239 / 290
第七章
第235話 ゲットだぜ
しおりを挟む「ガアアアアアアアアアアアアアア! どうした、その程度では小生を倒すことはできないゾウ! その程度で小生を打倒しようなど、片腹痛いゾウ!」
「ぐっ、ぉ、カイザーッッ!」
カー君は、どうやら問題なさそうだな。三人相手にまだまだ余力十分ってところだ。
問題なのは…………
「ひははははははははは、朝倉くん、なんか面白そうな会話してたけど、終わったかい?」
「加賀美…………」
「えっ! か、加賀美くん!」
「よ、綾瀬ちゃ~ん。女の子女の子してるね~。まっ、一歩間違えたらただのパナイ病んだ女の子だけど。あと、女の子のパンツは偶然見えるのがそそられるのであって、自分から見せても男は萎えるからね」
「え、そ、そうなの!?」
いや、それは見せてくれる相手にもよるかと思うけど……って、そうじゃない。
つか、綾瀬はもう十分変になってるだろ。と、いつの間にか観客席の手すりの上で中腰になって、俺たちの真横で加賀美が笑っていた。
「ミルコとジャックポットは?」
「地の奥底」
「はっ?」
「二人共頭突きしまくって、どんどん地面に体がめり込んだかと思ったら、どんどん地中深くへと互いに沈んでいっちゃって、さすがにパナイ俺も危なかったから、逃げてきた」
「おいおいおいおい大丈夫かよ」
「大丈夫でしょ? ほら、地の奥底からも二人の笑い声が聞こえるでしょ?」
言われて耳を澄ますと、確かに頭突きの音と笑い声が聞こえる。
お前ら、本当にアホだな。
「それでだ。加賀美、金については?」
「ん? おお、だいじょ~ぶ。レンガの札束何個もポケットに入れてきたから」
「そうか。じゃあ、ミルコのケリが着き次第、カー君にも適当に切り上げさせて、さっさと行くぞ」
あとは、ミルコ次第だ。
俺には手を出せねえが、あいつがジャックポットに伝えられるものを全て伝えられたら。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
「なんだよ、綾瀬ちゃん」
「君たち、何を考えているの? 何をやろうとしているの?」
「ふふふ~、俺を断罪した綾瀬ちゃんに教えると思う~? ましてや、君は帝国側でしょ~?」
まあ、確かに加賀美の言うとおり、いくら綾瀬とはいえ、今のこいつは人類大連合軍で光の十勇者で帝国の姫。
さすがにストレートに神族大陸行って世界征服とは言えねえな。
テキトーに誤魔化して、さっさとこの場を……
「ナーハッハッハッハッハッハッハ!」
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!」
その時、二つの笑い声とともに、地中から何かが飛び出してきた。
それは、まるで火山が噴火したかのように飛び出す巨大な火柱。
マグマだ……
「っておいおいおいおい! お前ら、どこまでやってんだこのバカ野郎! 限度ってもんがあるだろうが!」
巨大なマグマの柱は地の底から飛び出して、一気に地上へと噴水のように駆け上がる。
その巨大な熱量は、地下世界のサファリパークを一瞬で炎と化し、カーくんの成層圏の巨人と名付けられた巨木をも火で包み込んでいく。
その火柱の中で、それでも構わず笑いながら殴り合う二人の超馬鹿。
あっ、いつの間に頭突きから殴り合いに……って、気にするのはそこじゃねえ!
だが、さすがにようやく力尽きたのか、二人は拳を互の頬にぶつけたまま固まり、そのままマグマの勢いに乗って舞い上がり、そのまま勢いよく落下してきた。
「く、ふ、な、あ、あかん、こ、こいつ、つよすぎや……」
「は、雨の、なかライブ、したこと、あるが、マグマの中は、ミーもはじめてだ」
もう互いに動くことすら不可能。つか、マグマをモロに食らって原型とどめてる方がおかしすぎるだろうが。
「ちっ、しかしここは危ないぜ! おい、カー君! それまでだ、俺たちも逃げるぞ!」
「まずいわ! ギャンザ! ドレミファ! ソラシド! 三人はそのまま地上へ出て! カイザーから手を引きなさい! 今は、隊と合流して、逮捕した被疑者と一緒に避難しなさい!」
「くっ、しょ、承知しました! 姫様も早く!」
もはや地下世界は火の海だ。幸い、カー君が天井をぶっ壊してくれたおかげで、脱出は容易だろう。
だが…………
「こらこら、ちょっと待ちなって、朝倉くん。このまま天井から出たら、外にいるイエローイェーガーズに遭遇だよ?」
「はっ? いや、確かにそうかもしれねーけど、今はそんなこと気にしている場合じゃねーだろうが」
「チッチッチ、村田君と木村くんがこんな状態で、いくらカー君がいるからってパナイ面倒っしょ。でも、大丈夫だって、朝倉くん。ここは俺のカジノだよ? ガサ入れが会った時用に隠し通路ぐらいは用意してる」
そう言うと、加賀美は炎の森をかき分け、ある壁に手をかざした。
するとそこには、知らなければ決して気づかないほど精巧にカモフラージュされていた隠し扉となっており、扉を開くと下へと通じる階段が現れた。
「おおっ!」
「ここは、あのボルバルディエの地下トンネルに繋がってる、俺しか知らない隠し通路。どう? パナイすごいっしょ」
さすがだな。こういうことに関しては用意周到だ。ここは素直に認め、俺は満面の笑みで気絶しているミルコとジャックポットを抱えた。
「ユズリハ。とりあえず、テメェも来い。カー君も」
「うむ、さっ、ユズリハ姫も」
「ちっ……わかった……」
とりあえずここから出て、今後のことについては無事に逃げおおせたら話し合おう。
そして、
「綾瀬……ここでお別れだ。お前は天井から逃げな」
「ッ! あ、朝倉くん………そんな………」
「あまりゆっくり話ができなかったが、まあ、なんだ? とりあえず元気そうで少しホッとしたぜ。縁があったらまたな」
その言葉に、綾瀬は唇を震わせながら、どこかすがるような表情で俺を見ていた。
何だかんだで、そんな顔をされると、少し胸が締め付けられる。
「………ひどい………なんてひどい人なの? 最後の最後に、そんなことを言うなんて………」
さすがに、このまま綾瀬と行動するのは何かと色々まずいからな。
これがベストな選択だろう。
「私だけ、のけもの………蚊帳の外………なんなのよ、何が起こっているの? いま、この世界で何が起こっているというの?」
まあ、綾瀬本人はまだ話すことや俺に聞きたいことが山ほどあるようで、随分と複雑な表情で迷っているが、こればかりは………
「ひははははははははは、ど~~~~~~~~ん」
えっ?
「ちょっ!」
「はいは~い、マジでパナイ危ないから、出入り口で止まるのやめるっしょ。はいはい、中入って~、そんで、ドア閉めちゃいま~す。ちゃんちゃん♪」
なんか、扉の前でウダウダしていた綾瀬の背中を加賀美が押して、綾瀬がこっち側へ倒れ込んだ。
そんで、なんか、そのまま加賀美は扉をガチャっと閉めやがった。
「か………加賀美………くん?」
「ひははははははは、いらっしゃ~~~い。んじゃ、さっさと一緒に逃げよっか?」
「えっ、あの、えと、あの、あれ?」
いや、なにやってんの?
「ひははは、朝倉君! 世界征服に役立ちそうな……帝国のお姫様、ゲットだぜ♪」
お前………何を、「俺グッジョブ」みたいな顔で親指突き立ててるの? いや、その親指マジでへし折りたいんだけど。
――あとがき――
綾瀬が攫われた。しかも綾瀬は逃げる気ゼロです。
0
お気に入りに追加
685
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる