【R18】異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと~基礎の【浮遊魔法】をとことん極めてついでに世界征服

アニッキーブラッザー

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第七章

第225話 地下カジノ

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「って、俺を無視してスタスタ先を行ってんじゃねえよ!」
「ゴミぃ!」

 っておい、いくな! ほっぺた引っ張り合いしている俺たちを無視して、三人は、……あっ! なんかため息はいてやがる! 
 
「くそ……あ~、つかよ、いいのかよ? このガキの親父があのシロムを破壊したんだろ? それに、その地下カジノとやらに今居ると思われるこいつの兄貴もイーサムの息子だろ? 言ってみればテロリストの家族が、親がテロした場所へ行くみたいな感じだろ?」
「ひははははは、なんか朝倉くんも常識とか考えるんだね。まっ、心配ないよ。地下カジノはあくまで独立したカジノ。シロムそのものとは関係ないからね。シロムの近くにあるってだけで、そんな常識とか、どーとでもなるんだよ」

 心配するな。まるで何も気にする様子のない加賀美は、急に足を止めて辺りをキョロキョロ見渡した。

「ん? どうした? ミスター加賀美」
「んにゃ。多分この辺りで……おっ、あったあった」

 何を探してるんだ? つか、このままシロムの中に行くんじゃないのか? 
 そう思っていたら、草原に埋まっている大岩を見つけ、駆け寄っていった。

「おい、マッキーよ。この大岩が何かあるのか?」
「おお、モチよモチ。ちょっち見てて」

 大岩の前に立ち止まる加賀美は、大岩に向かって両腕を上げて声を上げた。


「ひらけ~~~~~~~ゴマッ!」


 それはパクリだろうがッ! と言っても、元ネタを知ってるのは俺とミルコだけなんだが。
 しかし、その言葉が合図となったのか、大岩が途端に揺れだして、そして次の瞬間、動いた!

「なっ………」
「お~、アンビリーバボー」
「なんと、驚きだゾウ!」
「おっ……おお~……ちょっと面白い」

 岩が動いた場所には、地下へと続く階段が顔を出した。

「ひはははは、変わってね~な。ようこそ、諸君。天国と地獄の狭間にね」

 随分と大げさな気もするが、真っ暗でどれだけ深いかも分からない地下へと続く階段は、どう見ても地獄へ通じるようにしか見えねえぜ。

「まさか、こんなところに、こんな隠し通路があったとはな」
「ひははははは、そりゃーもう、色々と非合法なアレだからさ。連合軍の目を掻い潜るにはこれぐらいはね~」
「……しっかし、本当にこんな下にカジノなんかあるのか?」
「ああ。まあ、来な。ちょいとパナいのがあるからさ」

 加賀美の怪しい笑みが浮かび上がる中、加賀美は暗闇の世界に意気揚々と下りていった。
 別に、ダンジョンに入るとか、モンスターが出てくるとか、そういう展開があるわけじゃねえのに、何だか嫌な予感がする。
 そして、その予感は、顔を顰めるユズリハの一言で、余計に大きくなった。

「…………血の匂い……」

 いや、カジノだよな? なんでカジノがある場所に血の匂いが漂ってくるってんだよ。

「う~む、確かにするゾウ。おい、マッキーよ。この下では……どんな賭け事を行っているのだ?」
「ヒュ~。なかなかクレイジーなエアーを感じる」

 ああ、ただ血の匂いがするだけじゃねえ。
 溢れ出ている、もっと別のもの。漂う吐き気がするような気配はなんだ?
 加賀美の後を追いかけるように、俺たちも階段を下りると、まるで底が見えず、幅の狭い階段をただ延々と降りているだけ。
 しかし、降りているだけなのに、降りれば降りるほど、醜い何かを感じる。
 これは……


「ひはははは、『裏カジノ』は、金持ちどもを相手に高レートで賭けをする場。そこに漂うのは、金と欲望の匂い。だが、『地下カジノ』は違う」


 その時、暗闇の世界の先に、僅かな光を見つけた。近づけば近づくほどその光は眩く輝き、それどころか何かが聞こえてきた。

「な、なんだ? なんかスゲー盛り上がってんぞ?」
「大勢の……人の声?」

 これは歓声?
 なんか、スゲー盛り上がった声が聞こえる。

「ひはははは、地下カジノ。それは、表に出れない無法者たちを相手に賭けをする場。そこに漂うのは、金と欲望……そして、狂喜と血の匂い!」

 光に向かって加賀美が勢いよく手を伸ばした。すると、世界が開けた。
 地下深くの行き止まりにあった扉を開いた先にあったもの……それは……

「うおおおおおおお! ぶっころせえええええ!」
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!」
「あ~もう、俺はお前に賭けてんだぞ! なにやってんだ、この野郎!」

 俺たちが今いる場所は……観客席!


