275 / 290
第八章
第271話 それが正解!
しおりを挟む「ヴぇ、ヴェルト君………そ、それって……ぷ、ぷろ、ぷろぽ、ぷろぽ……ち、違うわよね? あ~、びっくりした。そ、そうよね。今のは、ただの例えであって、べ、別に、ヴェルト君と、そのね、エルジェラ皇女が……ねえ、そうでしょ!」
アルーシャ、やかましいので黙ってください。
「ちょっと、ま、ちょ、待て! 待て! 私も、その、お前のことを忘れていると言ったが、では、教えろ! 私とお前はどういう関係だったんだ! なあ、どうなんだ! 答えろ! そんな、思い出しても居ないうちに、そんな、こ、婚約のような話を進めるな! おい!」
ワリ……ウラ……とりあえず、今は緊急事態なんでな。
「うおおおおおおお、パナ! パナ! ヴェルト君の子供をダシに使ったドサクサプロポーズ!」
「はあ、マジじゃん! あいつ、神乃とかそういうのぶっとばして、意外なルート行ったじゃん! じゃあ、今日からあのエルっちの胸は、ヴェルトの自由じゃん!」
「いや、まだ受け入れると決まったわけではなさそうだゾウ」
「ヴェルト! 結婚パーティーでの、フレンド代表の歌は、ミーに任せてくれ!」
「おお、あんさん、すごいことするやないか!」
「おい、あのゴミ、私が寝ている間に何をした? なぜ、乳お化け女にプロポーズしている?」
もういいよ、プロポーズで。
本当に全てが終わったら、フォルナとウラとママにぶっ殺されればいいだけだから。
「おいおいおい、あの男、マジでどうなってんの? これって、地上世界で言う、あれだよな? エルジェラが受け入れたら、今度からエルジェラはあの男のチンチンとイチャつけるってことだよな!」
「まさか、こんなことになるとは……」
天空族も状況忘れて、キャーキャー顔を赤くして大はしゃぎ。
「な、な、なんなのだ! い、一体、わ、我々は、どうなっているのだ? ガリガ!」
「ステロイ兄さん、わ、た、私にも何がどうなっているかは……いつの間にか魔王チロタンも復活して、コスモス姫が暴走して……さらにはエルジェラ皇女がプロポーズされているとか……」
ボコボコにやられていたサイクロプスたちも、もはや状況が理解できずに大混乱中。
まあ、色々と緊迫していて切羽詰った状況の中で、身内のゴタゴタに巻き込んで悪いが、まあ、すまんとしか言いようがなかった。
すると……
「パッパにしてくれと言われましても……困ります」
「へっ?」
あれ? エルジェラに俺は断られた? いや、空気的には良い感じであったけど、やっぱ初対面じゃ無理か?
いや、そうではない。
エルジェラは少女のように子供っぽく、プクッと頬を膨らませて。
「だって……あなたはもう、とうにあの子のパッパではないですか……今更違うと言われても、困るんですからね?」
エルジェラらしからぬ悪戯のこもった笑み。
だがその瞳には涙を溜めている。
そして、エルジェラは一度頷いてニッコリと微笑んだ。
「あの子は………私と、あなたの子供です。……パッパ……いつまでも」
エルジェラはそう言って俺に右手をチョコンと差し出した。
俺は少し顔が熱くなっていると自覚しながらも、その手を左手で受け取った。
「いくぜ、マッマ!」
「ええ、パッパ!」
俺たちは飛んだ。曖昧にしていたことを本物にして。
「う~~~~、パッパの、バッカ! バッカ! いじわる、うそっこ、うそつきー!」
だが、まだ状況に気づいていないコスモスは、ダンガムの自由が奪われながらも身を捩り、暴れ、そして更なる攻撃を放つ。
ダンガムから、なんか板状の物質が無数に飛び出して、その板が空中で縦横無尽に飛行しながら、なんとビームを放った。
「うおっ!」
「ヴェルト様、気をつけて!」
なんつー器用なことまで出来るんだよ、コスモス!
