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第16話 決着
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「ファイヤーボールッ!」
「シルバーストラッシュ!」
鉄の棍棒のようなものを振り回す一人の男に、世界最強スケヴェルフ大帝国の姫が二人がかりで……
「ピッチャー返しッ!」
「なっ!? 打ち返し―――ッ!?」
「からの~カット打法!」
「私の剣を、う、受け流し―――ッ!?」
タックの武器、超金属バットはそのスイングでエクスタの魔法やオルガスの剣を、打ち返して受け流した。
その結果、魔法も剣も容易く受け流され、二人は思わずバランスを崩す。
バランスを崩してよろける二人の眼前には、距離を詰めたタックが再びバットを引く。
コンパクトなスイングではなく、大きく引いてのフルスイング。
もし、それを顔で受けてしまったら?
その瞬間、二人の脳裏には顔面を粉砕された自分の姿がイメージされてしまった。
だが、それを回避しようにも、バランスを崩してうまくいかない。
だが……
「いくぞ~、弾丸ライナー! りゃぁ!」
「ひい!?」
「うぐっ……え?」
フルスイングされたと思ったタックのバットだが、自分たちの顔面に直撃の寸前で寸止めされたのだった。
「貴様、ど、どういうつもりだ……」
「タッくん……」
何故攻撃が止まった? 呆然とする二人に対し、タックは屈託なく笑い……
「どうだ、まいりましたか?」
「「ッッ!?」」
この世界の文化がどうであれ、そもそも女の顔をバットでフルスイングなどタックにできるはずがない。
これで懲りて降参してくれないかという思いのタック。
だが、そんなタックの想いとは裏腹に、今のタックの行為は二人のプライドを大きく傷つけた。
「き、きさま、わ、我を愚弄するかぁ!」
「ふ、は、はは……流石にここまで舐められるとは……ただでさえ、男相手に女が二人がかりという中で、手加減……ちょっと、カチンとくるではないか!」
タックの世界に置き換えれば、「女一人に対して、男が二人がかりで戦いを挑みながら、女に手加減で寸止めされる」ということになり、エクスタだけでなく、タックをどうにか救おうとしたオルガスにまでカチンとされるのは無理もなかった。
「うぇええ? ちょ、あぅ……だめかぁ……って、オルガスさんまで……そんな……」
よって、戦いを終わらせるどころか、返って二人を怒らせる結果となり、気づけばエクスタだけでなくオルガスまでプライドを傷つけられたと荒々しく剣を振るうようになった。
「男の分際で女に逆らうとは、何という屈辱! 許さん! 平伏せて、貴様など我が孕むまで死ぬほど犯しまくってくれるぅ!」
「この私が、男にこのような屈辱を……受け入れるわけにはいかん! タック、我らと戦うのであれば、容赦をするな! その棍棒で粉々に我らの顔面を砕け!」
文化が違う。というよりは、ある意味で逆のような世界だなと改めてタックは実感しながら、しかし……
「俺の世界では……男女平等、女性がどうのと言えば女性蔑視になって、犯罪者だろうと女の子に手を上げたことが拡散されたら銀河ネットで大炎上……それなのに、女の子を殴らないことで批判されるなんて思わなかった……だけど……だけど、こればっかりは郷に入っては郷に従うわけにはいかないんだ!」
文化が違う。しかしそれでもタックはこれに関してはこの世界の文化を受け入れない。
「何を言っている、タッくん!」
「ようするに、それでも俺は殴らないです! この港町での行為を見過ごせないけど、だからって女性をぶん殴ったりなんてしない! その上で、問題解決してみせる! それぐらいやったら、俺もお姉ちゃんに……」
「何を言っている! 大体、男のくせに―――」
「この世界がどうだろうと、俺は俺の目指す男の道を進むんだ!」
たとえこの世界では当たり前のことだったとしても、女の子の顔を殴るなどもってのほか。
それこそ、敬愛する姉に胸を張れるようなものではないからだ。
「倒すんじゃなくて……無力化を!」
距離を取って、タックは一度バットをしまう。
その上でその手には二つの鉄球。
怒りに満ちた表情で向かってくるオルガスとエクスタに対し、タックは……
「ダブル、カットファストボールッ!!」
放たれた二つの鉄球。
「ぬっ、コレは! 火竜を悶絶させた……」
「これをまともには受けられん!」
オルガスとエクスとはハッとして、二人は鉄球を回避しようとする。
だが次の瞬間、真っすぐ飛んできたはずの鉄球が突如曲がった。
「ッ!?」
「なっ、曲がった!?」
タックはそうなるように回転をかけたのだ。
慌てて剣と杖を前に出して鉄球を弾こうとするオルガスとエクスタだが、二つの鉄球は二人が手に持った剣と杖の丁度根元のところに当たった。
掴んでいた手のほんのわずか真上。あと少しずれていたら、握っていた手にぶつかって骨折、もしくは潰れていたかもしれない。
だが、それもまたタックによる二人の動きを先読みしたうえでのコントロールボール。
そして何よりも二人は怪我こそしなかったが……
「ぐあぁ、っ、う、腕が……」
「っ、し、痺れ……」
直撃しなかったとはいえ、ドラゴンすら悶絶させるほどのタックの鉄球による衝撃、振動が、手に伝わった。
それが二人の手を強く痺れさせ、二人は杖と剣を持つ手に力が全く入らなかった。
その上で……
「どりゃあああああ!」
「「ッッ!?」」
タックは飛ぶ。
再びその手にバットを両手で持ち、頭上に振り上げ、そのまま二人が立っている地面に向けて単純に力いっぱい叩きつける。
「銀河大根切りッッ!!!!」
それは、まさに隕石の衝突。
「ば、かな……何だこの男は!?」
「つ……強―――うわぁぁあああ!?」
タックが叩きつけた地面を中心に爆発のようなものが起こり、オルガスとエクスタがその衝撃に巻き込まれて宙へと舞い上がり、そのまま二人は海へ落下したのだった。
「ば、バカな、エクスタ姫が!?」
「オルガス姫ぇえええ!?」
「な、なんてことにゃ?!」
「あの、かわいこくん……こんなに……」
帝国、いや、世界最強のスケヴェルフ大帝国の王族にして最強の血筋である二人が、二人がかりで男一人に手も足も出ずにふっとばされた。
その事実に部下の兵士たちは呆然とし……
「ちょ、ヴァカすごぉ!」
「……子種欲しい! すごい!」
タックの仲間になると宣言したヴァギヌアとアマクリは興奮を抑えられず、そしてそれは同様に……
その光景を見ていた港町の住民たちの心に熱い火が灯った。
「す、すげえ、すごい! お、おおお……おおおおっ!」
「エルフに……人間の男が……女にッ!」
「しかも、二人を一度に相手して……」
男が女の、しかも大陸を支配するエルフをふっとばした。
その事実は、これまでエルフの非道な行いにただ涙を流しながら泣き叫んでいた港町の住民たちにも火をつけた。
「ッ、お、男が戦っているのに、女のあたいは何をやってんだ」
「僕と同じ男が……戦っているのに……」
「私たちが……」
「俺たちが……」
今、襲われているこの街は、住民たちは、そもそも誰だ? そう、自分たちだ。
なのに目の前では、人間の男が戦って、本来あり得ない現実をひっくり返した。
そんな状況で、自分たちは何をやっている?
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」」」」」
そう思っていた者たちが、男も女も関係なく、勇ましく吼えて立ち上がるには、十分すぎる理由だった。
「すごい盛り上がり……。とりあえずこれで、ひと段落……あれ?」
住民たちの唸り声をその身に受けながら、一方でタックはオルガスとエクスタをふっとばした海を見て首を傾げた。
ふっとばしはしたが、バットで二人を直接叩いたわけではないので、そんな怪我と化しているわけではないはずだと。
だが、それでも二人は一向に海から顔を出さない。
「やば! まさか溺れてたり? いけない!」
ケガはなくとも、衝撃で気を失ったのかもしれない。
そう思ったタックは慌てて海に飛び込んだ。
そして、タックは学ぶことになる。
溺れて意識を失って、呼吸が見られない者に対して行う、この世界の蘇生方法を。
「シルバーストラッシュ!」
鉄の棍棒のようなものを振り回す一人の男に、世界最強スケヴェルフ大帝国の姫が二人がかりで……
「ピッチャー返しッ!」
「なっ!? 打ち返し―――ッ!?」
「からの~カット打法!」
「私の剣を、う、受け流し―――ッ!?」
タックの武器、超金属バットはそのスイングでエクスタの魔法やオルガスの剣を、打ち返して受け流した。
その結果、魔法も剣も容易く受け流され、二人は思わずバランスを崩す。
バランスを崩してよろける二人の眼前には、距離を詰めたタックが再びバットを引く。
コンパクトなスイングではなく、大きく引いてのフルスイング。
もし、それを顔で受けてしまったら?