『それまで! 勝負アリ! ただ今の、殺人鬼ゴロシVS盗賊団頭領ヌスミの勝負は、ヌスミの死亡により、ゴロシの勝利とします!』


 会場に流れるアナウンスと共に、貴族のように豪華な服着た人間や、いかにもガラの悪いチンピラや、ドクロマークの帽子を被った海賊らしき奴らまで何千人と巨大な円上の段々となっている観客席で、酒、女、そして金をバラ撒きながら狂った笑いや落ち込んだような表情をしている。
 そんな観客席から見下ろすような形で、そこには鳥かごのような金網のリング。


「地下カジノ名物、地下闘技場。チンピラから戦争犯罪者、時には亜人や魔族の捕虜を使ってデスマッチを行う。ギャラリーはどっちが勝つかを賭け、闘士は勝って大金か自由を手に入れる。どうよ、パナイっしょ?」


 自分が作った作品を見せびらかすかのように笑う加賀美。……正直、微妙に引いちまった。

「ちっ、悪趣味な奴が」
「そ~お? 見てよ、朝倉くん。ここには表では良心的な人柄で通っている貴族やら、犯罪者や奴隷とか幅広い種が揃っている。でも、見なよ。みんなさ、イカレたような目で血で血を洗う殺し合いに一喜一憂してるでしょ? 人間ってさ、一皮剥けばみんなどこか狂ってんだよ」

 キモーメンがまだ可愛く見える。

「まっ、安心しなよ。別に俺たちは賭けに来たわけじゃねえ。事務所にある俺の貯金を回収しに来ただけだからさ」

 ただのエロキモ野郎に対して、ここに居る奴らはどこかイッてるような目をしてる。

「ゲロのような世界だ」
「まったく……どこの種族にも醜いものは居るものだゾウ」
「ふっ、フリーダムであるならロックに通じるところがあるかもしれないが、どうやらミーとはジャンルが違うな」

 俺たちにはまとめてお気に召さない世界だった。
 まったく、加賀美の野郎は相変わらずサラッとこういう武勇伝を持ち出しやがって。
 こんな血しぶき飛び散る光景を、悦に入って見入るクソども相手に加賀美は一体どれだけ吸い上げたんだ?


「しっかし、どいつもこいつもイカれた目をしやがって。それに、あの戦ってるやつらは何なんだよ。殺し合いとかするぐらいなら、戦争にでも行ったほうが名誉になるんじゃねえのか?」

「ひはははは、無理無理。あそこで戦ってるのは、ほとんどが表舞台に立てないような奴らばかり。海賊や盗賊、殺し屋、中には懲戒された元軍人に、国を追放された奴らも居る。俺はね、朝倉くん。行くあてもなく、野垂れ死にそうだった、頑丈な体しか取り柄のない脳筋バカどもにチャンスを与えてるのさ。死ぬか、さらなる地獄に落ちるか、それとも大金手にして成り上がるか。ひはははは、だから、どいつもこいつも必死に戦うっしょ」

 
 なんだろうな。剣闘とか、初めて見るな。
 だが、ボクシングとか格闘技の試合とは全然ちげえ。
 これは、強い奴が戦うところを見る場じゃねえ。死を見て楽しむような所。
 胸糞悪くて、さっさとここから出たくなった。
 だが、そんな時だった。


「「「ウオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」


 大歓声が上がり、思わずリングの方に目をやると、3mほどはある熊のような図体と凶暴な顔した獣が、天高らかに舞い上がっていた。

「なんだ?」
「ヒュ~」

 何があったのか? リングをよく見ると、そこには一人の男が立っていた。
 豪快な右アッパーを繰り出した直後のような態勢のまま拳を突き上げている。
 
「あっ………」

 ユズリハは声を出した。

「うおおおお、やっぱあいつはツエー! 新人のくせに破竹の連勝無敗!」
「亜人の怪物、クマゴンを一撃だ!」
「わっはっはっは、また儲けさせてもらったぞい」

 その男は、身長は俺と対して変わらないが、裸の上半身は筋肉で盛り上がり、その肌に赤いマントを纏っている。
 だが、人間じゃねえ。
 マントの下から見えるのは、ユズリハと同種の尻尾。
 マントに描かれているのは、お伽噺や絵本でしか見たことのない怪獣の姿。
 ドラゴンとライオンの特徴を合わせたような、鬣と鱗でその身をおおったモンスター『ドライゴン』が描かれていた。
 ボサボサの黒髪とダブダブの長ズボンとサンダルというあまりにもだらしない姿だが、その瞳、飢えた獣……いや、竜のような目をしていた。


「アカン。全然つまらへん。人生賭けても、全財産賭けても、命賭けても、全くひりつくような勝負ができひん。なんぼゼニが入っても、全然達成感があらへん。こないなもんやったら、まだ、カードやルーレットで遊んどった方がマシや」


 その男は、世界に失望したかのようにつまらなそうにため息を吐き、かと思えばその直後に地下世界が揺れるほどの声を張り上げた。


「ワイはもっと熱うなりたいんや! 全てを懸けた先のギリギリの勝負とスリルを味わいたいんや! 誰かワイを痺れさせる、強い奴はおらんのか!」


 強さに飢えたその男の言葉に、俺とミルコと、そして加賀美がしばらく硬直したままだった。


『それまで! 勝負アリ! ただ今の、獅子竜ジャックポットVS剣闘用亜人クマゴンの勝負は、ジャックの勝利とします!』


 アナウンスと煩い歓声だけが響いていた。

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