、好きだ、ん、ちゅぷる、ラギル』
『んん~~~~♡』

 あいつに惚れ、あいつを抱いた瞬間、あいつの全てが愛おしくなった。
 あいつの体のあらゆる場所に触れ、舐め、愛し、同時にあいつもまた俺に対して同じ……だと思っていた……

『はあ、はあ、はあ、はあ、ラギルラギルラギルッ!』
『ん、すご、あん♡ 王子のが、わ、私の膣内で暴れ……ん♡ 奥までコツコツと……♡』
『出る! また出すぞ、膣内で!』
『は、い、きて、出してください、王子! 私をあなたでいっぱいに……ん~♡』

 数えきれないほどあいつの体の隅々まで触れ、蕩けるように何度も抱き合った。


『う~ん、ん……朝か……ッ!? あ、ら、ラギル?』
『ん、ちゅぶ、れろ、あむ、……あ、ぷはっ……王子……おはようございます』
『お、おまえ、なにを……』
『あっ、こ、これは……朝目が覚めたら……王子のココが苦しそうでしたので……お口で抜いて差し上げようと……』
『……お、お前!』
『んっ!? あ、も、もう王子……もっと固く大きくされては……ふふふ……コッチの口でないとダメですか?』
『かっかっか……ああ、何発でもな!』
『♡』 

 俺もあいつも若く、そして互いに色々と溜まっていたからかな。
 クソ真面目だと思っていたあいつも積極的に色々としてくれた。
 毎朝、毎晩、途中から外でも昼間でもおかまいなく、たまにあいつは街の路地裏で壁に手をついて、尻を俺に向けながら振って誘ってきては盛り上がった。


『お前、料理も得意だったんだな……』

『ふふ、交尾だけが得意な女だと思いましたか?』

『あっ、それ得意だと認識してたんだな♪』

『あ、あなたが私をそんな女になさったのでしょう!?』


 時間と共にあいつが色々な感情を俺に見せてくれて、俺はそれにどんどん惹かれていった。
 そう、俺は簡単に堕ちた。



 全てあいつの策略だったなんて、微塵も思わなかったんだ……



 それに……

『あーーー! ラギルちゃん、王子くんと二人で何してるの!? ズルい! 王子くん、私を将来お嫁さんにしてくれるんじゃなかったの!?』
『ちょ、と、なな、なにを!?』
『二人して見せつけてくれるじゃない! でもね、この私を忘れてもらっては困るわ!』
『せ~んぱ~い。私は二号でも全然いいですよ~♡』

 あんなクソ女どもに囲まれて、一時でも楽しさを感じて笑っていた自分が腹立たしい。

 ああ、ダメだ……思い出しただけで記憶を抉りたい……でも、消去するわけにはいかねぇ。

 この憎しみをいつまでも鮮明に留めておくことで、いつか野望を果たしたとき、妥協せずに奴らを後悔させてやるためにな。
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