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第八章
第276話 どーでもいいからまた宴会
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俺は行かない。アルーシャ、バルナンド、アルテアたちの事情は分かるが、もうこれ以上の寄り道はたくさんだ。
これから本格的に俺たちのやるべきことをやるのなら、そんなもん無視した方がいいに決まってる。
「あっ、でもさ、ヴェルト君。そのサミットで世界の要人どもを始末したり人質取ったりしたら、世界征服にパナイ近づくんじゃね?」
「テメエは何をサラッとテロ発言してんだコラァ! 三種族の主要な連中が集まるところに、殴り込みなんて出来るか!」
いや、でも自分で言ってて、このメンツなら出来そうな気もしてくるから怖いな。
「まあ、確かに世界に名を売るならそれも手かもしれぬが、小生は反対だゾウ。それだけの行事であれば、集まるのは名だたる英雄ばかりでなく、兵の数も半端ではあるまい」
「その通りじゃ。少なくとも、亜人はワシらシンセン組にエロスヴィッチの軍、さらにはユーバメンシュまでおるのじゃ。兵数も数万に及ぶ」
「ジーゴク魔王国は、六鬼大魔将軍、さらにゼツキも行くだろう」
「お兄ちゃん、多分マーカイ魔王国は、父………いや、『魔王ノッペラ』に、『第一王子セルロス』が行くはずだよ」
だから、行かねえよ。何をそんな、戦力分析みたいなのをやり始めてんだよ。
今の俺にはそんな危険に無闇に飛び込めねえ理由が、ここにあるだろうが。
「あのな~、お前ら、考えろよ。そーんなテロなんてアホくせえこと出来るか。見ろ、俺は今……子連れなんだぞ?」
コスモスを抱っこして掲げる。そう、これが居る限り、そんな物騒なことできねえよ。
俺たちのやるべきことは、神族大陸に拠点を作り、その領土を広げていくこと。
そして勢力を拡大して、人類、魔族、亜人を大陸外へと追いやること。
「今、俺らがやるのは、もう名前を上げることでも、暴れまわることでもなく、拠点作って勢力拡大だろうが」
「まあ、ヴェルト様! 拠点を作る………それは、腰を据えて私たちの住む家づくりということですね? 素敵です! ねえ、コスモス、パッパがおウチ作りするんですって。あなたはどんな家に住みたい?」
「パッパ、ほんと! あのね、コスモスね、お庭にブランコとお花畑欲しい!」
まあ、それぐらいは作ってやる。パッパに任せろ………じゃなくてだ。
「いや、まあ、そこまでエルジェラの言ってることもズレてねえか。とにかくだ、俺はそんな、『仲良くなるためにはどうしましょう(腹の底では何を考えてんだ?)』みてーな会議に興味ねえよ。いつまでもブラブラしてねえで、とりあえず拠点作ってこれからのこと考えようぜ」
「ぎゃはははははは、ブラブラするのはやめようだって! ヴェルトのやつ、なんだか随分丸くなってんじゃん! これってあれ? 子供出来てコーセーしたとかってやつ? ドーテーのくせにオトナじゃん」
「アルテア! 俺もキャラじゃねえのは分かってるが、なんかもうテメェら全員ほうっておくと何しでかすか分からねえから、俺が常識発言してんじゃねえか!」
「なんや、あんさん。もっと色んなとこ回らんのか。つまらんな~。家庭持って安定思考になったんか?」
「じゃなくて、俺は今、至極当たり前のことを言ってんじゃねえかよ!」
「ふん。リーダーヅラして、騒ぐな、ゴミめ」
「ケツ出せ、ユズリハ!」
「安心しろ。コスモス専用の遊具はこの俺様が作ってやる」
「いいのか? チーちゃん、お前はそれで本当にいいのか? ってか、魔王作成の遊具って、物凄くコエーんだけど」
こいつら、バラバラすぎる。いや、つーか、自由すぎる。
やべえ。戦いだとこれ以上ないぐらい頼もしいものの、日常生活でこいつら全員を捌くのはありえねえぐらいメンドクセーぞ。
こんなんでこれから先やっていけるのか?
「あ~、アルーシャ、テメェもなんとか言え。つか、お前が一番こん中でまともな………」
俺一人じゃ手に負えないと思ってアルーシャを見るが、こいつは一人で頭を抱えて………
「みんな、多分、すごく心配しているわよね。そうよね、ドレミファもソラシドもギャンザも、そしてみんなにも何も言わずに私は消えたのだから。世界のため、人類のために、そして帝国のためにと捧げたこの身を、ただ自分だけの正義のために動くことにして、兄さん達にも何も言わず………レヴィラルやヒューレとも、死んだ仲間たちの死を犠牲しないように最後まで戦うことを誓い合ったのに………、そして、そうやってようやく新たな時代の幕開けを目指して計画したサミット。まだ始まりで長い道のりになるかもしれないけど、ようやく世界が動き始める第一歩として迎えるつもりだったのに、私は何をやっているのかしら? でも、聖王の真実を知ってしまった以上、ハリボテの友好ごっこをしているわけにはいかないのも事実。だからこそ、ヴェルトくんたちの行動に賛同したというのは、色恋を抜きにしても、私は自分なりに正しい選択をしたと思っているわ。でも、だからと言って、今度のサミットを放置していいかと言われれば、それも微妙なところね。更に、バルナンド君やアルテアさんも、亜人族にとっては重要な存在。彼らまで参加しないとなると、せっかくのサミットに余計な影を落とすことになるわ。それと、兄さんとお父さんについてもそう。私が行方不明のままだと、心配性の二人が集中できない可能性もあるし、やっぱり安心させる意味でも一度私が無事でいることとを報告しに行くべきかしら? そう、兄さんとお父さんに、私は元気でいることと、婚約者を報告する意味でも。でも、エルジェラ皇女とコスモスちゃんの二人がいながら、そんなこと堂々と宣言していいのかしら? あら? でも、このサミットでの内容や状況は全世界に当然知られるわけよね? なら、この場で私が先んじて婚約発表をすればどうなるのかしら? 確かにエルジェラ皇女とコスモスちゃんが、ヴェルトくんの家族であるというのは三人の間では事実。だけど、まだ世界的には公式に認められているわけではないわ。そう、天空族の一部と、その場にいたマーカイ魔王国とラブ・アンド・ピースたちには知られてしまったけれど、それが世界に広まるにはまだ時間がかかるはず。ならば、その前に行動を起こしてしまえばどうかしら? そうなると、エルジェラ皇女でも、ましてや他の子でもない。アルーシャ・アークラインの婚約宣言と婚約者の存在が、全世界に知れ渡ることになるわ。欲を言えば、その場で物的証拠でも突きつけられればベストなのよね。でも、今からどんなに頑張ってもサミットの日までに子供を産むことも妊娠することもできるわけないわ。婚約指輪は簡単に用意できるけど、やはり子供よね。子供………できれば、男の子! 男の子なら次世代の世継ぎということで………いえ、この際贅沢は………ッ!」
そして、アルーシャはキリッとした顔を上げて、マッキーを見た。
「マッキーくん。あなたはよく色々なものを開発しているわね。その中に………子供を………その………」
「アルーシャちゃんは俺のこと何だと思ってるの? 最後まで怖くて聞けないよ。つか、ボケだよね? マジじゃないよね? パナイ怖いよ? パナイ引くよ? パナイ重いよ? パナイヤンデレてるよ?」
「ゴラアアアアア、ドブス! 今、サラッと男の子を生みたいとか言ったが、何を血迷ったことをホザイてやがる! 生むなら女にしろ! それなら俺が全力で協力してやる! あのクソガキを身動き取れないようにベッドにくくりつけて、テメエにプレゼントしてやる!」
ダメだこいつら。早く何とかせんと。
「おい、アルーシャ姫はああいう人だったのか? 悪いが、帝国の将来が不安だな。才色兼備で非の打ち所のない姫だと思っていたが」
「ああ、俺も驚いてるよ」
かなり呆れた顔で呟くウラに、俺は全面的に同意した。
「つか、真面目な話は抜きにして、今日も騒ぐっしょ! 一番カー君、二番コスモスちゃん、どうぞっしょ! 今日は朝まで騒いで、明日の旅立ちに向けて決起集会っしょ! 明日は、アルテアちゃんとバルナンド君ともお別れだし、じゃんじゃんいくっしょ! アルーシャちゃんも?」
「ちょっと、私は別れないからね!」
さっきまでのサミット云々の話をすっかり忘れてしまった俺の仲間たちは、既に二夜続けてのどんちゃん騒ぎに入っていた。
「ラブ・アンド・ピースたちから酒もたんまりもらったっしょ! んじゃ、ちゃっちゃとやろーじゃん!」
いつの間に…………
「ウラ姫様、なんか部下たちが勝手に盛り上がり始めましたが、どうするでありますか?」
「は~~、もういい。別に会場までそれほど時間もかからんし、今日は遅い。出航は明日にしよう」
既に日が沈み始め、ここは一次休戦ということで、俺たちの他、ラブ・アンド・ピース、天空族は、島に腰を下ろして炊き出しの準備に入っていた。
これから本格的に俺たちのやるべきことをやるのなら、そんなもん無視した方がいいに決まってる。
「あっ、でもさ、ヴェルト君。そのサミットで世界の要人どもを始末したり人質取ったりしたら、世界征服にパナイ近づくんじゃね?」
「テメエは何をサラッとテロ発言してんだコラァ! 三種族の主要な連中が集まるところに、殴り込みなんて出来るか!」
いや、でも自分で言ってて、このメンツなら出来そうな気もしてくるから怖いな。
「まあ、確かに世界に名を売るならそれも手かもしれぬが、小生は反対だゾウ。それだけの行事であれば、集まるのは名だたる英雄ばかりでなく、兵の数も半端ではあるまい」
「その通りじゃ。少なくとも、亜人はワシらシンセン組にエロスヴィッチの軍、さらにはユーバメンシュまでおるのじゃ。兵数も数万に及ぶ」
「ジーゴク魔王国は、六鬼大魔将軍、さらにゼツキも行くだろう」
「お兄ちゃん、多分マーカイ魔王国は、父………いや、『魔王ノッペラ』に、『第一王子セルロス』が行くはずだよ」
だから、行かねえよ。何をそんな、戦力分析みたいなのをやり始めてんだよ。
今の俺にはそんな危険に無闇に飛び込めねえ理由が、ここにあるだろうが。
「あのな~、お前ら、考えろよ。そーんなテロなんてアホくせえこと出来るか。見ろ、俺は今……子連れなんだぞ?」
コスモスを抱っこして掲げる。そう、これが居る限り、そんな物騒なことできねえよ。
俺たちのやるべきことは、神族大陸に拠点を作り、その領土を広げていくこと。
そして勢力を拡大して、人類、魔族、亜人を大陸外へと追いやること。
「今、俺らがやるのは、もう名前を上げることでも、暴れまわることでもなく、拠点作って勢力拡大だろうが」
「まあ、ヴェルト様! 拠点を作る………それは、腰を据えて私たちの住む家づくりということですね? 素敵です! ねえ、コスモス、パッパがおウチ作りするんですって。あなたはどんな家に住みたい?」
「パッパ、ほんと! あのね、コスモスね、お庭にブランコとお花畑欲しい!」
まあ、それぐらいは作ってやる。パッパに任せろ………じゃなくてだ。
「いや、まあ、そこまでエルジェラの言ってることもズレてねえか。とにかくだ、俺はそんな、『仲良くなるためにはどうしましょう(腹の底では何を考えてんだ?)』みてーな会議に興味ねえよ。いつまでもブラブラしてねえで、とりあえず拠点作ってこれからのこと考えようぜ」
「ぎゃはははははは、ブラブラするのはやめようだって! ヴェルトのやつ、なんだか随分丸くなってんじゃん! これってあれ? 子供出来てコーセーしたとかってやつ? ドーテーのくせにオトナじゃん」
「アルテア! 俺もキャラじゃねえのは分かってるが、なんかもうテメェら全員ほうっておくと何しでかすか分からねえから、俺が常識発言してんじゃねえか!」
「なんや、あんさん。もっと色んなとこ回らんのか。つまらんな~。家庭持って安定思考になったんか?」
「じゃなくて、俺は今、至極当たり前のことを言ってんじゃねえかよ!」
「ふん。リーダーヅラして、騒ぐな、ゴミめ」
「ケツ出せ、ユズリハ!」
「安心しろ。コスモス専用の遊具はこの俺様が作ってやる」
「いいのか? チーちゃん、お前はそれで本当にいいのか? ってか、魔王作成の遊具って、物凄くコエーんだけど」
こいつら、バラバラすぎる。いや、つーか、自由すぎる。
やべえ。戦いだとこれ以上ないぐらい頼もしいものの、日常生活でこいつら全員を捌くのはありえねえぐらいメンドクセーぞ。
こんなんでこれから先やっていけるのか?
「あ~、アルーシャ、テメェもなんとか言え。つか、お前が一番こん中でまともな………」
俺一人じゃ手に負えないと思ってアルーシャを見るが、こいつは一人で頭を抱えて………
「みんな、多分、すごく心配しているわよね。そうよね、ドレミファもソラシドもギャンザも、そしてみんなにも何も言わずに私は消えたのだから。世界のため、人類のために、そして帝国のためにと捧げたこの身を、ただ自分だけの正義のために動くことにして、兄さん達にも何も言わず………レヴィラルやヒューレとも、死んだ仲間たちの死を犠牲しないように最後まで戦うことを誓い合ったのに………、そして、そうやってようやく新たな時代の幕開けを目指して計画したサミット。まだ始まりで長い道のりになるかもしれないけど、ようやく世界が動き始める第一歩として迎えるつもりだったのに、私は何をやっているのかしら? でも、聖王の真実を知ってしまった以上、ハリボテの友好ごっこをしているわけにはいかないのも事実。だからこそ、ヴェルトくんたちの行動に賛同したというのは、色恋を抜きにしても、私は自分なりに正しい選択をしたと思っているわ。でも、だからと言って、今度のサミットを放置していいかと言われれば、それも微妙なところね。更に、バルナンド君やアルテアさんも、亜人族にとっては重要な存在。彼らまで参加しないとなると、せっかくのサミットに余計な影を落とすことになるわ。それと、兄さんとお父さんについてもそう。私が行方不明のままだと、心配性の二人が集中できない可能性もあるし、やっぱり安心させる意味でも一度私が無事でいることとを報告しに行くべきかしら? そう、兄さんとお父さんに、私は元気でいることと、婚約者を報告する意味でも。でも、エルジェラ皇女とコスモスちゃんの二人がいながら、そんなこと堂々と宣言していいのかしら? あら? でも、このサミットでの内容や状況は全世界に当然知られるわけよね? なら、この場で私が先んじて婚約発表をすればどうなるのかしら? 確かにエルジェラ皇女とコスモスちゃんが、ヴェルトくんの家族であるというのは三人の間では事実。だけど、まだ世界的には公式に認められているわけではないわ。そう、天空族の一部と、その場にいたマーカイ魔王国とラブ・アンド・ピースたちには知られてしまったけれど、それが世界に広まるにはまだ時間がかかるはず。ならば、その前に行動を起こしてしまえばどうかしら? そうなると、エルジェラ皇女でも、ましてや他の子でもない。アルーシャ・アークラインの婚約宣言と婚約者の存在が、全世界に知れ渡ることになるわ。欲を言えば、その場で物的証拠でも突きつけられればベストなのよね。でも、今からどんなに頑張ってもサミットの日までに子供を産むことも妊娠することもできるわけないわ。婚約指輪は簡単に用意できるけど、やはり子供よね。子供………できれば、男の子! 男の子なら次世代の世継ぎということで………いえ、この際贅沢は………ッ!」
そして、アルーシャはキリッとした顔を上げて、マッキーを見た。
「マッキーくん。あなたはよく色々なものを開発しているわね。その中に………子供を………その………」
「アルーシャちゃんは俺のこと何だと思ってるの? 最後まで怖くて聞けないよ。つか、ボケだよね? マジじゃないよね? パナイ怖いよ? パナイ引くよ? パナイ重いよ? パナイヤンデレてるよ?」
「ゴラアアアアア、ドブス! 今、サラッと男の子を生みたいとか言ったが、何を血迷ったことをホザイてやがる! 生むなら女にしろ! それなら俺が全力で協力してやる! あのクソガキを身動き取れないようにベッドにくくりつけて、テメエにプレゼントしてやる!」
ダメだこいつら。早く何とかせんと。
「おい、アルーシャ姫はああいう人だったのか? 悪いが、帝国の将来が不安だな。才色兼備で非の打ち所のない姫だと思っていたが」
「ああ、俺も驚いてるよ」
かなり呆れた顔で呟くウラに、俺は全面的に同意した。
「つか、真面目な話は抜きにして、今日も騒ぐっしょ! 一番カー君、二番コスモスちゃん、どうぞっしょ! 今日は朝まで騒いで、明日の旅立ちに向けて決起集会っしょ! 明日は、アルテアちゃんとバルナンド君ともお別れだし、じゃんじゃんいくっしょ! アルーシャちゃんも?」
「ちょっと、私は別れないからね!」
さっきまでのサミット云々の話をすっかり忘れてしまった俺の仲間たちは、既に二夜続けてのどんちゃん騒ぎに入っていた。
「ラブ・アンド・ピースたちから酒もたんまりもらったっしょ! んじゃ、ちゃっちゃとやろーじゃん!」
いつの間に…………
「ウラ姫様、なんか部下たちが勝手に盛り上がり始めましたが、どうするでありますか?」
「は~~、もういい。別に会場までそれほど時間もかからんし、今日は遅い。出航は明日にしよう」
既に日が沈み始め、ここは一次休戦ということで、俺たちの他、ラブ・アンド・ピース、天空族は、島に腰を下ろして炊き出しの準備に入っていた。
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