その瞬間、二人の脳裏には顔面を粉砕された自分の姿がイメージされてしまった。
だが、それを回避しようにも、バランスを崩してうまくいかない。
だが……
「いくぞ~、弾丸ライナー! りゃぁ!」
「ひい!?」
「うぐっ……え?」
フルスイングされたと思ったタックのバットだが、自分たちの顔面に直撃の寸前で寸止めされたのだった。
「貴様、ど、どういうつもりだ……」
「タッくん……」
何故攻撃が止まった? 呆然とする二人に対し、タックは屈託なく笑い……
「どうだ、まいりましたか?」
「「ッッ!?」」
この世界の文化がどうであれ、そもそも女の顔をバットでフルスイングなどタックにできるはずがない。
これで懲りて降参してくれないかという思いのタック。
だが、そんなタックの想いとは裏腹に、今のタックの行為は二人のプライドを大きく傷つけた。
「き、きさま、わ、我を愚弄するかぁ!」
「ふ、は、はは……流石にここまで舐められるとは……ただでさえ、男相手に女が二人がかりという中で、手加減……ちょっと、カチンとくるではないか!」
タックの世界に置き換えれば、「女一人に対して、男が二人がかりで戦いを挑みながら、女に手加減で寸止めされる」ということになり、エクスタだけでなく、タックをどうにか救おうとしたオルガスにまでカチンとされるのは無理もなかった。
「うぇええ? ちょ、あぅ……だめかぁ……って、オルガスさんまで……そんな……」
よって、戦いを終わらせるどころか、返って二人を怒らせる結果となり、気づけばエクスタだけでなくオルガスまでプライドを傷つけられたと荒々しく剣を振るうようになった。
「男の分際で女に逆らうとは、何という屈辱! 許さん! 平伏せて、貴様など我が孕むまで死ぬほど犯しまくってくれるぅ!」
「この私が、男にこのような屈辱を……受け入れるわけにはいかん! タック、我らと戦うのであれば、容赦をするな! その棍棒で粉々に我らの顔面を砕け!」
文化が違う。というよりは、ある意味で逆のような世界だなと改めてタックは実感しながら、しかし……
「俺の世界では……男女平等、女性がどうのと言えば女性蔑視になって、犯罪者だろうと女の子に手を上げたことが拡散されたら銀河ネットで大炎上……それなのに、女の子を殴らないことで批判されるなんて思わなかった……だけど……だけど、こればっかりは郷に入っては郷に従うわけにはいかないんだ!」
文化が違う。しかしそれでもタックはこれに関してはこの世界の文化を受け入れない。
「何を言っている、タッくん!」
「ようするに、それでも俺は殴らないです! この港町での行為を見過ごせないけど、だからって女性をぶん殴ったりなんてしない! その上で、問題解決してみせる! それぐらいやったら、俺もお姉ちゃんに……」
「何を言っている! 大体、男のくせに―――」
「この世界がどうだろうと、俺は俺の目指す男の道を進むんだ!」
たとえこの世界では当たり前のことだったとしても、女の子の顔を殴るなどもってのほか。
それこそ、敬愛する姉に胸を張れるようなものではないからだ。
「倒すんじゃなくて……無力化を!」
距離を取って、タックは一度バットをしまう。
その上でその手には二つの鉄球。
怒りに満ちた表情で向かってくるオルガスとエクスタに対し、タックは……
「ダブル、カットファストボールッ!!」
放たれた二つの鉄球。
「ぬっ、コレは! 火竜を悶絶させた……」
「これをまともには受けられん!」
オルガスとエクスとはハッとして、二人は鉄球を回避しようとする。
だが次の瞬間、真っすぐ飛んできたはずの鉄球が突如曲がった。
「ッ!?」
「なっ、曲がった!?」
タックはそうなるように回転をかけたのだ。