「うおおお、何アレ! あぶな! マッキー、あれなんなん?」
「何言ってるの、アルテアちゃん! あれは……ファンネ○ビームっしょ! ファン○ル! 男のロマン、ファ○ネル!」
知らねえよ、何だよ、その何とかビームって!
「パッパは……パッパは、マッマとコスモス、キライなんだ! う、う~~~、やー!」
空中で四方から放たれるビーム。やべえ、食らったらまずいぞ、これ!
だが、全部なんてとても回避しきれねえ、
「やべ!」
「コスモス、話を聞いて!」
当たる! そう思った、その時だった!
「なにをボヤっとしてんだよ、青春夫婦が! テメエらになんかあったら、コスモス泣くだろうがボケが!」
その強靭な肉体で、俺たちの代わりにビームを食らっているチロタンが、俺たちを覆いかぶさるように守っていた。
「チロタン……テメエは……」
「チロタンじゃねえ。俺様は、チーちゃんだ!」
その時不覚にも、なんか物凄い男前な顔で笑うチーちゃんに、目を奪われちまった。
だが、この道を守ってくれるのは、こいつだけじゃねえ!
「宮本剣道・乱回転切り!」
宙に浮かぶ球体を次々と切り裂いていく、バルナンド。
「ゆけ、ヴェルト君。ワシにはできなかったが、君は家族を守るのじゃ」
その剣は、その瞳は雄弁と語っていた。「後ろは任せろ」と。
そして……
「何をしているんだい、まったく」
正面から撃たれたビームが、誰かに防がれた。それは……
「ラガイア……お前、なんで……」
「さあね。理由なんて、考えるのも難しい」
このガキ……
「ただ、素直にこの物語を最後まで見たくなった」
っ たく、どいつもこいつも……
「魔極神空手・魔空拳砲!」
「アイスガトリング!」
天空族たちに持ち上げられながら、拳と氷の弾丸を飛ばして球体を打ち落とし、俺たちの隣に現れたのは、二人のお姫様。
「ウラさん! アルーシャ姫まで!」
危険を顧みずに助太刀……ん? なんか、あんまり面白くなさそうな顔してるな、二人とも。
「おい、私たちも行くぞ。なんかよく分からんが、ここで遅れると、何だかまずい気がする……」
「エルジェラ皇女。あまり、二人だけで話を進められると困るので、私も同行していいかしら?」
おい、ウラ。なんか昔みたいな嫉妬深い顔に戻ってるぞ? アルーシャ、お前はドサクサに紛れて便乗してねーか?
まあ、もうここまで来ちまったんなら……
「う~~~~パッパ~ぁ!」
俺たちの目の前には、ダンガムの頭部。その中から、涙交じりのコスモスの声が聞こえてきた。
「コスモス、話がある」
語りかける。その瞬間、ダンガムの動きがピタリとやんだ。
「う~、う~、パッパ……マッマ……」
どうやら、俺たちが傍に居ることに気づいたようだ。すがる様な声で俺たちを呼んだ。
「コスモス。俺が……パッパが悪かったよ……お前に曖昧なこと言って、まともに答えられなかったよ……」
「パッパ~…………」
「これから……パッパは……色んな世界を回らなくちゃならねえ……パッパは……やらなきゃならないことがあるんだ……」
「う~、う~、やー! ききたくないよー! やーったら、やー!」
「全部終わったら迎えに行くから! そしたら、今度こそずっと一緒だ! 今度こそ、俺はコスモスから離れたりしねーから! だから、それまではマッマと一緒に俺の帰りを―――」
今はやることがある。だから、連れて行くわけにはいかな……
「はぐっ!」
その時、後頭部に衝撃が……って、え?
