【R18】異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと~基礎の【浮遊魔法】をとことん極めてついでに世界征服

アニッキーブラッザー

文字の大きさ
上 下
277 / 290
第八章

第273話 そして家族がまた一人

しおりを挟む
「メチャクチャだね…………君たちは…………」

 立ち去るマーカイ魔王国の船を見送りながら、黙っていたラガイアがようやく口を開いた。

「ああ、俺もよくそう思うぜ」
「まったく……でも……君たちを見ていると、何だか混血がどうとか、サイクロプスなのに瞳が二つあるとか……そんなことをコンプレックスに感じていた自分がバカらしくなるよ」
「そうか? まあ、俺は純粋な人間だから、そこら辺の感覚はよくわかんねーけどな」

 だからそこ、マッキーとアルテア、「ジュンスイ? ちょーウケる」とか茶々入れるんじゃねえよ。

「僕は……僕の指揮の下で……帝国で大勢の犠牲者を出した」
「ん?」
「僕はこれからどうすれば? 君たちは僕に何を求めるんだい?」

 えっ? 何を求めるとか、そんな真剣な顔をされても……

「君たちは世界をどうこうとか色々と言っているが、その中で僕にどのような役割をやらせるんだい?」
「いや……そんなこと言われても特に考えてねえよ」
「…………はっ?」
「つーか、言ったろうが。お前には借りもあったし、俺も個人的にテメエが気になった。ただ、それだけだ。それを言うならここに居るメンツは誰一人、なんか役割があって集まったわけでもねーしな」

 俺の言葉がラガイアにどれだけ届くかなんて分からねえ。こいつの人生の苦しみなんて全然知らねえからな。
 だから俺が言えるのは、せーぜい肩の力を抜かせてやるぐらいのこと。

「まっ、役割欲しいなら、ダチにでもなろうぜ」
「……ダ……チ?」
「それこそ、マッキーやチーちゃんぐらいに開き直ってふてぶてしくしねーと、こっから先やってけねーぞ?」

 ここに居る連中それぞれ、紐解いていけば、それなりに複雑な縁が絡みつく。

「つか、アルーシャちゃん、パナイ! それ、パナイ怖いよ! なに、コスモスちゃんを洗脳しようとしてるの!」
「ゴラアア、ドブスが! テメェ、コスモスになんつうこと言ってやがるんだ! 生むのは腹違いの妹一択に決まってんだろうが、ゴラア!」
「HEY、ミスター・チーちゃん、それはクレイジーだ」
「つか、アルーシャ、マジじゃん。お堅いやつも色ボケするとマジボケするからチョーウけるし。じゃ、プレゼントでこれやるよ。あたしが常備している乙女のエチケット♥」
「な、なによ、アルテアさん……これって……コンドー……ムッ! な、なんてものを渡してるのよ、バカァ! 信じられないわ、あなた品がなさすぎるわ! だいたい、これを使ったら子供ができないじゃない! 私は子供が欲しいの!」
「アルーシャさん。ツッコミどころが既に変だと思うのはワシだけじゃろうか?」
「前々から思っていたが、アルーシャは、本当にあの格式高い帝国の姫君なのか、疑わしいゾウ」

 カー君の元部下は、恐らく俺の親父とおふくろを殺した奴だ。
 カー君に引導を渡したのは、アルーシャの兄貴だ。
 ウラの父親と母親に手をかけたのは、アルーシャの部下だ。
 アルーシャの故郷を襲撃したのは、マッキーとラガイアだ。
 チーちゃんはエルジェラの故郷を襲撃した。
 マッキーの作った組織が、バルナンドの家族を奪った。
 キシンはアルーシャやフォルナたちの居た人類大連合軍を半壊させた。

「まあ! アルーシャ姫は、コスモスのために弟か妹を作ってくださるのですね。なんとお優しい。頑張ってくださいね」
「そして、エルジェラ皇女のその余裕! それは、ズレているの? それとも、余裕のつもりなのかしら!」

 そうさ、そんなもん挙げてきゃキリねーし、イチイチそれ全部を掘り起こして弔い合戦したって、今度は自分が恨まれるだけだ。

「しっかし、あんさんの娘さん、えっらいめんこいの~」
「おお~……この世に……私以外に可愛い存在を初めて見たぞ……」
「えへへ~、マッマ! コスモスほめられた~!」

 ん? 唯一誰とも複雑な絡みがねえのは、アルテアとジャックポットとユズリハぐらいか? これはこれで奇跡だな。

「僕は……狭い世界にいたってことかい? ヴェルト」
「こらこらこら。オメーは俺やウラよか、三つも歳下なんだろうが。呼び捨てとか生意気だろ?」
「ッ、な、なにをする……」
「くはははははは」

 なんか、構いたくなる後輩が出来たような気分だ。
 そうだ、バーツやシャウトと居たときの感覚に似てるな。
 ついつい、構っちまう。
 俺は笑いながらラガイアの肩組んで、髪をクシャクシャにしてやった。
 すると……

「わ、分かったよ、呼び捨てじゃなければいいんだろ? でも、……なんて呼べば……」
「あ? ジョーダンだよ、あんま真面目に捉えるな。好きなように呼べよ」
「好きなように? ……じゃ……じゃあ……」

 そう言うと、ラガイアは何か戸惑った様子を見せて俺をチラチラ見ながら、ゴニョゴニョしてる。
 なんだ? 何が言いたいんだ?
 そう思って耳を傾けたとき、ラガイアは思いもよらぬ呼び方をした。
 恥ずかしそうに、ちょっと唇を尖らせて


「………………お……………………お兄ちゃん………………」


 ……かわ…………い…………


「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 その瞬間、俺の中でなんか稲妻がかけぬけた!

「も、もっかい言えええええええええええええええ!」
「ッ! あ、その…………やっぱ、ダメだったかい? その、今まで故郷では、兄は何人も居るのに、そう呼ばせてもらえなかったから…………」
「いええええ! いいからもっかい言え!」
「…………お、お兄ちゃん?」
「弟よおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 親父、おふくろ、喜べ。
 俺に、娘が出来た。
 なんか、弟もできた。
 家族が増えたぞ!

「ッ、え、え? ど、どうしたのよ、ヴェルト君!」
「わお、これは……ヴェルトくん……意外とああいうのにパナい弱いんだ」
「確かに、ここに来る前に、兄ちゃんと呼ばれて泣きそうだったゾウ」

 そうかもしれねえ。
 というより、俺はこの世界に生まれてから、ずっと同世代のやつらは弟、妹のような感覚だった。
 フォルナもシャウトもバーツも、そしてウラですら。
 でも、あいつらにとって俺はタメだから、敬うこともねえし、タメ口呼び捨ては当たり前。
 それが、ハナビが生まれてから初めて「兄ちゃん」て呼ばれるようになり、ついには「お兄ちゃん」と呼ばれるようになった。
 なんか、こー、胸の奥底が熱くなるような感覚だった。


「まあ! とっても素敵です。では、ラガイアさんがヴェルト様の弟ということは、私の義理の弟にあたるわけですね? では、私のことも、どうぞ姉とお呼びください」

「ちょっ、ずるいわよ、エルジェラ皇女! 特権乱用よ! ラ、ラガイア王子! その、私も末っ子だからあなたの気持ちは分かるわ。これからは、何でも相談して。なんなら、私のことも、その、お姉ちゃんと呼んでくれても…………」

「いや、アルーシャちゃん。帝国のお姫様をマーカイ魔王国の王子がお姉ちゃんとか呼ぶのは色々パナイまずくない? 君の故郷襲撃した張本人だよ? あっ、それは俺もか♪ ひはははは」

「ふっ、ノープロブレムだ、ミスター・マッキー。そうだ、プリンス・ラガイア。ならば、ミーのことはブラザーとコールしてくれ」

「じゃあ、ワシはおじいちゃんで良いぞ」

「うおおっ、バルナンドが珍しくノリでボケたじゃん!」

「小生は…………」

「なら、ワイは当然、兄貴や!」

「ゴミ王子……気安く私の名前を呼んだら殺す」

「男は全員死んでよし! 俺様を兄と呼んでいいのは十二歳以下の女までだ!」

「マッマとパッパのおとうと~……えっと、じゃあ、ラっくんだ!」


 気づけば全員なんか便乗したり、馬鹿な話をしたり、まったく本当に笑えるよな。
 そう思ってラガイアを見ると、口元を抑えながら、頬が破裂寸前まで膨らんでいた。
 それは……


「ぷっ、…………くく…………」


 ラガイアのような仏頂面なガキには何年ぶりかもしれない…………


「あは、ははははははははははははははは!」


 堪えきれないほどの笑いだった。
 それを見て、俺たちも何か一緒になってまた笑った。
 年相応に笑うラガイアが、初めて俺たちに無防備な心を曝け出したような気がした。


「まったく……我々が、種族の壁を越えての任務で友好を強調とか、そういう試みがアホらしくなるな……お前たちを見ていると」


 輪の中に入らずに、ただ離れた場所から見ていたウラがそう言った。
 だが、俺は心の中でツッコミを入れた。
 つか、お前だってそうだろと。
 俺と、ファルガとクレラン、そしてドラやムサシ、エルジェラとコスモス。
 あの時の俺たちは正にそうだったじゃねえかと。

「………………あっ………………」

 その時、ようやく俺は大事なことを思い出した。

「ウラ…………」
「むっ? なんだ?」

 ダンガムとかで色々ブッ飛んでたが、コスモスが言っていた「オネーチャン」。
 そして……

「コスモスにも聞くことはあるが、まずはお前に聞きたい」

 あいつのこと……ひょっとしたら……「あいつ」と「オネーチャン」が結びつくかもしれないから。


「ドラがどこに居るか知ってるか?」


 俺からその名前が出たのが意外だったのか、ウラは驚いた表情をしていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

Link's

黒砂糖デニーロ
ファンタジー
この世界には二つの存在がいる。 人類に仇なす不死の生物、"魔属” そして魔属を殺せる唯一の異能者、"勇者” 人類と魔族の戦いはすでに千年もの間、続いている―― アオイ・イリスは人類の脅威と戦う勇者である。幼馴染のレン・シュミットはそんな彼女を聖剣鍛冶師として支える。 ある日、勇者連続失踪の調査を依頼されたアオイたち。ただの調査のはずが、都市存亡の戦いと、その影に蠢く陰謀に巻き込まれることに。 やがてそれは、世界の命運を分かつ事態に―― 猪突猛進型少女の勇者と、気苦労耐えない幼馴染が繰り広げる怒涛のバトルアクション!

処理中です...