慌てて剣と杖を前に出して鉄球を弾こうとするオルガスとエクスタだが、二つの鉄球は二人が手に持った剣と杖の丁度根元のところに当たった。
掴んでいた手のほんのわずか真上。あと少しずれていたら、握っていた手にぶつかって骨折、もしくは潰れていたかもしれない。
だが、それもまたタックによる二人の動きを先読みしたうえでのコントロールボール。
そして何よりも二人は怪我こそしなかったが……
「ぐあぁ、っ、う、腕が……」
「っ、し、痺れ……」
直撃しなかったとはいえ、ドラゴンすら悶絶させるほどのタックの鉄球による衝撃、振動が、手に伝わった。
それが二人の手を強く痺れさせ、二人は杖と剣を持つ手に力が全く入らなかった。
その上で……
「どりゃあああああ!」
「「ッッ!?」」
タックは飛ぶ。
再びその手にバットを両手で持ち、頭上に振り上げ、そのまま二人が立っている地面に向けて単純に力いっぱい叩きつける。
「銀河大根切りッッ!!!!」
それは、まさに隕石の衝突。
「ば、かな……何だこの男は!?」
「つ……強―――うわぁぁあああ!?」
タックが叩きつけた地面を中心に爆発のようなものが起こり、オルガスとエクスタがその衝撃に巻き込まれて宙へと舞い上がり、そのまま二人は海へ落下したのだった。
「ば、バカな、エクスタ姫が!?」
「オルガス姫ぇえええ!?」
「な、なんてことにゃ?!」
「あの、かわいこくん……こんなに……」
帝国、いや、世界最強のスケヴェルフ大帝国の王族にして最強の血筋である二人が、二人がかりで男一人に手も足も出ずにふっとばされた。
その事実に部下の兵士たちは呆然とし……
「ちょ、ヴァカすごぉ!」
「……子種欲しい! すごい!」
タックの仲間になると宣言したヴァギヌアとアマクリは興奮を抑えられず、そしてそれは同様に……
その光景を見ていた港町の住民たちの心に熱い火が灯った。
「す、すげえ、すごい! お、おおお……おおおおっ!」
「エルフに……人間の男が……女にッ!」
「しかも、二人を一度に相手して……」
男が女の、しかも大陸を支配するエルフをふっとばした。
その事実は、これまでエルフの非道な行いにただ涙を流しながら泣き叫んでいた港町の住民たちにも火をつけた。
「ッ、お、男が戦っているのに、女のあたいは何をやってんだ」
「僕と同じ男が……戦っているのに……」
「私たちが……」
「俺たちが……」
今、襲われているこの街は、住民たちは、そもそも誰だ? そう、自分たちだ。
なのに目の前では、人間の男が戦って、本来あり得ない現実をひっくり返した。
そんな状況で、自分たちは何をやっている?
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」」」」」
そう思っていた者たちが、男も女も関係なく、勇ましく吼えて立ち上がるには、十分すぎる理由だった。
「すごい盛り上がり……。とりあえずこれで、ひと段落……あれ?」
住民たちの唸り声をその身に受けながら、一方でタックはオルガスとエクスタをふっとばした海を見て首を傾げた。
ふっとばしはしたが、バットで二人を直接叩いたわけではないので、そんな怪我と化しているわけではないはずだと。
だが、それでも二人は一向に海から顔を出さない。
「やば! まさか溺れてたり? いけない!」
ケガはなくとも、衝撃で気を失ったのかもしれない。
そう思ったタックは慌てて海に飛び込んだ。
そして、タックは学ぶことになる。
溺れて意識を失って、呼吸が見られない者に対して行う、この世界の蘇生方法を。
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