「そうじゃないであろう、ヴェルト君!」
「ワシ、『家族を守れって』そういう意味で言ったのではないぞよ!」
「へい、ヴェルト! ロックじゃない!」
「ヴェルト君、パナイ間違ってる! ヘタレっしょ!」
「つーか、ありえねえじゃん! この状況で『また今度』とか、どんだけだし! ヘタレヴェルトのヘタヴェル!」
「あんさんにしては、らしくないでー!」
「ゴミ……焼却されればいいのに……」
なんか、色んな残骸やら破片やらが仲間たちから俺にぶん投げられていた。
「テメエ、このクソガキ! テメエ、生意気なツラしてどこまでヘタレりゃ気が済むんだ、コラぁ!」
チーちゃんにまで罵詈雑言。
いや、それどころか……
「テメエ、地上人! それでもチンチンついてんのかよ!」
「なんとも情けない。男というのは、かくも気の利かないものだとは」
「ありえないであります! あそこまで言って、あの回答は、あんまりであります!」
「所詮、人間などこの程度なり」
「種族が違えど同じ男として、見るに耐えないでしょうが!」
あっれー? 天空族とロイヤルガードにまでボロクソ言われてるんだけど?
なんで? つか、俺は何も間違ったこと……
「こんどって……いつ?」
「コスモス……」
「こんどっていつなのっ? あした? あさって? もっとなのっ?」
あ……そういうことか……
いつなのか……か……本当に泣かせることを聞いてくる……
「やだよ~、コスモス、もうやだ! パッパいないのやだよー!」
違うな。確かにそうだ。いつかじゃ曖昧だ。まだこれじゃだめだ。
明確に、いつ、何時何分、世界が何回回ったとき?
それなら……あ~、もう分かったよ。
それなら、これで満足か!
「なら、パッパと一緒に来るか?」
「ふぇっ?」
それは、我ながらとてつもない提案というのは良く分かっている。
世界的に見て正体不明なお尋ね者やら伝説の武人などが集結しているこの集団。
保護者、臣下、同族、全てを含めた連中の公衆の面前で、俺はお姫様をスカウトしようとしてるんだから。
「パッパと………?」
「ああ、もしお前が、もうこれ以上待てないって言うなら……しばらく、ムサシやジッジ、バッバたちとは会えなくなるけど………それでもいいなら……」
「いく!」
って、はえーな。少しは迷っても……
「コスモス、パッパと一緒がいい! いっしょ! いっしょがいい! いっしょなの!」
……まっ……いっか。
下を向けば、俺の仲間、そしてチーちゃんに、天空族やロイヤルガードや他の魔族たちまでもが、なんか親指突き立てて「それで正解」みたいな顔して笑ってる。
だが、こうなると大変になっちまうな。
でもやるしかねえ。
お姫様の誘拐を始めるとするか。
「マッマもいっしょだよね?」
「え? いや、マッマは……お留守番?」
そして……
「へ? 一緒ですよ? 行くに決まっているじゃないですか! 当然です!」
え……来んの!? いいの? どうなっちゃうの!?
0
お気に入りに追加
685
あなたにおすすめの小説
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
転生したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
男女貞操逆転世界で、自己肯定感低めのお人好し男が、自分も周りも幸せにするお話
カムラ
ファンタジー
※下の方に感想を送る際の注意事項などがございます!
お気に入り登録は積極的にしていただけると嬉しいです!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あらすじ
学生時代、冤罪によってセクハラの罪を着せられ、肩身の狭い人生を送ってきた30歳の男、大野真人(おおのまさと)。
ある日仕事を終え、1人暮らしのアパートに戻り眠りについた。
そこで不思議な夢を見たと思ったら、目を覚ますと全く知らない場所だった。
混乱していると部屋の扉が開き、そこには目を見張るほどの美女がいて…!?
これは自己肯定感が低いお人好し男が、転生した男女貞操逆転世界で幸せになるお話。
※本番はまぁまぁ先ですが、#6くらいから結構Hな描写が増えます。
割とガッツリ性描写は書いてますので、苦手な方は気をつけて!
♡つきの話は性描写ありです!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誤字報告、明らかな矛盾点、良かったよ!、続きが気になる! みたいな感想は大歓迎です!
どんどん送ってください!
逆に、否定的な感想は書かないようにお願いします。
受け取り手によって変わりそうな箇所などは報告しなくて大丈夫です!(言い回しとか、言葉の意味の違いとか)
作者のモチベを上げてくれるような感想お待ちしております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる